皇帝のライバル   作:喜怒哀LUCK

3 / 22
入学

 日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園。日本にあるウマ娘育成学校の中でもトップクラスの規模を持つ学校だ。2000人弱のウマ娘達が在学し、それぞれの夢を追いかけ、日々鍛錬を続けている。

 ここに集められたのは、才能あるウマ娘のみ。そしてその中に私、シンフォニアリリーもいた。

 走りに興味のなかった私が、親に連れられて行った小さなウマ娘用のコース、そこでレースを走ること、誰かと競うことへの興奮を覚えさせ、ついにはこんな所まで来てしまったのだから、子供の頃の影響というのは恐ろしい物だ。

 

 そんな私は新入生であり、新入生達と同様、入学式を受けている。校長先生からのありがたーい(迷惑)なお言葉を流しながら、時が過ぎるのを待つ。たとえトレセン学園でもこういったところはどこの学校でも変わらないようだ。

 

『新入生代表、シンボリルドルフ』

「はい」

 

 ボーッと、半分意識を飛ばしながらうつらうつらしていた私は、周りのざわめきによって意識を戻した。

 

(シンボリルドルフって、あのシンボリ家の?)

(次期当主って噂も)

(めちゃくちゃ速いんだって)

 

 そんなひそひそと話しているのを聞きながら(ウマ娘の聴覚は良いので勝手に聞こえてくる)、壇上に上がったウマ娘を見た。

 シンボリ家、名門中の名門だ。多くの優秀なウマ娘を輩出し、引退後もあらゆる分野で実績を残している。そんな家の次期当主とならば、よほど優秀なのだろう。

 髪は鹿毛がベースに前髪の部分は黒鹿毛、そして白い流星がまるで月の様に流れている。佇まい同様、私と同じ12歳とは思えないほど凛とした顔をしていて、まだあどけなさが残っているところが成長中を思わせて非常に可愛い。

 しかも速いらしいときた。主戦距離はどこだろうか。

 

 入学式も終わり、私たち新入生は各自寮へと案内される。寮は基本2人同部屋となっていて、1人なのはたまたま余ったか、同室の子が海外へ遠征に行ったとか何かしら事情がある時のようだ。

 ちなみに私は余り物だったようで一人部屋だ。気を使わなくていいから楽である。

 

 明日からは本格的に授業が始まる。

 トレセン学園の授業は、午前が一般教養。午後からはトレーナーやチームに所属していないウマ娘は、教官と呼ばれる元トレーナーだった人に大人数をまとめて指導される。ちなみ強制ではなく自由参加らしい。それでも多くのウマ娘が指導を仰ぐのは、元とはいえトレーナーだからだろうか。

 ウマ娘2000人に対し、トレーナーは100人程度しかいない。ベテランのトレーナーなら複数人でも個人に合った細かい指導を行えるが、新人ともあらば1人が手一杯。故にそんな状況になるのだ。

 いくら元トレーナーとはいえ、個人指導をしていたらキリがないので、スタートの練習ー、各距離に分かれて練習ーといった大雑把な感じになってしまうのは仕方ない。だから皆個人指導をしてもらえるトレーナーにスカウトされたいのだ。

 

 そしてそんなトレーナーにアピールできるのが選抜レースと呼ばれるもの。まだトレーナーやチームに所属できていないウマ娘のみが参加できる、芝ダート距離別の簡易レースだ。簡易とはいえ実況もつくし、トレーナーとしてもウマ娘の実力を見極める良い機会になるので、多くがそこでトレーナーと担当契約を結ぶらしい。

 とりあえずの目標は、そのレースで活躍すして、トレーナーにスカウトされることである。

 

 そんなこんなで放課後である。誰も授業風景なんて読みたくもないからね。(需要があるなら間話でも作るでしょ)

 私はと言うと、教官には教わらず一人で練習に耽っていた。といってもやりたい練習があるわけでもなく、ただ集団行動って苦手だからという理由だ。

 もしトレーナーがついて、デビューすることになったら、目標はやはりクラシック3冠、皐月賞、日本ダービー、菊花賞だろう。多くのウマ娘の憧れである重賞レースの最高峰G1のレースだ。距離も2000mから3000mとかなりの距離を走ることになる。

 となればやはり1番重要なのはスタミナだろう。日が暮れる直前まで私はコースの外周をぐるぐると回っていた。

 

(そろそろ上がるか……最後に一本、本気(・・)で)

 

流石に疲れてヘトヘトだが、身体に鞭を打って足に力を入れる。一周1600mのコースを最終直線まで足を貯めながら走り、最後の最後で解放させた。

 

 

ドンッ!!

 

 

 ターフを抉るように踏み込み、足裏で蹴り飛ばすように駆ける。さっきまで周りの雑音が聞こえていたのに、無音になる。景色が後ろへと流れていく。

 

(あぁ、やっぱり気持ちいい!)

 

 基礎をおろそかにするつもりはないし、手を抜くつもりもないが、やはり本気で走ると言うのはとても気持ちがいい。これで誰かと走りを競えていたら言うことはなかったのだが、そこまでの贅沢は言うまい。

 加速するたびに空気抵抗が増していくが、それすらも突き破って加速する。まるで風と一体になったかのような感覚だ。

 それも400mほどでゴール板を通り過ぎて、名残惜しいがスピードを落とす。本気で走ったから、心臓も大きく鼓動するし、汗も噴き出る。

 

息を整えながら、ゆっくりと学園へ戻ろうとしたら、声をかけられた。

 

「すみません、ちょっとよろしいですか?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。