今回視点が三つになるとややこしかったので、分割した関係上ちょっと短め・・・
ST62.Memento Mori:All Her's Sometiong Is Worry
九郎丸からちび九郎を経由して提案された作戦は、簡単に言えば陽動作戦である。
『僕と刀太君のどちらかが囮、もう片方が結界の核を探すって作戦だよ。どっちが探す方になっても
どちらか片方しか神刀を持てないとはいえ必要に応じて九郎丸がアーティファクトを再具現化すれば、アーティファクトの入れ替えも一回は行える。なので、それに従い最初、九郎丸が魔物の群れ、私がニキティスとに対峙し、何方の方がより手ごわいかの見極めを行うつもりだった。……そもそも九郎丸すらニキティスの振る舞いから詰めが甘そうと察したのかというこの作戦だが、しかし意外と手ごわかったため、次善の策としてちび九郎単独で核の調査をさせたのがさっきである。
なのでこのように、結界が破壊されるところまでは私も織り込み済だったのだが……。空中で K.O. されて身動き一つとれない様子のニキティスと、背中から羽根を生やしたまま全身からまばゆい光を放つ夏凜という絵面は、中々に色々と酷い物が有る。おそらく認識阻害の魔法くらいはかかっているだろうが、今までの流れを見るに完全にギャグマンガだった(語弊)。
と、私の方を見ると全身から光を霧散させ、とはいえ背中の羽根は消さず私に接近してきて当然のように抱きしめ――――いや待てTPO考えてくれTPO! それはお前が以前、私が肌に恥ずかしがっていた時に叱ってきたやつだろ! というかわざわざ少し浮いて私の頭を無理やり胸の位置で抱きしめて撫でるようにする謎のこだわりは何なのだ……。
「いや、あの、脈絡ねぇッスから!?」
「最初から脈絡なんてないもの。でも……、うん、このくらいで良いかしら」
とはいえすぐに解いてくれるあたり、今回の夏凜は物分かりが良いらしい。事情はおおむね小さくてアホの子っぽい方の九郎丸から聞いてるから、と微笑むと。私を庇う様な立ち位置で横に並ぶ。結界が破壊されたせいか、魔物の群れも姿はない。九郎丸も空中を蹴って、私の名前を呼び夏凜の隣に立った。なお一空はキリヱを肩車しながら、ゆっくりとジェット噴射で浮上してきた。
……ちびっ子扱いされているのがお気に召さないのか、キリヱにぽかぽか殴られながら爽やかに笑う一空青年である。
「はは! 勢ぞろいって感じだ。なんだかスゥプァーヒィロオォ映画のCMみたいな結集感だね」
「なんでネイティヴな感じなのよ発音。それよりちょっと、何目的の対象を取り逃がしてるのよちゅーに……って、なんで『毎回』アンタそんなボロボロになってる訳!? 大丈夫!!?」
「お? あー、まぁ大した話じゃねーよ」
「皆、それより――――」
頭を押さえながらこちらを睨むニキティスは周囲を見渡す。結界が消え去っていることにため息をつき「これ以上は野暮か」と肩をすくめた。今更そんな余裕ぶった態度をとられたところで醜態が多すぎてイメージはもはや固定されているのですがそれは……。(白目)
「貴方、確かニキティス・ラプスだったかしら。不死身衆ナンバー8、アカシャ図書館の司書兼管理人と聞いています。そんな貴方が何故、こんな場所に?」
「…………なんか下等種云々以前に、お前からは物凄く面倒くさい女の臭いがするから話す気が失せた」
「はい?」
あー、と思わず失言、納得しかけたのを抑えた。というかそれを一目で見抜くあたり、意外と本人が言う所の見る目はあるのかもしれない。人間観察の経験値だけで言ったら確かに天文学的な数を見ているはずなので、さもありなんと言ったところか。
まあ、お陰でこちらも溜飲が下がった……というよりノックアウトされた時点で苛立ちがどこかに行ってしまった。ニキティスも夏凜特有の面倒くささのためか追撃する気も失せているらしく、ちらりと我々を一瞥すると、次の瞬間にはニキティスの足場に魔法陣が展開され――――。
『――――これだけは言っておいてやる。コノエ・トータ、もしあの羽虫を追うのなら本質を見失うな。アレは個人的な問題でしか動かない性質だぞ』
「……そりゃ何となくわかってるッスよ」
アドバイスとも言えないアドバイスと共に、そこへ吸い込まれて姿を消し……、っていや、その転移先にグレネードを投げ込む一空は一体何なのか。一瞬魔法陣から爆発音と閃光が走り「ぎゃふん!?」と聞こえたあたりからしてスタングレネードか何かを投擲したのだろうが。
えぇ……、みたいなちょっと引いた視線を送ると、苦笑いしながら一空は上を見る。
「これ、キリヱちゃんのリクエストだから」
「こっちは世界の危機に立ち向かってるって言うのに、気分一つで適当にしっちゃかめっちゃかにされたらたまったもんじゃないって話よ。少しくらい八つ当たりさせなさいって話よ!」
「おいキリヱ、それ切っ掛けでまた絡んでくるんじゃねーか? アイツ……」
正直イレギュラーすぎて次にどういう行動をするか分かったものではないのだが、キリヱも死んだ魚のような目をしていたのでそれ以上は何も言えなかった。
地上に降りた後、夏凜たちも三太に遭遇したという話を聞き作戦会議をしようという流れになるのだが。ニキティスの耳がどこにあるのかわからないので、路上で話すとそれはそれで面倒なことになるかもしれないという話題になる。
「まぁ、喫茶店とかで話してもいいかもしれないけど、刀太君の話じゃ魔術的な方法で情報を集めてくるかもしれないからね。人の口に戸は立てられないって言うけど、耳に入らないように色々手を回すってのも有りと言えば有りなんじゃないかな?」
「とか言っても、結界とか張るみた――――」
「あっ! そう言うのだったら僕、得意です!」
「お、おぅ」
「食い気味じゃない九郎丸……」
「でしたら、少し良いツテがあります。そこならわざわざ話し込む間中、ずっと気なり魔力なりを走らせる必要もないわ。自動で遮音なり何なりしてくれる場所があるもの」
私たち全員の視線が集中すると、夏凜は少しだけ得意げに微笑んだ。
※ ※ ※
「――――という訳で、ちょっと奥のスペースを借りるわ。シスター・ミソラ」
「ちょっ、ストップ! ストップしてくれないかいシスター・カリンっ!!? ココネも止めて! このババァ一人にゴリラパワーせき止めるダム任せてないで!」
「誰がゴリラよ……」
「……あ、久しぶり」
我が長年のマスターであるココネが帰ろうとしてた私を「掃除、どうせやってないでしょ」とふん捕まえられ数時間。二人で教会の掃除を終えて、ようやく帰宅するかという流れになった丁度のタイミングで、まさかのエンカウントだ。
相変わらず美人っていうか美少女っていうかクギミーを真面目クールにした感じなシスター・カリン……、いや、結城夏凜って言う方が本人は好きかな。夏凜ちゃんが、数名引き連れてウチの教会にやってきた。
なお堂々とこのババア渾身のディフェンスは無視して室内に足を踏み入れて来る模様。ココネはココネで全然アラサーでも余裕な見た目と肌ツヤと体力してるくせに全然協力せず、にやりと笑いながら夏凜ちゃんに手を振ってる。
「だ、大丈夫なの夏凜ちゃんここって……?」
「失礼します」
「あはは……(文字通り聖地巡礼……!)」
「お邪魔しまーす」
ちなみに続く子たちは、皆手にコンビニの袋を持ってる。えーっと……、眼鏡のちびっ子ちゃんに、ちょっと刹那っちを思い出す感じの子、あとものすんげーこのせつ味を思い起こさせる男の子に……、誰、このイケメン長身白衣っ!? 裏魔法委員会のミーティングで話に上がってねぇぜ!!?
私の動揺など素知らぬ風で、時坂九郎丸くん(ちゃん?)と近衛刀太くんに私を紹介する夏凜ちゃん。
「二人はスラムでお世話になったシスター・ミカンは覚えてるかしら。こちらシスター・ミソラ。彼女の祖母よ」
「ど、どうもこんばんは」
「あー、ちょっとお世話になります」
「あらあら。こりゃー、いえこっちこそ孫がお世話に……」
「ちなみに、見た目以上に健康でアグレッシブで口が軽くて適当でサボり魔でイタズラ好きでトラブルメーカーだから、何か困ったことがあるなら隣のシスター・ココネに言うといいわ」
「ココネ・ファティマ・ロザ。悩みくらい聞くから」
「ちょ!!!? 親しき仲にも礼儀ありだぜシスター・カリン! あっじゃなかった夏凜ちゃん! 何老い先
思わず説教する私に「しらー」っとした目を向けて来る夏凜ちゃん。いや、別に私そんなトラブル招いた覚えは……、覚えは…………、いや確かにあっちの養護員でエンゲル係数上昇率に困ってた時にお金目当てでちょっと何度かやらかしてたこともあったけどさぁ、まあ大事になってないしー?
「私の追っ手を招き入れてあわや現代のソドムとゴモラになりかけた覚えがあるのだけれど、気のせいかしら。あれほど警戒してってお願いして、なんなら私のことも全然隠さないで話しちゃったり」
「いやー、あ、あれはその……、ね? ちょっとババアは記憶が曖昧なもんで……」
「とはいえ最後まで匿ってくれたのとか、戸籍を作る時に助力してくれたのとか、他にも色々感謝もあるのだけれど」
「お、おぅ……」
ふっと微笑む夏凜ちゃん。ストレートにそんなこと言われる経験があんまりない人生なので(※大体自業自得だけど)、ババア思わずちょっと挙動不審になる。そんな私たちの気安さを見てか、刀太くんは苦笑いだった。
うーん、近衛刀太くん……、この子が「ネギ先生とこのせつ」の……、いや? アスナの、でもあるのか? うぅんでも顔の感じ完全に木乃香だしなぁ……。目つきは刹那っちっぽいけど。あっでも髪型は完全にネギ先生の感じだ。少なくとも「私の」でないことだけ分かれば、少しだけ安心だ。
へ、下手するとエヴァちゃんに殺されかねないし……。
一応それぞれ自己紹介してもらったけど、なるほど? 一空くんは年齢詐称薬かどうかは知らねーけど見た目をいじれるってことねー、なーるなーる……。
とりあえずスペースを貸すだけだったら、ということで。礼拝堂の裏側にある飲食スペースを貸すことに。一応は防音対策しっかりしているので、外部に音が漏れることはないと説明して奥に誘導し――――。
「――『
「美空、悪い癖……」
ふっふっふ、ババァの脚力ナメんなよォ? これでも認識阻害を併用して学生間の情報収集なんざ朝飯前、十年くらいお手のものさァ! 防音設備? 何年麻帆良在住だと思ってるんだ、そんなものどこからなら音が漏れるか、気付かれないかなんてリサーチ済み済み! もともと人間界日本支部施設が隣接していた名残もあって「そういう」対策は滅茶苦茶凝ってるらしいんだけど(今は亡きシスター・シャークティ情報)、流石に超至近距離で物理的に聞いたらそれどころでは無いのだ。
後ろでココネのたしなめるような声がしてるけど気のせー気のせー。大体ココネだって、私の使い込まれたアーティファクト、この脚力アップシューズめいたもんが出たと同時に、もうおぶさる形でいつでもどうぞって有様さぁ。
というわけで我ら二人、野次馬根性丸出しで、例の事件の調査状況を聞くため、教会の外に出て上方向へジャーンプ――――! 塔のてっぺんから少しずれたところ、壁のへこみの部分に耳を当てる。もともと構造上、神聖魔法による結界を最大限生かすギミックがあるので一度発動すると勝手に魔力が循環して結界が長時間維持されて、かつ教会の敷地外部からは音が聞こえない仕組みらしいんだけど、流石に建物自体の物理的劣化には耐えられない事情もあったりするので。
あ、さて。さて。どれどれ秘密の話もなんのその……。
『――――へ? マジッスか夏凜ちゃんさん』
『大真面目な話よ。件のパーカーを着用した能力者が、あの結界を壊すのに助力してくれたの。九郎丸の小さいのを抱えて、私が「神聖」属性の魔力を流し込んで、そこにサイコキネシスで加速をつけて一気に一撃入れたわ』
『うん、ちび九郎でも結界の核を見つけられなくってさ。表に出てヘルプを頼もうとしたみたいなんだけど』
『いや、マジか、ガチなやつッスか……。何か言ってたか?』
『アレよ、なんかこう、すごいツンデレなちゅーにみたいなこと言ってたわね。「貸し借りは無しにしたい」とか「別にアイツの為じゃねー」とか――――』
「結界?」
「あー、あのなんかすんごい大きくて黒くって、なヤツねぇ。ふむふむふむ……」
どうやらさっき何かトラブルがあったみたいなんだけど、ふむふむと色々適当に話を聞いていたのがまずかったらしい。
『ともかく。その能力者と、全世界を巻き込んだ規模のゾンビウィルステロがどうして発生するのか。色々考えないといけない話ですね』
「「ゾンビ…………?」」
あっ、これ聞いたら拙い奴だと、直感的に察してしまったけれど……、興味関心には勝てず、最後までずるずると盗み聞きすることにした私たちだった。
私は悪くねぇ! たとえここの管理を私が引き継ぐことになった瞬間、病床だったシスタ・シャークティに「この世の終わりじゃないかい……」みたいなうわごとを言われたとしても、私は悪くねぇ!
アンケの予定は今の所以下のイメージです。(締日予定:7月15日)
雪姫:刀太が髪を染めるの目撃してキレる話
九郎丸:熊本時代、お風呂が停電した時初好感度ガバの話(
夏凜:カリンと「あの方†」との過去話
キリヱ:「死を祓え」一周目の話
カトラス:幼少期、野乃香に色々教わった話
キャラクターごとの番外編?に関するアンケートです。投票数が多いキャラのものを作成していく予定です(人気投票ではないやつ)。ジャンルはギャグもシリアスも両方あります。
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雪姫
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九郎丸
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夏凜
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キリヱ
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