守護霊はゴースト   作:修司

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空の器前編

かつて出雲の国には、周囲から酷い差別・迫害を受けている部落があった。

 

 

その部落に1868年の隠岐の反乱で反乱を起こした側に属する男が一人落ち延びてきた。

 

 

部落の人間は、これ以上の厄介事を抱えたら迫害がさらに酷くなると考え男を殺そうとしたが、男は「命を助けてくれたら、武器をやる」と取引を申し出た。

 

 

その武器というのが、他ならぬ『■■■■■』の作り方であった。

 

 

その箱を作るには、あまりに凄惨で非人道的な行いに手を染める必要があった。 しかしそんなことも構わずその部落の人間は■■■■■を作った。

そして最初に作られた■■■■■は部落へ差別を行っていた者たちの元へと送り込まれ……わずか2週間足らずで、庄屋の家の女が1人と子供が15人、血反吐を吐いて苦しみ抜いて死んだ。

 

この殺戮劇をもって、部落は周囲の全ての地域に伝えた。

「庄屋の家の惨劇は自分たちの呪いの効果である。今までを許す事はできないが、放っておいてくれれば何もしない。仕返しを考えたりすれば再びこの呪いを振りまく。呪いの箱は既に7個あり、これからも作り続ける」と。

 

こうして■■■■■は作られ、使われ、最終的に失敗せず完成した物だけでも16個の箱が作られたある時。

しかし部落の中で、子供が知らずに持ち出してしまい惨劇が起きた。

ひとつ間違えれば自分自身でも制御できない諸刃の剣である事を改めて思い知った部落の人間は、箱の処分を試みるために、近くの地域の神社に持ち込んだ。

 

しかし、呪いはあまりに強すぎた。

その場で祓う事ができないと判断した当時の神主は、箱1つごとに担当グループを設定し、一定年数ごとに持ち回りで保管して呪いを薄める事を提案した。

現代までに大多数の箱は解体が完了していたが、「■■■■」と呼ばれる呪いが強い物はまだ解体出来ていないと言う・・・

 

 

 

 

 

 

ここまで話と全く関係のない事を語った事に疑問を浮かべるものもいるだろう。この話において何を伝えたいのか、それは霊障というものにおいて箱ーーー器とはとても重要な意味があるという事だ。

 

かつて神の血であるワインを受け止めたキリストの聖杯は持つだけで世界を手にすることもできると伝えられた。

 

中国の呪法である蠱毒は小さな壺の中にいくつもの蟲を入れ、互いに食い殺させる事で呪物と化した。

 

日本においても同じだ。

かつて■■■■■と呼ばれたそれは呪法として用いられた。だが勘違いしてはいけない。

この話の本質は呪う事ではない。

この話において大切なのは■■■■■は人の願いを叶えたというところにある。かつての■■■■■は怨念によって形作られその中にはあらゆるものを掴み、汚れとされた指を詰め込む事で生まれ、呪いという形で部落の願いを叶えたのだ。

 

 

    それによって広がった呪いは凄まじいものだった。

 

 

 

ではその中にきれいなものを詰め込めばどうなるのか。

 

 

 

      これほどまでの災害を起こせるほどの力があるのであれば、奇跡すらも願うことが出来るのではないか?

 

 

 

     それに気づいた部落の者たちは新たな■■■■■を作り出し、

 

 

  

 

 

    

 

 

    この世を見渡す人体において最も美しい部品ーーーーーー

 

 

 

 

 

 

   目玉を詰め込んだという・・・・・。

 

  

 

   

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ダイカイガン!オレ!オメガドライブ!』

 

『ダリャアッ!!』

 

エーテルを纏った蹴りが妖怪「手の目」に直撃する。その瞬間手の目の肉片が辺りにばら撒かれ街道を汚した。

 

 

『■■■■■■■■■■■!!』

 

しかし何事もなかった様に手の目は再び体から新たな触手を生やしてスナップを利かせ鞭の如く武命に向かって振り下ろした。強烈な破裂音と共に武命が吹き飛ばされ地面に転がる。

 

『ぐっがぁ・・・あっ・・・!』

 

打撃を受けた断面の装甲は半壊しておりその影響か装甲の下からオレンジの炎に包まれた肋骨が見て取れる。傷の痛みに悶絶しながらも武命は目の前に立ちはだかる手の目から視線を逸らさない。

 

『ぐっ・・・・!この間の、といい、トラブルの種が多いな・・・!』

 

妖剣を杖にしてゆっくり立ち上がる。武命はもはや満身創痍とでも表現するかの如くボロボロであった。

左手はあらぬ方向に曲がり、胴体の装甲はひしゃげたものの下から肋骨がのぞいている。仮面から発する光も弱々しくパーカーゴーストもあらゆる部分に破けやちぎれ、埃が付着して今にもぼろきれとなりそうだ。

 

ちらりと後ろを見る。

武命から20mほど離れた場所。そこには自分の宿主であるみことその友人であるハナは今日行くであろう映画について語っている。若干みこの方には違和感を感じるがひとまずは戦いの影響はなさそうだ。

 

武命はすぐ立ち上がり手の目に向かって妖剣を振りかざす。しかし手の目は片手でそれを封じると残った触手を振り翳し叩きつけようとする。それに対して武命は一度妖剣を手放すとそれらを蹴りで捌いていく。しかし手数に差がありすぎる故に拮抗はわずかな間しか保てず徐々にダメージを受けていく。

 

『しっつこいんだよこのかたつむり野郎!!』

 

もうわずかな拮抗も不可能と武命は判断すると再び妖剣を手に取りそれを変形させ妖銃へと変化させる。それと同時にベルトのレバーを押し込み今度は魔弾へとエーテルを流し込む。

 

熱線によって手の目が吹き飛ばされる。それによって再び間合いを得た武命は先ほどまでのことを思い出した。

 

 

 

 

 

いつものごとく遊ぶ約束をしたみこは駅にて友人のハナを待っていた。14時に予約をしていたのだが15分経っても来ない。

仕方なく電話をかけようと携帯を起動させたと同時に声をかけられ、やっと来たかと声の方に顔を向けるとそこにいたのは見るからに関わってはいけない存在を連れてこちらに走り寄るハナの姿。

 

「なんで!?」

 

『変身・・・・・・・ッ!!』

 

『カイガン!オレ!レッツゴー!

    カクゴ!ゴ!ゴ!ゴ!ゴースト!!』

 

 

その姿を見た武命は声を発するままなく変身を行う。ベルトから飛び出したパーカーゴーストがトランジェント体の武命に覆いかぶさると同時に専用マシン「カシャ」に乗り込むとアクセルを全力で握り込みみこたちから離れられる20m先まで吹き飛ばした。

 

『■■■■■■■■■■■■■!!』

 

途端にこちらを威嚇する妖怪手の目。その様子を見たみこは自分達がなるべく邪魔にならぬようハナの意識をこちらへと向ける。

 

「ま、まぁいいか!じゃあそろそろ行こうか・・・・!」

 

「そうだね、映画始まっちゃう!」

 

(頑張って・・・・!)

 

早歩きでその場を離れてゆく2人。

そんな2人を置き去りに街の真ん中でぶつかり合う二つの異形は尚も激しくぶつかり合う。

武命はそれをちらりと確認すると同時に手の目に殴りかかった。

それに対抗するために複数ある触手を唸らせると一斉に武命へと伸ばす。そこにあるのはラッシュの速さ比べ。片方は触手で、片方は手足を使って、それによって辺りには連続とした普通の人間には聞こえない打撃音が響き渡る。

 

「手の目」

手の目などと言う名前ではあるが実際に手のひらに目玉があるものはごくわずかだ。この妖怪は落ちた幽霊を食べ続けた悪霊が落ちた幽霊の力を奪い取る事で生まれる。多くの場合は泥棒などがこの妖怪になりやすい。

 

『こいつ!ハナちゃんの魂を奪う気か!』

 

そしてこいつの目的は単純明快。生命エネルギーの豊富なハナに取り憑きその魂を奪う事にある。悪霊や悪いものに取り憑かれたものは抵抗力が働き悪霊を追い払おうと生命エネルギーを燃やす。しかし発する生命エネルギーを超える力を持つ悪いものに取り憑かれた人間はその影響を受け鬱、精神疾患、ネガティブな思考と言った生きる事に否定意的な感覚に襲われやがて命を落とす。

 

 

手の目が歪んだ口に笑みを浮かべ触手の爪を伸ばす。咄嗟に避けて魔弾を放ちながらゆっくりと後退していく武命。このまま彼女との距離を詰めて諦めさせる作戦である。

魔弾が連続で手の目の肉を抉る。しばらくの間その場で蠢いていたそいつはやがて咆哮を上げると魔弾をものともせずに武命に体当たりをぶつけた。

 

『・・・・ッ!』

 

その瞬間、武命は吹っ飛ぶ中で何かが折れるような音を聞いた。

視線を向けた先、そこには本来曲がるはずのない方向に曲がった左手が力無く垂れ下がっていた。

 

 

『ぐうぅッ・・・!』

 

そして今に至る。

歯を食いしばり痛みに耐えつつ相手の口に妖剣を突っ込み思い切りひねる。内臓を切り付けられた手の目は痛みに悲鳴をあげると触手で武命を掴み上げ投げ飛ばした。

地面に叩きつけられ思わずえずく武命。

そんな中ふと見上げると、何故かみこたちがバスに乗っている事に気がついた。

 

『映画館はそっちじゃ・・・いや、ここから離れてくれればそれでいい!』

 

自分の背に引っ張られる感覚を覚えつつもそれでも目の前の敵を睨みつける武命。このままいけば武命はみことのつながりが消えてただの浮遊霊と化すだろう。しかし今この目の前にいるこいつを倒さなければ彼女たちに何をするのかわからない。それがわかっているからこそ武命は妖剣を構えて2人の乗るバスを背に構える。

 

『■■■■■■■■■・・・・!』

 

しかしそんな武命の想いを無視するかのごとく、2人が離れていく様子を見た手の目は手を動かせない左側から突進し2人の乗るバスを追いかけ始めた。

 

『ま、まずい!』

 

それをみた武命は自身のパーカーを少し破り腕に巻くとカシャを召喚しバスの跡を追い始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その先に何があるのか、それは今は誰も知らない・・・。

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