学園都市
東京都の西側3分の1の規模、総人口230万人の内8割を学生が占める「学園都市」。そこでは学生全員を対象にした超能力開発実験が行われており、全ての学生は「無能力者(レベル0)」から「超能力者(レベル5)」の6段階に分けられ、様々な能力を開花させている。
そんな都市のとある一角を歩いている二人の少年がいた。
黒髪で髪の毛がつんつんと逆立っている眼付きの悪い少年と、ちょっと天パ気味で眼鏡をかけている少年。
天パの少年は珍しく、腰に刀を下げていた。
その日、つんつん頭の少年こと上条当麻と、天パ少年こと
彼らはこの春からとある高校の1年生へとなった。
安倍の方は《ジャッジメント》という治安維持組織の一員でもある。
「しかし、飯を食いに行って財布の中にたった20円しかないとはな・・・。不幸だ・・・」
「当麻のその不幸体質は、一度お祓いでもしてもらった方がいいかもね」
「してもらっているよ・・・。全然効かねえけど・・・」
「もうしてあるのか・・・」
「借りた金はすぐに返すよ、龍」
「期待しないで待ってる」
「すぐに返すさ」
ご飯を食べに行ったのにお金が全然ないという上条のミス。
彼はそれこそ、神様に恨まれるようなことをしたのかというほど不幸体質なのである。
そんな話をしながら歩いていると、前の方に10人ほど不良がたまっているところがあった。
完全警備とうたわれている学園都市でも、不良はさして珍しくはない。
逆に多いほどである。
これらの不良には2タイプいる。
1つ目はレベルの低い人間がそれにひねくれて不良になるタイプ。スキルアウトという集団に属する人間もいる。学生のうち約4割がレベル0名のだ。そういう人間もいるだろう。
2つ目は力を手に入れたことで、それに浮かれて不良になるタイプだ。
1つ目のタイプは集団でない限り面倒ではないが、2つ目のタイプは少々面倒くさい。
どちらにしろ、集団の不良は面倒くさいことに変わりはないが。
まあ、かかわらないのが正解だろう。
そう思いながら二人が通り過ぎようとすると、不良の言葉が聞こえる。
『なあ、いいだろちょっとくらい』
『おれらと遊びに行こうぜ』
『大丈夫。帰れねえってことはないから』
『まあ、明日の朝になるかもしれねえけどなあ』
強引なナンパか。
二人は不良に囲まれている人間に目を向ける。
茶髪でショートカットの女の子が一人だけ。制服は、名門と言われる常盤台中学のものだ。
それを見た上条は進行方向を変える。
「当麻。関わらなくていいぞ」
そんな安倍の言葉を無視して上条は不良の近くまで寄っていく。
そこで息を吸い込み、意を決したように不良をかき分けていく。
女の子は思っていた。
別に、誰かに助けてほしいなんて思っていない。
素通りするのも薄情だからという訳でもない。
わかっている。
実際ここに入ってきても何かできるわけじゃないし。
怪我をするだけ。
誰だって自分が可愛い。
それが普通。
見ず知らずの人間のためにそんなことをする人間がいたとしたら、そいつはただのバカか―――
そんなふうに考えている女の子に声をかける奴がいた。
「わりいわりい。待たせたな。すいません。俺の連れが迷惑をかけまして」
上条はそのまま女の子の手を取って引っ張り出そうとする。しかし―――
「アンタ、誰?」
女の子の一言で場の空気が凍りつく。上条ですら固まってしまった。
「まったく・・・」
安倍の口からはため息しか出てこない。
「はぁぁぁ!?せっかく俺が機転をきかせてるのに!?もっと合わせる気とかないの!?せっかくの待ち合わせの最中だった作戦がぁ!?」
「助けてなんて言ってないし」
「おい、アンタ」
「なんかおれらに文句でもあんのかよ」
フリーズから溶けて、あっけにとられていた不良たちも上条がただの部外者だと気付いたようだ。
「はぁ・・・」
上条はため息をついて、うつむく。
「おい、なんとか言えよ!」
「文句あんのか聞いてんだろうが!」
不良たちのボルテージは上がっていく。
「まったく。なにやってんのさ、当麻」
安倍はようやく不良の中にいる上条の横に来る。
「すいませんね―――」
「ああ。文句あるさ」
安倍が謝ろうとしたところを上条が遮る。
「あぁ!?」
「文句ならあるっつってんだろ!」
そういって不良を見回す。
「まず集団じゃないとナンパできねえっつう腑抜けた根性がなさけねえ!それにその相手がこんな奴だってこともなぁ!」
ビシィッッとからまれていた女の子の方へと指を向ける上条。
「なっ・・・」
女の子の額にちょっと青筋が浮かぶ。
「さっきの受け答えを見ただろうが!人の行為を踏みにじるわ、全然人に敬意を払ってないわ!ただのガキじゃないか!」
「ガキってねえ・・・!」
女の子がうつむく。頭からちょっと電気が放出され、パリパリと音を立てる。
これはぶちぎれるパターンかな。面倒だ。と安倍は日本刀へと手を伸ばす。
それに気づかず上条は続ける。
「こんなガキをナンパするのに、人数をそろえなきゃいけねえっていうのも気に入らねえ!俺はそういうのが一番腹が立つ!」
「アタシが腹が立つのはねぇ・・・」
ここでようやく蚊帳の外だった女の子の声が届く。不良も上条も女の子へと目を向ける。
「アンタみたいな!人をガキ扱いする!男よぉ!!」
バリバリバリバリ!
女の子をものすごい出力で放電をする。
放電が終わった後、群がっていた不良たちは黒焦げとなっている。
そのままそこを立ち去ろうとした時、女の子―――御坂美琴は信じられないものを見た。
そこには、途中から入ってきた男たち―――安倍と上条が無傷で立っていた。
上条は右手を前に出し、安倍は腰の刀に手を当てている。
それでも二人とも無傷であった。
「アンタたち・・・なんで・・・」
呆然とする美琴はつぶやく。
「だから言ったのに、当麻。こいつは学園都市第3位の『レールガン』様なんだから。こっちが巻き込まれるだけだって」
「いやいや!『関わらなくていい』なんて見捨てるみたいなことを言っていたからだろ!誰かなんて言ってなかったし」
「あれ、誰だか言ってなかったっけ?」
「言ってねえよ!」
「まったく。そうじゃなきゃ、僕も役職上出るってわかってくれよ」
「いや!どんな場合でも出るべきだろ」
美琴の言葉を無視し、言い争う二人。
「アタシを無視すんなぁぁぁ!!!」
再度の放電。
それによって美琴は見た。
上条の盾のように出した、右手に当たった雷はその場で打ち消され。
安倍は一瞬動いたかと思ったら、雷が彼の周りを弧を描くようにして逸れたところを。
「あっぶねーな」
「そうだね。カルシウム不足かな。牛乳を飲んだ方がいいよ」
「そういう問題じゃねえだろ」
「なら、ほら当麻。謝りなよ」
「まったく。不幸だ・・・」
「だから無視すんなぁ!」
また無視をされたことに美琴は怒る。
「そうだ。自己紹介がまだだったね。僕は安倍龍善、高校1年生。ジャッジメントだよ。一応」
「俺は上条当麻。同じく高1だ。ジャッジメントではない」
「そこじゃない!なんでアタシの能力を受けても平気なのよ!アタシはレベル5よ!」
「あー、僕ら一応二人ともレベル0」
「答えになってない!」
「まあまあ。夜遊びは危険だから、早く帰るんだよ」
「人の話を聞けぇ!」
美琴がいくら怒っていても、目の前の安倍は意に介さない。
「なんでアタシの能力がきかないのよ!」
「さあ?」
「さあ?じゃないわよ!勝負しなさい!アタシとガチで!」
「おい。びりびり女。それはやめといた方が・・・」
「アタシには御坂美琴って名前があんのよ!」
仲裁に入ろうとした上条も火に油を注ぐ始末。
「んじゃ。僕らはこれで」
そういって安倍と上条はどこかへ行こうとする。
「だからアタシと―――」
「戦うってか?あぁ?」
ゾクリ。
安倍の低い声。言葉遣いも変わり、そこにはさっきまであった雰囲気は消えている。
例えて言うならば、首元に刃物を突き付けられていることにいきなり気づいたかのような感じ。
隣では上条がやれやれというように首を振っている。
「・・・やめておくわ」
「そうだね。それがいい。それでは、バイバイ」
そういって上条と安倍は美琴から離れる。
残された美琴には、レベル5である自分の能力が聞かない、レベル5ではない2人組にあっけにとられている所だった。