アンケート本日で一度締めます・・・! と感想600超えたら、番外編アンケートか何かとろうかしらとちょっと考え中です汗
ST56.Memento Mori:Breaking the Bridge
「わー、ホンマ! お兄さまがうちらのお部屋来てるわー! うわー! めっちゃなんかムズムズするえ! 勇魚、お茶とお菓子出すで!」
「お、お姉様ァ!」
「…………」
いきなりで申し訳ないのだがテンションについていけそうな気が全然しないのだが、視線を彼女たちから外して窓の外の方に向けるともっと意識が飛びそうになる。オーシャンビューを臨む高い位置に少なくともこの部屋は存在する。
まず彼女たちの転送魔術で吐き出された場所が「近衛 野乃香」と書かれた表札のマンション部屋の前だった。「ののかってこう書くのか……?」などと感想が出て来るよりも先に「こっちこっちお兄さまお兄さま♡」とテンションが妙に高い帆乃香に手を引かれ、虹彩認証で室内に。モデルルームのように妙に綺麗と言うか、中途半端に物のない部屋のリビングまで招かれたのが現在である。
否、招かれたというか拉致されたに等しい。つまりは学校から学外へ、しかも言動が正しければ彼女たちの「実家」である。
「一等地のマンションじゃねぇか……」
窓の隅の側に目を向ければ、そこにはもう堂々とアマノミハシラ、つまりは軌道エレベーターがジャックと豆の木なんて比じゃないくらいの圧巻な存在感を放っている。そして微妙に物が少ないものの、視線を周囲に振ればアルバムやら恋愛指南書やらが点々と……。そしてあまり認識したくないモノだったが、本棚の上に置かれてる写真が三つ。「木乃香似の女性」が雪姫とフェイトの腕をからめて笑顔で写真の真ん中に鎮座しているもの、今よりもっと幼い姿の帆乃香と勇魚とその女性。そしてもう一つは…………。
「…………頭がおかしくなっちまいそうだ」
祖母だろう木乃香と刹那本人(九郎丸の持ってる剣に似ている「夕凪」を持っているから間違いないだろうし、二人とも当然のように若い)、その子供なのか同い年くらいに見えるこれまた二人にそっくりな女性……、女性? 刹那似の方は男装スーツ姿だが二人、さらにその真ん中に木乃香似の少女が映っている。何だ人間マトリョーシカか何か?(困惑) もしくはコピペか何か……、いや実際クローンの可能性も「あの二人」ならなくはないのだが、闇が深い話の気もするのでこのあたりは考えるのを放棄しよう。
「お待たせな~! じゃじゃーん! 抹茶あんみつパフェキャラメルクリームいちごモリモリな店舗限定デコレーションカステラやで!
「いや何でも混ぜりゃ良いってものじゃねーんだが……」
す、と無言で湯呑を差し出して私の隣にちょこんと正座する勇魚。目を点にして下を向いて固まっているのは一体どういう心境からなのかはすぐさまの実害がないのでさておいて。テーブルの上に置かれたそれは明らかにもう名称からしてごった煮感の強いスウィーツであるが、帆乃香の一声に勇魚がさっとナイフで切り分け配膳を――――。
「――――ふぅ、ちょっと一つ貰うネ」
そして脈絡も伏線もなく唐突に「湧いてきた」声の主に、私と近衛姉妹はフリーズを起こした。
頭に布でくるんだシニョン二つ、そこから垂れる三つ編み。頬は赤らんでおりわずかに幾何学模様のような痣の跡のようなものもある。目はくりっとしていてどことなく私たちの血筋を思わせるが、一見して能天気そうに笑いながら「甘いネー!」と身を震わせるこの声に私は聞き覚えしかないし、もっというとそのチャイナドレス風な恰好にも心当たりしかなかった。
「ひょいパク……、うん、美味ネ~~~!」
「「だ、誰やぁ~~~~!?」」
とはいえ私と違い事前情報が全くない二人はそろって抱き合い目を丸くして半泣きで絶叫した。……強いて言うとその間に私を挟むのをやめておけ。別にお前ら姉妹ではあるが百合ではないんだろうが、絵面として過激派に見つかると命の保証が出来ないかもしれない。(このせつ)
まあ雰囲気からして箱入りとは言わないだろうが完全にリラックスして寛ぐモードになっていた二人に、いきなりの不審人物は唐突すぎて処理が追い付かないか。まだ子供だもの。(お兄ちゃん目線) とりあえず頭を撫でてやりながら引きはがしつつ、件の相手を見る。
一切れケーキを食べ終えると、不思議そうに私の顔を見る超だが、そんな彼女に私は一体どんな顔を向けていることか……。少なくとも絶対半眼にはなっているはずである。
「ん? あれ、
「いや、誰ッスかそれ。というかアンタも誰ッスか」
「いや何言ってるネ、
私の顔を見てさも当然のように色々と話していた彼女だったが、周囲を見渡し、そして窓の外の解放空間(海と都市と軌道エレベーター)を目撃した結果、両手で頭を抱えて騒ぎ出した。いや先輩呼ばわりされる意味も良く分からないが(どちらかというと麻帆良学園的にはむしろ後輩である)、ガバが感染したとは何だ。病原菌のようにガバのことを言うんじゃありません、ガバが可哀想でしょ!(良心)
まぁ発生し次第即刻潰せないか検討はするが。(豹変)
「あー、そういうことネ……。てっきり彼女から聞いていたから驚かなかったものだと思ってたけど、そういうことネ……」
「何がそういうことなのか全く分からないんスけど……、えっと、何? ケーキ泥棒?」
「イヤ、そんなつもり無かったけど……、流石に戻しようがないネ、
すっと手を合わせて「ごちそうさま」と言いながら頭を下げる超に、未だ妹たちは何故か冷静さを取り戻せていなかった。ちらりと見ると、やはり何故か涙目である。そんな様子を超の方も見ているせいか、「このままカシオペア使って行っちゃうの流石に良心が痛ム」と何やら悩みだしたが……。手元で何かをいじった後、瞬間的に姿を消した彼女だが、それとほぼ同時のタイミングで同じ場所、つまりは私たちの向かい側に現れ。
「補填できるかは知らないが、先輩はこっちの方が好みのはずネ。これで代わりということで頼むヨ! では
そう言いながら、そこそこ高級な羊羹をテーブルに置くと同時に、ウィンクしてまたその姿を消した。今度こそその姿を完全に消した。後には大きなケーキ4つ切りのうち一かけが無くなったホールと、ハチミツが描かれている羊羹の箱パッケージが一つ。
確かにそういうシンプルめな味付けの方が好みと言えば好みだが、つまりそれを彼女が知ってると言うことは、将来的に確実に彼女との遭遇イベントが存在する訳で……、しかもアレだ。修行とか言っていたということは、おそらくそれなりの期間は一緒に過ごすことになるのだろう。…………当然だが原作にそんな話があるわけでもなし。
「ままならぬ…………」
静寂。震える二人の息遣いと、エアコンが絶賛可動している音だけが聞こえていた。
※ ※ ※
暴力的に唐突に現れて唐突に去っていった誰かのせいで一瞬フリーズしていた私たちだったが、再起動にはさして時間がかからなかった。なにせ三者ともに現在昼休みの学校から「脱出」してしまってる状態なのである。休憩時間の終わりまでに戻る必要がある以上、善は急げだしタイムリミットはそこそこだった。理解し難い現実を無かったことにしてしまうのは、どうかと思わないではないが今回はスルーしてあげるのができた兄貴というものだろう。
「あー、やっぱ美味しいわぁ。この地獄の様な甘さが脳に染み渡るわぁ」
「ですね。あっその、お兄様……」
「いや、いいよ。二人で分けて。俺はこの羊羹一つ食ってるから…………。っていうかこう遊んでてちゃんと休み時間終わる前に戻れるんだよな。結構校舎広いぞ?」
「大丈夫やで? うちら、たまーにこうして抜け出して遊んでから帰ってるし」
「そこはちゃんと最初から最後まで学校いろよ女子中学生……」
「お嬢様がそう決められたのでしたら、私は異を唱えるつもりはありません」
「んも~、そうやって兄さまの前でかわい子ぶるんやもんな~勇魚は。勇魚だって甘いものには目ぇないからノリノリやんいっつも」
「お姉様それ言っちゃダメや~~~~!」
「わぶっ」
勇魚、どうやら動揺すると標準語が崩れるあたりも刹那に似ているらしい。そんな彼女は目を丸くしながら姉の口を塞ぎにかかっていたが、ついでに私も巻き込んで蹴っ飛ばすのは止めていただきたい。(当然) と言うかそもそも招かれて早々にお茶会となってしまっているので、全く姉妹と自己紹介的な会話すら成立していない事実に気づいた。だというのに自分たちのペースを押し通し続けるこの姿勢、これが……、若さか……。(???「だいぶメンタルが壊れて来てるねぇ……「アイヤっ戻ったヨ! コレお土産ネ!」、あら気が利くじゃないかい」)
とりあえず暴れるのがひと段落したのか、二人そろって私に三十センチくらいの近距離で自己紹介をかましてくる……、いや本当、見れば見るほどこのせつだなこいつ等……。
「まーなんかお話する前に自己紹介しとこか? うちは、近衛帆乃香、こっちは勇魚。二人ともお兄さまの妹なんえ? お母さま同じなんよ」
「ふ、不束者ですが……」
「その挨拶はおかしいから止めとけ? でー、えっと、何? 俺のことは知ってる訳?」
「知ってるで~、知っとる知っとる」
「自警団は一応、生徒会の部署の一部ですので。素行の悪い生徒を調べたりと言った必要もあるので、必要に応じて生徒個人の情報を調べられます」
まあこれが二十一世紀初頭くらいならプライバシーの侵害云々が問題に出て来るだろうが、生憎今は若干末法めいている世の中なところがある。ある程度「権力への制限」は必要だろうが、治安維持のための行動には多少制限が緩くされているらしい。
とはいえ、話はそこではないらしいが。
「アレや、一応、前から聞かされてててな? うちらにはお兄ちゃんおるでーって。過ごしてる場所違うから、どんな風に育っとるかわからんって言ってたけど」
「聞いてたっていうのも、誰から聞いてたんだって話なんだが……」
「お母さまと、フェイトはんや」
「お、おう……」
にこにこ微笑みながらそんなことを語る帆乃香であるが、その異様に素直でもったいぶらない会話に、私は軽く戦慄した。アレだこの子、まだ隠し事とか出来る感じの年頃じゃないのでは? 言っては悪いが、多少駆け引きが必要な場面である以上はそういう情報はもうちょっと小出しにしてくるはずであるが……。「どうしたん?」「どうしたのです?」と無垢な目で見て来る両者に、思わず天を仰ぎたくなった。つまりこの子たちは、原作準拠で考えて現時点で話してはいけないような設定とか裏話とかをポンポン放り投げて(あるいは口からこぼして)しまう可能性がある。ある意味でミヒールと一緒にいたアドリフのようなものだ……、いやあっちは原作で全然しゃべってなかったからそんなキャラ付けになるとか思ってもみなかったのだが、さておき。
「あ、せや! お兄さまぁ、そのよーかん一口くれへん?」
「別にいいけど……」
「ほな、あーん」
「お嬢様、流石にいきなりでそれは……」
大丈夫大丈夫と勇魚を制し、箱から新しい羊羹を取り出して口に入れてやる。「ん!」と声を上げるあたり、これもこれで悪くないのだろう。自分で購入したわけでもないが少し嬉しくなる。と、勇魚が何やら私と食べかけのケーキとの間で視線を行ったり来たりさせているが、何やら葛藤しているのならそれはそのまま葛藤したままでいてくれた方が私の胃には優しい気がするので、そっとしておこう……。
「あー、で? 一体何を話したかったんだ」
会話の内容を選ぶのは慎重に……、気を抜くとガバが連帯組んで空爆して私にガバの大穴を空けようとして来るのは確定的に明らかである。だからこそ当初、彼女たちが言っていた理由をまずは確認することにした。これなら必要最低限、まずここから帰ることが出来る最低条件を満たせるはずだ。
そう考えていたのだが……。
「…………アカン、何も考えてへんかった」
帆乃香、真顔である。
どうやら色々理由を付けただけで、深い意味もなく私を拉致して来たらしい。
「お嬢様……」
「お前……」
「ちゃ、ちゃうんやって! こう、なんやお兄さまと一緒にお家でなんかして遊びたかってん! 何して遊ぶとか全然決めてへんかっただけで!」
「遊ぶのは確定なのかよ……」
本気で授業に戻る気があるのかと問いただしたい気分だが、その気になったら通信教育でどうにかなりそうな気もするし(原作だとおそらくそうしていたはず)、考えてみればまだ中学生か。試験勉強はともかく、普段不真面目ならこれくらいは普通…………、普通……? いや普通は遊びにわざわざ自宅まで行ったり来たりはしないか。(残当)
そうこう適当に話しながらテレビを付けたり、唐突に帆乃香が「膝枕してー! 膝枕! なんか憧れあるんや」とか言いながら勇魚同伴で私の両足に頭を乗せてきたり、割とやりたい放題である。カトラスがこう、ちゃんと大人びていたせいもあるのだろうが、ここまで露骨に甘えて来る姿勢は割と新鮮だった。…………ただあまりべたべたすると、血装術使ってないから若干汗臭いのが残るので止めた方が良いぞ。(庇護欲)
「っと、あー、アレだな。一応ニュースには流れてるのな」
「学園校舎の事件ですね、兄様」
私の言葉に続く勇魚だが、膝枕されたままシリアスな表情になってもいまいち締まらないが良いのかお前さんそれで……。
テレビで流れてる映像は、学園校舎を外から撮影した程度のもの。時間にして一分足らず、つまりは事件の異常性は報道規制が敷かれているらしい。もともと麻帆良学園そのものに魔法界および政府の手が入っているのは確実なので、そういったところはアマノミハシラ学園になっても引き継がれているのだろう。
「事件って言うと、アレやな? お兄さま、七不思議知っとる? 学園都市全般の」
「いや知らねぇけど……。アレだろ? 旧時代からわりと変に真実味のある話がいっぱいあるやつとかじゃなくてか?」
「まぁ魔法中年とか、今見たら完全にただの魔法教師やもんなぁ~。
ただせやの~て。トイレのサヨコさん。サヨコの呪いってのがあるんや」
「花子さんじゃねーの……?」
「そういえば、そんな話題がクラスでも上がってましたね。どこまで真実かは定かではありませんが……。八年ぶりがどうだとか」
八年ぶり……? 八年ぶりか。そうか。どうやらガバにガバを重ねつつも、一応はガバも神様も多少は温情措置を与えてくれるらしかった。すなわち、多少なりともイベント本筋の進行への貢献である。
麻帆良学園の噂とか七不思議とか、そういう類のものはおおむね学園内で魔法関係者だったりが色々やっていることへのカモフラージュで流される噂話だったりするのだが、実際は7割くらいが真実そのままだったりする。おそらく傾向事態はアマノミハシラ学園都市になろうと何も変わっていないだろう。
ということはそれに準じているところに語られる、八年前から呪いを使っているサヨコさんというのは…………。
「その話、詳しく聞けねーか?」
「あ! うち、色々そういうん聞いてるで?」
そんな流れで、私は帆乃香から学生間で噂されているサヨコさんの話とやらを知ることになるのだが…………。
「あの、二人とも時間が……」
「なん、だと?」「ふぇえ!?」
一通り詳細を深堀して聞いていたら、午後の始業ベルが鳴る時間らしかった。流石に前半で少し遊びすぎたらしい。仕方ない九郎丸たちに連絡を……? あっしまった携帯端末が教室のバッグの中じゃねーか!?
遠い目をする私に「まー遅れたもんは仕方ないし、もっと遊ぶで!」とノリノリな帆乃香だった。
雪姫関係のルート分岐に関するアンケです。投票結果も考慮して今後の展開に反映させます。※展開が何を意味するか分からない程度に濁してますが、当該話になったら詳細説明します。
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ガバの洪水に呑まれるコース
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ガバの洪水を振り切るコース
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ガバと和解して親子になるコース