光る風を超えて   作:黒兎可

68 / 236
毎度ご好評あざますナ!
ちょっとだけ連日投稿できてて少し回復してる・・・かまだ不明です汗

本作キリヱ大明神がガチで頑張りまくった結果です。


ST68.死を祓え!:やり直し可能な仇討ち

ST68.Memento Mori:Retry and Revengers

 

 

 

 放課後、ようやく行動が自由になったものの。一度寮に帰ると、姿が見えない三太が気にかかった。もともと原作において、本来ならば転入後はすぐ三太を引き連れて遊びに行く流れがある。それを見て水無瀬小夜子がホルダー側に三太を任せられるか判断していく流れになるはずだが、今回私はそれについては無視した。

 三太自身が単独行動で何かをしたがっているのがわかったし、わざわざそれを追及するのは可哀想……というか、下手に後をつけると早々に彼の正体が判明するという原作チャート崩壊に匹敵するだろう事態が発生する可能性があったからだ。

 なのでここは痛し痒し。九郎丸はちょっと楽しそうだが、生憎私は地理について四苦八苦しながら授業を受けていたのだが。

 

「…………っ」

「キリヱちゃん?」

「どうした?」

「しっ! ちょっと黙っててっ」

 

 どうにも合流後、昨晩のカフェにて集まってる私と九郎丸およびキリヱだが。つまりは午後十六時少しのこの時間帯において。どうしてかキリヱの様子がおかしい。まるで何かを探しているような、焦燥感と「絶対のがしてなるものか!」と言わんばかりの強い意志が感じられる表情だ。そんな様子できょろきょろと周囲を見回しているものだから、私と九郎丸は顔を合わせるばかり。

 いや、とはいえ私は若干推測が立っているのだが…………。ひょっとしなくてもこのキリヱ、また「戻って来た」キリヱの可能性が高い。明らかにこの様子は、新しい展開を踏まえた上でのリアクションだろう。しかもそれを表面上隠しもしないで行っているのだから…………、一体また何回ループしてきたんだこの女。あんまり無茶するんじゃないよ、メンタル強いようで中身お豆腐なんだから。(良心)

 

「――――居た」

「お?」「あれ、三太君」

 

 背後から声をかけられた私と九郎丸がそちらを向くと、相変わらずパーカー姿の三太が半眼で肩をすくめていた。初対面のキリヱは「誰?」となっているので、簡単にルームメイトだと紹介。

 

「何やってんだお前ら、こんな所で」

「まー、ちょっとな。お前こそどうしたんだよ、体調悪いんだろ? 無理すんなよな、元々肌とかも病人とかみたいに真っ白な訳だし――――」

「こりゃ引きこもってたからお肌繊細になってるだけだっつーの! て、何だよお前その目、えっと……」

「キリヱよ、桜雨キリヱ。……アンタ、男の子よね。髪、すっごい伸ばしてるけど」

「あ? いやフツーに男だけど。この頭はまぁ…………って、いや、そんなことはどーでも良いんだよっ(もう流石に『剃り込みされた』のとか『十円ハゲ』とかも残ってねーだろうけどさ)」

 

 距離が近かったせいでボソッと呟かれた内容が聞こえてしまったが、いや、確かにそういう事情ならそのロングヘアも納得がいくのだが何と言うか…………。

 というよりも会話慣れしてないせいだろうが、あんまりボソッと言った感じではなく、多少小声程度の声量で聞こえたので、他二人も聞いてしまった感はあるが。九郎丸はその一言に違和感を覚えたのか少し不思議そうな顔だが、キリヱは流石に察したのか「ま、悪かったわ」と素直に謝った。

 

「いや、オレの話はいいんだよ。で、何でお前らここで集まってるんだ? デートか?」

「いや違ぇって――――」

「で、でででででででッ!?」「は、はァ!? 馬鹿言ってるんじゃないわよっ!」

 

 いやお前さんら、違うんだからそんな変な風に慌てるな。思わず半眼になってしまったが九郎丸は顔を赤くしたまま目を丸くしてるし、キリヱに至っては椅子から立ち上がり三太に掴みかかっていた。漫符ならお目々ぐるぐるといったところだろう、ぐらぐら首を揺さぶられる三太は、背丈では勝ってるはずなのにとても弱そうだった。(語弊)

 

「そんな話じゃないのよっ! 私たちは真面目に、世界の危機と戦ってるんだから! だからそんな浮ついた! 話とか! 考えてるんじゃ! ないわよっ! そこのちゅーにと、で、で、デートだなんて! そんな訳ないんだからねっ!」

「くぁwせdrftgyふじこlp――――」

「いや落ち着け、三太バグってるから。バグってるバグってる…………」

 

 ぼそっと「キリヱちゃん可愛いな……」とか少し寂しそうな顔をしてる九郎丸はともかく……、いや、とにかく色々ツッコミ出したらキリがなさそうなので流す。ともかくキリヱを制止して三太から離すと、丁度そんなタイミングで携帯端末が鳴り出した。私、九郎丸、キリヱのもの(後者二人はメールアプリ)、三太は何もなし。

 

「……何だ、この音」

「えっと……?」

「このお馬鹿さん達! 緊急警報の音よッ」

 

 すぐさまアプリを開いてメッセージを確認すると、キリヱは愕然とした表情になる。

 

「…………えっ、嘘。こっちでもない訳?」

「これは…………っ」

 

 九郎丸も確認して驚いた表情だが、事情がわかっていない私と三太である。とりあえず携帯端末の緊急速報アラームのアプリを起動し、私も内容を確認するのだが。横から覗いてくる三太共々、状況が上手く呑み込めなかった。

 

 

 

 ――――緊急避難警報:新東京アマノミハシラ市付近をはじめ各地方首都圏――――

 ――――妖魔災害以来の大規模人体変異事件・生物兵器の疑いあり――――

 

 

 

「噛まれた人間はゾンビみたいになる……、って、いや、マジか?」

 

 正直、キリヱが体感してきた二百回近くの時間遡行についてだが、少々ナメていたというのを実感させられた。どうやらこれを見る限り、状況が大きく動いたらしいのだが、しかしそれに関してトリガーとなるものが全く掴めていない。本当に手がかりナシと言っても過言ではない状況だ。

 否、実行犯や動機自体は「私」にとっては割れているに等しいのだが、だからといってそれをゆっくりこなそうと思っていたこのタイミングでの状況変化。しかも既にチェックメイト済の状態まで来ているとなると、どうやら当初考えていたよりも切迫しているというべきか…………。

 

 急いで夏凜に電話をかけるが、通話が繋がらない。……原作での絡みを考えるなら、水無瀬小夜子に確保されたか、消耗してすぐ動けない状態にされているか。

 

「――――皆、大変だ! これから情報を転送するから、すぐ確認してその地点に向かってくれ! 少なくともアマノミハシラ学園都市付近から発生しているから、ここで封じ込めないと拙い!」

 

 一空(既に青年姿)が背後からジェットパックのようなものを展開して飛行し降りて来るが、状況を今知った私たちはすぐに思考が切り替えられない。そしてそれは、三太にとっても似たようなものであるらしかった。

 膝をつき、目を見開き、引きつった笑いのまま顔を青くし、そして震えていた。

 

「ぞ、ゾンビ……? 嘘だろ、オレを騙そうとしてんだろ? じゃなけりゃ何なんだよ一体、『マジで』なのかよそんな――――」

「とかく気を付けて! ウィルスの詳細は不明だけど、場合によっては空気感染とかもあり得るから。僕は先に行く――――」

「僕も行きます!」

 

 そのままジェット飛行する一空と、我に返って空中を駆けて後を追う九郎丸。

 私もこのままという訳にもいくまい。……原作的に後で時間を巻き戻す話になるのだろうが、それ以前の問題として。そもそもこの状況になってしまったのなら、極力キリヱが「死なないで」解決できる方法は、もはや原作通りに小夜子を下す他なくなってしまった。

 だが、果たしてそう上手くいけるのだろうか? 三太からも相手の場所やら動機やらを引き出せず、というこの流れ。明らかに原作のそれから大きく逸脱している。ゲーム的な話ではないが、こういった微細な積み重ねがズレることでいくつもの前提条件やらが崩壊し、結果が変貌するのを私はよく知っているのだ。

 

 だが、それでもなお立ち上がるしかない――――そういった不確定なことが、私が剣を手にしない理由にはならないのだから。

 

「――――っ、待って! 刀太っ」

 

 行こうとする私の左腕に抱き着くキリヱ。顔を見れば、しかしキリヱは「思ったよりも」「動揺していなかった」。

 そこには只ひたすらに、冷静に今の状況を分析して、何の情報が使えるかを切り分けている理性があった。感情的になって私を止めたということではない、確かな確信と、秘策のようなものを感じさせる。そんな表情だった。

 

「…………もう『このルート』はたぶん手遅れだから。だから一旦『巻き戻す』わ」

「は? いや、お前何しようと――――」

「ゴメン。私、アンタに嘘ついてた。少し待ってて――――」

 

 言いながら、キリヱは少し離れ、私の左手を両手で取り。まるで祈るような姿勢となって――――。

 

 

 

「――――『タイトルバック』」 

 

 

 

 次の瞬間、世界は暗転した。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「…………ここは、マンション? いや、ボロアパートって感じか」

 

 ミンミンとセミの声が聞こえる。外を見渡せば天気は燦燦と夏日和。季節はもうそのまま夏のように感じるが、昨今は異常気象が激しいのでこういった事象のみで判断できない。できないが、どう考えてもこの湿度の高いべとべととした蒸す感覚は、明らかに最近の気候ではない。つまりは2086年の9月ではないということになる。

 あれだけ思わせぶりなキリヱの動きがあったのだから、それは当然「何か起こった」と考えてしかるべきなのだが……。暗転した視界が回復した時点で、このアパートの中に「監禁」されているという状況は、あまり心穏やかではない。窓を開けようにもそもそも「接触できず」、まるでホログラムか何かのように貫通してしまう。

 だからといって全身が壁を貫通して外に出れるかと言うとそうでもなく、時計を見れば1時45分の30秒くらいのあたりで、針の先端が行ったり来たりしている……、というより電池切れの時計のように、進もうとして進めない、みたいな動きだ。

 

「そして何より色々言いたいのは…………」

 

 部屋の窓際手前で倒れている少女……というには幼いか、小さな女の子の姿。触れず、抱き起せないこともあってどうしようもないのだが、ワンピースから覗く異様に痩せた手足。手元には空のペットボトル。部屋の奥には何も中身がない冷蔵庫があり、また入り口の方は丁度「女の子の背が届かない」くらいの高さのバリケードのようなもので固定されていた。

 

「あ、あはは……、あんまり見ないで? そんな気分が良いものでもないでしょっ」

 

 そしてそんな私の視線を受けて、キリヱは苦笑いしながら頬をかいていた。

 

 …………おそらくキリヱの能力であるところの「リセット&リスタート(リセット可能な人生)」――簡単に言えばタイムリープ能力――を行使したのだろうと予想はつくのだが、色々と状況が異なっているというか、私の知る状況ですらない。

 というか、そもそも「タイトルバック」とか言っていたか。一体何をした、また私のガバか何かか?(疑心暗鬼)

 

 内心で勝手に恐怖してる私をスルーして、キリヱは足元で倒れている――――「息遣いすら感じない」少女の背を、触れもしないだろうに撫でた。

 

「……大体、四歳くらいだったかしら? 2071年4月9日水曜日、13時45分の炎天下。

 ここで、この少し後に私は『最初に』餓死したの。……いや、熱中症だったかも? まあどっちにしても栄養全然足りなくって最後動けなくなってたし、同時かしら」

「そこ別に正確さ求めてねーから。えっと……何? 状況が本当に全然読めねぇんだけど。とりあえずそこに倒れてるのが、昔のキリヱってことだけは判ったんだが」

 

 困惑する私に「それもそうよね」とキリヱは苦笑いした。

 そしてう~んと、腕を組んで思い悩み始めた。

 

「…………どうしよう、前の能力だと説明が簡単だったけど、『こっち』だとちょっと複雑になるから説明が面倒くさいわ」

「『前の?』」

「そっ。予知って言ってたけど、厳密には違うの。私の固有能力――――リセット&リスタート(リセット可能な人生)、って呼んでるんだけど。これはその進化形……っていうより、経験値カンストしてレベルアップした感じのやつなの」

 

 とりあえず名前だけ言うと、と。ここだけは少し胸を張って、ドヤ! と得意げに笑った。

 

「――――『リセット&リスタート(リセット可能な人生)Lv(レベル)2。その名も、『リトライ&リベンジャーズ(リトライ可能な仇討ち)』よ!」

「いや名前、物騒すぎねぇかそれ……?」

 

 思わず口をついて出た感想に「人のネーミングに文句でもある訳このちゅーにっ!?」っと、腰に手を当てて、プリプリと怒っていた。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

 一度おさらいをしておくと、桜雨キリヱの固有能力「リセット&リスタート(リセット可能な人生)」は、時間遡行系の能力であるがいくつか制限がある。

 その一つは「セーブポイント」。砂の山に木やロウソクなど可燃物を立て、そこに点火することで「火が持続している間」に死んだ場合「点火したほぼ直後」のタイミングまで時間を巻き戻すことが出来る、というものだ。

 この際に戻り方をコマンドのように設定することで、時間を巻き戻す際の方法(言うなればリスポーン方法)を指定できる。この際「M(メモリー、記憶)」「S(スピリット、魂)」を彼女は固定しているが、これに加えてもう一つ。

 一つは「B(バインド、掌握)」。こちらならば死んだ際に手で握っていた相手の精神を巻き込んで過去に戻す。

 もう一つは「F(フレンド、仲間)」。こちらは手で触れた相手の身体ごと自分の周辺にリスポーンさせた状態で遡行することが出来る(当然その時間の当人が近所の場所にリスポーンする)。この際、周辺と一言で言ってもおおよそ数百メートル程度は応用が利いていた記憶がある。

 

「――――で、ここまでがレベル1の話なんだけど、続けてレベル2の話するけど大丈夫? 理解できてる?」

「おおよそは……」

 

 理解するも何も原作でざっくり把握はしているので問題ないと言えば問題ないのだが、果たしてここからは完全に未知の領域である。流石に私のガバではないだろうと思いたいが、色々と胃に痛みを覚えながら話を続けて聞いた。

 

「レベル2の場合、セーブポイントの意味合いから変わってくるの。この時に使う設定が『O』、オプティマイズ、つまり最適化ってこと」

「……ん? どういうことだ?」

「最適化されたセーブデータは、つまり『一定時間しか』機能しないセーブじゃなくなるってこと。状態としてはフレンドを引き継いでるっていうか、そこからレベルアップしてるから『触っていた相手ごと』ここに連れ込めるみたいなんだけど」

 

 見える? と、大画面テレビの液晶(※この時代では十分旧式)を指さすキリヱ。そこには液晶の映像が八分割され、それぞれに異なるものが映し出されていた。一番左上、①とナンバリングされているそれはこの部屋。反対に⑦とナンバリングされているのは、ついさっきのカフェ……というか、買ったカプチーノのストローに火を付け、紙コップにコマンド設定を書いてセーブポイント代わりにしたらしい。というかそんなこと出来るのかお前……。なお画面右下については画面が真っ黒になっており、⑧は存在しないらしかった。

 

「ここは私の『最初の場所』だから。ゲームで言うタイトル画面……、みたいなものなのかしら? セーブメニューでもいいけど」

「いやセーブメニューって……」

 

 実際、テレビ映像を含めれば他に説明はつかないのだが、つまり話を整理するなら……。

 

「レベル1ならセーブポイントが機能してる時間しか巻き戻しできなかったけど、レベル2なら『過去のセーブポイント』を含めて『自由に巻き戻し出来る』、みたいな話か?」

「そーゆーこと! やっぱり飲み込み早いじゃない」

 

 愉し気に胸を張るキリヱだったが、「あっでもセーブは7つ以上作るのはダメなのよ」と慌てて思い出したように言った。

 

「なんだかそれ以上作ると、えっと、『パラレルワールド分岐しないで一つの時間軸が保有できる情報量を超過する』から、時空が崩壊するって、タイムパトロールとか言ってた女の子に注意されたわ」

ドラえも○(ドラちゃん)の見過ぎでは? っていうかタイムパトロールって……」

「名作だからよく見てるけど事実よ! ホントなのよ信じなさい!」

 

 別に信じたところで問題はないのだが……、もはやガバとかそういう次元じゃない今の有様に、少しだけ私は思考を放棄した。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。