なんかここのところずっとババァ視点ばっか打ってる気がする・・・
ST63.Memento Mori:Rudimentary beliefs
「――――っとぉ! どれだけ結界を強くしたところで無駄だぜ! この無敵の三太様にかかれば、クラッキングなんてお茶の子さいさいと」
連中が入っていた教会の通信機器に自室のパソコンでクラッキングをかけながら、俺は連中から盗聴を行う。
既にUQホルダーとかいう所から派遣された連中のパーソナルな情報は収集済。八年前も来た全然情報が無いおっぱいデケー無能女、全身サイボーグのロン毛御曹司、性別不詳とかいってる剣士に、見た目十歳前後なのに実年齢がアラサーなロリババァ(どういう原理だ?)、あと種族が「魔人」ってなってるツンツン頭とか。
『いやまぁ、アイツ自身は悪い奴じゃねぇと思うんだけどなぁ』
「…………」
あのツンツン頭……。なんだか変な気分になる。というか無敵の超能力者になってから……、いやそれよりも前から、庇われた経験なんてなかったと気付いちまった。
たぶんそのせいだ、妙な胸のざわつきって言うか、こう、変な照れがあるのは。
『――――逃げとけ、ちょっとヤバそう』
『…………っ、べ、別にお礼なんて言わねーからな!』
何か知らねーけど、俺をさんざん翻弄したあのガキが、今度はさも当たり前と言う顔して俺を庇いやがった。
その事実に気づいた途端、なんだかこう、鳩尾の辺りに無性に変な痛みって言うか、こう、落ち着きのなさみたいな感覚が出て来た。
ついぞ味わったことのないその感覚に……いや、俺が「いじめられてた」時には散々味わったあの感覚が、なんで今更って思ったけれど。考えたら当たり前で、そりゃ確かに「ひどい目に遭う」奴が、あまつさえこっちを助けて代わりに酷い目に遭うっていうのに、変な話、納得がいってないんだ。
別にあのUQホルダーのガキと何かあったわけじゃねぇ。今日だって初対面かまして、まぁメシは美味かったけど、それくらいの付き合いしかないのにだ。
『だけど刀太君、実際ここのところ連続してる不可能殺人を前提に考えると、やっぱりその感想は違うと思うよ。行き過ぎた正義っていうのは暴走しがちなものだしね』
『そうだね。あのスラムでのこととか…………』
「不可能殺人?」
殺人って何だ? あのロン毛の言ってることがよくわからなくて、色々と俺も調べてみる……というか、すぐに検索結果に出た。アマノミハシラ学園都市内での連続殺人。詳細はボカされてるのが癪に障ったので学内のネットワークにアクセスしたら、これまた一気に出て来た情報…………。誰だこのレポート書いたザジ・レイニーデイっていうの。
期間的にはだいぶ昔から、直近で八年前も同様の事件が――――そう書かれてるのを見た瞬間、少しだけ頭痛がする。それを振り払って、インデックスを拡張しもっと詳細を見てみた。
「はっ、壁にめり込んだり水中に頭だけ刺さった状態で直立してたりだァ? 有りえない高高度から落下させたり、地面に生き埋めにされたり、全身校舎のいたるところでバラバラに引き裂かれたり……? 痛ッ!」
過去の事件を辿ると、どうしてかやっぱり頭痛がするが……。でも確かに、これだけの情報を見ると俺が犯人でも不思議じゃないように「見えて来る」。こちとらスーパー超能力を得ただけのごく一般的な中学生ってだけなんだが、こりゃ確かに「勘違い」しても「不思議じゃない」。
「にしてもコイツは何だ……? 小夜子だってこんなことは『出来ない』だろうし。そもそもアイツそんなこと出来る性格してねぇし。とすると、俺みたいな能力者が別にいるってことか?
『まあそう言われると可能性は低いと思うっスけど、アイツの性格的にも無理なんじゃないッスかね? だって、ちょっと庇ったくらいの俺を、自分が捕まるかもしれないリスクを無視して助けてくれたんスよね。その一つだけで良い奴だとか悪い奴だとか言える材料は無ぇッスけど、そういう奴だから見せしめって意味でも「殺さない」と思うんスよ』
『ん…………、実際に相対した刀太がそう感じたのなら、それもまた一つの情報ですか』
「…………」
いや、ツンツン頭の言う話は確かに俺の感覚的にも合ってるんだけど、それに答える無能女の声の微妙なトーン何だこれ。ちょっと艶っぽい? というかいちゃいちゃしてる気がする。何だこいつら。付き合ってンのか?
確かにあの後、真っ黒なドームみたいなのに覆われたツンツン頭を助けるために周りを飛んでたら、あの無能女とちびっ子抱えたロン毛が出て来たには出て来たんだけど。この中にとらわれてるって言ったら血相変えてたし、慌てっぷりがスゲーことになってたのは妙に覚えてるけどさぁ。
『ちょっと! 何これ、本当に意味わかんないんだけど!』
『キリヱちゃんの予知でも見たことないのかな?』
『というより「今回」自体、何もかも初めてが多いのよ! 未だに世界が滅んでないから正解っぽい気はするけど! でも全然、こっから連絡入れようにもちゅーにに繋がんないし!』
『(今回?)……でしたら、状況が動くのを待ちましょう。さきほど姿を消したと聞いた以上、おそらくパクティオーカードによって召喚されたのでしょうし。以前、雪姫様からそういう機能があると聞いたことがあります』
『夏凜ちゃん、セリフは凄いクールだけど、顔真っ青で胸元押さえてるの大丈夫かな?』
『ちゃん付けは止めなさい、飴屋一空』
そうこうしてるうちに式神とかいう小さいのが出て来て(実はちょっとそーゆーオンミョージ的なのにはテンションが上がってるのは内緒だけど)、色々とあの女と話し合ったら。唐突に呪文みたいなのを唱えて、スゲー真っ白に光り輝いた。
……ああいう「祈祷力」が高い奴が使う魔法、教会のババアシスターとかも使うやつは、よく知らねーけど凄い苦手だった。
で、色々話して俺の念動力であの女をもっと加速させる手助けをして、式神が持ってた刀に女の「祈祷力」をめっちゃ注いで、ドームに突き刺したって流れだ。
結果、ドームは一気にひびが入って壊れた。……あの無能女が、なんかヤベー奴にアッパー喰らわせてたのはヤベェ絵面だった。直後に一切躊躇いなくツンツン頭抱きしめにいってたのはもっとヤベェ絵面だったけど。
色々思い出しながら遠い目をしてると、女っぽい顔してるやつの声が聞こえる。
『勇魚ちゃんたちが話してた、トイレのサヨコさんだっけ? そっちと併せてみても、辻褄は合いそうだよね。男の子っぽかったんでしょ? なら性別が違う』
『まー、そうだな』
『トイレのサヨコさんそのものは、もっと昔から起こっていた事件で、目撃証言? も女の子だったっけ。つまり……、最低でも能力者は二人、居る?』
『とすると、彼らが手を組んでいないかっていうのが一つのキーポイントになるかな。キリヱちゃんはどう思う?』
『わ、私に聞かないでよ……。んー、でも、それはそれで何か違和感あるわよね。さっき夏凜ちゃんも言ってたけど、そもそも私たちって、ゾンビウィルステロ止めにこっちに来てる訳だし。ひょっとしたらこの事件と完全に無関係ってことも――――』
「ゾンビ?」
連中が何を目的として話しているかさっぱりわからねーけど、どうも世界規模でそんな話が起こるみたいなことらしい。……バカバカしい、そんな無駄なことやる奴がどこにいるんだってハナシだろ。ってか今時ゾンビウィルスって、映画の見過ぎか何かか?
バカバカしいけど、でも、実際に連中も俺もそれなりにコミックとかアニメとか映画みたいな存在だという事実を忘れないのがスーパー三太様だ。
「話半分としても、そういう話が起こるかもしれなくって、それにこの事件が関係してるって?」
『――――ですが、手掛かりがないのも事実です。仮説として、その「トイレのサヨコさん」が怨霊、ないしそういった存在で、この事件のトリガーとなる、と仮定して動きましょう。怨霊でしたら、場合によっては例の和尚でも呼びましょうか』
そして続いた無能女の言葉で、俺は鳥肌が立った。
サヨコ……、小夜子のことか? アイツが怨霊だって? あんな、なよっとしてこんな俺でも守ってやんなきゃって奮起しないといけないくらいの、あの小夜子が? いや、アイツもアイツで別にそこまでヤワって訳じゃねーだろうけど、べ、別にそんなこと関係なくってやつだ。そもそも俺たち「死んでいないし」。
そんなことは絶対有りえない。でも、だけど、そうなると連中は俺じゃなく、本気で小夜子を潰しに……、成仏とか滅却とか、そーゆーことしに来るかもしれない。
いくら俺でも、数人がかりで襲われたらアイツを守り切れない、かもしれない。スーパー三太様といえど、出来ることと出来ないことはこの世にいっぱいあるのは知ってるんだ……、お昼の争奪戦とか未だに勝てないし。
つまり。
「小夜子を守れるのは俺だけ…………」
つまり確実なのは…………、真犯人の能力者を、俺の手で捕まえて奴らに引き渡すってことだ。
無能女たちはともかくとして、あのツンツン頭……、トータだっけ、アイツならまだ話が通じる気がする。通じると思う、たぶん。だから真犯人を差し出す。でないと、アイツらは本気で俺たちを殺しにくるかもしれないってことだ。
手が震える。でも、俺はそれを笑い飛ばす。こりゃ、武者震いって奴だ。
「上等じゃねぇか……、だったらやってやるよ! なんたって俺は、スーパー三太様なんだからなぁ!」
思わず声を荒らげて立ち上がると、煩かったのか隣の部屋が「ドン!」っと壁を殴ってきて、思わずスミマセンと謝ってしまった。
※ ※ ※
「…………美空、どうするの?」
「……うーん、お手上げだぁね」
事態が思ったよりも致命的だったせいで、思わず血の気が引く私にココネは普段通りの視線を投げて来る。いくつになってもこう抱き着き癖みたいに甘えてくるのは良いんだけど、ちょっと今、ババアお疲れなのだ。
何だよゾンビウィルステロとかさぁ……! 世界規模って何だよ! 私は勉強そんな得意じゃないんだから、世話ねぇんだよ!
それはさておき、まあちょっとだけ引っ掛かる話があったのは事実。話し合いはまだ続いてるみたいだけど新情報とかはとれなさそうだし(あと私のキャパオーバー)、一旦降りて来て
声が漏れると拙いので簡易結界を張り、防音。
「しかし、それにしても『トイレのサヨコ』さんねぇ」
「?」
「いやぁ、サヨコさんっていうか、そういう名前の子がね? 魔法生徒としては活動してなかったんだけど居たんだ。でもホラ、ネギくんたちが
「そういう話、あったような、なかったような……?」
私より記憶曖昧とか大丈夫かねぇココネさんや……。ババァって確かに生き字引だけど、現役やめるとボケていくもんだぜ?
まぁ私があんまりボケてないのは、単に自前の魔力で基礎的な「そういう」スペック底上げし続けてるからだし(ちなみに私、ココネの本契約魔力だと「このせつ」みたいに、お互い若い頃の姿を維持できるだけの余剰分がないので年くってる)、それでもまぁ老い先が延びる訳でもないだろーし、ちゃんと覚悟しとけってのは良く言ってるんだけどねぇ。
「でもそれなら、昇天させてあげなかったんだっけ?」
「一応何年か後に、たつみーとか木乃香とか刹那っちとかザジにゃんとかと一緒に捜索した、らしいんだけどね? コノエモン旧学園長いたじゃん、あのぬらりひょん。あの人の依頼で」
「あー」
どうやら「さよちゃん」の時にも似たようなことをしてたらしいんだけど、まあその時に関してはむしろそれでも見つからなかったとか。
「サヨコちゃんって自殺に見せかけて殺されてたらしいから、まあ殺した生徒に復讐して、それで成仏したんじゃないかって話でいったんは落ち着いたんだけどねぇ。まー、私もその話聞いたのって八年前なんだけど」
「……そういえば、他殺だったの?」
「そうそっ。あれくらい『酷いこと』されそうになったんなら魔法使っちゃえばよかったろうに、真面目というか、コッチに足を踏み入れるつもりがなかったってことなのか……。まー、正直テレビで流せないくらいの有様な感じでさ。神よあなたは何処にいるっ! って感じで、珍しく真面目にお祈りしちゃったくらいだし」
「美空がそう言うのって相当……」
オイオイそりゃどういう意味だいココネさんや? 既に縮んだこのババアよりもはるかにスラッとして、たつみーの親戚みたいな雰囲気になってるココネだけど、振る舞いはまだまだちびっ子っぽいのは何とかなんないものかねぇ……。いくら裏火星人だからと言ったって、この子だって単純換算で言えば今年で八j――――。
「っておわっと!? なんでゲンコツ振り下ろしたし! 私だから躱せたけどババア労わりなさいってな!」
「…………美空、美柑に彼氏がいい加減にできたか揶揄ってる時と同じ顔してる」
「へ? そ、ソンナコトナイデスヨー」
誤魔化しながら視線を逸らしたけど、普段以上にシラーっとした目で見て来るココネの圧に思わず後退する私だった。
「は、話を戻すけど。でもさー、考えたらね? さよちゃんの情報網に引っ掛かってないって相当だと思うんだ。朝倉ほどでは無いにしろ
「…………つまり?」
「つまり……、何だろうねぇ、隠蔽する術でも仕掛けられているのか――――」
「――――その話、少し詳しく聞かせてくれないかしら? シスター・ミソラ」
がちゃり、と。教会の扉が開いて、夏凜ちゃんがぬっと現れる。
このリアクションの感じ、というか半眼で引きつった笑みを浮かべて背後に妙なオーラが見えるような視えないようなこの感じ、たぶんコレ、アレですね。私たちの盗聴、勘付いてたやつッスね?
あー、誤魔化せないか目を点にして適当に視線をそらそうとするも、背後からぞろぞろ出て来る子たちを前に、というかそのマジな目を前に、流石に逃げるのが忍びなく……。
「お婆さん、少しでも情報が欲しいの。何か知ってることがあるなら、教えてっ!」
「うぅ……、もう、ババァちょっと胃が痛いんだけどなぁ……」
「美空、胃腸薬――――」
「いやそういうボケ潰しみたいなの止めない? ココネさぁ」
いやだってさぁ? 特にちびっ子のキリヱちゃんだっけ。まるでホラ、なんじらここに入るもの一切の望みを捨てよみたいな悲壮な目ぇしちゃってんだもん。晩年っていうか、行方不明になる直前のネギ先生みたいな顔されちゃあ、ババア流石に居直る訳にもいかねーよなぁと。
渋々、という風に。とりあえずたつみーこと龍宮真名――――現アマノミハシラ学園都市・学園長「代理」にアポを繋ごうかとか考えた。
アンケの予定は今の所以下のイメージです。(締日予定:7月15日)
明日締め切りですので、まだの方はお早めに・・・!
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