守護霊はゴースト   作:修司

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ゴーストの1日前半

俺の朝は早い。

早朝5時、俺は家の周りに蔓延る化物たちをまとめてキックで吹き飛ばすことから始まる。

基本奴らが増え出すのは夕暮れ、丑三つ時、朝焼けの3つの時間帯に分けられており、いずれかを狙って活動を始めている。それらの殲滅には大体30分から35分ほどかかる。

 

『■■■■■■■■■■■!』

 

『■■■ー、』

 

『■■■・・・・』

 

後ろから襲ってくる化物に向かって肘鉄を叩き込むと同時に左手に持った妖剣を相手の顔面に突き刺す。両手の塞がった状態の俺に3体目の怪物が口から剣山のような針の束を出して飛び掛かってくる。

 

『させるかよ!』

 

それを肘鉄で怯んだ怪物を針に向けて投げ飛ばすことで威力を相殺する。投げ飛ばされた怪物はそのまま針を飛ばした化物に激突する。そんな隙を見逃すほど俺は甘くない。

 

ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!!

 

 

『だりゃあ!!』

 

エーテルが装填された状態で後ろ回し蹴りを2匹にまとめてぶつける。当然耐え切れるわけもなく蹴りを食らった2匹は水風船の如く辺りに体液を撒き散らしながら四散しその命?を終わらせた。

 

 

『最後!』

 

 

そう言って残っていた人の頭を持った蜘蛛に妖剣を叩き込み地面のシミにする。

辺りにはもはや1匹の化物もおらずあたりを日の光が優しく照らす。

それを確認すると俺は変身を解いて家の中へと入っていった。

 

『今日はいつもよりは楽だったな〜』

 

 

 

朝5時45分

 

『あ、おじさん。おはようございます』

 

『ああ武命くん、おはよう。朝から大変だったね』

 

彼は元この家の大黒柱こと四谷真守さん。俺の守護主である四谷みこの父親にして故人である。彼は伸びをしながらカーテンから漏れ出る朝日を浴びながらこちらに向かって挨拶をする。幽霊の彼にこんなことを言うのもなんだが元気な人である。

 

『おじさんも今日は朝早いですね』

 

『ああ。今日はいつもより早く日が昇ったからね。それに君も早く終わったし出迎えようと思ってね』

 

そう言っておじさんは霊体となった新聞を開き今日の世界情勢を確認する。このおじさん、見た目こそ普通だが俺が守護霊となる前までこの家に侵入してきた化物どもが家族に手を出さないよう守ってきた凄い人だ。

ちなみに最初自分がみこの後ろについて家に入った時はまるでこの世の終わりを目撃したかのような凄まじい顔をしていた。

 

『みんな起きるまで暇ですし一勝負でもします?』

 

『ん、そうだね。今日は五目並べでいいかい?』

 

そういうと囲碁を取り出しておじさんは黒の石を取る。それを確認した俺も白い石を取り盤面に最初の一手を打った。

 

 

 

朝7時半

 

 

『待った!今の一手待った!』

 

『まちません!これで3回目ですよ!』

 

『それなら僕もさっき待ってあげただろう!』

 

『いやそれでも3回もOKしたら勝負として成り立たないでしょ!』

 

『年長者をもっと敬いなさいよ!』

 

『ちょ!?揺らさないでください崩れる!』

 

それからしばらく五目並べをしていた2人はやがて盤面を挟んで喧嘩を始める。側から見たら2人の大人が年甲斐もなくボドゲで争うなんていう地獄のような光景だが幸い彼らを見ることのできる人間というのはごく限られる。

それだけが救いであった。

 

 

『ってちょ?!引っ張られる⁈まさかもう登校時間?!』

 

『よし、よくやったみこ!残念だったね武命くん!この勝負はお預けだ!』

 

『さてはあんたこれ狙ってやがったな!大人なのに恥ずかしくないのか!』

 

『そんなもの死んでから振り切れてしまっている!』

 

『ちくしょう!娘と同い年くらいの男相手にあんた!』

 

『はーっはっはっは!今日も元気にいってきたまえ!』

 

 

しかしそんな醜い争いもやがて登校時間というタイムリミットを迎え終わる。武命はみこに引き摺られながらエコーを残して連れ去られるのだった。

 

 

 

朝8時

学校に着いたらすぐさま辺りの化物どもを処理していく。大物に当たることなどはごく稀でそのほとんどは雑魚ばかりなので倒すこと自体は楽だ。

 

『その代わり不快な奴も多いんだよな・・・』

 

女子校だからなのか不快な化物が多い。つい昨日現れたのは女子生徒の身体に張り付き胸や臀部を揉みしだく奴で、そいつは念入りに処分しておいた。

 

「おはよー!」

 

「あ、おはようハナ」

 

 

横に視線を向けるとみこの友達である百合川ハナが後ろから肩を叩いて挨拶をしていた。少しだけみこはびっくりするが相手が誰か気づくとすぐさま挨拶を返す。

彼女はクールな印象のみことは真逆の印象を抱かせる天真爛漫な女の子である。食べることが大好きでホラーが苦手。なのに何故か化物どもを寄せ付ける生命オーラを放っている子である。

 

「今日1時間目から体育だって。きついよね〜」

 

「え・・・マジ?朝からやめてほしい。体操服持ってきてたっけ・・・?」

 

「覚えてたら朝ご飯控えめにしてきたのに〜。失敗した〜」

 

「ハナってよく太んないよね。ずるい」

 

「いやいや、多分学校まで遠いからそれが運動になってるんだよ」

 

 

そんなたわいない話をするふたりを確認すると俺は更衣室に向かう。

決して着替えを覗きに行こうだとかやましい気持ちからではない。化物どもは陰気な場所を好む。誰もいない長い廊下や図書館の端っこ。誰も使わないトイレなんかに奴らは停滞するのだ。

 

『奴らの場合それだけじゃない気もするが・・・・』

 

そう言ってロッカーのひとつひとつに妖剣を振り下ろす。三つに一つの割合で手応えを感じることから中に奴らが潜んでいることは明白である。

いたいけな少女達を毒牙にかけるなど決して許さん。

 

 

最後のロッカーに妖剣を振り下ろす。

ブチリと言う音とともに何かが弾け飛びロッカーの隙間から体液が漏れ出る。そうして全てのロッカーの処理が終わるのを確認すると更衣室の扉をすり抜けて外へと出る。見ると生徒達が着替えようと集まってきているのですぐさま壁をすり抜けて校舎の側にふわふわと浮遊した。

 

少しの休憩を挟んだ後、今度は教室の机に同じことをするつもりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扉を開けるとそこには恐ろしい光景が広がっていた。

 

(ひぇ)

 

「みこ入んないの?」

 

「あ・・・・・いや、入る」

 

そう言われて改めて更衣室の中へと入る。更衣室の中は辺りに黒い靄が漂い、いくつかのロッカーの中から血や骨のようなものが漏れ出ている。おそらく彼が私が来る前に倒してくれたのだろうけど・・・

 

 

(横着してロッカーの中で倒さないで・・・!)

 

確かに彼のおかげで怖い思いは格段に減った。しかし彼はこんな風に家以外だと横着をする癖があり、家では痕跡を残さないように外に連れ出してから戦うがそれ以外だとこのようにそのまま倒すなんてことも少なくない。

時間が経てば消えるとはいえそれで何度腰を抜かしそうになったことか・・・。

扉を開ければ周り一面血の海である。別ベクトルの怖さがある。

 

(あ、消えてく・・・)

 

そう言っている間に何かの死体は空気に解けるかの如く消えていく。

ハナはその間にもう着替え終わったのか未だ制服を持ったまま固まっている私を見て怪訝な顔を浮かべる。

 

「?どうしたの?体操服忘れたの?」

 

「いや、なんでも。ただ―――」

 

 

ふと考える。確かに別ベクトルの怖さはあるものの、ホラーよりかはマシだと。かつてこのロッカーを開けた時、上の棚の中から化物が覗き込んできたことがある。あの時は咄嗟にスマホを取る風に装って誤魔化したが手を近づけた瞬間謎の鳴き声を上げて腰を抜かした。

 

「何もいなくてよかったなって」

 

「何かいたことあるの?!」

 

 

 

 

 

放課後15時

今日も特に不穏な事なんかもなく無事に学校を終えた。

みこはハナと寄り道して行くらしくいつもと少し違う通学路を歩いている。

 

(こうして眺めるとやっぱり違和感がすごいな・・・建物とかに違和感を感じてないところからして死んだのは最近だと思うけど・・・)

 

化物達が闊歩する通路を歩きながら武命は考える。普通の景色の中に溢れる人でない存在達。それらに対して抱く違和感からかつては生きた人間だった事が伺える。しかし未だに何も思い出すことの出来ない状況に武命はイライラしていた。

 

(・・・どうしたんだろう?なんか考えてるみたいだけど・・・)

 

「ほらみこ!早く並ばないと売り切れちゃうよ!」

 

「あ、ごめんごめん。」

 

ハナに手を引かれ50%OFFセールのドーナツの行列に並ぶ。買い物帰りの主婦や自分達と同じような学生達が並んでおりそんな列の最後尾にて2人はどんなドーナツを買うのかを話し合うのだった。

 

(ええ・・・・・何あの列。あ、絡まれてる)

 

尚考え事をしながら歩いてたせいでいつの間にか化物どもの行列に並んでた武命は一番前にいた謎の大口の怪物をぶん殴っていた。食べられそうになったのだろうか?

 

 

 

 

 

放課後16時

目的のドーナツも買えほくほく顔の2人はふと路地裏から聞こえる鳴き声に足を止めた。

 

「うわあああかわいい。見て見て超ちっちゃい!」

 

 鳴き声の元に近づくとダンボールに入った子猫だったようで好奇心故かハナの指を舐めている。たまにはスプラッタではなくこんな風な癒しも必要だろうと考えたみこもよく見ようと覗き込む――――

 

 

『あ、あぶねっ!!』

 

 

前に武命はダンボール箱の中に手を突っ込み中から取り出したものを全速力で空に向かって投げ捨てた。

 

 

 

「え!?」

 

「?みこどうしたの?」

 

「いや、いま・・・・・あ、いや、ゴキブリが見えて」

 

「ひゃああっ?!」

 

 

咄嗟に誤魔化して注意をそらす。

そうして先ほど投げられ遠くに見えるシルエット。形からしておそらく猫ではないだろう。そっと深呼吸して息を整える。

 

(もう!だから横着!)

 

「どこ?どこ!今どこにいんの?!」

 

 

「ごめん、石と見間違えたみたい。」

 

「もう!やめてよほんとに!」

 

猫を片手に抱き寄せみこのほっぺたを軽くつねる。それに対してごめんごめんと謝ると改めて猫に視線を向けた。見たところ生後1ヶ月くらいだろうか?その瞳はまだ無邪気で初めて見た人である2人に対して全然警戒心を抱いていない。

 

「うーんどうしよう。うちじゃペット飼えないし・・・」

 

「とりあえず里親募ってみる?」

 

「あ、いいねそれ。写真撮って〜」

 

 

ハナは子猫を両手に抱えてお腹を撫でながら万歳の姿勢を取らせる。お腹を撫でられ気持ちがいいのか子猫は目を瞑りながらも鳴き声をあげている。そうして撮れた写真はなかなか可愛く写り募集も上手くいきそうだ。

 

 

『そういや猫って初めてだな・・・』

 

武命はそう呟くと同時に猫の顎の下を撫でようと手を伸ばす。しかしやはりと言うべきか腕は猫をすり抜けてしまい触ることはできず思わず肩を落とす。

 

(やはり知覚してない奴は干渉できないか・・・)

 

猫を触ろうとした手を眺めため息をこぼす。

そんな様子を見たみこは可哀想なものを見る目をしながらハナとともに近くの公園へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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