光る風を超えて   作:黒兎可

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まさかの再登場


ST50.死を祓え!:選択肢の優先順位

ST50.Memento Mori:Mind Triage

 

 

 

 

 

 原作「UQ HOLDER!」において、フェイトは何度か原作主人公と話し合いの機会を設けようとしたことがあった。むろんジャンルがバトル漫画のせいもあり何度も何度も戦うし、その目的が目的であるため平和なお茶会という流れになったことはついぞなかったのだが。

 まあ大体において、その場では「かつてのネギ君」の雄姿であったり「いかにネギ君が素晴らしいか」とか、きっとそんな話で大半が埋め尽くされるだろうことになるとは読者的に思うのだが。

 

 しかしわざわざ「事情を話す」というお題目をつけてまで、食事会への招待が来たと言うのは、確かに衝撃的と言えば衝撃的であった。

 

「期日は明後日……、会場を設置するヤツの予定がとれなくてな」

「えっマジで? アポとれって言ったのをマジでやってきたのか?」

「そういうことだな。ご丁寧に、例の和尚の携帯端末から通信をかけてきて、こちらの郵便受けまで招待状を寄越したくらいだ」

 

 ため息をつきながら、雪姫はシャツに手をやり胸の谷間から白い封筒を……、いや前から思ってたけどそれ「年齢詐称魔法」って基本的には幻術の類のはずだから、そこに谷間なんて本当はないだろうに、一体どうやっているのか……。

 封を開けてみれば、あー、あー、ご丁寧に「近衛刃太 様」とか手書きで書かれてるけど、どうしてそこで誤字った。ジンタだと浦原商店(オサレ御用達)になってしまうじゃないか。流石にそのレベルの誤字はもうちょっと頑張ってくれと言いたいが、ひょっとしなくても私というか「実験体」たちそのものに対する興味の低さがそのまま出てしまっているのかもしれないと、そんなことを思った。

 

「サムライ(セブン)って、何よ」

「甚兵衛が以前、雪姫様の愚連隊と言っていましたが……」

 

 そしてキリヱたちもそっちはそっちでちょっと興味が湧いたらしい。夏凜はあの場に居たときの話をしているが、そういえば知らないのか……? ネギま! における火星動乱(要はネギぼーず達がラスボスと戦った時期)から計算して、確か今から二十年ちょっと前くらいだったはずなので(うろ覚え)、その頃はまだ雪姫と再会していない頃か。少なくともホルダーが発足してからの期間で考えるとその前後にあたるはずである。

 それはともかく、ホルダーの前身というとアレか……? 原作3巻くらいで南雲が回想していた、ネギやエヴァやフェイトやら「ネギま!」で見知った面々。甚兵衛については不明だが、確かに人数的には7人くらいにはなる計算なのか……?

 

「愚連隊とは酷い言い様だな。まぁアイツは無理やり参加させたから、強くは言えんが……。

 私、甚兵衛、コイツの祖父、フェイトに、後は知らないだろうが龍宮(たつみや)、ザジ、黒棒の作者と、まあそんな面々だな。後はサポートで、かつて私の従者をしていた奴とか『委員長』とか、今ヨーロッパの支部を管理してるヒデヨシ(ヽヽヽヽ)とか……」

 

 おっと? 知らない名前もあるが、おおむね予想通りの面々であった。とはいえ言われた面々を思い返し、原作のこれから先の展開をみると少し違和感はある。おそらくその七人の侍(サムライセブン)不死身衆(ナンバーズ)に引き継がれなかったのは、部隊が壊滅したからに他ならない。とすると、ひょっとしてのどか&夕映(搦め手チートコンビ)はネギぼーずのサポート扱いなのだろうか。そしてラカンという「ネギま!」時代における最強の一角も…………、いやアレは雪姫の趣味でカウントから弾いている可能性もないわけではないが。

 

「当時の生き残りというか、会える人数で考えればざっと五人、か?

 もともと、まあ『とある悪い魔法使い』との最終決戦に挑む前の頃だったからな。色々と私たちも頑張ってはいたんだよ。それが良い結果につながったかどうかは別としてな」

 

 寂し気な微笑みを浮かべる雪姫。何かこちらが言葉をかけるまえに「さて、と」と私の頭をポンポンと撫でる雪姫。

 

「色々とコイツには縁が深い連中だ。確かに昔話(ヽヽ)をするなら『同窓会をかねて』、という意味合いも無くはないのだろう――――」

 

「――あれ? おはようございます。皆どうしたの?」

 

 そうこう話し込んでいると、風呂上りの九郎丸が合流……、だか待てお前、風呂上がりで熱いのとまだ営業時間前だから気を抜いているんだろうがシャツのボタンを閉めろ、きもちほんのり谷間の曲線めいたものが見えている自覚を持て。(戒め)

 キリヱが私の視線に気づいたのか「見てるんじゃないわよっ!」と一発腹部を殴ってくる…………、さっきより威力があるぞ一体どうした。女子力(物理)?(???「いっそ、こっちから一発即死デコピンでもかましてやろうかねぇ」)

 

 夏凜がしれっと指摘して顔を赤らめながらボタンを閉じる九郎丸はともかく(お前もう流石にそのリアクションは男名乗るの無理があるぞ)、その手に依頼書の類が握られているのが目に入る。私の視線に気づいたのか、九郎丸はまだ若干照れながら笑った。

 

「あ、うん! ほら刀太君、借金の額が大きくて『金額の大きな仕事がないか』って言ってたよね。これ! 今朝、一空先輩が見つけてくれたんだ」

「…………『複数の能力を持つと推測される不死者の確保任務』?」

 

 ミッションとしては潜入の類のようだが、場所が「アマノミハシラ学園・まほら本校舎」となっているのを見れば、これが三太編の導入フラグなのだと断定できる(依頼者も「龍宮」となってたし確定だろう)。「悪いが――――」と九郎丸に断りを入れようとする雪姫を止めて、状況を整理しよう。

 

 つまり……タイミングとしては、三太編とフェイトからの誘いが同時に発生しているということになる。場所はどちらも「アマノミハシラ学園都市」というか、つまりは「ネギま!」初期の学園編舞台である麻帆良(まほら)学園に相違ない。

 そして「私が向かうことが遠因としてゾンビテロのキーになる」という話だが、もっと原作知識を動員してつきつめれば、それはつまり「水無瀬小夜子」が「佐々木三太が受け入れられない世界」に絶望することがダメ押しのキーになったはずである。もともと彼女は、三太を我々ホルダーに引き取ってもらえないか、という動機から事件を起こしていたはずなので、彼女の理性が持っている間はそのトリガーさえなければまだ維持できるはずである。もっとも九郎丸が依頼を持ってきた時点で既に限界ではあるのだろう。

 

 とするならば…………、どっちかというと、その会談で何かアレなことが起こると見るのが正しいか。

 交渉が決裂するのかどうかは知らないが、少なくともそれがトリガーとなるということは、トリガーたるイベントを水無瀬小夜子が目的としていることが前提条件になる。

 

 つまりイベントの処理として適切なことは…………。思わずキリヱを見るが、特に私の視線に不思議そうな表情をする。万一失敗しても、彼女の手にかかればリカバリー可能ではあるのだが、流石にもう何度もお亡くなりにさせるのは忍びなさすぎる(本人いわく「すっごい痛い!」らしいので)。とするとここから先の選択肢は慎重にする必要があるのだが。だからと言って全く状況を把握せずに進行すれば、それすなわちガバの温床である。(実体験)

 

「……確か予知能力は、知られてるはずだよな」

「え? あ、うん。そうだけど…………」

 

 それだけ確認してから、私は雪姫の方を見る。と、何か意外そうな目で私とキリヱを見比べる雪姫。その表情は一体何なのだ……、って、確かキリヱ自身相当な人間不信と人見知りが存在していて、この段階だと一空くらいにしか懐いていないのだったか。確かに私たちと距離感が近いのは不思議がられる話か。(???「自分個人に信頼感のある目を向けられていることを不思議がられてるって自覚が湧かないものかねぇ……」)

 

「ちょっと日程調整とかしてーんだけど、誰に話したら良いんだ?」

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 キリヱちゃん……、いや、僕より先輩だからきっともっとお姉さんなんだと思うんだけど、どうしても見た目に引っ張られてキリヱちゃんと呼んでしまう、彼女の能力について刀太君から聞いて、僕はちょっと、どんな顔をしたら良いか分からなくなった。

 

「…………つまり? キリヱの予知で世界がゾンビパニックに陥ると。

 それが『丁度会談のあるタイミングで』起こる。

 だから会談に出席していると何が起こるかわからないから、その『原因となるかもしれない』この依頼を調査させてくれ、と?」

 

 代表して雪姫さんが確認をすると、刀太君は苦笑いして頷いた。……そして、その、どうしてキリヱちゃんは人見知りするみたいにすっと刀太君の後ろに隠れているのだろうか。その、そういうのはちょっと、良くないと僕は思うなー……。

 んんっ。

 

「確かえーっと、震源地? というか。事件の発端っぽいのがこの『まほら本校舎』なんだよな、キリヱ」

「へ? あ、うん……(私、そこまで詳しく話してないと思うんだけど……?)」

「(理由は後で説明すっから)」

 

 後、何かごにょごにょ会話していて仲が良さそうで、こう、なんだろう。相談事ならもっと僕を頼ってくれていいんだけど……、アピールが足りないのかな? でもアピールって何をしたら………‥、ヒナちゃんと一つになった後はずっと剣術とか不死殺しとか、戦闘に関する話しか聞いてこなかったし、「そういう」のは苦手なんだけどな……。今度、本とか買ってみよっかな。

 

 そして夏凜先輩が腕を組んで何度か頷いていた。……? あれ? でも何だろう。夏凜先輩、なんかちょっといつもより口の端が上の方にいってるような気が……?

 

「なるほど。それでしたら『落ち込んでいた』のも分からなくはないです」

「あー、えっと…………」

「大丈夫です、刀太。いえ、また元気がなかったらいつでも――――」

「ストップー! 話が進まないじゃないの! っていうか夏凜ちゃん後でちょっと本館の裏庭に顔出しなさいよ!」

「キリヱ、お前、そんなにアグレッシブだったか……?」

 

 雪姫の言葉にハッとした顔をして……、って、「はっ!?」て口に出して言っちゃったよ、キリヱちゃん。カワイイなぁ、そういうの。刀太君もなんだか微笑ましそうにしてるし、やっぱり年下が好きなのかな……。(???「別に擁護してやるつもりはないけど、只の苦笑いだよソレ」)

 

「そうだな、確かにそういう話なら延期の交渉も必要になるか。だが……」

「どーしたんだよ? カアちゃん」

「いや、別にキリヱの予知能力を軽く見ているつもりはないがな。

 その規模でバイオテロが起こるというのが想像が難しいんだ。映画でもゲームでも現実でも、そのレベルの事件を起こすには概ね二つ、どちらかの条件が必要になってくる。

 個人としての絶対性、もしくは組織力だ。

 麻帆良学園にも元々、かなり強い防御結界なりが張られているし、かつてほどでは無いが腕の良い魔法使いも多い。早々、そういった切っ掛けがあったとしても、大事になる前に終息するのではと思ってな」

 

「「「麻帆良学園?」」」

 

 あー、と雪姫さんは頭をかきながら「その校舎の、昔の名前だ」と言った。話し方からしてとっさに出て来たという感じだし、何か縁があるんだろうか。

 

「つまりアレか? えーっと、そこまでの大事になるってイメージが思い浮かばないってことか」

「飾らずに言えばな。……というよりも、いくら何でもそこまで我々が追い詰められるものか? という疑念が先に立ってしまうのだが」

「とはいえ雪姫様。私くらいの不死性であっても『封じられる』ことは十分にあるのですから」

「それもそうだが、仕立人次第でもあるだろう。その点、今回のこれは想像がつかないというか………」

 

 それは何と言うか、僕もそれに近いことは思ってしまった。夏凜先輩は相変わらず無表情だからわからないけど、なんたってこっちには刀太君がいるんだから!(???「こりゃ救いようがないねぇ……」)

 刀太君がいるんだから、そうそう酷いことにはならないだろう、という期待を押し付けるのは、たぶん間違ってるんだけど。それでもカトラスちゃんみたいな、戦場でしか生き方を知らなかった子をあそこまでスラムの生活に馴染ませたのは、きっと刀太君がきっかけだと思うから。

 もちろん、刀太君には僕だっている。夏凜先輩だっているし、雪姫さんだって。そしてナンバーズの皆、甚兵衛さんや源五郎先輩や一空先輩たち。それに幹部でないにしても、ホルダーにだってまだまだ人はいっぱいいるんだ。

 

 だからこそ、そのくらいなら何とかなるんじゃないかと思っていたのだけど…………。

 

「そりゃ俺だって別に全部信じてるって訳じゃねーけど。でも、さっき話しててキリヱ、泣いたんだよ」

「んな……!? あ、ああああアンタそれ何で言うのよ!!!!?」

 

 まぁ落ち着けってと刀太君はキリヱちゃんを「どうどう」として「私は馬か! むしろアンタが種馬とかにされそうで心配よ!?」とか言われてた。……って、種馬? オホン、と何故か夏凜先輩が咳払い。

 

「キリヱってさ。絶対俺とかよりは長生きしてるだろ? で、まーこの未来予知だっけ? っていうのもこう、なんか『未来の話』を『実際に体験する』ようなタイプみたいな感じだし。ってことは、きっとかなり色々経験してるから、ちょっとやそっとのことじゃ泣いたりしねーんじゃねーかって思う。

 そのキリヱが『止められない』って、どうしようもないって泣くのは、何かこう、よっぽどだと思うんだよ。それこそココが壊滅するとか、人類が三分の一以下に激減するとかさ。

 取り越し苦労で結構! でも、わざわざ危険性があるんだっていうのなら、取り除いてからでも問題ねーだろって思うんだけど」

「ふむ…………、そうか。そういうことか」

 

 ニヤニヤとした雪姫さんが、キリヱちゃんの方を見る。「な、何よっ」と怒った風にしながら刀太君の背中に隠れる彼女を「いや何でも?」と楽し気に笑う雪姫さん。……そしてそれを、腕を組んで何かこう、納得したように何度も首肯する夏凜先輩が色々謎だった。

 

 そして気づいた、さっきから僕、全然何もしゃべってない! っていうより言えることがない……!? あれおかしいな、僕、今日、空気?

 思わず刀太君の右手、つまりキリヱちゃんと反対側の方の手をとると、刀太君が何だよと苦笑いを返してくる。でも、その、僕がここに居るってこう、忘れ去られないか心配で……。

 

 

 

「――――成程、人類滅亡の引き金か……、ここで来たか!」

 

 

 

 聞き覚えのある声が、廊下に響いた。皆してその声の方を見れば、剃髪にすごく濃い顔をした、前はあった髭を剃った「和尚」さんが来た。

 一応スラムの後に、僕らUQホルダーの方で身柄を確保された和尚さん。雇用主からは休職扱いにしてもらったらしく、しばらく厄介になると大笑いして、今は本館の隅で時々占いとか人生相談とかをやってるらしい。

 特に反抗的ということもなく、あと雪姫さんとも元々面識があったらしく、軟禁……と言えないレベルでの微妙な軟禁状態だった。

 

「なん…………、だと…………?」

 

 そして和尚さんの姿を見て、刀太君がフリーズしてしまった。えっと、あれ? 何か刀太君も面識があったりするのかな。(???「絶対OSR度(オサレ)高いじゃねーかとか、そんな馬鹿みたいなこと考えてるよこの男」)

 雪姫さんは「嗚呼また面倒なのが……」と眉間を押さえる。

 

「どうした『小僧』、相変わらず顔がデカいが。お前の説法とかは今、あまり必要とされていないと思うが」

「エヴァンジェリン殿がどう思おうが、拙僧がどう役に立つかは拙僧が決めることにしている。

 しかしそこの坊主、そうかお主が…………、少女の涙に真実を見る姿、拙僧には一番ネギ・スプリングフィールドの孫に見えるぞ」

「あー、えっと……どちら様?」

 

 僕や雪姫さんに助けを求める刀太君に、彼の紹介を……、紹介を…………、あれ? えっと、何かすごい特徴的な名前だったはずなんだけど……。あれ?

 僕はともかく、雪姫さんも視線を逸らして口笛を吹きだしている。

 

「オイオイ……、九郎丸も雪姫もかよ。面識あんのそっちだろ」

「えっと、スラムで戦った人で、えっと……、ごめん! ちょっと待って、もうちょっと、ここ、先っちょ! 先っちょだけは出てるから……! たしか(ぎゅう)……、牛……」

「『記憶』を失ったか、お主ら……」

 

 ごめんなさいと和尚さんに謝ると、「拙僧、確かに覚え辛い名ではあるが」と苦笑いされてしまった。

 

牛冷娑婆(ぎゅうれい しゃば)。古くは武蔵の(くに)に続く寺を治めていた者だ。

 どれ、何か拙僧で力になれることはないか?」

 

 和尚さんのその、えっと、失礼だったらごめんなさいなんだけどインパクト抜群なウィンクに、刀太君はまた「なん、だと?」とフリーズした。

 

 

 

 

 

雪姫関係のルート分岐に関するアンケです。投票結果も考慮して今後の展開に反映させます。※展開が何を意味するか分からない程度に濁してますが、当該話になったら詳細説明します。

  • ガバの洪水に呑まれるコース
  • ガバの洪水を振り切るコース
  • ガバと和解して親子になるコース
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