光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ!
章ごと前書き先頭へポエムを入れようと画策中ですが中々良いのが浮かばない・・・、

追記:アンケートお答えあざました!調整していきます…


ST57.死を祓え!:ニアミス

ST57.Memento Mori:Near-Miss 

 

 

 

 

「――――んん、今日は夕方でもう終わりとか。先月のプロジェクトに比べてだいぶ楽なったもんやなぁ野乃香はん。帰ったらケーキでも食べる?」

「あ~、たぶんアレやな。帆乃香たちが早々に食べ終えてるのに賭けるわ、うち。あの子ら甘いの大好きやし、あんなん残ってたら絶対色々理由つけて言い訳つけて食べつくしとるに決まっとるわ」

「あらあら……。全く誰に似たんやらなぁ」

「うち、月詠はんのせいやと思うけど。変に頑固なってこう『ゴーイングマイウェイや!』ってなるん、絶対月詠はんが意固地なったら全然話きかんとこの影響と思うえ?」

「せ、せやろか……? アカン、それって私アレ、面倒な女って殿方思われへんやろか」

「今更気にするん? だって月詠はんて今年でひゃk――――っ、あ、『来たれ(アデアット)』!」

「――――なんや? 珍しく命、要らんくなった?」

「別にそんなことは言ってへんって……。首に刀つきつけるの止めてって、何? あれ? ひょっとして刹那お祖母ちゃんとか茜奈(せんな)パパ(ヽヽ)とかじゃなくて、新しい若いツバメでも見つけたん?」

「いやん♡ まだ全然そんな関係なる気配やないん、もぅ~。まあ顔は可愛えかったけど。まだまだ甘ちゃんやし、気質もそんな合致する感じやあらへんけど、『この年になって』きゅんきゅん来たのはもう何か、そーゆー宿命でもある思うわ」

「月詠はんそんな乙女みたいな動きするの私、初めて見たわ……。そっか、せやねぇ。それで月詠はん今『そないなっとる』んか」

「どんな言いぶりやん、もう。女はいつまでたっても乙女、至言や」

「自分で言うんね……。さて、と。部屋はどないなっとるか……」

 

「「「…………」」」

 

 うちが部屋の鍵開けて入ったら、なんや札術で魔法陣展開しとる帆乃香と、慌てた感じで私の顔見て『誰か』に隠れるような勇魚に……、なんかだいぶ昔に見た、ちょっとやんちゃそうな髪の男の子おった。……っていうかめっちゃ見覚えあるわ。エヴァちゃんの顔とか、あとネギ「お祖父様」の顔がフラッシュバックするわ。

 気のせいやなかったら……、いや絶対気のせいあらへんわ、これ。でもファッションセンスは変やなぁ、厚ぼったいマフラーなんてまだ残暑残っとるのにして。あの子は私の顔見て、なんか疲れた感じの表情なった。

 

「ままならぬ……」

「んんんん? あれま、遊び来たん? 刀た――――」

「お母さまゴメンな! 授業遅れてまうから!」

 

 私が確認する前に、三人は床に展開された陣で、たぶん麻帆良の方の校舎に転移した。

 …………。

 

「いや授業いうても、もう夕方やん帆乃香…………。えっ何? 昼休みからずっとこっち()ったんかあの子ら」

「あははははは! これは次帰ってきたときは、みっちり(しご)かんとアカンねぇ?」

 

 私の言葉に、こう、めっちゃ可愛い感じのゴスゴスしたお姫様みたいな恰好した「十四歳くらいの」月詠はんは、お腹抱えて怖い感じに笑っとった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「おお~! 現場のAR、拡張現実映像~! 凄いなぁ一空はん……、て何で目ぇ隠すん? 勇魚」

「お嬢様の教育的によろしくありません。ここは私が――――って、な、ななな! なんで私も目隠しされるんですか兄様!?」

「いやお前、さっき帆乃香が『ホラゲーやろホラゲー!』って言って早々に脱落してたろ、戦闘時とかじゃなきゃそんな得意でもねーだろうが。無茶すんな。

 というかまだ帆乃香の方がそーゆーの得意だろうに」

「あー! 勇魚ずるい~!」

 

「……べ、ベッタベタじゃないのよっ!?」

「ホント、す、凄いベタベタしてる……!」

「ベタベタしてるし、だいぶ甘やかしてるわね」

「あははははは……、はは……(血の雨降らないといいなぁ)」

 

 そういう血なまぐさい事態にはさせません、と一言一空に言い、私は刀太たち三人を観察する。午後、刀太がまだ戻っていないと恐慌していた九郎丸に「カトラスちゃんのことを思い返せば、そう差はないのでは?」と落ち着けてはいたけど……。まさか食堂でおやつしながら「いや~、堪忍してな? お姉さん達。ちょっと初お兄さまに二人ともテンション上がってて、振り回してしもたわ~」と、可愛らしい感じに謝られるのは想像していなかった。

 聞けばどうやら、刀太と彼女たちは同じ母親から生まれた兄妹同士……、ではあるらしいとか。カトラスちゃんのことを考えれば矛盾があるのだけど。

 

『ぎりぎり矛盾しない推論はあるけど、まー、そういうのは雪姫が覚悟してからな。下手に家族関係を荒立てると後が色々怖い……』 

 

 表面上は苦笑いで済ましていたけど、私の「乙女センサー」的な直感が、素ではだいぶ消耗しているのを感じ取った。でもこの間のようにキスしたりハグして甘やかすほどでは無く、兄妹的なふれあいは多少楽しんでる節もあると。カトラスちゃんの時と違って命の危険があまりないせいか、気張っていないのか、甘やかし方は結構自然体に見えるのもそのせいかしら。

 

 あれが自然体……、素ではないにしても。

 そう。…………ふふっ、良いお父さんとかになりそうね。

 

 刀太自身、妹を名乗る彼女たち二人に対する接し方は全然違和感がないように見えるくらい自然と肉体的接触が多くて、ちょっと九郎丸が嫉妬してるわね(特に露骨に照れてる勇魚ちゃんに)。キリヱは……、えっと、一体その珍妙な顔はどういった感情なのかしら?

 

 仕方ない、ここは不死者の先輩として私がひと肌脱がなくては。「安心なさい二人とも」と言って九郎丸とキリヱをこちらに引きよせ、乙女の内緒話タイムとしゃれ込むわ。

 

「(だ、大丈夫って何よ夏凜ちゃん……、って九郎丸はこっちでいいの?)」

「(あはは、ま、まぁそういうことだね。刀太君にはまだナイショで、お願い?)」

「(えぇー!? まずいじゃないのアンタ、寮! 今晩たしか一緒の部屋なんでしょアンタ! ピンチじゃないの!)」

「(そ、それはそうなんだけど! いや、でも刀太君けっこう紳士だし、たぶん気づいてないから、『そういう』危険はないっていうか……)」

「(紳士っていうより馬鹿なんじゃないの? ちゅーにだし)」

 

 いえアレはどっちかというと気付いた上で事情を話してくれるのを待ってる振る舞いと言うか……。いえ九郎丸の場合、現実がその想定されるものをはるかに凌駕するものなので、後は本人の勇気次第ではあるのでしょうが。

 

「(そんなことより。あまり露骨に警戒する必要もないわよ)」

「(ど、どういうことよ?)」

「(見なさい、あの刀太の表情。何の感情も浮かんでないわ。異性を意識する刀太の表情ではない……。

 つまり! あの二人のポジションは雪姫様に向ける親愛の情に近いということ! たとえあの二人が刀太にどういった感情を抱いていたのだとしても、刀太側にその気が全然ないのなら問題はないわ!)」

 

 しいて言えば慈愛とか「しょーがねーなー」という感じかしら? 大体カトラスちゃんと違って「本当に」実の兄妹のようだから、まかり間違って「そういうこと」が起こるなら止める必要があるけれども。

 びしっ! と指を差した私に、九郎丸とキリヱは衝撃を受けたような顔をした。

 

「(で、でも夏凜先輩! 勇魚ちゃんずっと刀太君のマフラーでチラチラしてる鎖骨ばっかり見てるよ! ぜったいエッチな目だよ! 僕知ってるんですから、エッチの意味はHENTAIのHだって!)」

「(九郎丸、それに気づくってことはアンタ……)」

「(そういうキリヱも、抱き着き癖みたいなものがある帆乃香ちゃんに向ける目が――)」

「(な、なんでよ! っていうかそもそも何で私まで巻き込まれる話になってるわけ! べ、別にあのちゅーにのことなんて、何とも思ってなんていないんだからっ)」

「(とはいえ肉体の戦闘力でも刀太の方が上でしょうから、そうそう酷いことにはならないと思うけれど……)」

「(夏凜先輩、ちょっと見方甘くないですか!?)」

 

 いえまぁ、甘いというよりも……。「素」についての話はどうもあの子がされるのを嫌がってるみたいだし、私もそういった口止めを破って「また泣かせてしまう」のは本意ではないもの。だからあまり多くは言えないのだけど、さてどうしたものかしら。

 

 そんなタイミングで、映像投影の完了した一空が苦笑いして私たちに声をかけた。……見た目は壮年なのに声だけ普段通りで違和感すごいわね。

 

「…………あー、皆悪いけど現実に帰ってきてねー、特に夏凜ちゃん。凄い面白い話をしてるのは判るんだけど」

「ちゃん付けは止めなさい飴屋一空。……しかし確かに話が進みませんか。

 刀太と近衛姉妹、こちらに来てください」

「あ、わかったッス」「おっけぃや夏凜はん!」「承知しまし……ひゃぅ!?」

 

 今、一体なんでえっちな声を上げたのかしら勇魚ちゃんは……。

 しかし、現在の目的を忘れてはなりませんか。仕方ない、そのあたりは後日に回しましょう。マコトの話もしなければいけないでしょうけれど、現場調査が終わってからね。死者に祈りを捧げてから、調査を続行する。

 ……ちなみになんであの姉妹が同行してるかといえば。

 

『うちら皆さん程すごくないけど、なんかお役に立てると思うえ? それに自警団としては、なんや変なことせぇへんか監視の意味もあるし!』

 

 そんなことを言って、その後ずっと無口だった妹さんも含めて刀太に甘えてる状態なんだけど…………、いえ、まぁ女の子として思うことは一旦脇に置いておいて。実際問題、生徒会関係者、それもこちらに好意的である相手がいるというのは、私たちの調査においてもスムーズに進む可能性がないわけではないので、ここはマコトのツテ含めて様子見かしら。そもそもなぜ私たちの実力というか、立場について追求してこないのかとかも不思議だけれど……、あの仲の良さを見るに、刀太が話したかしら。

 

 私たちは現在、大学校舎のキャンパス側に回ってきている。例の事件における被害者、高校生と大学生のうちのまずは大学生。遺書もなく、外見上は衝動的な飛び降り自殺と判定されてはいるものの、一空が言った通りに高所からの落下が考え難い状況になっている。両側にある向かい同士の校舎、地上十二階建ての研究棟は、窓がはめ込み式で締め切られており、屋上は容易に立ち入れない。また監視カメラも搭載されていて、そこに被害者が映っている様子もない――――死の直前のそれ以外は。

 

 一空が教師陣のツテを辿って……、飴屋一空だけは一週間前からこちらに顔を出していたせいか多少知り合いが多いのだけど、そのツテで監視カメラ数か所の映像を入手していたこともあり。それらの映像を統合、投影して、ARだったかしら、立体ホログラフィックの映像のように現場に投影していた。

 ちなみに見やすい場所に移った後、近衛姉妹は二人そろって刀太に目を塞がれて「ふぇえええ」「あううううぅ」と情けない声を上げていた。

 

「キリヱも大丈夫か?」

「へっ、何が?」

「いやお前も割と引きこもってたから、こういうのって苦手かって思ってんだが……」

「別に大丈夫よ。『何度も見慣れてるし』」

「あー、悪い」

「何謝ってるの、何の話を……、って、別に大した話じゃないから」

「おう」

 

 そう言いながらも、少しキリヱの手が震えてるのをわかってるのかしら。刀太は手を握ったりはしなかったけど、姉妹を引っ張って少しだけキリヱの近くに寄った。……九郎丸、少し寂しそうな顔を浮かべているけど貴女は貴女でもっと攻めないといけないと思うのだけれど。

 再生される映像は三十分の一の速度。男子生徒が落下していく様……、一瞬地面に血みどろの映像が映った際に顔をしかめた刀太だったけど、吐くようなことはなさそうで一安心かしら。映像も、流石にカメラで投影できない箇所は映っていないのだけれど、一通り見て。

 

「……三十分の一ッスよね。速くね? それこそ上から下に叩きつけられるくらいの」

「そうだね。飛び降りと言うよりも……、何て言ったらいいんだろう、こういうの」

「突き飛ばしでもないし、でもなんかこう、車に撥ねられたみたいな感じよね」

 

 実際、刀太たちが言う通り。本来はもっとスローモーションで落下していく映像が流れるはずが、普通に屋上から人が落下死したような速度と遜色がないものだった。

 

「確か全体校則だと、あの高さは飛行禁止区域だったと思ったっスけど……、その手の映像もないんスか?」

「そうだね。一応、そういった類のセンサーはあるらしいけど、観測はされなかったみたいだ…………、というよりも、僕は違う説を押してる」

「「「「違う説?」」」」

 

 興味があるわね。と、それは別にして「あ~んもぅ、いい加減見せて~な~!」と駄々をこねる帆乃香ちゃんに「これはこれで……」とか言って刀太の手を触って頬を染めてる勇魚ちゃんが色々と酷いわね。映像そのものはもう投影を止めてるので、刀太に言って離させたけど。

 一空は「センサーとかの抜け穴という意味でね」と笑いながら、被害者が倒れていた箇所を指さし、そのまま頭上へとその先端をもっていった。

 

「上空から『落とされた』のではなく、ここの地上から垂直に上空へ『射出された』と考えると、僕的には腑に落ちるんだ。センサーはドローンとかジェットバイクとかの電子機器や、箒とか飛行魔術系の感知が出来るけど、逆に言うと生物自体の感知はしない。鳥とか飛んでて毎回それでアラートが鳴ったら大変だからね。

 つまり、上空に上がったのは生物『のみである』と考えると、個人的には腑に落ちる。方法については魔法か体術か他の何かか、そこは定かじゃないけどね」

「「おお~」」「なんか知らんけど、推理それっぽいな~」「私は、その、よくわかりません……」

 

 声を上げる近衛姉妹はともかく、私たち四人は微妙な顔をしている。まあ一空も自分で言っててこの仮説に自信がないのか、表情は苦笑い気味だった。

 

「まあ、この説も弱いんだけどね……。九郎丸ちゃん、わかる?」

「おそらくですが、『射出された映像』が存在しないんじゃないですか? わざわざ『垂直に』と言ってると言うことは、おそらくあの速度で落下してくるのに必要なことだと思うんですけど……、垂直に上がるということは、つまりあの場所から上空に打ち上げた『何か』が映っているはずだ。でもその話が出てこないということは―――――」

「その通り。どれだけ時間を巻き戻しても、ここの周囲の映像から見て一切そういった類のものはとれなかった。それに…………、自由落下であの速度が出るってなると、スカイツリーくらいの打ち上げ高さが必要になってくるからね」

「「「「「スカイツリー?」」」」」

 

 あら? 九郎丸はともかく、刀太もキリヱも近衛姉妹も知らないの……? って、それもそうかしら。そういえばもう名前も場所も変わったんだったわね、あの電波塔。

 昔、アマノミハシラ市が出来る前の「旧東京」にあった巨大な電波塔だと説明してあげたら、とりあえずは納得した。大体640メートルの高さであり、つまりそこまで地上から打ち上げないといけないと。

 

「目撃証言、いっぱい出そうな話やな~」

「つまり『そこそこの上空から、猛烈な勢いと力で地面へ向けて投げ捨てられた』、ということでしょうか?」

「勇魚ちゃんだっけ? そうそう。警察はおそらく最初に除外しているだろう推論だけど、生憎僕らは『そういうの』の専門だ。『常識的にあり得ない』ことに対しても、もっとパワフルにアプローチしていくんだよ」

「なんかカッコええな~。でもなんか、オカルトって感じでもなくなって来てるわ~」

「オカルト?」

 

 私の疑問符に、刀太が「トイレのサヨコさんッスよ」と言いながらメモ帳を取り出した。

 

「夏凜ちゃんさんなら知ってるんじゃないですか? 学園七不思議。一応、コイツらのクラスで噂されてるのとか色々総括すると、なーんか関係あるんじゃねーかなって思った。どうも『実在の人物』がモデルになった話っぽいし、まー、たぶん知ってるっスよね」

「…………」

「あれ? 夏凜ちゃんさん……、夏凜先輩……、夏凜ちゃん先輩……、おーい、あれ? わぶっ」

「わぉ、大人や夏凜はん!」「は、ははっはハレンチです!?」「夏凜先輩!!!?」「な、なんで!!?」

 

 七不思議……、七不思議……。学園生徒たちの戯言だと切って捨てて深く考えてなかった話を出されて、その類を調査してないと言い出し辛く。咄嗟に誤魔化す様に、刀太の頭を胸に抱きこんだ。

 

 

 

 

 

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