ST98.Memento Mori:Add On!
「しかしここは相変わらずだなぁ……」
もはや何度目かの星月の居城、つまりは私の精神世界的なサムシングではあるが。相変わらずのスクラップ置き場のような有様で、遠方に軌道エレベータ的なものが聳え立っている。天気は晴れている訳ではないが雨が降っている訳でもなく、何と言うか本当、風景にあまり変わりがない。そんな私の目の前、ゴミの山を押しのけるように適当に露出した地面に、胡坐をかいて座っている星月がいた。と、片足立ちになるとその白と黒のローブが少しずれ、下の服装が見える。…………どこか骨のようなアーマーが装着されてるのは
『まぁ、そんだけ相棒の心情とかが全然変わってねぇってコトだな。この間声かけた時だって、ここには雨一つ降ってきてねーし。まっ、相棒は
「…………あれ? 今少し貶されたか、私」
『安心しろー、只の事実だ』
「いや真実って言葉は時に命を刈り取る形をしてるから(震え声)」
『だからそういう所なんだよなぁ…………』
誰がギャグキャラだ失礼な……、ちょっと人生のチャートにガバが多くてお祈り回数が多いだけじゃないか(真顔)。
『――――いやー、これはどこなんだぁー?
「はい?」
『ふぁッ!?』
そして、聞こえて来た
『あべしッ!』
『……あぁ~、なるほどな?
いやちょっと待てそれ以前にフーフルとかブリューナクとか組み込まれているとか色々と聞き捨てならない話が多いのだが…………。というか、何かこう原作に存在しないか、あるいは描写されていないような話が転がっていやしないだろうか。毎度言っているが、妖魔とか存在してはいたはずだがそんなにフィーチャーされてはいなかったはずだし。
私の視線を受けて、何かを納得していた星月は「まぁ一応教えてやっか」と肩をすくめた。
『釘宮大伍も言ってたろ? 確か、妖魔が魔法の化身である~みたいなハナシ』
「してたかどうかで言えば確かにしてはいたけれども……」
『妖魔っつっても区分がざっくり二種類くらいあってな。一つは実体、生物としての妖怪や魔物的な存在。でもう一つは、人間の信仰心とかそういう「ソトの魔力」を何かしらの対象が受け皿として成立した、言っちまえば創作妖怪とかそういう類だ。
で、このうち後者っていうのは、その成立背景が「事実上」魔法の詠唱とか儀式とかに相当して生まれてんだよ。つまりは、妖怪と魔物で妖魔じゃなくて、妖術と魔法で妖魔、みたいな感じだな』
「そんな日本語限定で伝わるようなことを言われても全然さっぱり解らないのだが……?」
『今、相棒が相対してる水無瀬小夜子でいえば、本来の本体たる水無瀬小夜子が「
…………んー、えっと、
「ああ、なるほど。それならまだ…………」
つまりは、生物として肉で構成された存在か、魔力で構成された存在かの違いと言ったところだろうか。より厳密には「元の存在が」という所になるのかもしれないが……いやニュアンスはわかるが説明がちょっと難しいかもしれない。
「ん? で、何で水無瀬小夜子がそんなことに……」
『おおかた、流石に神様クラスになっちまうと制御が利かないってハナシなんだろ? 「原作」じゃあ勝手に暴走したから介添えをちょっとしてやるだけで上手いこと回るって判断してたんだろうし。計画破棄もキリヱによるリスタートでやってるから、相手方からは「いきなり」心変わりしたように見えた感じなんだろーなー。
ところがこっちじゃ、相棒が三太相手に事情把握した上で割と仲良くしちまったモンだから、事前に心の迷いみたいなモンが相手に透けて見えて、ウィルスも勝手に計画に使う分は破棄しちまったみてーだから、だったら最後の最後に一花咲かせろってことだろ』
「一花……、
『頭良さそうなビッグブラザァ、あっちの頭悪そうなビッグブラザァは何言ってるんだ?』
『世迷言だよ。……いや俺だから分かるけど外で言うんじゃねーぜ? 間違いなく困惑必至だろ、雪姫なんて何回「はっ?」って顔したことか』
いや、流石にそんなには、
「で、それはそうと何故この雷獣はこの場に居るのか…………、というか馬鹿っぽいとは何だ馬鹿っぽいとはッ」
『アッ! ちょっ、しっぽ持って振り回すの止めてくれぇー! シニタクナイ! シニタクナイ!』
『安心しろー、それくらいじゃ死なねーから。
で、相棒の質問に答えると。おおかた「ネギ・スプリングフィールド」の戦い方を学習していたニキティスが、お前の出自から逆算して無理やり「闇の魔法」で術式兵装させようとしたんだろ。単純な話、掌握さえすればどんな形式でも問題はねぇからな』
っていうか外部から適当に血装術使って「溶かしこんで」きただけのくせにちゃんと成立してるあたりは流石って言うべきか。
呆れたような、少し恐れたような星月の台詞はともかく。とりあえず以前、夏凜の神聖魔法を取り込んで解析したような状態の直前まで、ニキティスの「手動で」無理やり持ってこられたというのが現在らしい。
とりあえず雷獣の尻尾を放すと「やれやれ酷ぇ目に遭ったぜまったく呆れたモンだ……」とか言ったのでもう一度尻尾を握ろうとしたが「ヒィ! み、認める、アンタがビッグブラザァだ!」とか訳の分からないことを言い出してきて気持ちげんなりである。というかいまいちコイツの性格が掴めないのだが……。明らかに声まで変わっているし。まぁ性格についてはこれくらい剽軽ぽくても納得がいくのだが(ぴか様乱用的な意味で)。
『いやぁ、しかし驚いたぜ……。ビッグブラザァ、二重人格ゥ?』
「って訳でもねぇ、かな? 一応、星月は『俺の能力の化身』を自称してるけど、あくまで外に出るような奴じゃねぇし」
『別に相棒の身体を乗っ取れたりする訳でもねぇからなー』
でそういうお前は何なのだと、私と星月の視線を受けて「待ってました!」とばかりにその場でひゅんひゅんと縦横無尽に行ったり来たりする雷獣。何か決めポーズなのか、そのままずびしッ! と尻尾をちょっとOSRな風に回転させて止まる。
『俺チャンは、しがない旅の電脳悪魔、さすらいの雷獣! 時に世界の危機に裏側から対峙してきた、人呼んでェ…………、人呼んで…………、アレ?』
『あ、ちなみに水無瀬小夜子と結果的に従魔契約を結ぶ感じになってるから、その時に名乗れなかった以上は名前無くなってるぞー』
『なん…………、だと…………?』
空中で、雷獣が真っ白になりふよんふよんと風に吹かれたよう流される(なお風は吹いてない)。何やら本人的には仰々しい感じの名前があったようだが、それもこうなってしまえば
『どうする? 相棒。今の水無瀬小夜子は契約履行不可状態だし、このまま「術式兵装」相当の技を作るってーなると、どうしても従魔契約みたいな感じになっちまうぜ? 魔力とかお金とか払って使い魔にするやつ』
「あー、まぁ………………、たぶん今後のことを考えると水無瀬小夜子、無理だろ?」
『それは相棒が一番わかってんじゃねーの? まぁ俺も同意見っちゃあ同意見だけど』
ならばまぁ、仕方ない。確かコイツ自体それなりに高額の妖魔とかだったはずだ、外にそのまま放流でもすればそれこそ金儲け目当ての相手に狙われる日々を送ることだろう。それはそれでコイツがどう思っているのかは定かではないが、とりあえずどこかに飛んで行ってしまいそうなのを、尻尾を捕まえて聞くことにする。
『へ? 妖魔ハンターとか賞金稼ぎ? まぁ俺チャンって契約者の端末だったら電子機器に侵入したりはできるけど、単体だとせいぜい電線通っていったり来たりくらいだからなぁ……。それだってここ半世紀くらいはめっちゃ捕まるようになったけど』
「駄目じゃねぇか……。一応聞くけど、俺と主従契約って話になっても問題ないのか? なんかこのまま行くと、どうしてもそういう流れになっちまいそうだけど…………」
『それはまぁ、ビッグブラザァの魔力はなんかこう、妙にコクがあって嫌いじゃないけど…………、でも俺チャン、せっかく契約するなら女の子の方が―――――』
『――――なら、これで良いかな?』
と。そう言ってフードを下ろした星月の姿は…………、ってオイオイオイオイちょっと待てちょっと待て貴様何だその姿完璧に大河内アキラじゃねーか! 髪後ろでまとめてるけど顔立ちおよびスタイルとか全部わかるぞアキラちゃん出てるグッズだけは大体集めたし映像ディスクも何度山本そこ代われと思ったか(偏り)、公式供給の少なさに「ラブひな」の
お前何だその姿お前ッ! っていうか姿変えられるのかお前、やっぱり絶対私の能力関係ない何かの第三者か何かだろう何かの第三者か何か!(大混乱)
オゥマーイッ! ビッグシスターッ! と声をあげた雷獣はそのまま両手を広げる星月めがけてダイブしていくが、それを星月は左手で「握りつぶす様に」アイアンクローのようにして捉えた(無慈悲)。
『何かこの子も
口調まで大河内アキラっぽくなる必要はどこにあるんですかね(震え声)。とりあえず煩いと文句を返しておいた。
『おや? 何、ひょっとして心当たりがあるのかな。……まぁ相棒も健全な男子だから、あれだけ無茶苦茶に迫られてまで、完全に無心でいられるような特殊訓練は「まだ」受けてないものね。大丈夫だよ相棒、中学生ならフツーフツー!』
「そこで『まだ』受けてないってなるところがこの世界の恐ろしい所ではあるか…………。
って、学習といったらあのディーヴァだ。アレは一体何なのだ?」
そう、
私の疑問に、星月は…………星月だとわかっていてもアキラちゃんの顔をしているそれは、アキラちゃんらしい苦笑いを「ハハ……」と浮かべて少し頬を赤らめながら回答してきた。
『…………もう察しているとは思うけれど、相棒を含めた『七十二人』の研究データ、アマテル技研の資料を、あの無垢すぎる子は読んだみたいだ。その上で実際に相対したネギくんの能力をみて、全身変化させるだけではない術を開発したってところ、なんだろうね』
「全身変化……、そーいや他のアーウェルンクスとかも『ネギま!』じゃ全身雷化とかやってたっけ……」
ディーヴァで言えば全身水化とかそんなものになるのだろうか。なるほど、それに雷天大壮のように「他の術式を」「補助目的で組み込み」併用するということをしているのならば、あの妙な自由度の高さには納得がいくかもしれない。
『私の見たところ、あれは「水晶のような性質も兼ね備えた水」って言っても良いんじゃないかな? 単なる液化ってだけでは、あの妙な柔軟性や「霊体を狙う」三太君の攻撃も躱せそうにないし』
「あの時、三太そんなことしてたのか…………、って、物理も霊的なそれもどっちもアウトじゃ打つ手なくね?」
『それどころかたぶん、実体の形を伴わないってことは「ミクロサイズ」レベルでの変形が可能ってことでもあるから、たぶん毒物とかも効かないし、完全密室に封じ込めたりしてもその視認すらできないわずかな隙間とかから脱出したりするはずだ。
あと見た感じ、液化までは0.5秒くらいしか隙も無いから、物理的な対決じゃまずまともな戦闘にはならない。不思議なことが起こってるね、相棒……』
「バ〇オラ〇ダーか何かで?」
むしろ怒りたいのはこっちなんだよなぁ……(握り拳)。
その上にだが、そんなレベルの彼女とさらに比較して巨大小夜子とで、どちらも敵わないと判断していた釘宮が(たぶん野生のカンとかだろう)、それでもディーヴァの方に来ていたということは、逆説的にどれだけあの巨大小夜子がヤバいブツなのかが証明されてしまうのでは…………。
『は、離せー! ちょっとくらい美人でおっぱい大きいからって、俺チャンを舐めんじゃねーぜ! これでも俺チャン、雷の上位精霊の一種としては――――』
『少し黙ろうか』
『ふみゅーッ!』
あっ、くてってなった。普通の表情のまま「ぐっ」と手に力を入れただけに見えたが、どうやら大河内アキラの姿ばかりでなく、力もちなところも再現しているらしい…………。いやだから、ホントお前誰なんだっていうか何なんだよ?(素朴な疑問)
『ま、まぁ、私のことは置いておいて…………。とりあえず、今の状況を脱せそうなものを思いついたから、それで一回戻って試してみようか、相棒』
「その困ったようなお姉さんの顔止めろ」
色々とここのところ限界が近いが(性癖)、トドメとばかりにクリティカルヒットを持ってくるんじゃない。いくら偽物とは言え私の目から見た大河内アキラは完全に大河内アキラなので、いくら「警戒するべき」星月相手と言えどリアクションに困る。これに興奮したら負けという奴だ……けどほぼ完璧にアキラちゃんなんだよなぁ(血涙)。
※ ※ ※
意外と高い完成度を誇ったこれに対して、UQホルダーおよび協力者はいまだ為す術はなく。もともとは時坂九郎丸の「斬魔の太刀・弐の閃」でしたか、うろ覚えなその技対策として即興で造り出したものでしたが。
能力的な相性を鑑みて、これをもって不死化実験体7号、個体名「刀太君」を捉え拉致する予定だったのですが、思いのほかデュナミスの逃走に時間をとられています。
絡繰茶々丸…………、私は面識はないのですが、「
その実力については、いかにデュナミスとはいえど私たちアーウェルンクスシリーズほどの完成度でないせいか、それとも流石に稼働を開始してから相当年数経過したせいか、善戦できていないように見えます。デュナミストとはいえど……デュナミスト? いえ、変な音のつながりですね。肝心の本人が誰にも「資格」を継げない所なんか特に。
それは置いておいて、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルへの不満を垂れ流しながら戦う姿は、何と言うかこう…………、
まぁ、とはいえ後は彼が逃げ切れるか、あのダイダラボッチが「次のフェーズ」に移行するのを待つばかり――――。
そう思っていたら、唐突に出て来た小さくて可愛い! 可愛い感じの容姿をした、こう、今にも抱きしめたくなるような小さい何かが、見た目に似合わないくらい尊大な声を上げて、私が捉えている個体名「刀太君」に「何か」を無理やり埋め込み埋め込み――――それこそ変化している私の身体を透過して――――。
「――――
「おや?」
私の頭の横にある個体名「刀太君」の髪が、オレンジがかった金色になって逆立ちました。