光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ!
わかりにくいけど、ちょっとキレてるチャン刀・・・


ST83.死を祓え!:懺悔からの道標

ST83.Memento Mori:Steer For the Dead-End

 

 

 

 

 

 全然、駄目だ。

 正直なことを言ってしまえば、スーパー三太様でもお手上げってハナシだった。

 

 トータたちと図書館島で色々調べものをしている時、俺は密かに別な調べものもしていた。トイレのサヨコさんって七不思議と小夜子が別人であるって証明ができなければ、たとえアイツが「生身で」「生きているのだとしても」こいつ等はどうするかわからない。トータやクロウマルとかと多少話す様になって、そんな悪い奴らじゃないってのは判ったけど。分かったからってそういうことを絶対しないとも限らない(例えばここの学園長代理とか)。

 

 だからこそ、七不思議の校内新聞を調べている横で、学園の年代やら卒業アルバムやらをひっくり返して色々と調べていた。

 

 その時に、古い方から調べていったら一つそれっぽいのを発見した。2003年の卒業アルバムに、黒(紺?)のセーラー服を着用した幽霊っぽい何か。心霊写真が多数映っていて、卒業生一覧のところに「該当しない生徒」が一人いる。

 

 相坂さよ――――うっすら映ってる写真のそれにも該当するし、間違いない。コイツだ。きっとコイツに違いない。

 

 校内新聞のバックナンバーを調べても当時の情報は色々と出て来たし、80年前ごろにトイレのサヨコさんって話が出て来たみたいなことをトータの妹たちもしてたから、絶対コイツだ。コイツがサヨコさんだ。名前も似てるし、たぶん聞き間違えたんだろう。

 

 よかった、小夜子は無実だ――――それで肩の力を抜いたけれど、とはいえ80年前に既に幽霊だった相手が、なんで突然こんな連続殺人なんて引き起こし始めたのかはさっぱりだ。たぶん、そこのところも突き止めないといけない。

 

「でもそれこそ全然、手掛かりがねーんだよな……」

 

 犯人を突き止めたあたりまでは流石スーパー三太様! だって話なんだが、そっから先全然話が進展しないのは正直どうしたもんか。

 まだ調査始めてから二日目? 馬鹿言うな、ネットに転がってる情報なら三時間足らずで一通り集められらァ!

 

 それが出来ないってことは、あの放課後から閉館間際までかかったような作業をまたやらないといけないって話な訳で……。かったるい…………。

 

「今時紙とかちょっとわけわかんねぇぜ……」

 

 そんな愚痴をこぼしながら一人歩いている。刀太たちは、なんか作業が長引いているとかで遅くなると連絡がメールで入った。例のゾンビだか何だかを調べに来てるって割には色々遊んだりとか、方向性が謎っていうか。本気で本腰入れて対処するつもりがあんのかって思わなくもない。

 

 まぁ、その代わり俺も俺で色々やれることがあるって話なんだが――――。

 

「――――おっとッ!?」

 

 トータの携帯端末にクラッキングをかけて、周囲の盗聴をしようとしたら弾かれた。ウィルスソフトなんてチャチなもんじゃねぇ。どれだけセキュリティを凝ったところで、このスーパー三太様視点から見れば、正面に壁は有っても左右は開いているみたいなもんだ。だっていうのに侵入できなかったってことは、明らかに何か、それこそ俺様みたいなのと同格な相手でも存在してるってことになる。

 つまり科学技術じゃなくてオカルトとかの分野――――それこそ、超能力者とか電子の妖精とか、そんなモンでもいるのかって話だ。

 

「ひょっとしてバレたか? ……いや、バレたところで対処できるようなモンじゃねぇ」

 

 ふと、背筋に悪寒を感じた。それを誤魔化す様にパーカーを被り、「能力」を駆使して街中、ビルの窓ガラスとか壁を蹴って空中を散歩する。こう、自由きままに振舞っていると、自分がスーパーヒーローにでもなったような錯覚をする。いや、錯覚なんかじゃなく実際このスーパー三太さまはスーパーヒーローみたいなモンだけど、でも現実にそんなものは居ないってオレはよく知っているんだ。

 でなければそもそも、俺は「こうはなってない」から――――あれ? こうなっていないからってどういう?

 

「痛ッ」

 

 一瞬頭痛がした。疑問を思い出そうとして、でもそれは「いらない」ものだと。頭を左右に振り、もっと上に上がって走り、飛ぶ。月が微妙に曇っていて、でもその光はきっちりと俺たちのいるこの世界まで届いている。

 おまけにスーパー三太様の視力なら、いくらだって、どこだって、どんな暗闇だって見逃さず見通せるだろう。

 

 だから、嫌々だったけど見つけちまった。

 ついちょっと前、ホームレス狩りみたいなことをしてた三人。制服着崩してたりジャージだったり色々見るからに不良だけど、あれでも魔法のウデは悪くないから一等生徒。それを傘に着て悪さしてるってのを、トータたちとやりあった後に調べて情報は掴んでる。

 今日も懲りずに何やってるのかと言えば、一人の制服姿の女の子を追い詰めていた。あくまでナンパの延長なんだろーが、怖がってるのか女の子は頭を下げてて顔が見えない。

 

「現行犯まで行ってないのに問答無用ってのは流石にアレだからな…………。一応、少しは様子見るか」

 

 べ、別にトータに言われた「止める気持ちもわかるけど」「もうちょっとバレねーようにやれ」って話をうのみにした訳じゃねーんだからな! ただ、スーパー三太様はスーパー物分かりが良いから相手の言ってることも理にかなってるならスーパー柔軟に吸収するってだけで……。

 

「――――だからさぁ、こんな所に来たって良いもの何もないだろ? 俺達と一緒にもっと楽しいところ行こうぜ? 絶対楽しいところだから」

「そうそう、タワーとか行こうぜタワー! シンちゃんオススメの穴場あるんヨ! シンちゃんオススメだから、めっちゃオススメだぜ!」

「そうそう、あそこにめっちゃキレーな夜景見えるところだから、めっちゃキレーな夜景だぜ?」

 

 クズのIQ低すぎだろッ!

 思わずツッコミを入れそうになったけど、アイツらの表情は浮足立っていて、でもオッサンとかに向けて適当に魔法で暴力を振るっている時とは違う種類の表情が浮かんでいて。

 どうしてそんな純粋な子供みたいな表情を浮かべられるくせに、あんなことやるんだって憤りが湧いて――――。

 

 そしてその少女の口が「耳まで裂けた」。

 

 へ? と。言葉を続けるよりも先に、首が延び、女の口ががばりと開いてニット帽の男を――――。

 

「って、このッ!」

 

 気が付いたら体が動いていた。いきなり怪物(妖怪?)みたいなのが出て来たこと自体意味不明だった。おまけにアイツらはクズだし、本当なら助ける謂れも何もない。あのまま口が閉じて死んだとしても、いい気味だと思うはず、なんだが――――。

 

 気が付いたら念力で、食われそうになった男を後方に突き飛ばしていた。

 

『――――ん? エサ、逃げた?』

「え、餌……?」

「し、シンちゃんヤベェよこれ……絶対ヤベぇやつだよこれマジヤベェって!」

 

 透明化してるお陰で、いまだ上空にいる俺の姿を見つけられていないあの口裂け女なのかろくろ首なのかわからない奴。

 と、シンちゃんとか呼ばれていたオールバック風の髪の長いジャージ野郎が、突き飛ばされた奴ともう一人に逃げろ! と声をかけた。

 

「う、ウチの家の隣の家の婆ちゃんとかが、妖怪とかそーゆーのは居るって言ってたし……、す、スラム系の掲示板でこーゆー連中の目撃情報ってあるから、よ……!」

 

 俺が三人じゃ一番強いから、と。足止めをしてる間に警察なり何なり呼んできてくれと。こんな人気のない路地で何言ってるんだかって感じだ。

 でも、不思議と気になった。さっきのアレは気まぐれにしても、コイツがどこまでやれるかってのにちょっと興味がわいた。…‥、いや、本当にそれだけだからな! 深い意味とか、同情とか、そんなんじゃねーから!

 

『エサ、エサ……』

「こ、これでも喰らえ――――!」

『―――――んくっ』

「ってマジで食った!?」

 

 火の矢を十本同時に生成して(たぶん魔法アプリだろう)射出したけど、それらを全部「肥大化した頭部」で、一口で食べた。まるでコミックか何かのモンスターじゃねぇかコレ……。P・A・L☆ザ・コミックマスター(コミマス)(※漫画家)の漫画ですら今時出ないレベルの、ある意味チープ極まりない感じの怪物だ。でも、そんなモンが現実に居たらまた違った話だ。

 

 それでも魔法を連射しようとするヤツのそれを、特に気にした風でもなく適当に食べる怪物の女――――。流石にもう無理だな、食われちまう。

 助けてやる義理は欠片もねぇけど、目の前であんな訳の分かんない不条理なモンに食われてオシマイなんて、いくら何でも後味が悪い。どうせ殺されるのなら、「自分が虐げてきた」連中に殺されろってハナシ。スーパー三太様は因果応報にうるさいんだ。だから――――。

 

 ――――俺が念動力で止めに入るよりも早く。雷みたいな光る何かが、怪物の大口あけた側頭部に激突した。

 

「は?」

 

 意味が分からねぇ。というかビカビカ光るシルエットは、夜目には眩しくて形もわからねぇ。そんな状態のそこに、アイツは現れた。

 トータ……、前に戦ったり、妹たちから逃げたりしてた時のコートみたいな姿で。片手に黒い剣を持っていて――――。

 

「血風――――」

 

 エサ、エサ、と。言葉もロクにならないまま、バケモノは周囲を見回して今自分にぶつかった相手を探しているが。その電気みたいなやつは、瞬時に「上空にいる」トータの真横に移動していた。どんだけ距離があると思ってるのか、本当にまるで光みたいな速さだった。

 

「――――創天!」

 

 そして、刀を振るうトータ。今回は突き刺すみたいなモーションで、でも剣から真っ赤な刺突の斬撃が「伸びる」のが目で追える――――。落ちていく、刃が脳天を貫く。と、それと同時に怪物の全身がまるで、カマイタチとか嵐とかに巻き込まれたみたいに、粉々に、バラバラに、ミキサーにかけられたみたいに飛び散った。

 

 ぐ、グロい……。と思ったけど、なんかすぐに肉片とかそういうのは、煙をずぷずぷと上げて消えていく。やっぱり妖怪とかそういう系統の奴なのか、アレ……?

 

「ままならぬ…………。いや、やっぱオーバーキルってことに変わりねぇって話なんだが」

『ふみゅ?』

「っていうかお前もお前でもうちょっと真面目に戦えそうなモンなんだから、もうちょっと普通にやれっての。せっかく『形の上では借りてる』ような訳だから、戦闘面でも役立つ一面を……」

『ぴ〇ちゅちゅ〇か?』

「だから配慮ッ」

 

 特に空中のまま、その場に降り立つようなこともない刀太。下であの野郎がその姿を見上げているのを気にも留めていねぇ。と、刀太にデコピンを喰らった光ってる何かが、今度は何を察したのか瞬時に俺の目の前に現れた。っていうか何だこいつ、ネズミにしちゃ可愛げがありすぎるし、どっちかというとミュ〇みたいな尻尾してやがんな……?

 そいつは、俺と目が合う。

 

『ふみゅー』

「…………」

『ふみゅ!』

「熱ぃッ!」

 

 そしてソイツは、何を思ったか放電しやがった。コイツ、世界で二番目に有名だったネズミみてぇなことしやがるじゃねーか! いくら透明化してても、流石にそういう電気攻撃みたいなのは通る。というか身体透過して物理無効とかに気を回す暇がなかったって言うか、こっちの反応速度以上に速くやられちまったら世話はねぇ。

 解ける透明化、そして全力でその場から逃走した。あのままいたら電撃喰らい続けてノックアウトされちまいそうだってのもあるが、その場に居続けたらトータの野郎に俺が居たのを勘付かれて追われちまう――――。

 

「おーい、ちょっと待てよ!」

 

 あー、もう手遅れだった。

 電気ネズミみたいな奴(アレも妖怪?)ほど速度は出てねぇけど、それでも普通に追いすがってくるトータ。途中、追っ手を振り切ろうとビル群の隙間に入ってぐるぐる回ったりしたところで、それすら「空中を踏み」、急なターンとかもして追跡してきやがる。

 ったく、どうして日常生活じゃあんな鈍感系主人公みてーな「フリ」してやがるくせに、こういうのばっかちゃんとやってくんだ脳みそ筋肉かっ! レベル上げて物理で殴りゃ良いって問題じゃねーんだぞこの現実世界!

 ただ、トータはさらにこっちの予想を上回ってきやがった。

 

「せっかくだし少し話そうぜ、『三太』!」

「は、はァッ!?」

 

 突然名前を呼ばれて、思わず動きが止まっちまった。な、なんでコイツ、正体が俺だと分かったんだ!? しかも絶対確信持ってる感じだし…! で、その隙を見逃すようなトータじゃなく。瞬間、こっちの背後に回り込んで腹を抱え上げて(お米みてーな感じ)そのまま地面に急降下。ほぼ衝撃を吸収するための減速も何もなく、一瞬で当たり前のように着地していやがった。何だこの動きキモッ! 物理的に気持ち悪すぎるだろっ!

 

 と、どこからともなく、どっかで見たニット帽が現れる……、って! こいつ前、普通に俺を殺そうとしてきたオオカミ野郎じゃねぇかっ! な、何クールっぽく眼鏡の位置直してんだよ、ポテチ食べた手でグラス触るぞオラっ!

 

「あっちは、あらかた終わったみだいだね。……、そこの彼は?」

「いや、何ビビってんだよ三太……、ほれ」

「あっ」

 

 すっとフードを下ろされて、でも思わず刀太の背中に隠れてしまった。い、いくらスーパー三太様といえど、素性バレはまずいってモンだ。俺様をはじめヒーロー稼業に身をやつす日本人は奥手ってわけじゃなく、プライベートを守るために最大限配慮しなければいけないって相場は決まってんだ。

 じいっとこっちの方を見て、ため息をついたニット帽野郎。

 

「どうした? 釘宮」

「どうしたもこうしたも……、彼、――――だぞ?」

 

 ひそひそとトータに何か耳打ちするニット帽野郎だが、トータは肩をすくめて「知ってる」と返した。

 

「知ってるって……、君は一体何を考えてるんだい。俺だって場合によっては擁護できないんだぞ? 『委員会』的には日常的なトラブル報告とか――――」

「あー、そのあたりもひっくるめて、一つの流れがあんだよ。ま、一種のキーパーソンって扱いだ」

「こんな男が?」

「少なくとも、一歩間違えると世界があっという間に滅んじまうくらいに、な。ゾンビで溢れかえったりするやつ」

「何の話だい……」

 

 ため息をつくニット帽野郎に苦笑いしてるトータ。でも、その言ってることにはなんとなく嫌な感覚がある。俺が、キーパーソン? しかもゾンビって、コイツら「UQホルダー」が調査しに来ていることを考えると、あながち冗談とも言えない……?

 いや、それはコイツらが小夜子を犯人だと決めつけているからだ。小夜子に関係ある俺がキーパーソンっていうのは、その程度、犯人に親しい奴がいるくらいの話なんだろ。

  

「…………とりあえず、色々ぶっ壊れても大丈夫なところってあるか? 今からちょっと、コイツと話さないといけないことがあんだ」

「だから何の話だい、君は……、唐突すぎるだろ。大体、壊れても大丈夫な場所? それこそ教会の地下とかにでも行けばあるんじゃないのかい。確かホールではないけど、魔法戦闘に耐えられる場所があったはずだが」

「それだ! ナイス釘宮ー、伊達や酔狂で麻帆良の生徒やってねーわ」

「麻帆良?」

 

 どうやら旧地名が通じてねぇらしいが。刀太は俺の方に向き直って、少しだけ逡巡してから。

 

「――水無瀬小夜子について、話さねぇといけないことがある。ちょっとした伝言を頼まれたし」

「…………はっ?」

 

 小夜子? なんでコイツの口から、まるで面識があるみたいな言い回しが出て来るんだ? ひょっとして――――会ったのか? 俺でさえ全然、最近どころかここ数日本気で探しても見つからないアイツに。

 全く想定していなかったその一言で、スーパー三太様の名探偵としての自負は、吹いて飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

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