光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますですナ! そしてまた深夜スイマセンです汗
 
実際冴えたやり方かどうかは・・・


ST86.死を祓え!:たった一つの冴えたやり方

ST86.Memento Mori:The Only Fashionable Thing To Do

 

 

 

 

 

 水無瀬小夜子の最終目的は三太の安全ではあるが、そこに至るまでの思考にはいくつか「三太本人の意思を」交えた場合、誤解がある。

 あくまで水無瀬小夜子にとって、佐々木三太は多少魔法が使えるくらいの中学生でしかなかった。故にその手で「生きているような幽霊」――――幽鬼(レブナント)として復活させたが故に、彼女は三太をどこか下に見ている。自分の庇護下にある存在として見ている。

 

 そのあたりの感覚は私自身も気付いてはいなかったが、昨日のビデオ撮影時に気付いてしまった。あくまで彼女は、三太を「保護」してもらうつもりだった、そう言った。あくまでも、自分の手で管理している存在を渡す、という認識なのだ。

 決して彼女の認識が間違ってるとは言えない。実際問題、本来なら自殺した時点で彼女に「取り込まれても」不思議じゃなかった三太を、わざわざ個のある存在として切り離したのは彼女であり。その気になればいつでも消せてしまうというのも、間違ってはいないかもしれない。

 

 だが、だからこそ、彼女は三太に「負けた」のだ。

 

 原作において最終的に水無瀬小夜子を止めたのは、時坂九郎丸でも近衛刀太でも、ましてや雪姫でもない。佐々木三太、その人だ。

 

 水無瀬小夜子の暴走に気付かず、世界がそのまま滅びかけた――――そこまでの事が起こると思っていなかった。ほんの少し、そんな馬鹿なことを本当に実行してしまうと思っていなかったが、その原因が自分にあると自覚したからこそ覚悟を決めた。自分の責任をとるために彼女を止める、あの優しかった彼女を、怨霊に呑み込まれ人格が滅茶苦茶になった彼女を止めると。

 

 そう心から誓って、一人で色々と無茶をして。

 そして、同じように無茶をし続けた彼女を。どうでもいいじゃないかと、その背負ってしまった強い恨みつらみなんてどうでも良いじゃないかと。そんなことしなくても一緒にいて、なんなら一緒に地獄でも巡ってしまおうと。

 

 揺さぶられたこともあるが、それでも最後の最後まで、直接は彼に致命打を与えられなかったのは、あくまでもそれが水無瀬小夜子自身だったから――――その姿を見て、安心して彼女はこの世界から去ることになる。

 

 つまり逆説的に、三太が彼女の庇護下「でない」と認識しない限り、彼女の心のありようは変わらない。例えもっと良い手段が何かあったのだとしても、その選択肢をとることが出来ない――――。

 

 例えば、我らがキリヱ大明神による「リトライ&リベンジャーズ」。あまり多用する話ではないが、少なくともこれを使えばいくらか時間を稼ぐことができるはずだ。今現在の彼女がギリギリだというのなら、それこそデュナミスの手で色々と罠を仕掛けられただろう三日前に、戻って何かしら手をうつことも不可能ではないはずだ。

 

 だが、そういった一連の行動を彼女本人が納得するためには。三太に対する彼女の認識が、しっかりと「守る」側ではなく「守られる」側になる必要がある。

 

 三太はもう一人で立つことが出来るのだと――――その上で、水無瀬小夜子をどうにか守りたいのが、彼の意志なのだと。

 

 

 

「そのためとは言え、いくら何でもいきなりすぎたか……。せめて一空先輩さえいれば、キリヱ大明神をどこか安全に奉納できたものを……」

「ほうのうってなによ、ほうのうって! べつにごりやくとかないんだからねっ! っていうかおろしなさいっ、おろしてからやりなさいよあんたたちーッ!」 

 

 

 

 私の小脇で絶叫するキリヱ大明神(スカの姿)である。もこもこの兎さんがデフォルメされた三頭身で女の子がきゃーきゃー涙目。これで本気モードと言わんばかりの三太相手に逃げている状況なので、シュールというかカオスと言うか。とはいえ背景のお陰で低OSRは免れてる気がするので、ヘーキヘーキ(現実逃避)。

 

 とはいっても、私個人としては色々と本当の意味で聖地巡礼出来ていて涙が出そうになる(出ない)くらい感動的な光景である。機械的に舗装された巨大な空中道路、その横には見たこともないくらい大きな植物が生い茂っている。中々現実離れした光景は、それだけ元となる技術体系が異なることを暗に示しているのだろう。

 場所としては教会の地下から続く「旧・魔法使い人間界日本支部」の通路だったり独房だったりと「ネギま!」学園祭編のアレコレ見覚えがある光景がバンバン過る。流石に魔獣とかそういうのは配備されていなさそうだが、ここからちょっとルートを辿れば世界樹深部まで行けそうでオラワクワクすっぞ!(面倒くさいオタク思考)

 とはいえキリヱ大明神を抱えてすることではないので、早い所どこかに置いておけないだろうか……。三太も三太で、先ほどから魔法アプリで生成した火球だの何だのを念力で超高速射出してきているが、キリヱにあたってしまいそうだからかいまいち精彩を欠いている。

 

「仕方ねぇな……、この場に来たれ(エウォコー・ウォース)、時坂九郎丸!」

「――――わわっ、と、刀太君!? いきなりすぎないかなッ」

 

 こちらを追跡していた途中だったらしい九郎丸を召喚。流石にアーティファクトは呼び出していなかったが、その手を取り、一緒に移動しながらキリヱを手渡し後を頼んだ。「だからいきなりすぎるよ、もぅ……」と少し困ったように言いながらも、任せて! と胸を張る。……どうでも良いが抱きかかえられていたキリヱが「あんた、ひょっとしてまえよりおっきくなってる?」とか頭にあたる九郎丸の胸元に言ったが、そのあたりは九郎丸の反応を見るよりも先に別れたので、どんなリアクションがあっても私は知らない(白目)。

 ……例え後方から「そ、そんなことないって……あっ! ちょっと、危ないから、揉まないで……」「うそおっしゃい! あんたもなの、あんたもおっきくなってわたしをみすてるの!?」とか声がしてるかもしれないが、聞こえていない、断じて聞こえていない(白目)。 

 

「とはいえ、これでようやくまともに殴り合えるな――――っと」

幽波拳(スタンドフィスト)――――オラッ!」

「オイコラお前もかッ!」

 

 ネーミングに色々と奇妙に冒険してツッコミどころのある不良な感じの技をいきなり使われたが(隠喩)、あくまで物理攻撃なので反応できた私である。空中に「念力の板」としか言いようのない半透明のものを作り出し、そこに拳を数発入れる三太。その一撃が数倍の打撃に変化し、衝撃波として私めがけて襲い掛かってきた。死天化壮状態の動体視力をもってすれば捌き切ることは不可能ではないのだが、その隙を目掛けて足元に回り込み、ダイナミックエントリーのように右足で私の腹を狙う三太。

 反応が遅れるが柄を下ろして防御しようとするも――――当然のように「透過」して私の身体をすり抜ける。そして背後に回り、こちらの背中を蹴り飛ばした。

 

 堕ちていく私に右手を「伸ばし」――自分が幽霊だと自覚したせいか「人体」の形に拘らなくなっている――、こちらの首を掴んで反対方向に放り投げる三太。黒棒の重量を変えて地面に突き刺し事なきを得ようとするが、その瞬間には目の前に現れて顔面を蹴り飛ばしてくる。

 技には容赦がない。とはいえ周辺を破壊しつくすような威力でもないあたり、三太も三太でこちらを殺すつもりは無いと言うことか。

 

 決して戦い慣れてる訳じゃない。訳じゃないが、だからこそ動きが自由である。ともすれば私より自由に動いているあたり、物理完全無効だったり実体がないからこその超高速移動といった「幽霊だからこそ」の恩恵がいかに大きいかという話だろう。

 

「あっ…………あろに……ろっ……ッ」

「は、はは……、お、俺ってこんな戦えたのか? す、スゲー、スーパー三太様、伊達じゃ、ねぇ、ハァ、ハァ……」

 

 …………というか再生するとは言え普通に痛いので、ちょっと待って欲しい。せめて「骨がくっつくまで」。いくらキリヱに対して申し訳ないから主義主張は封印気味で今回の件は臨んでいるが、基本的に痛いのは嫌なのだが(迫真)。

 

 

 

『よォ相棒ォ、意外と苦戦してるみてぇじゃねーぁ。「殺す気で」かからねーからそうなんだぜ? いくら相手が相手でもよぅ』

「……星月か。っていや、内なる虚(オサレ)じみたムーブ止めろッ! 状況的に洒落になってねぇ」

 

 少し三太も疲れたのか、私を蹴り飛ばした後は膝に手をついてぜいぜいと息を切らしている。そんなタイミングで、いつものように精神世界に落ちていくわけでもないのに、星月の「原作の刀太のような」陽気な声が聞こえた。

 …………死天化壮(デスクラッド)状態でこうやって話しかけられるのは、BLEA〇H(オサレ)虚化(オサレ)展開から逆算して私における「魔天化壮(デモンクラッド)」フラグにほぼほぼ直結してるので、正直言って止めてくださいという話だった。

 

『そうかい? って言っても物理攻撃手段も少ねぇのによくやるなお前……』

「いや、まぁ最悪『聖』天もあるし」

『それ完全に自爆技なんだよなぁ今のままだと……、ちゃんと夏凜先輩に教えてもらっとけばよかったのに、神聖魔法。あのまま聞いたらたぶんもうちょっとまともに使えるようになったぜ?』

「私の祈祷力の何が足りないと言うのだ(憤慨)」

『何もかもじゃねーの? 師匠あたりならそう言ってきそうだけど(白目)』

 

 はなはだ遺憾である(すっとぼけ)。

 

『ま、どうしてもって言うなら一つヒントをやっても良いんだが……』

「ヒント?」

『三太相手に使える技――――「キリヱの血を吸えば」手に入れられるぜ。まったく、変な仕込みをしてきたモンだよなぁ「あっちの」相棒も』

「……それは一体、」

 

『……星月?』

「あっ! いや、何でもねぇよ黒棒」

『そうなのか? なにやらブツブツと色々しゃべっていたが…………、というより、いい加減その呼び方はどうにかしてもらいたいのだが……』

  

 と、黒棒を誤魔化していると三太が息切れをしたままこちらを見て、声をかけて来る。

 

「ぜぇ、ぜぇ……、お、お前らさ…………、本気で小夜子、殺すつもりなのか?」

「……ん? 質問の意図がわかんねーんだけど」

「いや、だって…………、なんていうか……、あんまり殺そうとか思ってないだろ、お前。初めて戦ったときとかも、さ……、」

「へぇ……」

 

 こと自分が殺意を持って襲い掛かったからこそだろうか。それは流石にわからないが、しかし三太はどうやら私の剣に違和感を覚えたらしい。自爆戦法とかを使って戦う前に会話できるようになってくれたのは助かったし、その考えもまた正解ではあるが。だからといってすんなり断言するのも違う。あえて少しズラした回答をする。

 

「あのビデオ見てさ。お前、どう思った? 三太」

「は? …………どうって、そんなの……」

「正直に言えって。別に、誰もいねぇんだからさ? ココは」

「…………少しだけ、腹が立った」

 

 立ち上がりながら、三太は拳を握る。

 

「なんでもかんでも、全部、自分が悪いみてーに言ってよ。……努力した奴が報われないのは悲しいって、そんな世界は嫌だって。なんでアイツらみたいなのが生きて自分たちは死んでなきゃいけないんだろうって……、そんなこと、話したことがあってさ」

「おう」

「……それってさ、アイツの本心かもしれねーけど。でも『俺だって』そーゆーことは思ってたんだ。『思い出すまで』自覚なんて全然なかったくせによ」

「だから、ホームレスのオッサンとか、襲われそうになってたっぽい女子高生とか助けようとしてたんだろ? そーゆー『見捨てられたような』連中を」

「…………俺と、俺達と、似てるんだよ。そういうのって」

 

 まあ女子高生については正体が妖魔だったのはあるだろうが、少なからず三太にとって、その後の末路を想像できてしまう程度には共感があったらしい。だからこそ、あの場で踏みとどまっていたのだろう。もっとも私も雷獣が気を利かせなければ全く気付かなかったのだが。

 ん? あれ、そういえばあのネズミどこに行った――――?

 

「別に、俺はそーゆーのは否定しない。せいぜい『討伐されない程度に』やればいいんじゃね? くらいには思う。だからこそ、このまま水無瀬小夜子が暴走するのを認める訳にはいかないってのもわかるな? 規模が違うし、そもそも無関係な連中『全部に』すら、その恨みを向けるのは、ちょっと違うって思うし」

「…………」

「それでも、殺させない。そういうお前の気持ちもスゲーわかる。それも否定はしねー」

「いや、お前どっちの味方なんだよ…………」

 

 強いて言うと、そんな会話を主人公とライバルが喫茶店でしたら特に何も言わずスッと二人それぞれの好みの味の珈琲を差し出すOSRの高いマスターでありたい(願望)。が、それはともかく。

 

「…………強いて言うと『お前らの味方』だよ。だから、悲しい別れだけで全部まるっと収まるとか思っちゃいねー」

「は……?」

「そりゃ最終手段としちゃ、こっちの手で成仏させるのか消滅させるのかって話にはなるんだろうけどさ。そーゆーのじゃねぇだろ。こう、好きな男の子のために身を張る女の子と、好きな女の子のために身を張る男の子の話のオチがそれじゃ、あんまりにもあんまりじゃねぇか」

「…………い、いや、別に俺、好きって訳じゃ――――」

 

 

 

「――――今更見苦しいですよ、佐々木三太」

 

 

 

 わっ!? と三太共々驚いて腰を抜かしてしまった。本当、いつの間に現れたのか不明だが、いきなり夏凜が私と三太の間にスカートを押さえて降りてきた。はらはらと光る羽根みたいなのが舞い散ったので、ひょっとしたら飛んできたのだろうか。

 と、私の隣で仁王立ち。胸を強調するように腕を組んで(語弊)、三太を見下しながら言う。心無し下からライトが灯っていそうな雰囲気で若干ホラーだ。

 

「大丈夫です刀太。事情は、おおむね聞こえました」

「い、一体どこから……」

「『好きな男の子のために身を張る女の子』のあたりから」

「「全然聞いてねぇ、絶対わかってねぇ!?」」

「いえ、十分です。要は佐々木三太――――貴方は好きなのでしょう? トイレのサヨコさんが。だからこそこういった暴挙に出た。後先考えず、それこそ感情が抑えられないくらい」

 

 と、少し遅れて九郎丸たちもやってくる……、大明神はいつまで兎さん姿なのかしら。もっとも夏凜はそんなこと気にせず、ずびし! と三太に右手の人差し指を突き付ける。

 

「はっきりと言いなさい――――佐々木三太。あなた、彼女が好きなのね? 好きだと言いなさい!」

 

「む、む、無茶苦茶すぎんだろッ!」

 

 大変ごもっともである、色々スマン(白目)。 

 赤面してあわあわ言いそうな三太に「好きなのでしょう?」「好きなのよね」「好きと言いなさい」と三段活用のごとく指を突き付け続ける夏凜の迷惑行為よ。とはいえ久々に原作の夏凜らしい(無能)暴走っぷりを見たような気がして、謎の安心感を覚える私であった。……末期症状か?(震え声)

 

「え、えっと、状況がその…………」

「おうちかえる」

「まぁまぁ…………、落ち着けってキリヱ大明神」

「だからだいみょうじんよばわりはやめなさいよッ!」

 

 現実逃避気味に九郎丸やキリヱと話していると、ついに根負けしたのか三太、絶叫。

 

「好きだったら何だよ! 悪ぃかッ!」

 

「「おお~」」

「はい、良く言えました」

 

 三人してパチパチと手を叩く謎の連帯感。ちょっと泣きべそ気味の三太に、思わず夏凜の傍を離れて肩を叩いてしまった。こと完全に女の子堕ちしてしまった九郎丸ちゃんを前にして、一空がいない我々は完全に孤立状態なのだ(諦め)。

 

「……あー、夏凜ちゃんさんのせいで話が逸れちゃったけど。要はアレだ。このままだと拙いけど、今のままだと話を聞く気が『相手にない』。ってことは、認めさせるしかねぇってことだ」

「み、認めさせる? 何をだよ」

「そりゃ、お前があっちが思ってるより頼りになる、一人で抱え込まなくっても大丈夫だってことを。何、大丈夫。少なくとも俺こんなにボッコボコに出来るくらいなんだからさ――――」

 

 だから、と。この後の原作知識を洗った結果、出て来た一つの結論を言う。――――夏凜の防音結界を出た以上は「この会話すら」「どこかで聞いているだろう」水無瀬小夜子に向かって。

 

 

 

「――水無瀬小夜子自身ですらコントロールできなくなった『トイレのサヨコさん』の殺人事件を、システムとなってしまったその怪異を、俺達で、止めるんだ」

 

 

 

 そうすりゃ流石に向こうも無視できねーだろ、と。そう笑いかけると、三太は一瞬驚いたような顔をして……、そして目元をぬぐって、応、と言った。

 

 

 

 

 




雷獣(子)くんアンケートもうちょっととります・・・!

【緊急アンケ】雷獣(子)くんを今後どういうキャラでラーニングさせるか

  • シワシワおっさん(CV子さん安イメージ)
  • ヘッヘッヘな三下(CV金朋さんイメージ)
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