守護霊はゴースト   作:修司

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空の器後編

ーーーー今ではないいつかの時代

 

暗闇の中を箱を持って走る。

道なき道を走る事で枝葉によって体が傷つくがそれも構わず月の明かりを頼りに走った。

 

『いたか!?』

 

『ダメだ、見つかんねぇ・・・!』

 

遠くで村人たちが叫ぶ声が聞こえる。

まだ自分の姿は見つかってはいないが距離からしてもはや時間の問題だ。

 

 

『・・・・!』

 

 

あの日来た不気味な男を思い出す。

洋服に身を包んだその男は虐げられてきたみんなに何かを教えた事で、その日から村はおかしくなっていった。

昨日までいたはずの友達が居なくなって、

大人たちは自分達をおかしな目で見つめるようになり、

自分達を虐げてきた者たちが次々と命を落としてゆく。

 

 

足に何かが突き刺さり思わず躓く。

抱えていた箱はそれによって遠くに投げ出され音を立てながら転がってゆく。

 

『こっちで聞こえたぞ!』

 

『近いぞ!』

 

視界の端に明かりが灯り始める。追跡者たちが自分の場所に気づき始めたのだ。痛む足を引き摺って転がった箱を再び抱える。

複数の金属を組み合わせて作られたその箱は複雑な幾何学模様をしており中心にはまるで瞳を閉じたかのような見た目をしている。明らかな()()()()()であるそれは中から水のような音を響かせながら自分の両手を赤く染めた。

 

 

厳しい時代だということはわかっていたはずだ。

部落差別、争い、外国からの横槍。

あの頃とはとても比べられないほどに過酷な生活。

 

一日の食べるものすら手に入らずに飢えて死ぬ人たち。

 

『それでも・・・・!』

 

『それでも生きていたんだ・・・!』

 

思い出す。

そんな時であっても周りの人たちと手を取り合って歩みを進めてきた村人、そして両親。理不尽な理由の中でもがきながらまだ見ぬ明日を夢見て生きようとしていた子供たち。

 

 

『・・・・』

 

座り込み改めて箱を見つめる。

まぶたを閉じたような造形の隙間から赤い水が溢れて流れてあたりに鉄の匂いを漂わせる。

そういったものが見えるわけではない自分でもわかる濃密な嫌な気配。その中身がなんであるのかはわからない。ただ・・・

 

『ごめんなぁ・・・・・。俺が止めなくちゃいけなかったのに・・・』

 

『生きていければ十分だったのに・・・差別もなく、偏見もなく、生きていければよかったのに・・・』

 

 

『みんなを止められかった・・・!』

 

両手を箱の隙間に入れ力を込める。

何が奇跡、何が神だ。そんなもの例え高位の霊魂を10用意しても足るものか。

その結果出来上がったこの出来損ないの呪物。

()()()()()()()()()()生み出された箱が軋みをあげゆっくりと開き始める。

 

 

『いたぞ!』

 

 

『■■■!すぐにそれを返せ!おもちゃじゃないんだぞ!』

 

遠くから聞こえてくる村人たちを尻目にしながらも力を込める事をやめない。これから先他の呪物も含め、先々の時代に残るだろう。そしてあの箱はその度に多くの人を傷つけ成長し、やがては国をも呪う存在にも届きあるかもしれない。

 

爪が割れて痛みが走ろうともやめない。

そうだ。そんなことあってはならないんだ。

ここに住んでいた人たちはみんな幸せになりたくて、

だけど誰にもそれを許してもらえなくて、

だから外道に手を染めてしまった。

自身も含めて、許される事ではない。

 

『!やめろそれを開けるんじゃない!』

 

ならばどうする。

この箱に積まれた悪意は未だ脈動し、人を呪う機会を窺っているだろう。そしてまた多くの人を不幸に追いやるだろう。そんなもの、残しておくわけにはいかない。

 

『やめろおおおおおおお!』

 

箱を上に掲げ溢れた中身をぶちまける。

そして自分はそれを確認すると同時にーーーーーーーー

 

 

 

 

 

それらを全て飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスから降りたみことハナの2人はパワースポットと呼ばれる神社の前にいる。

後ろに迫る化け物にそっと視線を向けながらみこは目の前の賽銭箱を前に全力で祈っていた。

 

(・・・お願いしますハナについてるヤバいのをなんとかしてください・・・彼を助けてあげてくださいお願いしますお願いしますなんでもしますどうか彼を・・・!)

 

ハナにはとりあえず今日は映画は休みだったと伝えて着いた目的地。見たところ古い神社であるようだがやはりというべきか彼もバケモノも普通に入っていった。最初はなんとかなるとも思っていたが神社でどうにもならないとわかるやすぐさまみこは神頼みにシフトチェンジした。

あたりに炸裂音ととともに響く地響きを聴きながらみこは心の底から願った。

 

「みこ長くない?そんなにお願い事したの?」

 

「・・・健康」

 

ゆっくり彼の方に視線を向ける。

彼はぼろぼろになり怪物の足に踏みつけられており、彼のバイクも彼を助けようと唸っているが手数の多さによってどうにもできていない。

涙目になっているのをなんとか隠しながらみこは祈る。

どうかこの声届いてくださいと。

彼を助けてほしいと。

 

 

(ダメ・・・!何にも起こんない・・・!)

 

しかしそんな状況でも時間は進む。

彼は化け物の触手に持ち上げられそのまま口元へと運ばれている。おそらく食べてしまうのだろう。これまで見てきた奴らと同じように。丸呑みにしてしまうつもりなのだろう。

 

(やだ!やだ!お願いします!助けて・・・!助けて!彼が)

 

「ゃっ・・・」

化け物が手を離す。ゆったりと力無く落ちていく彼。

その様子についに我慢の限界とみこが声を上げようとしたその瞬間

 

 

(・・・え?)

 

 

化け物の背後に何かがいた。

 

 

 

 

 

 

『く、そ、てが、でねぇ・・・』

 

ズタボロの状態で武命は仮面の下で化け物を睨みつけながらいう。何故か神社へと向かった2人に思わずよしと呟くもなんの効果も無かったことに落胆しながら武命は2人に被害が出ないよう戦い続けた。しかし負傷したこの身体で抵抗などできるはずもなく容赦なく自分を叩きのめした手の目は自分を飲み込もうと持ち上げた。

視線の先にみことハナがお参りをする様子を見て武命は心の中でつぶやく。

 

(まだ、まだ消えれない・・・!)

 

(こいつを、このままにしたら、絶対はなちゃんと、みこちゃんを殺す・・・!)

 

(そんな事、絶対、いや、だ!)

 

 

しかし今更どうしようもない。手に力はほとんど入らず持っていた妖剣も砕かれた。カシャも炎を吹き上げながら助けようとするが相手の翻弄に追いついていない。そんな中でも諦めきれないと腕をみこたちに伸ばす武命。

 

『だから・・・!』

 

 

 

 

 

 

        

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チリン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その音はみこにも武命にも聞こえていた。

その鈴のような音色は衝撃音を響かせていたはずの神社内においてあまりに似つかわしくない静かな音だった。

 

『(⁈)』

 

それと同時、武命は伸ばした手の中に何かがあることに気づく。思わず引き寄せて見てみるとそれはよく目にしていながら自分しか持っていないはずのーーーーーー

 

 

『あ、新しい、目玉?』

 

 

その正体はこの世界において武命しか持っているはずのないガジェット、ゴーストアイコンだった。

しかし武命の持っている(俺ゴーストアイコン)とは違う、目玉の上に幾何学ような模様がついたパーツがつけられた灰色のアイコンだった。中心部の瞳も真紅に輝き、その中から言いようのない不気味さを際立たせており、よく耳を澄ますとアイコンの中から先ほど聞いた鈴の音のような音がわずかに聞こえていた。

 

『・・・・・⁈』

 

ふと身体に浮遊感を感じた瞬間武命の体は手の目の口の中へと落ちていった。

一瞬の判断、武命はどうせ消えてしまうのであればという思いを込めそのアイコンをセットする。

 

『頼む!』

 

いきなり現れた不気味なアイテムに己の運命を託すしかないとはなんとも心苦しいが背に腹は変えられない。

セットと同時にレバーを押し込む。そしてそれが発動するよりも早くーーーーーー

 

 

 

 

武命は口の中へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその光景はみこの目にも映っていた。

しかしそれは武命の見た景色とは大きく異なっていた。

 

え?

 

 

いつの間にか現れたのか、そこにはまるで巨大な狐のような化け物が太陽を背にして立っていた。そしてそれはこれまで自分達に取り憑いていた存在とは大きく異なる気配を感じさせ、しかし取り憑いていたもの以上の強大な威圧感を放っていた。

そしてその狐はみこの目の前で凄まじい勢いで小さくなっていく。それは例えるのなら中心に渦ができてそこに吸い込まれていくと言ったところか。

 

 

やがてそれは子供の拳ほどの大きさの何かになると同時に先程彼を飲み込んだ奴の口へと飛び込んでゆく。

 

 

 

え?  え?

 

 

あまりの事態に状況を飲み込みきれないみこ。

しかしそんなみこを置いてけぼりに事態は思わぬ方向へと進んでいく。

 

 

 

 

『ハンテン!アーイ!

 

 

 

ミツーメロ

 

     ミツーケロ

 

 

         ミツーメロ

 

 

   ミツーケロ

 

ミツーメロ     ミツーケロ

 

   ミツケロ    ミツメロ

 

 

 

 

 

それはまるで怨嗟の声だった。

それはまるで呪いの言葉だった。

それはまるで、自身につぶやいているかのようだった。

 

 

 

「ううん?・・・なんか寒くない?」

 

ふと声をかけられ横のハナを見る。そこには先ほどの元気な様子など見当たらず顔色を悪くしながら腕を摩っていた。

 

「た、確かになんかさむーーーーーー

 

 

 

次の瞬間

 

 

 

みこの両腕につけていた煙水晶が破裂した。

 

  

 

 

 

「きゃあ!」

 

 

 「え?!なに!?」

 

 

思わず尻餅をつくみこ。

音に気づいたハナもみこの周りに飛び散る水晶の破片を見て状況を把握しみこの手首を掴む。

 

「だ、大丈夫?!なんか急に爆発したけど⁈」

 

「・・・・っ!」

 

 

心配してみこの様子を見るハナ。しかしそんなハナの問いに答えずみこの視線は一点へと向けられていた。

 

(なに・・・・あれ・・・・!)

 

『■■■■■■!』

 

『チョーカイガン!タタリ!』

『words of curse!!

ゴ・ゴ・ゴ!ゴ・ゴ・ゴ!ゴ・ゴ・ゴ!

GODゴースト!!』

 

 

視線の先、そこには先ほど武命を飲み込んだ化け物が腹を歪に歪ませながらのたうち回っている光景だった。化け物の腹はだんだんとその歪みを大きくしてゆきやがて限界を迎え内臓を飛び散らせる。

そしてその中心に立っていたのは先ほどとは大きく異なる姿をした武命であった。

 

『・・・・』

 

その姿はいつも見ているものと異なり全身が灰色をしておりそこにいつもはオレンジのはずのラインが変形し赤色へと変化する。そして何よりも違うのが纏っているパーカーだ。ロングコートのように長くボロボロのパーカーでその両肩には狐の仮面を模したような装甲がついている。そして頭部の仮面にも装甲が付いており普段は黒の複眼は真っ白なものへと変わりそこから感情を読み取ることはできない。

 

そして何よりその姿からは、いつもの彼を感じることができないでいた。

まるで得体の知れないものを見たかのような、それこそみこが初めて化け物どもを見た時のような不気味さだった。

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■!』

 

武命の姿を見た手の目は武命に怒りを訴えながら溢れた内臓をかき集め空いた触手で攻撃する。

武命はいまだに手の目には背中を向けており迎撃する様子はない。そんな武命を見たみこは再び声をかけようとしてーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

ぶちり

 

 

 

 

 

 

 

 

『■■■■■■■■■■■⁈』

 

 

 

不快な音と共に伸びた触手がねじ切れた。

その現象にその場にいたものはなにが起こったのかわからず手の目はねじ切れた触手の痛みに叫び声を上げた。

 

『・・・・・』

 

なんの感情も浮かべる事なく武命がゆっくりと振り返る。その様子に手の目はびくりと震えると再び攻撃を仕掛けようとし、その瞬間再び不可視の攻撃により両肩を押し潰された。

 

 

『■■■■■■■■■■!』

 

 

 『・・・・・』

 

それを見て逃走を図ろうとする手の目。そんな手の目をお構いなしに武命はベルトへと手を伸ばしレバーを押し込む。

 

 

『チョーカイガン!タタリ!オメガドライブ!!』

 

 

 

その音声が聞こえたと同時に武命は両手を正面に伸ばしまるで何かを包むかのように掌を向かい合わせる。

その瞬間手の目の動きが止まりまるで何かに包まれたかのごとくだんだんと収縮し始めた。武命が手のひらを近づけるたびに手の目はその大きな体を収縮させてゆきその度に助けを叫ぶかのごとく暴れだす。しかしそんな動きも武命が一度力を入れ、両の手のひらを合わせた瞬間ーーーー

 

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ジュ

 

 

一瞬ビー玉ほどにまで圧縮され、その瞬間大爆発を起こした。

その瞬間あたりに爆風が広がる。しかし生きている2人にはいきなり強い風が発生したのみにすまされた。

 

「わぁ、すごい風・・・みこ、やっぱ今日風邪ひいたかも。悪いんだけどちょっと帰ってもいい・・・・?」

 

 

「⁈あ、うん。連れ回してごめん。無理せず今日は帰っとこうか・・・」

 

声をかけられ思わずそう呟くみこ。視線の先の武命はまだ変身を解いておらずそんな状態でゆっくりとこちらに近づいてくる。

 

(なにあれなにあれなにあれ!なんかわかんないけどやばい!今の彼はやばい!)

 

無事だった事はもちろん嬉しくはあるが今の彼を見てもどう考えても普通では無いと感じたみこは表情を崩さないようハナに肩を貸しゆっくりと武命の横を通ろうとする。そして武命とついにすれ違う瞬間ーーーーーーーー

 

 

 

にかい・・・

 

 

(え・・・・・?)

 

 

聞き取れる言葉、

そう思い振り返った先には変身が解け倒れるように消える彼と、そんな彼を支えるかのように横に止まるバイクのみがあった。




仮面ライダーゴーストタタリ魂

見た目は灰色のムゲン魂の肩装甲が短くなり裾がボロボロでムゲンの全身マークが赤くなりかつ鳥居のような形となったもの。
祟り神の力がベルトに合わせる形で変形し生まれた姿。その能力はポルターガイストであり本来自分にあった浮遊の能力が超強化され発現した。

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