光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ! アンケートもお答え頂いてるようで、色々精進いたします…!
 
ズキュゥゥウン!


ST49.死を祓え!:傾けられない天秤

ST49.Memento Mori:SANTA or FATE

 

 

 

 

 

 

 三太編、つまりは原作におけるキリヱ編の次にあたるが、そこで出て来る水無瀬小夜子(みなせ さよこ)について。彼女が何であるかと言えば、ネタバレしてしまえばプレ・ラスボス戦的なものである。

 というのも彼女の正体に関係する。彼女本人は「ネギま!」全盛期の時代、二千年代初頭にいた少女であり、当時から今に至るまででもトップクラスの死霊術(ネクロマンシー)の才覚を持った魔法使いである。ただ元来の真面目だったり優しかったりした性格が災いし、いじめを受けども仕返しせず(当時の魔法世界的な規約で秘密だったのもあるが)、心に傷を負って自殺。その後、その能力と性格を他の雑多な霊たちの無念につけこまれ、無理やり現世にとどまる形で復活。いうなれば実体のある怨霊であり、自らが複数の亡霊の受け皿となった存在となってしまっていた。それがある意味で本作「ラスボス」に近い原理の存在でもあり、故に彼女もまたラスボス同様にほぼ無制限の魔力やら何やらを持っている。

 

 そんな彼女は原作において「とある理由」からUQホルダーを呼び寄せようと事件を起こすのだが……、その最終終着点として「世界規模のバイオテロ」、つまりはゾンビウィルステロに発展する。ゾンビといっても、いわゆる魔法世界の技術を併用したもので、確か正式には屍食鬼(グール)化ウィルスだったか。感染した人間の脳髄を汚染し破壊、生きている対象を噛みちぎり仲間を増やすという単体行動「だけ」に特化した存在へと変貌させる。

 もっともこれは「不死者」には無効、というよりおそらくウィルスによる破壊すらすぐ再生する的な理屈があるのだろう、とにかく我々には効かない。しかしそれすら想定し、魂魄から洗脳するようなものまで用意している周到さだったはずだ。

 

「ままならぬ……」

 

 そんなバイオテロが実行された……、未来でされると告知され、思わず膝をついて愕然とした。そりゃこうもなろう、いくら何でも今回は私のガバの範疇を大いに超えていると言いたい。今までだって多かれ少なかれバタフライエフェクト的なことは経験してきたが、今回に限っては規模が違う。

 しかも期間ほぼなし、明後日に発生すると来ているのだ。軽く絶望したって罰は当たるまい。

 

「…………それって、どうなるんだ? いや、どれくらい細かくわかるかとか全然知らねーけど、分かる範囲で教えてくれ」

「国がいくつか無くなったわ。アマテル魔法魔術研究所って所がワクチンを作ったけど供給が全然まわらなくって。最終的に『白き翼』って組織とウチとで協力してどうにかしたけど、それだって被害甚大で国がいっぱいなくなったわ。メンバーも、そして一般人も」

「マジか……って、まるで見て来たみたいに言うなキリヱ大明神」

「見てきたって、そ、そんなことは全然ないわ……って、何よ大明神って! こら拝むな! 運気が散るわ!」

 

 ぽかぽか殴りかかってくるキリヱを適当にあしらいながら、今の情報をいくつか整理してその時のバックグラウンドを予測する。

 ……まさかの私とカトラスの出身地というか、まぁそんな場所が動いたらしかったが。ただあそこって記憶違いじゃなければ、フェイトすら気づかず若干ラスボス側からの手が回っていたはずなので、状況次第ではアテに出来ないはずだ。おそらくはバイオテロに乗じて、ラスボスの予定していた計画とかも前倒しで一部実行されたとみるべきだろう。

 つまるところ最悪のシナリオに違いない。チャート崩壊所の騒ぎではなかった。

 

「私が意識を取り戻し……じゃなくって! えっと、えー、アレよ、アレ! 私が視たビジョンの時点じゃ、アンタが助けてくれるまで私も操られてたっぽかったし」

「他のメンバーってどうなってるんだ? 流石に雪姫は生き残ってそうだけど……」

「私以外だと五人、ね。雪姫と、源五郎と、一空と、アンタと、あと『十蔵』。『ニキティス』はなんか『セプ子』抑え込むので限界だとか言って地上に出てこなかったし」

「甚兵衛さん先輩いねーのか……」

「ココもかなりひどいことになって、逃がすのに殿してたから、たぶん…………」

 

 情報量が多いのと、仕方ないとはいえ未登場の人物の名前がポンと出て来るな……。いや、しかし十蔵か。確かに彼ならウィルスくらい「概念ごと」斬って生き延びて居そうだが、それはともかく。

 

「……? 九郎丸はともかく、夏凜ちゃんさんとかは生き残ってそうだと思うんだけど」

「いなかったわ」

「いない…………?」

 

「二人とも、スラムに行った後に行方不明になっちゃったのよ。おまけにスラムは場所一帯が更地になるし、生存者だってゼロ」

 

「…………はい?」

 

 流石にその情報は、予想外すぎて反応できなかった。

 思考がフリーズした私に、キリヱは続ける。

 

「白い翼と合流しても、かなりジリ貧だったし。なんかバーサーカーみたいなメイドさんみたいな、長い刀持ってた女の人とか、一空と似たような感じだったからあっちは中々洗脳とかもされずに善戦してたみたいだけど、半年後くらいには存在がめっきり確認できなくなったし」

「…………」

 

 とりあえず九郎丸の所在は今の私からすれば推察がついてしまったのだが。どういう経緯を辿ったかは分からないが、最終的に神刀状態で封印か何かされ、「ネギま!」時代の妖刀ひなのように月詠が使っていたらしい。いや、まあそれもそれで何の救いにもならないし、フェイトへのヘイトが溜まる(激うまギャグ)だけなので考えるのは一旦は置いておくとして。

 

「おまけに雪姫とかアンタとかみたいな吸血鬼もどきみたいな奴? 女で肌、浅黒かった感じのやつが殺しにかかってきたりして。それはアンタがなんとかやっつけたみたいだけど」

「その時の『私』は、眼帯とかしていたか?」

「(私……?)、あーうん、してた。っていうか、そいつにやられて眼帯するようになったわ」

 

 それ九分九厘カトラスだろう。眼帯をしていたという私の情報からして、中途半端に原作への修正力的なサムシングが働いたのだろうか……。いや、まあ眼帯は前世というか「私」からしてみても縁がない訳でもないのだが、そういったそれっぽい(オサレ)的な理由で装着していた訳ではないはずだ。

 というかやはりというべきか、スラムで絆すようなことをしていなかったのがモロに影響した形らしい。

 

 そしてそこまでの流れで「師匠が介入してきていない」とすると、その先はおそらく…………。

 

「結局その後、色々あって……、ごめん。これ以上は『知ってる』んだけど『言いたくない』」

「言いたくないって……、あー、何か辛いことでもあったのか?」

「うん。ちょっと……、いやちょっとじゃないわね。相当よ相当」

 

 だからそれを変えるために色々やってるの、とキリヱは胸を張って笑った。 

 

 …………その笑顔には色々と申し訳ないのだが、今までの会話の流れから、割と気づいてはいけない事実に気づいてしまった気がする。

 

 

 

 ひょっとするとこのキリヱ、その「世界崩壊のシナリオ」の後に「幼少期のネグレクト時代」まで時間を巻き戻してから、ここに来ているのではないだろうか。

 

 

 

 でなければ、彼女の能力仕様的に説明がつかないのだ。「リセット可能な人生(リセット&リスタート)」の能力は、砂に可燃物の棒やロウソクを立てて火をつけ、手を合わせてからスタートするのだが。リスタートできるのは、セーブポイントの火が消えるまでの期間に限定される。これに違反した場合、一番最初のセーブポイント、つまりは「ふり出し」の時点まで巻き戻されると原作では予想されていた。

 流石にそれは実行されてこそしなかったが、もしそうなったのなら彼女は二倍近い時間を、一から積み上げてまたここに「帰ってきた」ことになる。

 本人の意思はわからないが、少なくとも世界を救うために。

 

「……何、って、えええええ!? な、な、何で泣いてるのアンタ! 情緒不安定!?」

「はい? ……あ、マジだ。いや、大したことはねーけど……」

 

 言われて頬をなぜると、右目だけから涙が流れていた。それを右手で適当に拭い、改めてキリヱを見る。「な、何よ」と困惑しながら、あと何故か顔を赤くしながら一歩引いた彼女に、とりあえず私は手を合わせた。

 

「だから拝むんじゃないわよ! やめなさいって、変な宗教の教祖にでもなった気分になって、変な気分だからー!」

「いや、でも、何かホント、すまぬ…………」

「謝るくらいならやるんじゃないわよ!」

 

 しかしまあ、私からすると謝り倒す他ない訳で。別段、彼女と積極的にフラグを立てるつもりが有るわけではないが、原作に近い流れを踏襲したとして、その先。正直な話、キリヱから迫られたら断れる立場にない。……だってたぶんその世界崩壊の切っ掛け、もしかしなくても橘のチキンハート(罵倒)、あと私のガバが遠因であり直因になってるに違いないのだ。

 そのせいで余りにも多くのものを失い、また彼女にも「失わせてしまった」だろうことは想像するに難くない。

 

 私の頭を下げる体勢を解こうと頑張って肩を起こそうとしてるキリヱの手をとり、私は彼女を引き寄せた。鼻が触れ合うか触れ合わないか、目と目が合う距離である。

 

「な、なななななんななななな、だから何なのアンタ!? 近いわよ!」

「――――実体験じゃないんだとしても、大変だったな。キリヱ」

「えっ?」

 

 胃が痛い……、痛くて痛くて仕方ない。ガバのカルマを突き付けられたような有様を前に、私としては誠心誠意、彼女を助ける他ない。少なくとも今回に関しては、痛い痛くないだのと言っている余裕すらない。それくらいには私の責任が大きく、またそうでもしないと彼女に対して謝罪にすらならない。

 例えこちらの事情で直接伝えられないのだとしても、それでも心だけは、伝えないといけない。

 

「任せろ、とは言えねぇけどさ。でも、そんなことにならないようにするっていうなら、全力で力貸すから。だから、あんまり無茶すんなよ」

「…………なんで、そんなこと、言うのよアンタは…………いつも(ヽヽヽ)……」

 

 目を見開いたキリヱの目からは、ぽつぽつと涙があふれて零れる。そのまましゃくりあげ、耐えられなくなったのか私の胸に顔を押し当てるキリヱ。夏凜に直してもらって縫製が新しくなったその場所で。

 キリヱは、悲しみに耐えられなくなった子供のようにわんわんと泣いた。

 

 ……悪いのだが、いつもそれを言ってるのだとしたら、たとえ前後の状況がどうであれその私もきっと内心はこんな感じだったのだろうと推察がついてしまう。

 全く誇れない全力謝罪というか、五体投地の境地であった。

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「悪かったわね。変なところ見せて…………」

「いやー、まぁ『見た目相応』って意味じゃ問題ないんじゃね?」

「見た目相応ってどういうことよ!? 私がちんちくりんだって言いたいわけ!!? 悪かったわね幼児体型で! やっぱりおっぱいが良いの? おっぱいが良いの!?」

「いや最初はともかく最後のキレ方意味わからねーぞ…………」

 

 部屋から出ながら雑談を交えつつ、私とキリヱは作戦会議をしていた。彼女いわく「三日後」「アマノミハシラ学園都市に」私が行った後のタイミングで発生しているらしい。雪姫から「ついて来い」と言われて、それに特に逆らわずついていく私、であるらしい。

 つまりイベントとしてはキリヱ編 (フェイト遭遇編)そのものがスキップされるような形でイベントが進んでいるということだろうか。今の所それに類する仕事の話は誰からも聞いていないのだが、さてどうなるものか…………。

 

 ちなみにキリヱがこれに何度か介入しようとしても、毎度毎度、私から断られたり無視されたりしているとか何とか。一体どういう理由なのか、ちょっと想像がつかないのだが。

 

「――――おや? 珍しい組み合わせですね。刀太、キリヱ。おはようございます」

「おはよー、夏凜ちゃん」

「……あー、はい、おはようッス、夏凜ちゃん先輩」

 

 階段を降りて一階の廊下に出ると、例によって和風給仕服の夏凜と遭遇した。……それを見て道中、忍を置き去りにしてしまったことを思い出し更に胃が、というか鳩尾が痛い。キリヱの状況の緊急性は確かに高かったのだが、だからといってせめて忍を抱き起こすくらいはしてやるべきだったと反省必至である。

 と、そんな私の反応に「む?」と夏凜。足を進めようとすると肩を引かれ、いつの間にか両頬をロックされ、じぃ、と覗き込まれた。

 

「かか、夏凜ちゃん何やってるの……!?」

「しいて言えば触診でしょうか。ふむ……」

「触診って? 何か悪い所でもあるの?」

「あー、えっと、そろそろ俺ほら、仕事に行かないと――――」

 

 

 

 そして言葉を続ける前に、あっさりと唇を奪われた。

 

 

 

 ずきゅーん!? という擬音が出たかどうかは不明だ。流石に舌は入れてこなかったものの、いや、目を閉じたりといったドラマチックな要素も何もなく、クールなお顔のまま目も閉じず、さも日常動作のようなモーションで毒牙一発である。(意味不明)

 隣でキリヱが変なポーズをとって震えている。眼鏡もずり落ちそうな感じで口を開いて、漫符で言うと目が真ん丸になってるイメージだ。

 

 す、と唇を離して私の顔を見ると、うんうんと頷いてから夏凜は抱きしめてきた。

 

 ……………。

 

「な、ななな、ななななななななななななななななななななな何やっちゃってるの夏凜ちゃん!? どーしたの、貴女、雪姫大好きなんでしょ! なのにそれ何!? 痴女なの? 痴女に宗旨替えしたの!!? 誰でも良いって訳じゃない、のだとしても、えっと、一応雪姫の息子ってことになってるけど血とか繋がってないんでしょ!!!?

 というかアンタも離れなさいよっ……!」

「…………」

「いえ、この程度は人工呼吸のようなものですので。『刀太相手でしたら』」

「距離感がわかんないわよォッ!?」

 

 涙目になっているキリヱに不思議そうにしてる夏凜だが、それ明らかにお前さんが一番謎行動すぎるのだが? あきらかに私も脈拍が上がって胸部の傷から絶対に出血してるぞこれどうしてくれる。(動揺)

 ただあまりに呆然としていて私も言葉が続かない。そんな私の背中を「幼子でもあやすように」軽く撫でるように叩きながら。夏凜は私の耳元にささやく。……くすぐったいか、あの、ちょっと流石に止めてくれないかなホラ、今、私、そんなことされると堕ちちゃうから。(限界)

 

「見たところ、『素の貴方』が悲鳴を上げているようだったから。『一人ぼっちで世界に投げ出されて』『それでも立ち向かわないといけない』みたいな顔してたもの。……大丈夫、一人ではないから。

 ……多少、元気になったかしら?」

「…………そもそも何故わかる」

「さぁて、何でかしらね……。同病、相哀れむという話もありますが。それも含めてもっと、自然に笑ってもらいたいのは、変わりないので」

 

 はぐらかすようなセリフだ。後いい加減もう彼女の私に対する好感度についていい加減もう断定してしまって良いレベルなのではないだろうかいい加減。(動揺) 流石にこれで弟扱いとかそういうのは無理がある気がするのだが……。だが不思議なことに、夏凜がそんな対応をすることに「違和感のない」認識が私の中に存在する。原作知識ではない、明らかに「この夏凜」相手に、である。これは一体…………。いや、だがだからと言って何かこう「事に及ぶ」のはそれはそれでガバの巣窟待ったなしだろうし、私は一体どうしたら良いんですかね師匠。(???「そういうのはアタシと遭遇するまでに、ここまでガバらせないのが大前提の相談事だよアンタ」)

 

 私を離すと、例によって形状記憶合金のごとく表情がクールに戻る夏凜である。そのままキリヱを見て「貴女、いつまでも呆けてるのかしら」とか言っていた。むろんキリヱは「夏凜ちゃんのせいでしょうがッ!!!」とキレ気味である。

 そしてそんな謎修羅場(リンボ・オン・ジアース)な状況に、上の階から雪姫が降りてきた。

 

「あー、おはようカアちゃん」

「おっ、丁度よい所にいるじゃないか刀太。おはよう。…………ん? 何だこれ、ラブコメの墓場か何かか?」

「俺が知りてーッスわ…………」

「ふむふむ、そういう所は祖父に似てるようで似てない…………? ん? いや、まぁそれはともかく。少し顔を貸せ」

 

 これか、とキリヱとのやりとりを思い出し、足を止める。普段なら立場上の上下関係もあるしそのまま付いていくだろうが、今回は明確に問題があると聞いているので、まずはキリヱと情報共有だ。

 一体どういう理由なのかとこの場で聞くと、雪姫は「隠す話でもないから別にいいんだが……」と少々面倒くさそうな顔をした。

  

 

 

「フェイトから食事会の招待だ。……お前と私と、あと甚兵衛と。アマノミハシラ学園都市で。

 旧七人の侍(サムライセブン)、今の不死身衆(ナンバーズ)の前身にあたる連中で集まり、お前に事情を話したりする会を開くと」

 

 嗚呼なるほど、と。確かにそれなら、キリヱから緊急度を知らされなければ行ってしまうだろうと納得した。

 

 

 

雪姫関係のルート分岐に関するアンケです。投票結果も考慮して今後の展開に反映させます。※展開が何を意味するか分からない程度に濁してますが、当該話になったら詳細説明します。

  • ガバの洪水に呑まれるコース
  • ガバの洪水を振り切るコース
  • ガバと和解して親子になるコース
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