光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ!
また深夜でスマヌ・・・スマヌ・・・


ST67.死を祓え!:名探偵(自称)の受難

ST67.Memento Mori:Detective Is Poor At Detective

 

 

 

 

 

2086年9月2日 06:25

 

 最強の超能力者・スーパー三太様は、今日からしばらく名探偵・三太様だ!

 朝一番、寝ぼけた頭でそんなことを考えたんだが、ふと起きてみれば寝床には誰も居なかった。

 

「…………あれ? アイツらは――――」

 

 確か「連中から」情報を集めた後、帰ってきた二人に気取られないように頑張って表情筋を調整していたんだが。そのままベッドが一つしかないって話からケンカになって、三人でジャンケンをして誰がベッド使うかって勝負して…………、結局二十回くらいあいこを繰り返して「もう三人でそれぞれ入って寝るしかないんじゃね?」って流れになっちまったのは覚えてる。

 しかしベッドに入って早々、あのトータって奴は酷かった…………。寝ながらなんか「げつが」とか「てんしょー!」とか技の名前みてーなのを叫んだりして、アレは絶対、夢の中でなんか戦ってたりするやつだ。手足が他の奴がいることに構わず暴れ回り、色々と殴られたり蹴られたり大変だった。最終的にクローマルって奴に抱き着いて落ち着いたみたいだけど……、いや抱き枕ないと暴れるとか寝相最悪すぎねーか?

 いや、そんなことはともかく。

 キッチンの方で色々とカチャカチャ音が鳴ってて、見ればあのクローマルってのがエプロン姿で何か料理作ってた。

 

「あ、三太君だっけ? おはよう、今三人分作ってるからちょっと待ってて?」

「へ? あ、お、おう……おはよう」

 

 にこりと笑ってくる顔を正面から見れず、思わずそむけた。初対面の時も思ったけど、ホントなんでコイツこんなキレーな顔してやがんだ。ホントに女だろコイツ。オレは女も男も嫌いだから、こーゆーのは慣れてないんだよコイツ。

 しばらくコンピュータを起動してネットサーフィンしてると、「外にいると思うから、刀太君を呼んできてくれない?」とアイツから声がかかった。

 

「あ、そうだ。アイツ何やってんだ? 昨日随分酷かったけど、朝になったら居ねーし」

「あ、あはは……(地下でもだいぶ酷かったねそう言えば)、って、んー?

 たぶん……、瞑想かな? ここの屋上に行くって言ってたから、見て来てくれると嬉しいな。そろそろ出来そうだし」

 

 本当ならそれに従う義理はないんだが、スーパー三太様は女子供には優しい優しい(当社比)って小夜子に言われてるから、なんとなく意地悪するのも大人げないような気がして……、いやまぁオレもガキに違いはねーけど。仕方なく屋上に行くと。

 

「――――――――」

 

 なんとなく近寄りがたい雰囲気だった。膝を広げた正座をして、その膝の上に昨日オレに向けて散々謎の攻撃を飛ばした剣みたいなのを乗せて(校則違反じゃねーのかアレ)。妙にしんとして、後ろ姿しか見えなかったけど、こう……、不覚にもちょっと恰好良かった。

 

「……ん? 三太か。どうした?」

 

 そして扉を開けるくらいしか何もやってなかったのに、ごく自然にオレに気付いたトータは立ち上がった。コイツ気配とかそんなもんでも感知してんのか!? 謎の悪寒が背筋に走る。もしそんなモン感知するような奴だったらオレの正体も…………。いや、ここは下手を打たずに探りを入れるか。コイツ自身、オレというか「謎の最強能力者様」には悪感情もなさそうだったし。

 

 とりあえずクローマルから朝食が出来るって話をして、二人して部屋に戻ると。どんぶり三つ、それぞれにうどんが入っていた。……というか、座り方がぺたんてしててマジでコイツ女だろ本当。

 

「クローマル、連れて来たぞっ」

「あっ! ありがとね三太君。刀太君、出来たよ!」

「りょーかいっと。……んー、やっぱ美味いわ。こりゃ昆布だし?」

「ちょっとカツオも入ってるかな。流石に時間もないから市販のだけど」

 

 朝はあんまりガッツリ食べないらしいトータに合わせて、うどん半玉くらいのあっさりとした朝食。聞きかじった感じだと、スープは色が濃くてうまみが強いけど塩少な目。溶き卵とネギ、めかぶ、あとかまぼこが丁寧にカットされてて、これはこれで美味いっていうか。

 昨日のトータが作ったやつが店とかで出て来るジャンキーな味なら、コイツのはもっと家庭的な味っていうか……。

 で、食べてて楽しそうなトータを見るクローマルのニコニコ顔が完全に恋する乙女っていうかエプロン姿のせいで新妻みたいというか、オレは一体何を見せられてるんだって感じだった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

2086年9月2日 12:21

 

 流石に日中、この時間帯は連中も捜査だのどーのこーの言ってはいられないだろう。トータってのも意外と真面目っぽいこと言ってたし、このままいけば放課後まではオレもフリータイムだ。……まぁ妙に「一緒に行こうぜ!」とか言ってくるから、今日は体調不良だとか言って、とりあえずサボる口実にしてだが。

 

 だからこのタイミングを利用して、オレは小夜子に会うことにした。

 例のUQホルダーの連中が探してるから、しばらく身を隠してろって。

 

 ここ数週間は顔を合わせてない……って、まあオレが引きこもってるせいだけど、そのせいでアイツが捕まっちまったら元も子もない。

 

「――――って、ホントに何処行ってるんだ? アイツ」

 

 だけど、探しても探しても小夜子が見つからない。

 大体前に一緒にデー……、デ、デートじゃねーし! デートじゃねーけど一緒に出掛けて遊んだり、買い食いしたりした所とか。あとアイツの家系が「ミッション系」もかじってたとかでお墓参りもしてたから、学園近くの霊園とかそっちの方とか。

 でも、やっぱり見当たらない。

 

 ……今更気づくのも遅いけど、考えたらアイツと通話アプリとかの情報すら交換してなかったな、オレ。いや、そんな余裕が「前は」なかったのもデカいだろうけど、それでも、そのせいで友達を危険な目に遭わせるのは……。

 いやでもアイツ、トロいし、もともと持ってないかもしれない。

 

「まあアプリって言っても、思いっきり違法だけどな。オレのは」

 

 もともと学園個人の端末っていうのは一部一等生徒のとかは学園側で負担してたりするらしいんだが、オレはそこにクラッキングをかけて、他の生徒たちの使用料金にちょっと上乗せしてゲームとかしたりしている。

 もし持ってないんだったら、オレが準備したり調整したやつを手渡せばいいか。……っていうか、いつまでも「ここに居ると気が滅入る」。なんだかやっぱり、こーゆー人死にを感じる場所は苦手だ。かつてのオレが「いつ死んでもおかしくないくらい追い詰められてた」せいもあるんだろうけど――。

 

 

 

「―――― 一体こんな時間に、学園生徒が何の用事でしょうか?」

 

 

 

 うわっ!?

 突然背後から、それも物凄い近いくらいの頭上から声をかけられて、思わず転んじまった。

 そこ居たのは、オレよりもちょっと年上っぽい女……、褐色の肌に、白い髪と変なフェイスペイント。男物のタキシードっぽい服に蝙蝠の翼みたいなマント、シルクハットを被ってパッと見手品師っぽい感じに見えるけど、所々の装飾がなんかこう、スゲー禍々しい。

 

「だ、誰だっ!?」

「誰だとは中々……、いえ、まぁ『ここ』の管理人ですけど。どうされましたか? 『学園生徒』ならこの時間はお昼休みといえど学内かその圏内のはずですが。佐々木(ヽヽヽ)三太(ヽヽ)

 

 顔は無表情に、でも口元だけはスマイルを浮かべてる……、営業スマイル? みたいな感じの表情で、女はオレに色々言ってくる。って、オレの名前? 何で知ってるんだコイツ。視線を一瞬「オレの背後の墓石」に向けてから、オレの顔を見る女。

 

「疑問が顔に出ていますね、佐々木三太。……フフ、これでもここアマノミハシラ学園ではちょっと偉い立場なのです。だから大体の生徒のことは知っているのですよ、この『可愛い』見た目に反して」

「見た目に反してって……、ババァってことか?」

「失礼なっ」

 

 ぺしり、としっぺ一発デコにやられる。ちょっと痛ぇなコイツ。

 っていうか腕組むと意外とオッパイあって、それが丁度頭を押さえたくらいのオレの目前だったりして、一瞬慌てる。

 

「しかし、ふむ…………。さしずめ『逝き場に迷っている』ところですかね」

「行き場に迷ってる? ま、まぁ……」

「人生に迷うというのは、よくある話です。かの英雄であるネギ・スプリングフィールドですら、その最期の時まで自らの選択や決断には迷い続けていたでしょうから」

「いや、いきなりそんな偉人の名前出されても困んだけど」

 

 オレの困惑を他所に、女は帽子を下ろして「こんな時にぴったりなアイテムは……」とか言いながらごそごそと帽子の中に手を突っ込んで何か探してる。って、ドラえも○かよっ。

 

「けっこう近いです。この『四次元シルクハット(フォーディー・シルクハット)』はその時、その場においてサイズや質量を無視してアイテムを取り出すことが出来る、ピエロや手品師にとって垂涎の逸品であり―――」

「いやそんな眉唾な話とかどーでもいいから。じゃあなっ」

「逃がしませんよ」

「っ!?」

 

 身体を透過して逃げようとした瞬間、当然のようにオレの肩を掴んできた女……って、この最強能力者の三太様に干渉してきただと!? というか俺掴んでる反対側の手でシルクハット探してるけど、シルクハット宙に浮いてやがるっ。

 

「まぁお待ちを。えっと……、この水晶は木乃香さんのですね。本人から預かってますが使い道的に今回ではないし…………、嗚呼これでいいでしょう。アーニャさんのダウジングですか。どうせ複数ありますし」

 

 はい、と。空中に浮かんでるシルクハットから色々取り出したり仕舞ったりして、最終的に手渡されたのは変な棒みたいなやつだった。

 金属の棒が折れ曲がったやつで、先端に矢印マークみたいなのが付いた奴が二つ。

 

「…………何だこれ?」

「ダウジングです。知りませんか? 地下水脈、貴金属、宝石やら何やら『探し物をする』のに使う道具です。特にこれは本物の魔法使いがかつて使っていたアイテムのレプリカになりますから」

「いや知らねーけど……」

 

 言われて検索アプリを立ち上げ、空中で検索をかける。……なるほど、ダウジングか。古い占いというか、化石みたいなモンだな。というかこんなモン普通に持ってるってやっぱコイツババア――――痛っ!

 

「何を考えているのでしょうか。私は『貴族』換算で言ってもまだピチピチに女子高生だというのに……と言っても詮のない話ですか」

「貴族? ……いや意味わかんねーけど」

「ともかく。これを両手に持ってみなさい」

 

 ええ、と言いながら言われるままに両手に持ってみると……、お? 何か先の矢印がぴかぴか光り出したぞこれ。

 

「あなた自身の魔力を吸い上げて、これは点滅したり動作したりします。そして貴方が『潜在的に求めている』ものを探し出してくれることでしょう。欲しいもの、探しているものがあるなら、強くイメージしてみてください」

「イメージ……」

 

 頭の中に小夜子のことを思い描く。黒い制服着てて、髪さらっさらで、あと意外と着やせしてて…………って、何考えてんだオレっ!

 でもそんな俺の慌て方とか関係なく、勝手にこう、先端の矢印が二つとも動いた。

 

「お、おぉ…………? これって、この矢印の方に行けばいいってことか?」

「ええ」

「マジかこれ、化石みたいな道具でもちゃんと動くんだな…………って、本当にコレってオレの探してるやつに反応してんのか?」

 

 オレの当然な疑問に、女は相変わらず口元だけで笑う。

 

「例え信用できないにしても、どちらにせよ手掛かりはないのだから構わないのでは? 一日を棒に振ったところで『貴方は』『何ら問題はないのでしょうし』」

「? いや、まー、確かに大丈夫だけど」

 

 どうせヒキコモリだし。ただあんまり時間は無駄にしたくないっていうのが本心なんだけど――――っと? 俺が一瞬、このダウジングってのに目をやって、また視線を向けると、いつの間にか女は消えていた。

 

「…………ユーレイ?」

 

 いや、その割にはちゃんと道具とかもこうして残ってるし……、でもこう、なんとなく納得できないけど、妙に背筋に寒気を覚えて、俺はその場をすぐさま後にした。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

2086年9月2日 14:11

 

 

 

「……意外と使えるな、コレ」

 

 本当に小夜子をダウジングってので探せるか。半信半疑だったオレはちょっと実験をしてみた。例えば、トータの奴とか、教会のババアとかをイメージして、その居る場所をこのダウジングで探した。

 

 結果は、まあ、どっちも大当たりだった。

 

 トータについてはすぐ見つかった。学園の方に戻って、なんか変に古い建物の中で女に囲まれてた……、何だアイツ、アレでモテモテか!? オレの敵だコンチクショー! ちょっと仲良くなれるかもとか期待したオレが馬鹿だった、これだから陽キャは!

 いや、まあいう程陽キャとかじゃなさそうだし、室内のうち二人はなんか顔似てるから兄妹とかなのかもしれねーけど……。

 

 で、教会のババアはというと……、なんか、一等生徒とかが出入りしてる校舎の方に行ってた。校舎の裏、木のところに花束とかを置いて、献花してるみたいだった。

 十字を切って手を合わせるババアと色黒の美人――――その背後から、連中のうちの無能女がぬっと現れて、少し冷汗をかいた。後方少し行った先、校舎と木の間の影くらいの所で「姿」と「音」を消してるから、気付かれはしねーだろうけど……。

 

「シスター・ミソラ」

「……あれ? 夏凜ちゃん、今日はオサボり?」

「授業が終わるには、まだ早い」

「いえ、事情はわからないけど今日、私のところの学校は午前授業だったのよ……。ってそうじゃなくって。一体何をしているのかしら」

「あははー、アレだ。丁度『ココ』なんだよねー。昔、ここにあった旧校舎のトイレ」

「つまり――――」

「そそ。『――――』が殺された場所」

 

 話が聞こえない、中途半端で断片的にしか聞こえねーけど、なんだか物騒な話しか聞こえない。殺された場所、というには例の事件に無関係な場所と来ていやがる。にもかかわらず花を添えるとか、よっぽど昔の話なのか?

 

「殺された状況は聞いたけど、その……」

「ウンウン。もともと表面上はオカルト好きな子って風に通してたらしくってね。で、普段いじめていたのは男の子連中が多かったんだけど、その中でいっとう『酷い』タイプの女の子の目にもついちゃったらしくってねー。…………持ってた儀式教本を見よう見まねで真似したような殺され方だったんだよね。机と椅子で魔法陣とか作ってさ、四肢の自由も薬物で奪われて、真ん中でさ」

 

 それで最後は首吊りに偽装されてんだから、正直世話ないわー、とか。…………なんか聞いているだけで吐き気がするような話をしてた。というか、何だ? その殺した女子生徒って、殺された女子生徒をいじめてた男子生徒に気があったとか、そんな話らしい。気を引くために、というかその男が「性的に」狙っていたってのが気に入らなくって殺したとか、正直、女怖い。

 いくら無敵の三太様でも、そーゆードロドロしてるっぽい話はノーサンキュー。胸を押さえて、とりあえずその場から立ち去ろうと――――。

 

「ココネ? ……うん、まあ、わかった。『来たれ(アデアット)』!」

 

 次の瞬間、俺の目前にババアの姿があった。じぃ、とオレがいるはずの場所――――さっきからずっとオレの姿は見えないだろうし、オレの声も聞こえねーだろうけど、それでも確かにその目はオレのいる場所を捉えていた。

 思わず息を呑み、微動だにできないオレ。

 ババアはじっと五秒くらいオレを見つめて(見えてないはずだけど)、それから後ろを振り返った。

 

「…………んー、特に何もいないんじゃないかね?」

「いや、絶対居た。『念話』じゃないけど、『思念を感じた』から」

 

 思念を感じるって何だよあの色黒女!? 無能女も腕を組んで「ふむ……」とか何か考察してるっぽいし、状況が全く読めねーんだけど!

 アレ? これひょっとしてスーパー三太様、意外とピンチじゃ………い、いや! そもそも直接戦闘したところで、この無敵の三太様をどうこうできるたぁ思えねぇ! ただ思えねぇけど、ババアとかあの美人とか無能女とか、コイツら全員なんか「祈祷力」高い魔法とか使ってきそうで苦手なんだよなぁ…………。

 

 しばらく息を殺して……、一分くらい話し合った後、三人は姿を消してほっと一息つけた。

 

「なんでこんな日中だってのに、サスペンス映画みたいな感じになってんだよ……。ま、いっか。とりあえずコレが使えるってことがわかったし」

 

 そしてダウジングを構えると――――その指先は、シスターのババアが言ってた、眼前の校舎に向いていた。

 

 

 

 

 

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