光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますです。
ギリギリのギリギリで深夜ならないで行けた感
 
ツイッターでも言いましたが、そろそろまたアンケとるかもです(詳細はその際の活報か何かで)


ST73.死を祓え!:時を超える縁

ST73.Memento Mori:Time Is Irrelevant In Connection

 

 

 

 

 

 お前デュナミスだろ!? デュナミスだよなコイツ!!? デュナミスのくせしやがってテメェこん野郎(にゃろ)ッ!!!(デュナミス三段活用)

 

 思わず内心で悪態をついてしまったが、三太が目撃しただろう光景を思えばさもありなん。キリヱのアーティファクト「時の額縁(カメラ・アド・クロノス)」により撮影された三太の数時間前の写真に写っていたのは、水無瀬小夜子と誰それかが携帯端末で通話している姿。場所はどこかのトイレのようだが照明は「通話している所だけ」異様に真っ暗。そしてホログラフィックで映し出される相手とは、白いローブに顔面の顎を除いた左半分が覆われる仮面をつけた褐色の男性。容姿が普通にイケメンなところ悪いのだが、手足が通常の人間よりも長く、また若干肥大化してるようなシルエットをしている。別にカメラの被写体距離や作画パースが狂っている訳ではなく(メタ)、もともとこういう容姿である。

 この男はデュナミス、と通称される。「ネギま!」時代からの、いわゆる「敵組織の幹部級」の人物だ。「UQホルダー」においては後半ちょっと顔を出した程度で出番は多くなかったが(まだしも魔界四天王(?)の方が多いくらい)、正面から戦う分には普通に強敵である「魔術師」だ。もっとも近接戦時は肉体戦闘用の姿に変貌するのだが前後関係を踏まえると、明言こそされていなかったがその素性はおそらく「魔界」由来のものもあるのだろう。つまりは現代魔法使いたちが跋扈する現代においても、当然のように強敵にカテゴライズされる。また「ネギま!」時代に復讐の執念を燃やしていたタカミチやらゲーデルやらも流石に死去しているだろうこともあって、おそらく当時よりも冷静、冷徹であろう。つまりこの時代にいたら、間違いなく面倒な敵ということだ。

 そのデュナミスが水無瀬小夜子と何やらやりとりしている、という一枚である。原作を踏まえれば、つまり今回のゾンビウィルステロのバックに間違いなく「完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)」――つまりは本当の意味で「敵」の組織――がいることを伺わせる。

 というか確か彼女には「共同研究者」とか「師匠」とか原作だといたって話だし、そう考えると「完全なる世界」もしくは「魔界」関係の相手がそれぞれに該当するのだろうか…………。

 

 だが、とはいえそんな話をご丁寧に二人ともに説明することは出来ないのだが。

 なので表面上、一枚の情報から得られる分の推測だけを話す。

 

「どう見てもコレ、ヤベー感じじゃね? まず写真そのものが」

「どーゆーことよ? 別に何か、トイレだってことを除けば――――」

「違う、キリヱちゃん。これ心霊写真だ」

 

 流石に神鳴流だと言うべきなのだろうか、写真の中に散見される「赤」と「黒」の玉のような水滴のようなホコリのようなそれを指さす。それらは一般的な心霊写真に写る「玉響(オーブ)」と呼ばれるものとは違い、明らかに、女子生徒のいるトイレの個室から湧き出ていた――――というより、写真においてそこが真っ黒になっていること自体が、そのオーブが彼女の周囲に集中していることの証左だった。

 

「怒りのと恨みつらみの色……、っていうか具体的な形をとっていないだけで『大量の怨念』がこの女の子に集まってるよ二人ともっ」

「ちょ、ちょちょちょっちょ! ちょっと! 大丈夫なのそんなの見て私たち!? カメラの故障とかじゃなくってってことよね?」

「そのあたりは多分ぬかり無ぇだろ(製作者が製作者だし)。後、心霊写真ねぇ。マニュアルに何か書いてねーか?」

 

 よほど怖がってるのか慌ててるのか「マニュアル」の「ニュ」あたりの時点で「そうだわ!」と大声をあげて何処からともなく例の「超包子」印の取説を取り出すキリヱであった。なお結論から言うと「時空間連続帯から一瞬をキャプチャーしてるだけだから、怨霊被害とかはないというか、対象の時間が止まってるから『知覚』されない以上問題はないネ」と、実に頼りになるんだかならないんだか不明な記述がされていた。

 

「つ、つまりどういうことよ? とりあえず心配しなくていいのよね? ね?」

「まあ何かあっても問題ないだろ? お前の場合、どうせ『戻ったら』――――」

「問題あるのよっ! レベル2の場合は『現在の状態を引き継いで』リスタートになるから、毒とか欠損とかはそのまんまだったし! 仮に殺されたりしちゃったら、『一番直近のセーブポイント』にレベル1の要領で逆戻りなのよっ」

「いや、まー、タイトル行けねぇだけで別に問題ないんじゃね? やり直し自体は出来るんだろ?」

「そーれーでーも! 痛いのも怖いのも嫌なのよっ! それはそれで別問題!

 べーつーもーんーだーいーっ!」

「わ、わかったからアーティファクト振り回すの止めてくだせぇ……」

 

 思わず三下口調になったが仕方ない、身体能力もちょっと上がってるせいかカメラを脚立ごと手に持ちぶんぶん振り回しながら文句を言ってくる様は、変に風圧がぶんぶん来るのもあっていささか怖い。いくらキリヱに協力することに申し訳なさから色々と主義を投げ捨ててでもという前提はあれど、痛いのは基本的に嫌なのだ。(鋼の意志)

 しかし成程、意外と上手いこと出来ているらしい。つまりは「死なない状態で」リセットが発生する→レベル2、「死んだ際に」リセットが発生する→レベル1、といったような住み分けがなされているのか。……となるとやはり原作同様に石化など「意志を封じ込められる」系統の技に対しては、彼女の固有能力は苦手とみえる。ひょっとすると下手に石化しかかってる際などにレベル2を発動すると、「例の部屋」の中で石化したまま動けなくなってしまうのでは……? いや、そこは流石に師匠の温情を信じたいところだが。どうかそういう時はお願いしますよォ!(陳情)(???「まあそこはもうちょっと上手いこと出来てるもんだよ」)

 

「『戻ったら』……、『レベル2』?」

 

 そして私たちのやりとりに違和感を覚える九郎丸だが、悪いがもう少し説明は待って欲しい。「悪い、後でな」と断りを入れてから、三太を立たせて画面の写真を見せる。

 

「コレ、お前見た光景だと思うんだけど。何か記憶にあるか?」

「は、はは……………? へ? 写真? ……この、小夜子……?

 いや俺はこれ……、何見て……………、そうだ! 小夜子が――――あ、あああああッ!」

 

 叫び、起こしていた私の腕を振り払い。その場で崩れ落ちて頭を押える三太。三太の全身からも「黒い粒子」のようなものが噴き出し、思わず飛び退いた。「ちょっ、何よこれ!?」と叫ぶキリヱを庇う様にして倒れるが、しかし漏れ出た瘴気を九郎丸はわずかに浴びてしまった。わずかに黒が染みついた左腕を庇う様に倒れる九郎丸。

 

「大丈夫か九郎丸っ!」 

「刀太くんも! そっちも気を付けて!

 ……これはっ、くっ、あ、来たれ(アデアット)――――」

『(――――ちょ! 僕、一体これどういう状況ッ!?)』

 

 状況的に察するものがあったのか、あるいは既に身体から違和感を感じたのか。神刀を呼び出して「左腕ごと」切除しようとしたが、わずかに遅かった――――。白目をむきその場で倒れた九郎丸に、キリヱは「嘘でしょ!?」と大声。足元に転がる神刀が、わずかにかたかたと揺れている。

 

「ど、どーすんのよ刀太、アレ『感染しちゃった』じゃない! 情報収集の目的もあったけど『こっちの』九郎丸を連れていくつもりだったんでしょ? 仕方ないから今朝まで戻って、『あっちの』九郎丸も連れて行くってのでもいいけど――――」

「いや……、出来る限りここの九郎丸を連れて行ってやりたいっていうか……。もっと言うと本当は夏凜ちゃんさんとか、一空先輩とかも含めてって話ではあるんだけど」

「そ、そんな欲張りさんとか無理なんですけど!」

 

 流石にそこは弁えている。セーブした時点からすぐ消える一空を呼び止めるだけの余裕がないのと、夏凜に至っては何処にいるかわからないという問題もある。だが出来る限り「同じ時間から」人員を連れて行きたい、というのが本心だ。

 本来のキリヱの能力ならば、それこそ超が言っていた話を前提とするならば。ここで生きている人々の状態は、キリヱが選んだルート以外では「セーブを消されれば」上書きされるのだ。だから歴史が分岐して、滅亡した状態というルートが発生することは運用上そうそう無いといえるかもしれないし、だからこそ別に九郎丸たちだって「ここでやられても」上書きされて元通りになるのだが。

 

 だが、それでも――――ここまで共に戦ってきた九郎丸たちを、出来るだけ見捨てたくはなかった。

 限界がある以上は、それでも「出来る限り」でいいから助けたいと考えるのは、そう無茶なことだろうか。

 

「ちょっと、と、刀太……」

「…………悪い、少し付き合ってくれ」

 

 黒棒で空中に円を描くよう「大血風」を展開し、そこから雨が降り注ぐように血装して死天化壮(デスクラッド)を纏う。倒れた九郎丸はいまだ痙攣しているが、しかしその手が夕凪に伸びているのを見逃してはいない。

 現在の九郎丸は本来の九郎丸の意識で動いていない、つまりドラゴ○ボール(オラわくわくすっぞ!)でもあったような「肉体と精神が同調していない」状態にある。当然洗脳されてる状態では神鳴流も満足には揮えないだろう。だがとはいえど九郎丸に違いはない以上、その不死性や根本の身体性能にそこまで落ちはないと見て良い。

 

 ならば勝負は速攻だ。

 

 死天化壮最大加速で九郎丸に近づき、小さい神刀を回収。そのまま左手に持ったそれで九郎丸の胸部目掛けて――――。

 

『(っ! 危ない刀太君ッ!)』

「はいっ!?」

 

 九郎丸の声が聞こえた気がするが、果たして気のせいだろうか。だが咄嗟に神刀に「血装」をまとわせたその条件反射のような判断は、実際間違っていなかった。

 

「――――っ!」

 

 白目をむいて痙攣していたはずの九郎丸は一瞬でこちらを睨みつけ、夕凪の柄頭で私の左腕を「叩き折った」。死天化壮ごとぶん殴って「千切る」とかどんだけだお前!? 意外とお前ゴリラなのか? ゴリラじゃねーか、ゴリラのくせにコイツ!(ゴリラ三段活用)

 とはいえその血しぶきから展開した血風もどきが九郎丸の右腕にあたり、その腕の服を引きはがし夕凪を取りこぼさせた。

 わずかに一瞬、腕から黒い瘴気が抜けるのが見えるが……、服の上、心臓のあたりから瘴気が湧き再び腕を覆いつくし、見えなくなった。

 

 距離をとり腕の状態を見る。勢いがあまりすぎて肉を裂き骨を砕き、皮と血装で辛うじて繋がってるような状態。…………って情景描写でごまかしが利かねぇ! 痛い痛い痛いからァ! 瞬間的にはアドレナリンか何かが働いてるのか痛覚がマヒしていたようだが、再生が始まった瞬間に痛覚が帰ってくるの止めろ、神刀落としそうになるじゃないかっ!

 

「流石に腐っても九郎丸。予想通りとはいえ容赦ねーなぁ」

『(ご、ごめんね僕が……。って、それはそうとこのタイミングで褒められてもあんまり嬉しくないよっ刀太君っ)』

「…………そりゃ悪かったなっていうか、やっぱこれ声聞こえてるな」

『(へっ?)』

 

 一瞬刀がぶるりと震えた。……どうしてか理由はわからないまでも、今この状況において「神刀と化した九郎丸」の声が私には届いていた。いや本当、一体何があったというか、どうした? 私の問題なのか九郎丸側の問題なのかで色々と今後の対応を考えないといけないのだが、ちょっと今こういう状態になると困ってしまうというか……。

 

『(と、刀太君……! 僕の声、聞こえてるんだね! 僕、僕、君にいっぱい話したいことが――――)』

「あー、悪ぃけど後回しさせてくれ、な? …………こっちから近寄らないと、襲い掛かっては来ねぇのか」

『(あ、うん。そうみたいだね。…………たぶんだけど、僕の体内に直接刀太君の「血風」を注ぐか、「この僕で心臓を一刺し」するかすれば治ると思うんだけど)』

「何でお前さんが『血風』知ってんだよ、違う歴史とか出身だろお前」

『(それは……って、あ、駄目だ。もっと後になってからなら、たぶん大丈夫なんだと思うけど……)』

「まーアレだな、そこは師匠と要相談ってこと、で!」

 

 未だに瘴気を放ち続ける三太に向けて小さい血風を投げるが、九郎丸が庇う様に立ちはだかり全身から瘴気を放ってそれを防いだ。今度は衣服が破けることもなく、相殺されたらしい。それを見てニヤリと笑うと、洗脳九郎丸は両手に「瘴気で」刀を作り構えた。

 単純に戦うだけじゃなく最低限は学習して行動してくるのか…………。おそらく類似のメソッドが一般ゾンビウィルスにも組み込まれているだろうことを思うと、色々と頭が痛くなる話だった。

 

「だ、大丈夫なの刀太。私、なんかこのすごいスーツあるけど、何か力に――――」

「いや慣れないことは止めとけって。お前さんは生命線なんだから。また超にタイムパトロールされんぞ」

「タイムパトロールって動詞じゃないわよね……って、そんなことじゃなくって! そうじゃなかったら早く『あっちに』戻るわよ! 私にとってもアンタが生命線なんだから、無茶して死なれるのなんて『もう沢山』よっ!」

 

 流石にそろそろ潮時だろうか。いまいちあの九郎丸と刀を交えてはいないが、確実に言えるのは「時間がかかる」ということ。その間に街のゾンビ率がさらに上昇してここにまで来られたら、流石にキリヱを守り通すのは厳しくなってくる。おまけに今は九郎丸は三太を守るように立ちふさがっているが、その状況になってまでここで暇をつぶしているとも考えづらい。

 せめて短期決戦――――せめてあちらの反撃だけでも止められれば。

 

 

 

「動きを止めれば良いんだな」

 

 

 

 えっ、と言葉を続ける間もなく。

 いつの間にか私たちの後ろに立っていた彼は。赤茶けた髪にニット帽をかぶり気だるげな表情の釘宮大伍は。眼鏡の位置を直すとおもむろに、「胴着とも狩衣ともつかない姿」で「頭に犬耳の生えた」姿が描かれたパクティオーカードを構えた。

 

「『来たれ(アデアット)』――――余壱の重藤弓(ヨイチノシゲトウキュウ)

 

 その左手には朱色の大弓。漆塗りだろうか、しかし所々剥げたその様は歴史を感じる。それを左手に構えると「自分の影から」弓に見合った大きさを持つ漆黒の矢を番え。

 

「犬上流獣奏術・狗音(くおん)ノ雪(スノウフォール)

 

 上空に向けて放った後、矢はほどけ「無数の狼のような影」へと変貌した。

 変貌したそれらは九郎丸に襲い掛かるが、瘴気の剣で立ち向かう洗脳九郎丸相手にはいまいち成果が振るわない。

 本人はいまいち不満そうだが、ちょっと私が呆然とする時間くらいは捻出できてしまった。

 

 というかその技と言うか、流派名…………。

 

「だ、誰ヨ?」

『(僕も知らないんだけど……)』

「…………えっと、ひょっとしてだけど」

「? 何だい、近衛刀太」

「ご血縁に『犬上小太郎』っていらっしゃいますかねぇ」

「…………俺の祖父だよ。ついでに言うと、幼いころから『修行や!』とか『お前はネギの孫かひ孫かは知らんが、そいつの助けになるんや!』『お前は狗神遣いの星になれ! エヴァンジェリンはんに負けたらイカン!』とか、ずーっと鬱陶しかった祖父だ」

「お、おぅ…………」

 

 学園に来れて毎日毎日修行修行と言われなくなって少しせいせいしてるよ、みたいなことを滾々と感情が死んだ声で言う彼に、言葉を続けられない。

 状況がいまいち呑み込めていないキリヱはともかく。どうして初対面で微妙な恨まれ方をしていたのか、なんとなく察してしまった私であった。そりゃ見た感じ、全然ああいう修行とかだーい好き! な熱血タイプじゃないもんなぁ。そっかぁ…………。(いたましいモノを見る目)

 

 

 

 

 

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