光る風を超えて   作:黒兎可

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感想、誤字報告、お気に入り、ここ好き他、毎度ご好評あざますナ!
今回からいよいよ・・・?
 
あ、あとアンケもご協力お願いします汗

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何度叫んだ声か
何度流した涙か
何度伸ばした手か
何度踏んだ足音か
何度壊れた我が体か
何度殺した我が心か

幾度振り返れど、そこに君はもう居ない


ST47.死を祓え!:プロローグ

ST47.Memento Mori:Prologue

 

 

 

 

 

「――――た、刀太、おい、しっかりしろ?

 生きてるか?

 まぁ死にはしないはずだが……」

「――――――――ハッ!?」

 

 我に返ると、私は雪姫というかエヴァンジェリンに膝枕をされていた。場所はカトラスと別れた時と変わらず氷の柱の上。おそらくカトラス本人が切断して平面にしただろうその場所。聞けば、どうやら我を忘れてぼうっとしたまま倒れたらしい。

 重症である。重症であるが、そうなった理由もよくわかる私だった。

 

 若干曇った月を背後に、エヴァは私の額を撫でる。表情は揶揄う様な、それでいて心配するような微妙なものだった。……って、いい加減ワイシャツ一丁姿を止めて服を着ろ。(戒め)

 

「あの小娘に何かされたか。ショックを受けたように固まっていたぞ?

 アーティファクトで小細工でもされたかと思ったがそうでもなさそうだし……」

「…………いや、大した話じゃねーよ。きっと、たぶん、そのはず」

 

 メイビーと続けるに続けられなかった私の心境は、酷い絶望一色に染まっていたはずだ。幻覚と断じてしまいたい事実…………、カトラスの私に向ける感情が「多少なりとも柔らいだ憎しみ」から「普通の好意」にまで転じてしまったとしか思えない挙措が、私に重くのしかかっていた。

 

 多少なりとも絆されはするだろうとは思っていた。実際「なあなあ」にするためにそれは意識していたのだから。しかし原作でのカトラスの拗らせっぷりというか過去の凄惨さから考えて、その程度では私への憎しみは消えないだろうと思っていた。せいぜい次に遭遇するときに、向こうがやり辛くなってくれるくらいだろうと、最終的にはそんな感じに落ち着くだろうという想定だったのだ。

 ふたを開けたら木っ端みじんである。世界が崩壊する音が聞こえた気がする。ここまでのダメージを喰らったのは九郎丸の「(パクティオー)やらないか」発言の時以来だろうか。まぁ、あれは世界観崩壊の音を聞いた訳で、今回は明確に原作のルート崩壊の音な気がするが。妹チャンお前そんなチョロかったか意味わからねーぞ!(責任転嫁)

 

 そんな与太話をする訳にもいかず、とりあえずのカバーストーリーを話すことにした。要はカトラスを前提として、フェイトとの遭遇やら何やらで自分の出自について色々と考えているという話を。

 

「まぁ第一、あのフェイトってのが何なのかってのもよく判ってねーんだけど。

 爺さんっていうか、ネギ=スプリングフィールドと知り合いとか言ってたっけ。甚兵衛さん先輩も」

「奴は……」

「あー、いい! いい! 今聞きたくねー! なんかなし崩しで色々な情報を言われちまいそうだからそんな話したくねー!」

「オイオイ……、いや逃げ腰になるのも判るが、今のは私の口から何か語らないといけない流れじゃなかったか?」

「だってそんな一気に言われたって整理できねーし」

 

 上体を起こす私に苦笑いの雪姫だが、事は酷く単純である。この時点で私の出自に関する情報を教えられるなど、カトラスの件並みかそれ以上のガバなのだ。私が原作主人公ムーブしようにもできない前提はあるとはいえ、いくら何でもそこまでのチャート崩壊は望んではない。だからこそ彼女の、まあ、ある意味「弱点」をつくことにした。

 

「大体、そんな話があったところでさ。今更変わりねーだろ? カアちゃんも、俺も」

「――――――――っ、そ、うだな」

 

 真面目な顔をしてそんなことを言えば、エヴァは一瞬呆けたような顔をして、そして苦笑いを浮かべた。

 原作でも今世でも、彼女が近衛刀太へと愛情を注いでいることに変わりはない。それはこの段階においては親としての愛情が主であり、そのあたりがパラダイムシフトするにはまだいくらかの時間(原作巻数)がある。だからこそ、この場での確認においては「これ」で問題はないはずだ。(???「だからアタシの、アンタに突き付ける予定のガバが増え続けるんだって、いい加減察しないものかねぇ」)

 

「…………フェイトとお前たちのやりとりは、一応、聞いている」

「はい? 聞いてるって……、いや甚兵衛さん先輩こっちに居たし、どうやって?」

「ハハッ、一空がフェイトのドローンカメラをクラッキングしていてな。

 実は最初からある程度の事の成り行きはこっちで見れていたのだ。お前が暴走する姿も含めて」

 

 あー成程、としか返しようがなかった。確かにもともとスラム一帯にはフェイトが所属してるアマテル研究所だったり何だったりのドローン類は飛んでいた気配があるし、そこから直に情報をとっていたと言われてしまっては、もはや何も言えることはないというか。

 むしろ先ほどの話、私が遮ってなかったら本当の本当にヤバいところまで話されていた可能性があったということか。意外と思いつめるからなぁこの義母(カア)ちゃんは。つまりストップをかけたのはナイスリカバリー!(自画自賛)

 そんな私の内心はさておき、エヴァは覇気のない笑顔を浮かべた。

 

「…………私にも、整理する時間をくれ。いつか場を設けよう。そしたらすべて話す。

 お前が一体何であるか。何故『闇の魔法(マギア・エレベア)』を使えるのか。

 あの、お前の妹を名乗った小娘が何であるのか」

「……小娘って言うのやめてやれよ、本人はカトラスって自称してるし」

「まあ個体名を個別でいちいち知らないのでな。そこは許せ」

 

 ただ、と。膝立ちになり、唐突に私の頭を抱きしめ。

 

「――――さっきの言葉はちょっと嬉しかった。

 嬉しかったが、段々祖父に似て来てるような気がしてカアちゃん、心配だぞ?」

 

 そんなこと言われたって知らねーよとしか返しようがなく、エヴァはそれに楽しそうに大笑いした。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 また遊びに来ると約束をしてルキ達スラムの人々と別れて早々、私に降りかかってきたものが給与の差し引き明細である。

 

 仙境館に戻って早々、源五郎から差し出されたそれ。収入二百万に対して借金総額二千万という数字に対し、私が抱いたのはショックよりも安堵であった。

 実際、魔天化壮(デモンクラッド)……私は断じて自分の技とか形態の一種と認めたくないアレだが、あれによる周辺被害は大きく見積もって原作主人公がなした破壊規模とそう大差ないのは理解している。むしろそこの金額に嘘偽り誤魔化しない数字が出て来た事の方が、原作からの乖離が減ったように錯覚してちょっと嬉しいくらいだった。

 

 むろん、そんな感情を表に出す訳にもいかないのだが。

 

「とはいえ何か大型の案件でもねーと、金を稼ぐ手段は無い訳なんだが……」

「だ、大丈夫! 僕も協力するから!」

「いやお前は街壊してねーから入ってねーだろ」

「でもその、『親友』が困ってるのを見過ごせないから、僕って!」

 

 そしてスラムから帰ってきてから、ずーっと九郎丸のテンションが高い。いつかの時のように躁鬱めいたそれかと疑ってはみるものの、特にそんな感触はない。しいて言うと小さい女の子が年上のお兄さんに向けるような変な視線を感じてしまうレベルである。

 夏凜に相談してみても「一緒に任務へ出向く機会も多いでしょうし、仲良くなっていて問題ないのでは?」とか「私に頼めばそれくらいはポンと出してあげますが。まあしばらく身柄は預かりますが」などと不穏なことを言ってくる始末。

 ボロボロになってしまった和服を「縫いましょう」と言われ自室まで招かれた私は、意外と器用にチクチクやってる彼女がやはり苦手であった……、色々な意味で。

 

「まあ変に取り立てられたりしねーから別に困ってるって感じじゃねーんスけど……、仮に夏凜ちゃん先輩に頼んだら、俺、どうなるんスか?」

「そうですね……、貴方の薬指のサイズを測った後、服を買いに行きましょうか。白い――」

「待て待てっ! 何故そう発言がいちいち恐ろしいのか…………」

 

 素が出てしまった私に「冗談です」と微笑む夏凜だが、身長が伸びたせいか頭を撫でるのではなく頬を撫でて来るのがくすぐったすぎる……、というかそこまでくるともう距離感のごまかしが利かないだろアンタ!? 一体何を目指してるんですかね。(震え声) 怖くて聞けない私と、それを察してるのかいないのか「何も問題はありません」と微笑む夏凜であったが、問題しかないのはさておき。

 

 流石に数日も経ってくると原作通りなのか借金について割と広く知られるようになり、私も笑う他ないのだが。意外と子供たちからの親しまれ方が変わってきた頃である。新顔のお兄ちゃんから付き合いの良いお兄ちゃんくらいにはクラスアップ(ダウン?)したのか、そうでないのか……。

 

「刀太兄ちゃん、手品やって手品!」

「お? そうか。じゃここにある真っ赤なハンカチだがな、これを手の中に入れてこう、ちょちょいとやると……、ほら真っ白なハンカチに」

「「「すげー!」」」

 

 今だって仕事中に遊んでくれと言う親しまれ方である。怖がられたりするよりははるかに良いが、あんまり遊びすぎるとバサゴが嫌味を言ってくるので中々塩梅が難しい。

 ちなみにタネ明かしとしては、私の血を沁み込ませたハンカチを、手の中で血装術を使うことで元の状態に戻しているだけである。意外とこの手品の受けは良い(タネを知ったら顔面蒼白の可能性もあるが、カトラスの例からして)。

 

 また時には無軌道に背後からチャンバラごっこなのか新聞紙を丸めた刀もどきで斬りかかってくる男の子共にOSR(オサレ)の何たるかを教えたり(飛蹴板(スレッチ・ブレッシ)で一瞬で背後に回り込みチョップをお見舞い)。時には楽器を教えてくれと言われて、ピアノの指遣いが適当極まりなく気持ち悪い動きをするのに困惑されたり。

 

 ……なお一番キツいのが。

 

「刀太兄ちゃん、忍お姉ちゃんが本命なの?」

「「「きゃーっ!」」」

「えええっ!?」

 

 新顔の忍に何だかんだよく面倒を見ているせいか、そんな勘違いに基づいた扱いを受けていたりすることであって……。忍は忍で原作通りと言うべきか、それともスラムでの生活力もあってというべきか。こっちに来てからもなんら違和感なく馴染んでいるのは、ある種の才能といえるかもしれない。

 

 

 

 そんなある日の早朝。

 

我が身に秘められし(オステンド・ミア)力よここに(・エッセンシア)――――来たれ(アデアット)!』

「――――死天化壮(デスクラッド)

 

 毎日のように九郎丸とは練習試合というか修行めいたことをしているのだが。今日はどういう訳か、かなりの高頻度でアーマーカードを引けるようになった九郎丸(何かのガバの前兆な気もする)と、フル装備での斬り合いをしていた。血装術に関しては「代替案を一緒に考えよう」ということで現在保留となっているので使用許可が下りている形である(使わない方が危ないというのが奇しくもスラム街でのそれで証明されてしまった)。

 どうにも神刀の出力についてだいぶ馴染んできたのか慣れてきたのか、暴走することなく上手いこと使いこなしている九郎丸。端的に言うと死天化壮の移動速度に、以前よりも反応できるようになってきているというか…………。

 超高速で斬り合いながら、九郎丸が私に叫ぶ。

 

「刀太君、左手ポケットに入れて、斬るの、前から思ってたけど、バランス悪いんじゃないかな! 今までは、全然、それでも追いつけなかったから、何も言えなかったけど! もう簡単には、追い抜かせないよっ!」

「そうかよ! もっと速く動けるんだけどなぁ」

「嘘だぁ!」

 

 もっとも私も環境インフレに置き去りにされて弱体化されるような愚は犯していない。腕とかの反応速度に追いつけるようになったとはいえ、ステップに関しては私の方が上手の自信がある。 

 斬り合いながらも後退している現在に対して、飛蹴板と内血装による瞬動もどきを併用する。これにより、私の機動に関しては一つの完成を見たと思っているのだが、果たして?(自画自賛)

 

 具体的には、後退した瞬間に血の板を瞬動で蹴り飛ばし、後退、しながらも死天化装でベクトルを無理やり修正して上方向に。九郎丸が察してそれに追従したのを見た瞬間に死天化装で身体の角度を変えて血の板を蹴り飛ばし虚空瞬動よりも「しっかり」踏み込んで斬りかかったりするような……。要するに、前後上下左右に関して「踏み込める」ようになった分、今までよりも緩急がつけられるようになったのだ。

 もっとも私も調整中というか「何が出来るか」検証中の面もあるので、完成度はまだ高くない。高くないが、黒棒の重量もそう大きく変えてはいなくとも、時々九郎丸の手から神刀を落とすことが出来るようになってきていた。

 

「すごい……‼ 凄いよ刀太君、カッコイイ!」

「いや反応に困るってお前……」

「へ? いや、でもカッコイイのは本当だから……!」

 

 とりあえずその、両手を胸の前で合わせて「きゅん」としてるみたいなポーズ止めろ。最近前より明らかに体の線が女性側に寄っているから、色々と洒落にならなくなってきてるんだぞお前。気のせいじゃなければサラシだってキツくなり始めてるだろ絶対。

 

 早朝の特訓が終わり次第、それぞれ別々に風呂へ向かう。私に関しては汗も何もかもほとんど血に吸収されると、血扱いになるのか完全に制御が可能なので匂いや汗疹も発生しないのだが、こういうのは気分である。ただいくら混浴時間とはいえ九郎丸と一緒に入る気にはなれず(節度というかマナーである)、しばらく周囲を散策することにしていた。

 

 

 

「――――んあああああああああああ!? もう! 一体何回『やり直させれば』気が済むわけあの『ちゅーに』いいいいいいい!」

 

 

 

 そして何とも酷く私も覚えがあるような、まるでチャート崩壊を目前とした絶望とぶつけ所のない怒り嘆きの感情による絶叫を耳にした。声のした側、本館の裏側からこそっと顔半分だけ乗り出す様に素立ちで覗いてみれば。私に気づいてすらいないらしいキリヱは自分の世界に没頭するかのごとく、頭を抱えて地団太を踏んでいた。ワンピースタイプの服で、スカートのめくれも何のその。あらん限りの感情を足にそそいで踏みつけている。

 ちょっと子供らしくて可愛らしい絵面だが、原作だとアレが近衛刀太へと振るわれたりするわけで……、というより「ちゅーに」だと? 誰のことだ?

 

「スラムは良かったわ。アイツを向かわせることで更地(ヽヽ)も免れたみたいだし、何より生き残りが増えた。これで多少『駒』が増える。……駒って言うと外聞悪いし皆に悪いわね。何ていったら良いかしら。うーん……、役者? うん、役者にしとこっ。

 役者が増えるだけこれから取れる展開も増えて来るって言うのに、何で私があの場で介入しても毎度毎度あの『ちゅーに』は雪姫の言いなりになっちゃうのよ! 何なの、好きなの!? そーいえば夏凜ちゃんも最近ちょっとアヤシイ感じがするし、一体全体…………」

 

 地団太を踏みながらぐるぐる回り続けた結果だろう、私が真顔でじーっと見つめているのに気づいたらしい。一瞬顔を真っ青にし、直後真っ赤に赤面したキリヱは。

 

「何故見てるのよッ! えっち!」

「いや意味がわからねーんだが……」

 

 唐突に脱いだ靴を投げてきたのをキャッチすると、そのままボディブローをされそうになり…………、それを死天化装しながら受け止めつつ、高い高ーいしてから降ろした。

 

「何でいっぱしのレディーをそんな幼児扱いするのよ!? 大体そのふざけた格好、何!」

「へ? いや、その…………、洒落てる(オサレ)だろ?」

「そんなんだから『ちゅーに』なのよアンタは!」

「ちゅーに……」

 

 センスのことを言われてるのだろうか、どうやら私の呼び名は「むのー」ではなく「ちゅーに」にされているらしい。心当たりしかない呼び名ではあるが、困惑する私を前に「あっ、そうかこの段階だと初めてか『ちゅーに』呼び」と、一人納得するキリヱ。

 私の左手を両腕でひしっと抱きしめ引っ張りながら、どうにも怒った様子である。…………あー、その、つまり何か未来形のガバですかね。(遠い目)

 

「もういい加減、限界が来たわ……。ちょっとこっち来て、ちゅーに。色々アンタに教えとかないといけないことあるから……、ら……、なんで全然動かないのよっ!」

「あっ悪い」

 

 そういえば死天化壮中は、地面に立ってても全身が空間に浮いてるような固定されてるようなという状態なのだ(意味不明)。つまりは、ぼーっとしてるとずっと座標が固定されたままだということである。流石に思い出し、血装を解除してキリヱに腕を引っ張られるままついていった。

 

 何をせずともガバ修正のために奔走してくれる……、やはり女神か何かで?(錯乱)

 

 

 

 

雪姫関係のルート分岐に関するアンケです。投票結果も考慮して今後の展開に反映させます。※展開が何を意味するか分からない程度に濁してますが、当該話になったら詳細説明します。

  • ガバの洪水に呑まれるコース
  • ガバの洪水を振り切るコース
  • ガバと和解して親子になるコース
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