光る風を超えて   作:黒兎可

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また深夜更新でスマヌ・・・スマヌ・・・


ST72.死を祓え!:名作の読みすぎ

ST72.Memento Mori:Learning New From The Past Century

 

 

 

 

 

 結局、キリヱと仮契約はした。個人的には拒否一択と言うか本当にそれしか手がないなら、というレベルで頼りたくなかったのだが(イベント先取り的なガバだしそもそも色々経緯を踏まえて申し訳なさすぎる)、それでもなお背中を押したのはキリヱ本人の覚悟だ。

 いい加減、総数的には実際には五万回近く時間の巻き戻し……、おそらくそれはレベル2に覚醒してからのものなので「はじめから」やり直しているだけではなく「とちゅうから」のものも含まれているのだろうが、いやそれにしたって5桁はいくらなんでも頭が痛くなる。しかし、それでもなお事態を解決できていないと言うのがまるで「近衛刀太が関わらないと」イベントが進まないとでも「世界が決定している」ような感覚に陥り、気が滅入る。というか本当、キリヱ相手には申し訳なさ過ぎて、表面上の振る舞いはともかく内心は平身低頭しかなかった。

 

「もちゃもちゃもちゃもちゃ……、んくっ、ん! で、戻ってきたけれどどうするの? 刀太」

「どうするって言ってもなぁ……」

 

 早朝の自室、冷蔵庫の中に入っていたサンドウィッチを食べるキリヱ相手に、私は思わず肩をすくめた。

 例の「タイトル画面」から「使い方は『オマケ』ヨ! ではサラバ!」と言い取扱説明書のようなものを手渡した超。ニコニコ手を振り普通に退室していった彼女に続き、私たちも「とりあえず直近のセーブポイントに行くわよ」というキリヱ本人のコメントに従う流れ。一応7つ目のセーブポイント、つまり「ゾンビテロ発生直後」のそれはまだ消さずに残しておき、原因が特定できたら調整するという方向でいくらしい。

 

「戻ろうと思えばすぐ戻れるって言うか、新しくセーブポイント作る時に調整できるしね。で、えっと…………? んー、カメラの図のところとかマニュアルに『超包子』ってすごい自己主張でロゴ描いてあるんだけどコレ。……何で? 中華料理屋さんじゃないの、それ」

(チャオ)、アイツの自作じゃねーか………………」

 

 まあ、確かにこの世界観においては「時空」に関係するアイテムを作れるのは誰かと言えば、超かそれこそ師匠くらいなものであるのだが。

 そんなことよりも、である。

 

「…………自作って、へ? 何でそんなこと、アンタが知ってるのよ」

 

 おっと、とんだ藪蛇であった。というか単に発言自体がガバだった。迂闊っ、この類のガバはBLE○CH(オサレ)ならば関係する用語をすべてOSR(オサレ)読みに統一して口走ることでギリギリ情報回避できていたのだろうが、直接「ネギま!」とか関係の話が湧いてきて(というか張本人と遭遇して)こちらも警戒心が緩くなってしまっていたか。

 といっても、これについては説明できない訳ではないのだが。

 

「何よ、何か言いなさいよ、やっぱりアンタら知り合いな訳? あの手のひらサイズおっぱい揉んだのアンタ!? もにゅったのね、もにゅってギューってしてカリカリしてちゅーちゅーしたのねアンタ!」

「いや話ってか文句が飛躍する先そこでいいのかお前……」

 

 というか内容が中途半端に具体的すぎるのにも色々言いたいのだが。何だ、むっつりさんか? 原作でも耳年増なところはあったが、下手に人生灰色のままリセット繰り返し続けてしまったせいか、むしろもっと「そういう」のは酷いことになってるのかも知れない。(???「でもまぁ『そういうの』自体については……、いや? 正式にこっちに来た時にでも楽しみにしておくと良いよ、トータ」)

 

「じゅーよーな問題でしょ! このちゅーに! でどーなの?」

「どーなのとか言われても困るっていうか、いや当然何もやったことねぇよ、何だその熱量……。

 いや、あの『超』ってのの顔を見るのは二回目くらいだけど、『超』って名前であの顔の奴っての自体は知らない訳じゃねーっていうか」

「は? どうしてよ」

 

 言われて私は携帯端末のホログラフィックディスプレイに「超包子(ちゃおぱおず)」の公式ホームページを出す。「ネギま!」時代においては麻帆良学園周辺だけの展開だった超包子だが、そのおおよそ八十年後である現代においては全国規模のチェーン店だったり食品メーカーとかに足を踏み入れてたりするわけで、当然その規模に見合ったホームページになっている。

 それこそ「私」がこの世界にいると自覚し、雪姫相手に修行をねだる前にすら調べたレベルなのだ。

 

「ほらここ、創業者インタビュー……今のグループ展開する前の話って載ってるだろ? 『友達の名前が由来になっている』って。あと写真、四葉会長の手の所。ちょっと拡大するから…………」

「ん?」

 

 会社沿革における「グループの歩み」ページ中。十年前に作成されたそのページにて、初代創業者が友人のやっている屋台「超包子」と接触し感銘を受けどうのこうの、と書かれているのだが。それをインタビュー形式で語っている「お婆ちゃん会長」の手に持つ若き日の写真の中である。

 

「…………いるわね、超鈴音(チャオ・リンシェン)。っていうか、へ? これ中学時代!? アマノミハシラの制服じゃない全員っ」

 

 いつ頃の写真かは不明だが旧麻帆良学園の制服姿で、葉加瀬、茶々丸、それに(クー)と肩を組んでニコニコ笑顔の超の姿がそこにあった。なお写真自体は屋台の手前で撮影されたものらしく、座席の方には学生服着用なかつてのエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルがネギぼーずを慌てさせていた。見る限り小籠包をあーんしているらしく、ネギぼーずが口を押さえている風からして火傷か。

 まあ例によっていぢめていたのだろう。丸くなる前のカアちゃんは大体そうだ(断定)。

 

「大体これ二千年代の初頭も初頭じゃない。へ? 何でこんな古い写真に……、アレってば子孫? 本人な訳ないわよね」

「いやー、本人じゃねぇの? 詳しくは知らねぇけどインタビューで『今は遥か遠い場所で会えない彼女のために』とか何か言ってるし」

「あと、超包子の超って人名だったのね……。なんかこう、スーパー! みたいな意味かって思ってた」

 

 他にも茶々丸を指さしながら「明らかにこの時代でこんなロボット作れる訳ねーし」と言う。これをもって超の時代にそぐわないレベルのオーバースペックっぷりを説明したかったのだが、キリヱはいまいち不思議そうな顔をしていた。……いや、考えたらコイツも二千年代中盤は確実に過ぎた後の人間だから、初頭の技術力がどうだったかとか、そういう知識はないのだろうが。そもそもインターネットすら黎明期からちょっと脱したくらい、二足歩行のロボットどうこうで騒がれていた時代だ、人格を持つAIなど夢の又夢の話な時代なのだが、とはいえ私がそれを論理的に言いすぎるのも、逆に「説明くさい」と疑念を発生させそうな気がする。

 だが多少なりとも納得はしたのか「おっぱいで色々してないのね……」とほっと一息ついたキリヱ。いやだから何でそこばかり注目するのか……。(???「気安さに女の勘で何か感じたんじゃないかい? まぁ言わせるのは野暮ってもんだろう」)

 

 とりあえず話題転換のために説明書を読んでみるという話になるのだが、読んでいて成程とある程度納得すること自体は出来た。

 

「……なるほど、つまり『時○カメラ』を過去も未来も使えるって感じのやつね」

「『タ○ムカメラ』じゃねーの? 名前。

 いや、どっちかというと『お○れカメラ』を過去未来どっちにもって方が正確じゃねーのか? ドローンとか飛ばす感じじゃねーし」

 

 そんな未来の秘密道具(ドラちゃん)な話は置いておいて。

 キリヱのカードで呼び出せるアーティファクトは2種類。「ネギま!」でいう木乃香タイプに近いらしく、映写機とスーツがそれぞれに該当するらしい。説明書を読めば「元々あった破損しているアーティファクトを私、未来の火星技術でもて修復したネ!(意訳)」とのことである。

 

 そのうちの一つが、私とキリヱの会話に出て来ていたアーティファクト「時の額縁(カメラ・アド・クロノス)」である。なるほど「時の額縁」とはよく言ったものである。この映写機型のアーティファクト(試しに簡易召喚をするとハンディサイズのカメラのように変形していた)、ひとことで言うなら「過去/未来72時間の範囲で、被写体のそれぞれの時間での映像を切り抜き」「写真とする」といったところだ。簡易召喚の場合は12時間になるようだが、それを差し引いても破格である――――少なくとも「レベル2に目覚めたキリヱにとっては」。

 

「確かに、今の私にこれの組み合わせは強力ね……。ゲームみたいに言うと、イベント踏まないでもこの先のチャートをチェックできちゃうんだから」

「逆もまたしかり、じゃね?」

「そうね……」

 

 キリヱの能力で現在において「何が」ボトルネックになっているのかといえば、それは「キリヱ自身が情報を把握しなければ」過去に戻っても色々と変えようがないということである。これは時空関係の能力者なら当然と言えば当然なのだが、なにもノベルゲームのようにどのチャートからどう分岐するか、のようなものを外部から確認できるようなものではないのだ。

 それに対してこのカメラの場合、少なくともカメラ最大容量などの問題はあるが「どの時点において」「対象物が」「過去、未来において」「どういうイベントに遭遇するか」を確実にチェックできる。最大72時間という制約こそあれど、これによって得られる情報のアドバンテージはあまりに大きい。たとえチェックのために大量の写真を準備する必要があるのだとしても、それによりピンポイントでイベント関係を把握できたならば。

 つまり『リトライ&リベンジャーズ(リトライ可能な仇討ち)』を使用する前提で考えるなら、このカメラはアタリである。直接戦闘ではない「ネギま!」で言うならのどゆえ(妻妾同衾)コンビのような類のアーティファクトといえる。あちらほどオートマチックに色々やってくれるものではないが、このあたりは「修復された」アーティファクトであるという点が中々興味深い。

 

「じゃあちょっと、試しに撮ってみるけど良い? アンタ」

「ん? あー、別に問題ねーけど……」

 

 言いながら、カメラのダイヤルを操作して適当に三枚撮影するキリヱ。裏面の液晶画面的なそこを見れば…………。

 

 寮の前で夏凜に背中から抱きしめられる、夜の写真が一枚。

 

 エプロン姿の九郎丸が、うどんを食べている私にニコニコ女の子笑顔を向けてきている、早朝の写真が一枚。

 

 マコトと言ったか、ジャージ姿な彼女が私の両肩を掴んで今にもキスしてしまいそうなレベルで引き寄せて(というかほとんど抱きしめる勢いだった)、顔を真っ赤にしているお昼休みの写真が一枚。

  

「…………ねぇ、何コレ」

「いや……、えっと、そ、そう言われましてもですねぇ? えぇ……」

 

 無言でキリヱから垂れ流される謎の圧力を前に、思わず敬語になってしまった私だった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「――――ぞ、ゾンビ……? 嘘だろ、オレを騙そうとしてんだろ? じゃなけりゃ何なんだよ一体、『マジで』なのかよそんな――――」

「とにかく気を付けて! ウィルスの詳細は不明だけど、場合によっては空気感染とかもあり得るから。僕は先に行く!」

「僕も行きま――――――」

 

「――――あっ、ちょっと待て九郎丸!」

 

 飛び立とうとした僕を呼び留める刀太君に、思わず僕は瞬動の足を「空中で」踏み外して、勢いよく地面に「ずざざー!」って転んじゃった。……か、カッコワルイけど、その、でも刀太君がいきなり僕を呼び留めるから仕方ない。仕方ないんだけど、こんなお尻が持ち上がった情けない恰好を見せてしまうなんて……。

 

 ひぅっ!?

 

「きゃあっ!? ちょっ! き、キリヱちゃん!?」

「九郎丸、せめてそのお尻突き出すポーズ止めなさいってアンタっ、乙女的にダメでしょそれ!」

 

 い、いや、確かにそれはそうなんだけど(もう性認識については八割くらい女性で固まってる)、そう「ぺしん!」って叩くのはちょっと止めて欲しいって言うか……。女性身体になってから、以前よりそういう痛みの感じ方みたいなのが変わっていて、まだいまいち慣れて居なくって。

 悪い悪いって謝る刀太君に手を借りて起こしてもらう。周囲を見れば、一空先輩の姿はない。どうやら先に現場に向かったらしいんだけど、それはそうとしてキリヱちゃんのその恰好は一体…………。

 

 キリヱちゃんはいつの間にか、なんかこう……、宇宙服っていうか、潜水服って言うか、何とも言えないカッコイイ感じの服を着ていた。首元とか金色のパイプみたいなのがはしってて、蒸気とか今にも漏れ出そうな感じだし。関節とか所々歯車みたいな装飾なのかアーマーなのか、色々ついていたりして。首の後ろにヘルメットを分解したみたいなパーツ類が並んでいて、今にも変形してきそうなイメージだ。

 あと金属とかの色が鈍い感じのところが渋いっていうか、でも質感はてらてらしてて不思議な服だった。

 

「キリヱちゃん、その恰好……?」

「私の『アーマーカード』よ。カメラだけでも良かったんだけど、何あるかわかったもんじゃないから。夏凜ちゃんとか居ないし」

「えっ!? アーマー……、キリヱちゃんもパクティオーしたの!!? 相手は一体――――」

「だ、誰でも良いでしょそんなの!? それよりちょっと九郎丸、協力しなさ――」

「いや凄い大事な話だよ! だって多分――――」

 

 僕が視線を刀太君に向けると、キリヱちゃんは途端に顔を真っ赤にした。

 

 そ、そんな、いつの間にそんな「仲良く」なって…………。

 僕が最初にパクティオーしたのにっ。

 

「いや、その嫉妬してるみたいな顔すんの止めろって」

 

 刀太君に言われて、思わず「へ?」と呆けた声を上げてしまった。いや、べ、別にそんな感情はないというか。僕は確かに刀太君のことが好きだけど、仮契約、パクティオーの効果という意味じゃ別に僕だけが限定してやっちゃいけないって訳じゃないし。それに大体「仮」契約なんだから、それが「本命」という意味じゃないし、それを言ったら僕が一番最初にさせてもらった訳だし……、でも刀太君と夏凜先輩ってすごい仲が良いから、このままあの二人がもっと接近したりしたら色々と拙いような…………。

 って、今はそんなこと考えてる場合じゃない!

 

 刀太君の苦笑いを見てハッと我を取り戻したけど、キリヱちゃんが顔を真っ赤にしながら頭を抱えて「ひょっとしてこの後、夏凜ちゃん相手にもこんなやりとり発生するの私!?」って少し恐れおののいていた。

 

「…………ま、まぁ良いわ。そもそも緊急事態だし、そこはどうこう言われないでしょう。っていうか、言うくらいなら夏凜ちゃんもパクティオーすればいいんだし……っ、そこっ九郎丸! もうちょっと乙女心隠しなさいっ! 今ちょっとシリアスな場面なのーっ!」

「えっ!? あ、うん、ゴメン……」

「ハァ……。じゃあちょっと、そこの佐々木三太、二人で抑えてもらってくれる?」

 

 キリヱちゃんが指さす先には、放心している様子の三太君。状況が呑み込めていない僕に刀太君は「ちょっと時間が惜しいからなぁ」と言った。

 

「少し頼むわ。荒事する訳でもないから。ちょっと逃げられると困るってだけだから、反対側の腕とか抑えててくれ」

「う、うん。わかった。えっと…………」

「…………」

「だいぶ重症だな。……っと、準備できたか? キリヱ」

「うん。じゃあ……、いくわよっ!」

 

 いつの間にかキリヱちゃんの前には映写機……、いや、映写機というか、何だろう。古いカメラっていうか、箱っていうか。その中で絵でも描けそうなくらいのサイズの脚立付きの箱というかテーブルみたいなのが置かれて、そこからケーブルとトリガーが延びていた。

 キリヱちゃんは半笑いのまま表情が固まってしまってる三太君をレンズの中心にとらえると「パシャリ」と何度かトリガーを引く。しばらくすると「もう離して大丈夫よー」と言われた。

 

「えっと、とりあえず30分置き、過去向けで撮影してみたけど……、ん? 何かしらコレ」

 

 三十分置き?

 刀太君と一緒に、三太君をお店の椅子に座らせた後。キリヱちゃんは大型カメラみたいな不思議な装置(背面は液晶というかパソコンみたいにキーボードもついていた!)を操作して、液晶画面に映る写真を変えていた。

 中心には三太君。左上には「2086年9月2日 15:34」みたいに時刻表示がされていた。スクロールするごとに、キリヱちゃんの言っていた通りに時間が巻き戻っていって、これは…………?

 

 やがて一枚の写真を前に、刀太君が「ストップ」と一声かける。

 

「こりゃ…………、なるほど。そりゃ『世界滅ぶ』か」

「へ?」「いや、意味わかんないんだけど、いきなりちゅーにみたいなこと言われても」

 

 刀太君が見ている写真は――――黒い制服の女子生徒が、ホログラフィックディスプレイに映る「仮面をつけた」「長身らしい」ローブ姿の男性相手と話しているのを、三太君が目撃しているような、「2086年9月2日 14:38」の一枚だった。

 

 

 

 

 




※九郎丸視点は「ST68.死を祓え!:やり直し可能な仇討ち」を見直してからの方が分かりやすいかもです
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