光る風を超えて   作:黒兎可

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毎度ご好評あざますナ
 
仲間が出来たよ、やったねチャン刀!(なお敵)


ST96.死を祓え!:偽壮

ST96.Memento Mori:Marine Code

 

 

 

 

 

「小夜子おおおおおおおおッ!」

 

 バーニングに分裂でもしそうな叫びを上げる三太はともかく(ダディ)、なんとなくこうして謎の投げ飛ばしに遭うのは久々だなとか思っている私であるが、状況はあまり宜しくない。というか、どうやら我々が投射されている際に事態は少し進んでしまったらしい。

 

 水無瀬小夜子である。明らかに全裸の、水無瀬小夜子である。

 巨大な、それこそ関東の妖怪とかを考えればダイダラボッチとかそういう類のものを連想するような巨大さで、それこそ世界樹すら足蹴にできるサイズ感の大きさの全裸な水無瀬小夜子だった。

 とはいってもあくまでシルエット、髪とか細かい箇所、当然局部を含めた細かい部分まで綿密に形成されている訳ではなく、なんとなく「全裸の女性」であるというのを理解できる姿かたちと言うだけだ。

 

 まぁ、相手が誰かを知っている私や三太にしてみれば大した違いはない。涙目ながら絶叫する三太の心理を思えば察するに余りあるが、まぁこの場合緊急事態なのだ。ある程度は時と場所と場合の問題で目を瞑って欲しい(状況的に目は瞑れないが)。

  

「っていうか、腕とか脚とかさっき『生体アーマー』みたいにくっついてたところ、ボロボロだな……」

「小夜子おおおお……、って、えっ? 何だって? トータ」

「ボロボロだって言ってんだよ。わかんねーか?」

 

 指をさす先、水無瀬小夜子の姿のうち、さきほど天から降り注いだ光の光線で消し飛ばされた「妖魔」の鎧のようなそれ。そのまとわりついていた箇所が、明らかに私の目から見ると「虫食い」だらけなのだ。それこそ辛うじて線が繋がっているような、そんな風体に見える。

 と、しかし三太は「何言ってるんだコイツ」みたいな目で私を見て来る。

 

「い、いや、別に普通っていうか……、こう、なんか討ち取られて飛ばされた変化途中の首でも探しに行きそうな感じのままっていうか」

「いや状況的にそぐうけど、良く知ってるなもの〇け姫(ソレ)…………」

「むしろお前、何見えてンだ? オレさっぱりわかんねぇっていうか、普通に小夜子っぽいのがこう、ずしーん! ずしーん! って地面揺さぶってるだけに見えるって言うか」

「何て言ったらいいか――――っとッ!」

 

 話していると、視線の先に見覚えのある緑髪――――秒を置かず激突するのを回避するため、三太の首根っこを掴んで「死天化壮(デスクラッド)」を緊急停止させた。が、若干間に合わず、レンガ屋根を私の足と勢いを殺すために突き刺した黒棒とが削る削る……。建物から落下する直前くらいで止まったが、頭上でこう、強い憤りの絶叫が聞こえた。

 

「貴様は! 否、貴様ら『白き翼(アラ・アルバ)』残党は揃いもそろって、よくもまぁ毎度毎度私が主導する計画ばかり潰してくれるなッ! せっかく目の上のタンコブ二人が逝ったと思ったのに、少しは我の苦労を知れ!」

『ハーッハッハッハッ! そんなものは知らぬよ。

 というより茶々丸一人だけでもとん挫させられる計画だったことの杜撰さを嘆け。

 あの世でさぞ、タカミチもゲーデルも腹を抱えて笑ってることだろう』

 

 ハッハッハ、と続く声は雪姫のものだが声音の軽さはどこかエヴァちゃんのそれだ。後ろを見れば、私に向けて首肯する茶々丸と、その横でホログラフィックに投影されている「何故かボロボロの恰好の」雪姫の姿があった。

 

「チャチャマルさんだっけ? 何コレ……」

「…………あー、たぶんさっきの光線って、アレだ。茶々丸さんの仕業とかだろうなー」

 

 そのパワードスーツチックな恰好、胸に輝く「超包子(ちゃおぱおず)」の三文字に、右手にはデフォルメした猫を模した照準兼トリガー。先ほどの光の柱を思えば、どう考えても彼女のアーティファクトであるところの「空とび猫(アル・イスカンダリア)」による砲撃だ。

 衛星兵器「空とび猫(アル・イスカンダリア)」は、何と言うか例によって例のごとく超鈴音の発明品である。超巨大なデフォルメされた猫と天使をモチーフとしたような人工衛星であり、そこから多種多様なビームを放出したりすることが出来るとか何とか。「UQ HOLDER!」現時系列においては雪姫管轄でホルダー管理となっており、原作においてはキリヱ編終盤にて、一空が対CPH(フェイト)用に使用していたりする。とはいえ今回はどういう訳か、茶々丸本人による一撃と相成っていた。

 

 私の推測に「正解です」と声をかけると、茶々丸が私に手を差し伸べた。それを借りて立ち上がり、連鎖的に三太も立ち上がらせる。

 

「先ほどの光線、私とネギ先生の魔法具(アーティファクト)『空とび猫』による砲撃に相違ありません。トウタ君に、佐々木三太君」

『お? 何だお前も来たのか、刀太。

 見てみろ、今回の黒幕を気取っていたデュナミスが想定外の事態を前に「何ィ!?」と白目を剥く様を。苦労背負いすぎていて笑えて来るぞ、ハハハハハハハハッ!』

「いや性格悪ぃぞカアちゃんそれ……」

 

 状況的にも原作的にも不倶戴天の関係性があるのはわからなくもないが、何と言うか先ほどのデュナミスの叫び声にこう、何とも言えないシンパシーめいたものを感じてしまったのだ。目の前でチャート崩壊を目撃するのは……、辛いよなぁ(白目)。なので敵対者ではあるが、この場では何というか、あまり強く出れない。思わず痛ましいものを見る目を向けると、デュナミスは私の姿を見て頭を抱えた。

 

「お、お、おぉ、をのれ、スプリングフィールドの血筋めがッ! タカミチもゲーデルも孫に囲まれて普通に臨終したから葬式に顔出ししてキッチリ死んだことを確認したものをッ! 足止めに『ヨルダ様』に無茶を言ってかなり奮発してもらったというのに、それすら回避してくるかァ! 大体貴様、お前だお前、近衛刀太! 何故そう我が最初から練りに練った計画を軽々しく蹴散らしてくるんだッ!」

「いや、まぁそこはこっちも世界の命運とか、そーいうのかってるんで……、って、いやタカミチさん? とか仲良しか何かッスかアンタ!? 言いぶりから敵だったんだろっ! 何で献花しに行っちゃってるんだよッ!」

「えっいや……だって、当然敵対はしていたが、付き合いは長かったしそのくらい行ってやるのが人間として通すべき筋だろうし、腐れ縁とはいえ今生の別れだから……、テルティウムも顔を合わせたが否とは言わなかったし……」

 

 なんだかんだ相手のことを知りすぎて好きになってしまっているような話ではないだろうが、一応辛酸を舐めさせられていた相手でも、そういう風なことするくらいには親しみがあったのだろうか。なんとなく素顔のまま出席して香典とか置いていく寂しい褐色イケメンの映像(幻覚)が脳裏によぎる。

 というかタカミチ、原作で婆ちゃん(真実)を振っといて思わせぶりなセリフ言ってたくせにちゃんと結婚したのか……? とするとラーメンたかみち、ひょっとしなくとも血縁者が経営者説が出て来る奴なのでは(震え声)。出るか、とんこつ魔法!(白目)

 謎のテンションになりつつある私はともかく、激昂するデュナミスを性格が悪いカアちゃんらしく、ホログラフィックとは言え指をさして大笑いしている雪姫だ。出来た息子はそんなカアちゃんの醜態を全力で見なかったことにしておいて…………「いやアレは傑作だったなぁ、ネギも『あの犬』も十分くらい呆然とした顔をさらすくらいには空気読めてなかったぞ、ハハハハハッ!」…………見なかったことにしておいて。

 

 と、気を取り直したデュナミスが背後の巨大小夜子を見るが、再び声が驚愕に満ちる。

 

「何……? どういうことだ、単なる攻撃であるならば、あの『祟神(タタリガミ)・ダイダラボッチ』はすぐさま再生するはず…………」

『お前は流石に「麻帆良」の生徒共を舐めすぎだよ。特にあのアホ共をな。この場合はゲーデルの嫁になる訳だが』

「妖魔が溢れた時点でAI葉加瀬からの試算により、世界樹周辺に渦巻いていた魔力より妖魔を『再構成』させ、何かしらの術式を構成するのは明らか。この場合、周囲の妖魔は主ではなく客、すなわち『装備品』扱いであると設定できると判定されました」

 

 つまり、脱げビームと言う奴です。

 

 茶々丸の台詞に「は……?」と目を真ん丸(ギャグ顔)にする三太と、やはり笑いが止まらない雪姫。後、こころなし真っ白になって絶句しているデュナミスの姿がそこにあった。

 私? いや、こう、今朝方の超が「おヨメ行けなくなるよなこと止めるネー!」と全裸になりながら絶叫して姿を消す様を思い出していたのだが。いやそれ、伏線という訳ではないのだろうが、ないのだろうが何なんだろうね(思考放棄)。というより今回の事件が原作基準で考えれば「三太編」であると同時に「キリヱ編」であることを思えば、「空とび猫」が出て来るところまでは一応原作に寄っているとも言えるので、少しは修正力さん的なサムシングがお仕事していると考えると救われるものがあるのだろうか?(混乱)

 

 とりあえず原理は不明だが……、いやあの見た目からして「鎧」だから武装判定でも受けたのか、未来科学兵器の産物による強制武装解除(あるいは脱衣)攻撃により、本来なら延々と怪物的なシルエットになり再生し続けるはずだったそれを、蹴散らしてしまったらしい。

 超ファインプレーじゃねぇか!(恐怖)

 

『嗚呼、ちなみに何故私がこうして通話してるかと言えば、コイツの魔法具(アーティファクト)は今、ウチの管轄なんだよ。だから使用許可をこっちで出してやらないと、いかに茶々丸とはいえ勝手に使えないからな。AI葉加瀬から通信があったときは正直だいぶ驚いたが』

「感謝いたします、マスター」

「どうでも良いけど、あの人なんか軽く死にかかってね? こう、精神的に――――」

 

 

 

「――犬上流獣奏術・狗音ノ風(くおんストーム)

 

 

 

 おっと? そんな話をしていると、どこからともなく無数の黒い狼めいた狗神が地面をかけ、空中を駆けて呆然としているデュナミスに襲い掛かる。が、大口を開けたり爪を振り下ろそうとした狗神たちは、デュナミスの周囲に「一瞬で」張られた多数の魔法障壁に阻まれ、身動きが取れない。

 

「ハァ…………、やはり、結局こうなるか。いつもいつも我が最前線に出ないで済む作戦を考えているというのに、ハァ…………」

『お前向いてないんだろうよ、いい加減止めてしまえフェイトのように。もう百年は優に越してるだろ』

「断る。………………後任が出来る相手もいないしな」

 

 最後にぼそっと言ったセリフが世知辛すぎるものだった。

 そっかー。考えてみれば原作を考えると、フェイトガールズだってネギぼーず側についただろうし、その後のことを思ってもデュナミス的に頼れる仲間って意外といないのか、そっかー …………(痛ましいものを見る目)。

 

 とはいえグチグチ言いながらも、障壁で抑えていた狗神を「さらに外側に作った障壁」とに挟んで圧殺して処理したりと、どうやら「造物主の掟(チートアイテム)」などなくとも十分その実力に衰えは見られないらしい。

 

「……隙をつけるかと思ったけれど、そう簡単に行く話ではなかったね」

「ひィッ!?」「おっ、釘宮じゃん」

 

 飛び退く三太と私との間に、すっと例の弓を構える釘宮大伍……っていうか頭のニット帽はどこへ行ったのだろうか。なおその頭上、茶系の髪にひょっこり二つとがった犬耳なのか狼の耳なのかといったものがあるあたり、見た目からして完璧に犬上小太郎の血筋を感じさせる。

 と、雪姫がそんな釘宮を見て「おぉ!」と驚いた声を上げた。

 

『お前その髪、村上夏美の孫か……、長女の方の子か? 確か釘宮の所に嫁入りしていた覚えがあるが』

「祖母をご存じで?」

『まぁ、多少はな。そういえば長らく会ってなかったか……』

「一応、存命ですよ。最近小じわが増えてきたのを祖父に揶揄われて、仲良くケンカしてます」

『そうかそうか』

 

 そして雪姫の目線が、完全に知り合いの孫を見るお祖母ちゃん世代の目だった。……いやお祖母ちゃん世代だった(断言)。そのままお年玉でもあげそうな勢いだ。出来の良い息子としては少々複雑な心境である(謎)。

 というより、嗚呼なるほど、そういうルートで生まれたのかこの釘宮大伍。「ネギま!」原作の裏技使用による「最も幸福な世界」においてもそうだったが、こちらでも別れることなくストレートにゴールインしていたらしい犬上小太郎夫妻。このせつに名前を呼ばれた時の様な、謎の感慨があった。

 

「いや、でもお前アレだ釘宮。あの状況で不意打ちとかはしてやんなよ、可哀想だろ……?」

「そうかい? 俺は祖父に『本当の強さとか、そーゆうんはまやかしや。自分が勝てると思えない相手にどうしても勝たなきゃならん時は、自分が汚れる覚悟の一つくらい持ってなアカンわ!』と言われたことがあるけれど」

「一字一句覚えてるんじゃねぇか、お祖父ちゃん大好きかよ…………」

「ノーコメント。とはいえ、あまり褒められた手法でないことだけは認めよう」

 

 どっちかと言えば低OSR(それっぽさを判っていない)系の振る舞いに繋がるための忠告であるが、そもそもこの世界でOPB(オサレポイントバトル)自体成立しているのかどうかは不明なので、これは杞憂でいいのだろうか…………。(???「段々と自分の低OSRとやらを棚に上げるのが堂に入ってきたんじゃないかい?」)

 

「何と言うべきか…………、これがジェネレーションギャップというものか」

『流石に世紀を跨いでいるからなぁ』

「黙れ推定700歳の吸血鬼めがッ! 来い、(セクストゥム)!」

 

 デュナミスが腕をかざすと、その掌から光が迸り、現れたのはディーヴァ・アーウェルンクスを名乗っていた例のアレである。服装は新調したのか先ほどとは違いスクール水着……、何故か胸元に「でぃーヴぁ」と雑なひらがなとカタカナで書かれているのは何なんですかね(白目)。というか大人バージョンで白衣を纏った上でその水着は一体何のギャグなのかと問いたい。

 デュナミスですらそれは私と似たような心境らしく「何だその水着は」と困惑したように聞いていた。

 

「嗚呼、さっきまで子供状態だったから。それならこーゆーのがカワイイんだって、個体名『このちゃん』が言って、個体名『せっちゃん』が貸してくれたんだよ。わざわざ名前が書かれてるあたり、ホント、変わったシュミだよね」

「お前、それこそ八十年くらい前はもっと無機質な性格だったろうに。口調も丁寧語、熱血でも狂信的でもない。ヨルダ様もそのニュートラルさを見越して、一番面倒がないからと復活させたのだが」

「貴方は『アレ』の中でずっと拘束され続ける恐怖というのを味わってないから、そんなことを言えるんです、デュナミス。

 でも丁度良いタイミングだったよ、色々彼女(ヽヽ)からおもしろい話を聞けた直後だったし…………、ふむ」

 

 言いながら私の姿を一瞥して、何故か「うーん」と悩むディーヴァ。そんなタイミングで当然のように弓を構えて狗神の矢を放つ釘宮は、何と言うかこう戦闘の鬼か?(震え声) いや、考えてみれば小太郎君ベースでさらに血が薄まっているかもしれないことを思うと、ひょっとしたら私が想定している以上に「強くない」からこそ、この場において常に生命の危機でも感じている可能性があるのだが。

 

 と、何を思ったのか彼女は目の前で「水流の塊」を術式固定。それで狗神を振り払うと、何を考えたのか自分の胸元に持っていき――――。

 

 飛び散る猛烈な水しぶきと、蒸気の様なそれ。思わず顔をそむける私たちだったが、ロボットな茶々丸とホログラフィックな雪姫は「まさか……」「ほう?」とかOSR稼いでそうな(それっぽい)ことを言いだしている。

 

 果たして煙が晴れた先には――――。

 

 

 

「――――さしずめ、海天偽壮(マリンコード)ってところかしら」

 

 

 

 白衣やら水着やらが「透けて」見える、水のそれを布状、コート状に翻した……、もっと言ってしまえば、私の「死天化壮(デスクラッド)」そっくりのシルエットに身を包んだ、ディーヴァの姿がそこにあった。

 そして、彼女は私に向けて無表情で。

 

「男の子ってこういうのが好き、なんだよね。個体名『刀太君』」

「いや、まぁ、嫌いじゃないッスけど………」

 

 一体どこ情報だそれ……、というかまた要らん情報を変にラーニングしていやがる。(白目)

 

 

 

 

 

 

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