光る風を超えて   作:黒兎可

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感想や誤字報告、ここ好きなどなど毎度あざますですナ
話が後半差し掛かりのくせに中々進まないので、今回はちょっと早めに投稿です・・・カルピs(ry


ST84.死を祓え!:プロトタイプ

ST84.Prototype of DEATH

 

 

 

 

 

「妖魔の討ち漏らしはよくある。外に出たのを見たのなら後を追うのは実際正解だよ、近衛」

「あー、てっきり途中で抜け出す形になるかと思ってたんだが………。そこは杞憂だったと」

「一言断りを入れて欲しかったけれど、『この速度』で動いてるとなると俺も狗神を使わないと捕捉できなかったろうからね」

『ふみゅ……、らい、ちゅ?』

「「オイマテ」」

「か、可愛い……!」

「お、お兄様、私にも見せてください!」

 

 思わず釘宮と一緒にツッコミを入れてしまったが、相変わらず雷獣は暢気なものである。私の携帯端末にひっつきながら、「ふみゅ?」とか「ピチュ?」とか相変わらずな様子であった。

 水無瀬小夜子と色々話し合って……、というより思わず説教してしまって(説教というほどのまともなアレではなかったが)、一旦墓所に戻った私だったが。とくに釘宮から何か言われることはなく、撤収作業を手伝っていた。

 

 不思議に思い色々聞いてみると、どうやらそういうことらしい。……そして実際問題、この雷獣については扱いに困っているようだった。たまに妖魔が一緒についてくる、というようなことがあるらしいが、それにしたってと頭を悩ませている。

 

「しかし特A級クラスの妖魔とか……。国によっては億単位の値段が動くぞ? それ」

「億ゥ!?」

「どういうこと? えっと、釘宮君?」

「時坂君、だっけ。雷獣、その中でも比較的近年『雷子(らいし)』と名付けられたタイプのそれは、電脳精霊、オコジョ妖精に上位の妖怪といった属性が噛み合った存在、らしい。電子機器に入り込み情報収集・学習して自らをアップデート、かと思えばオコジョ妖精のようにいとも簡単に人の心を介し、実際の戦闘能力もズバ抜けている。何かしら、雷属性の呪術とかの化身とも考えられているらしい」

「設定盛りすぎかッ」

「俺もそれは思うけど。……だけど鳴き声の模倣が出来ると言うことは、その気になれば人間の言葉もしゃべれるという事じゃないか? やっぱりデータファイル同様に相当賢いと考えられるか…………」

「…………? あ、すみません。お嬢様から連絡が――――」

 

 勇魚と別れた後も仕事自体は続いている。何件か場所をまわり既に夜。街の一角……、思いっきり「龍宮神社」とか書かれているのだが、少し場所が変わったのか分社なのか? 奥に「まほら武道祭」が開かれた際のあのステージが出来るようなほど広い場所ではないし。そこの社を中心に結界を張り、敷地内で戦ったのだが。

 

『エサ、エサ『エサ『『エサ『『『エサ『エサ『『エサ』

「いや多いわッ!」

 

 ろくろ首と口裂け女とか、後何か何種類か妖怪っぽいのが混じってる妖魔が、所狭しと現れていた。しかも全員これでもかというくらいコピペしたみたいなビジュアルをしている。そしてソイツらは、我々の目前で単細胞生物のように「分裂した」。分裂した後も「エサ、エサ」と何かを求め彷徨い歩いている。

 こういうタイプとは流石に予想していなかったらしく、人員も非常にやり辛そうだ。

 

「いや俺とかは問題ねぇけど普通に強すぎだろっ! 学生レベルじゃねえし」

「確かに、異常だ。普通、こういった案件は魔法先生が先行で調査や判断をした上でこっちに回ってくるものだから、難易度を見誤ることはないはずなのだけど……」

「オイ、何か情報ねぇのかよ釘宮!」

「ない。というか大半の妖魔はないんだ。特に沢山出て来るもの、数が少ないが目撃情報が多いもの、人類に有益であるもの、そういった相手なら――――っ、ちづ!」

 

「う、うそ……っ、魔法が効かないっ」

「漫画だ――――た、食べられたッ!?」

 

「こりゃ拙いな」

 

 釘宮が成瀬川のフォローに回ったので、私は豪徳寺さんの方へ……いや豪徳寺といってるがやっぱり見た目がほぼ完全に「ネギま!」の夏目萌のものなので、違和感が凄いのだが。彼女の前に立ち、血風をその場に「置いて」、お姫様抱っこで一旦離脱。

 

「お、おおぉ…………、こ、この展開! 今時めったに見られないベタベタな救出劇ですね!」

「何でテンション上がってるんだか……」

「と、刀太君! こっちもヘルプお願い!」

「よし来た!」

 

 まぁ何が面倒かと言うと、ひたすらに涌いてくる上に一体一体がそこそこ危険。少し入団テストの時のアレを思い出すが、実際に要領もあの時と変わらなかった。血風創天の代わりにすべて血風だけで対処しているが、しかし倒された後の解け方がグロいグロい――――。

 そうこうやっているうちに、私たちは見てしまったのだ。

 

『エサ、エ……、エサ、「探しにいこうかな」』

 

 和服を着用していた一体が、いきなり制服姿の女子高生に姿を変えて。しかもぶつぶつとしゃべりながら、いつの間にか姿を消してしまったことを。雷獣(雷子とか言うらしいが分類は知らない)が自らを電気エネルギーに変換して結界を突破したそれと同じなのか、あの妖魔は自らを「人間の姿」に変化させて結界を突破したらしい。

 

我が身に秘められし(オステンド・ミア)力よここに(・エッセンシア)――――来たれ(アデアット)! 刀太君、ここは僕がッ!」

「悪ぃ、九郎丸! 後で何か埋め合わせすっから!」

「…………(九郎丸先輩、お兄様と仮契約しとる…、羨ましいです……)」

 

 流石に放置しておくわけにもいかないと、機動力のある私、追跡力のある釘宮が率先して外に出ることになった。戦力的に危ないと判断したのか、九郎丸もアーマーカード状態での対応となり、その場を後にした私たち二人。

 その後はひたすら、釘宮が狗神の矢で捕捉した妖魔を追っては斬り、追っては斬りの繰り返しだった。ただし、どれも人間の姿に擬態していない――――。いっこうに見当たらなかった「最初に」結界の外に出た、あの女子高生妖魔。

 

 どうしてか嫌な予感がしてる――――あの一体だけでも早々に倒せればそれで終わりだ。だが、逃した場合「何が起こるかわからない」。そんな、妙な不安感が私の内で警鐘を鳴らしている。

 まるで何か、既に知っている結果のそのひな形と言うか、前段階を見せられているような。

 

「……その、狗神っていうので追えねぇのか? さっきもきちんと犬っていうか、オオカミっぽく色々追尾してたし」

「ご期待の所悪いけれど、そこは僕の能力不足で無理だ。……能力というよりは血の問題なんだけれどもね。僕の祖父くらい『狗族』の血が濃ければ、呼び出せる狗神も相応のものになるのだけれど。生憎、そっちの血はクォーターなもので」

「じゃ、仕方ねぇか。とはいえどうしたものか……」

「…………君は何というか、判断が……、いや、何でもない」

「どした?」

 

 私の一言に一瞬驚いたように目を見開いた釘宮だったが、すぐにメガネの位置を直して視線をそらした。

 と、ここで活躍したのが我らが雷獣くんである。水無瀬小夜子いわく「使える」妖魔とのことだったが、実際それだけのことは出来るらしい。私たちの話を聞いた後、突如携帯端末から離脱し空中に移動。くい、くい、と手を使って「こっちだ(ディスウェイ)来い(フォロゥミー)」とアピールをし始めた。そのままにしておくわけにも行かず後を追い――――そして三太と遭遇した。

 

「せっかくだし少し話そうぜ、三太!」

「は、はァッ!?」

 

 妖魔に牽制の一撃をいれたばかりか、これまた透明化してた三太を一発で見つけてくれた雷獣くん。ホントにコイツ有能じゃねぇか!? とすると今まで水無瀬小夜子がカメラ映像とかでも早々確認できなかったのに、コイツの電子制御技能とかが絡んでいるんじゃ……、とちょっと邪推してしまうが、それはともかく。

 

「――水無瀬小夜子について、話さねぇといけないことがある。ちょっとした伝言を頼まれたし」

 

 もともとそれを前提としていたというか、その話だけは何があっても今日中にしなければいけないのだった。

 三太が驚き、訝し気ながら頷いたのを確認して、私は夏凜に電話を入れたのだった。

 

 

 

   ※  ※  ※

 

 

 

「ってぇ、そんなよくわからない流れでウチを頼ってもらったってもう営業時間終わりなの! 今日はノー残デー! わかるノー残デーって、残業しちゃいけない戒律の日なの、つまり私はこの後家に帰ってココネと一緒に晩酌を――――って首から下げた私のロザリオ掴むなってココネ―! 首しまっちゃうわババァ労われ!」

「ミソラ、真面目な話っぽい」

「うわっ完全スルーだよこの子、一体この太々しさ誰に似たんだか…………」

 

「「「「(ほとんどアナタじゃないかな……)」」」」

 

 たぶん僕以外の皆も、そんな感じの感想になったんじゃないかな……。いや、それだけ春日美空シスターが元気で自由な人だってことではあるんだけど、この人に以前夏凜先輩がお世話になっていたという姿がちょっと想像できなかった。

 

 刀太君が「色々進展があったから、情報共有……、と説得をしたい。物理的なのをコミで」と電話をした。釘宮くんは「いくらその妖魔が優れているとは言え、まだ漏れがあるかもしれないから」とあの後、パトロールを自主的にすることにしたらしい。

 むしろ仮にも人の命を預かってる仕事だから、僕らもそれを一緒にやるのが本当なら正しいんだろうけど――――。

 

 人の命を天秤にかけるような話ではないのだけれど、でも刀太君はまだ短い付き合いだというのに釘宮くんのことを凄く信用してるみたいだった。人格も、能力も。だから、たぶんこれは彼に任せた、と言う事なんだと思う。

 そして僕らは、本腰の案件で動くべきだと。

 

「そんなことより早く案内してください、シスター・ミソラ」

「は、早くっつったって色々準備が必要っていうか……。っていうかなんでわざわざ地下?」

「前回の傍聴対策が完璧でなかったようだから、念には念を入れて、ということかしら。地下に入った後、私たちもさらに遮音結界を張りますし」

「えっ、そんな理由だけで私たち駆り出されてるのォ!?」

「世界滅亡の危機を『そんな理由だけ』で片づけようとする根性は恐れ入るわ、シスター・ミソラ。後でミカンにも愚痴るわよ?」

「あー、止めて! それけは是非ご勘弁をば! 怒られはしないけど仕送り減らされちゃう! いくら夏凜ちゃんが罪な女(ヽヽヽ)だからって、そういう倫理を逸脱するような蛮行は好みの異性相手に限定して――――」

「『干からびた骨(オゥス・エクシィカッタ)』……!」

「ってマジで殴りにくるのは止めてーッ! 図星だからって止めーい!」

 

 ……こう、何だろう。拳を徹底回避した美空さんに、今だって「仕事なさい、シスター・ミソラ」と腕を組んで見下すみたいなポーズをとってる夏凜先輩。で、ノリが良いお婆さんな彼女も彼女で平服するようなポーズで「くそぅ、今に見てろババァのクソ力……!」とかよくわからないことを言ってて……。

 

 そしてそんな一方、シスター・ココネが教会の祭壇の上で何かをいじっていた。

 僕が見てるのに気づくと、彼女は「準備」とだけ言った。

 

「それって一体……、地下に何かあるって聞いてはいるんですけど」

「魔力式。今ここでちゃんと動かせるのが『私しかいない』から、やってる。ミソラは無理だし、カリンは壊す。ゴリラ」

「えっと……、えっと、えっ?」

「…………諦めなさい、九郎丸。あの人、絶対自分の世界で自己完結してる系の人だから」

 

 疲れた表情の制服姿なキリヱちゃんだった。どうやら彼女は寝てたところを起こされたらしく、刀太君に「アンタわたしが色々限界だってわかっててケンカ売ってきてるわけ! ねぇ! そこの佐々木三太も!」って詰め寄って、ちょっと止めるのが大変だった……。プリプリ怒るキリヱちゃんは可愛かったけど、寝起きのせいで全然話を聞いてくれなくって、えっと、またお尻を叩いてきて変な気分になるっていうか……。

 と、三太君が嫌そうな声を上げた。

 

「だ、大丈夫なのかアレ……? いくら俺、シスターの婆さん苦手だからって言って、あそこまで虐げられてもその……」

「あー、夏凜ちゃんさんソロソロ……、老人虐待になってるから絵面だけ言うと。あと三太が引いてる」

「えっ、ちょっとどういう状況!?」

 

 思わず刀太君の言う方を向いたら、そこには羽根のついた変わった靴(アーティファクト?)を装備したお婆ちゃんシスターがクラウチングスタートみたいな体勢をとろうとしてたっぽい腕の状態のまま、夏凜先輩に背中から踏みつけられて鼻で笑われてるって状態だった。これは、ちょっと……。

 

「えっと、仲が良いんですね!」

「いや、現実を直視しよーぜ九郎丸……」

 

 目をそらしたくなるのは判るけど、と刀太君。いや、別にその……、それだけ近い距離感で色々出来るって言うのは、やっぱり仲が良い証とかなんじゃないかなって。こう、雪姫さんと刀太君みたいなものだ(熊本時代はけっこうやられてた記憶がある)。

 

 と、シスター・ココネがわざわざしゃがんで美空さんに小声で話す。と、「あっちょっとそろそろシリアスさん帰ってくるから夏凜ちゃん脚どけてねー」とお婆ちゃん。……その一言で「仕方ないわね」と足を引っ込めると、見た目とかから察するくらいのご年配さを完全に無視した猛烈な勢いで立ち上がった。

 仲が良いっていうのもあるけど、その、凄い体力してるなこのお祖母ちゃん……。

 

「さて、と! 夏凜ちゃんがドSな話について小一時間くらい話したいけどそれはともかく……、ってやめてよそんな顔はー。ちょっと事実を指摘されたくらいで――――」

「やっぱり潰そうかしら」

「まぁまぁ、話が進まねぇッスから……」

 

 仲が良すぎるのか話が進まない夏凜さんとシスターを仲裁する刀太君。……なんだかすごい疲れてるように見える。

 

「ま! 簡単に言うと地下に古い収容施設があるってことねー。建築自体は『魔法世界』の技術が使われてるから意外と頑丈。で、くぎみー孫が言ってたのは大方お祖父さんから聞いたのかな?」

「……古い収容施設?」

「そういうこと。最近は魔法世界とも、もっと表立ってやりとりする流れに『持っていこう』と『元・委員長』とか頑張ってたから、その流れでこっちの大使館跡は使われてないんだわコレが。……と、言う訳でココネにエレベータの電源を入れてもらったって訳。施設自体は自己修復とかも生きてる筈だから、まーたぶんダイジョウブっしょ!」

「ミソラ、皆不安そう」

「ありゃりゃ!?」

 

 そしてあれよ、あれよという間に僕らは下層へ……、地下三十階? えっと、なんていうか凄い深い所にあるんだ、という感じだった。

 ただ、エレベータの外に出た僕は妙な郷愁を感じる。洋風とも機械的とも言い難い独特な建築様式とか、そういうのは故郷の「桃源」本体ではないけど、その周辺の宇宙空間でも似たようなものが使われている。

 とすると、ここの施設は比較的新しい? ……いや、それだとさっきシスターが言ってたことと矛盾するし――――。

 

 

 

「で、何だよ話って」

 

 っと、色々考えてると広い空間に出た。通路、というには妙にゴテゴテしてて、研究所とかの廊下みたいな感じだろうか。でも、それにしては道幅とか広いし、所々丸い広場みたいになっていて、不思議な感じだ。

 夏凜さんが結界を張るのを確認すると、刀太君は僕の方に…………って、え? な、何かな刀太君っ。いきなり手首掴んできて、ちょっとドキっとする。

 

「いや、こっちの携帯端末のデータをそっちの通信魔法アプリの方に転送できねえかなって。これじゃ液晶小せぇし、音も貧弱だし」

「えっと、出来るとは思うんだけどやり方が……」

「……ちょっと貸しなさいっ」

 

 っと、キリヱちゃんが刀太君の手を離させて、間に割り込む形で端末を受け取った。……あれ? なんだろう、これって嫉妬ってやつなのかな。微妙に違う様な気もするけど…………。

 

「おや?」

「……って、きゃっ! な、何よコイツっ」

『ふみゅー! ふみゅー!』

「あっ!? えっと、その子はですね――――」

 

 そして「雷子」について話す僕。それを聞きつつキリヱちゃんが投影準備をしている間に、刀太君は三太君に一言いった。

 

「先に言っておく――――水無瀬小夜子に残された時間が少ないとするなら、お前、どうするつもりだ? あの子の意思を尊重するか、それでも限界まで長生きしてほしいか」

 

 それに三太君が答えるよりも先に、映像が始まり…………。

 

 

 

『…………あっ、さ、三太君これ見るの? うわー。ちょっと、どうしよう、もっとおめかししておくんだった……』

 

 

 

 そんな、普通の女の子みたいなことを言う「半透明な」黒い少女の姿に。以前、キリヱちゃんが撮った写真の「あの」女の子の姿に――――映像越しでも「僕には判る」威圧感に、思わずひるんでしまった。

 

 

 

 

 

【緊急アンケ】雷獣(子)くんを今後どういうキャラでラーニングさせるか

  • シワシワおっさん(CV子さん安イメージ)
  • ヘッヘッヘな三下(CV金朋さんイメージ)
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