とある異能の少年   作:エスパーラ

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あまりに進みが遅い!
そう思い始めた作者です。
そして、今回は文字数が多いです。
この文字数じゃ、更新がただでさえ亀なのに、ミドリムシになります。







第13話 グラビトン

 7月の初旬となり、暑くなってきたころ。

 

 ジャッジメントは一つの大きな事件の解決に忙しくしていた。

 

重力子(グラビトン)?」

 

「それがどうしたのよ?黒子」

 

「今起きている事件ですわ」

 

 支部に着た佐天と美琴に、白井が説明する。

 

「たちが悪いんですよー。もう8件。ジャッジメントの人が何人か怪我してます」

 

「爆発自体は小規模なんですけれども、能力者の仕業らしいのですわ」

 

「へー。どんな能力よ」

 

「たぶん、量子変速(シンクロトロン)ですわ」

 

「どのケースも、爆発の直前に重力子の加速が観測されたんですよー。で、相も変わらず能力オタクの安倍先輩が多分、その能力だって」

 

「アルミを起点に重力子を一気に加速させ、周囲にまきちらす。つまり、アルミを爆弾に変えていたんですわ」

 

「でも、それだったら、バンクのデータと照合すればいいんじゃないですか?」

 

「もちろん検索しましたよー」

 

「でも、爆弾にするには、レベル4以上の能力が必要なのですが、唯一レベル4なのは釧路帷子(くしろかたびら)という女性だけ」

 

「じゃ、そいつが犯人じゃない」

 

「それが、ずっと入院しているっていうアリバイがあるんですよねー」

 

「一連の事件の犯人にはなれないのですわ」

 

「で、安倍さんと固法さんは?」

 

「先輩たちは、バンクのデータを印刷して、どっかに行きました」

 

「何か、良い考えがあるようでしたが・・・」

 

「そう・・・」

 

「だめですわよ、お姉さま。今、これってちょっと面白いかも?相手次第では腕試しになるじゃな~い。なんて思ってませんでしたぁ?」

 

「そ、そんなこと―――」

 

「とぼけてもダメですの!黒子はお見通しですの!まったく、いつも申し上げているように、お姉さまは一般人!治安維持活動は―――」

 

「ジャッジメントにまかせていただきたいんですの。でしょ?わかってるわよ」

 

「この際、ここでお誓っていただきたいことがあります!」

 

「な、なにを・・・」

 

「1つ!むやみやたらと事件に首を突っ込まない!」

 

「な、なによその一方的な言い方!」

 

「2つ!万が一事件に巻き込まれても、単独での立ち回りはせずに、ジャッジメントの到着を待つ!」

 

「だって、あんたたちが来る前に終わっちゃうんだもん!」

 

「3つ!スカートの下に短パンをはかない!」

 

「それは関係ないでしょうが!」

 

「完全に白井さんの願望入ったよね」

 

「そーですね。絶対関係ないと思いますー」

 

「そもそも、お姉さまには常盤台のエースとしての自覚が足りませんの!これを機に、幼い子供のような趣味はやめるべきだと思われま―――」

 

「アンタは私の母親かぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ジャッジメント177支部がそんなふうにお祭り騒ぎになっているとき。

 

 固法と安倍はパトロールの途中、喫茶店によっていた。

 

「うん。なかなかおいしいコーヒーです」

 

「紅茶もいけるわよ」

 

 完全にまったりしている2人。先ほどまでずっと歩き回っていたのだ。さすがに疲れていた。

 

「にしても、空ぶりますね」

 

「そうね。これで5人空ぶりよ。もう嫌だわ」

 

 固法がテーブルに置いたリストの5個目にバツをつける。

 

「でも、理論上はこれ以外に方法がありませんし」

 

「そうね。安倍君も大丈夫なの?」

 

「まあ、なんとかなりますよ。それより、重力子の加速の方は?」

 

「今のところ警報は出ていないわ」

 

「そうですか。でも、不思議なことがあるんですよね」

 

「何が?」

 

 安倍は右手の指を順番に立てる。

 

「1つ。なぜ、犯人はバンクに載っていないのか。これは、システムスキャンの時からレベルが上がっただろう、といういま思いついている仮説でいいと思います。2つ。どうやってレベルが上がっているのか。これは最近の事件すべてに言えることです。まあ、捕まえてみりゃあわかるでしょう。3つ。なぜ、重力子の加速の後に爆発するまで間があるのか。4つ。これ―――」

 

 

 

 ビィー!

 

 

 

 安倍の言葉の最中で警報が大きな音を立てる。

 

「場所は!」

 

「このすぐ近く、50m先のコンビニよ!」

 

「行きましょう!」

 

「ええ!」

 

 安倍は財布から値段以上のお金を抜き取ると、机に置いて駆け出す。固法も急いで後に続く。

 

 安倍はコンビニの自動ドアが空くのももどかしく、コンビニの中に飛び込む。

 

「な、なんだ!」

 

「ジャッジメントです!このお店に爆弾がある可能性があります!急いで逃げてください!」

 

 固法の言葉に店員の顔が青くなり、店内の客も急いで出口に行こうとする。

 

 その間に安倍は店内を走り回り、爆弾であろうものを探そうとする。

 

 そんな中、トイレから女子生徒が出てくる。

 

「あれ?何かあったんですか?」

 

「急いで逃げてくれ!ここが爆発する危険がある!」

 

「ば、爆弾!?」

 

 女子生徒は急いで出口に向かおうとするが、ローファーをもつれさせて転んでしまう。

 

(くそっ)

 

 安倍はそっちへと走り出す。固法も状況を把握して、そっちへと駈け出す。

 

 その瞬間、安倍は見てしまった。商品棚の下、ふざけたような顔のうさぎの人形が、カタカタと震えている。それは、女子生徒のすぐ近く。このままでは固法も巻き込まれる。

 

(能力を使う時間はない!)

 

 絶体絶命。安倍の足なら、片方だけなら爆弾の圏外に出せるだろう。しかし、残りの一人はどうしようもない。

 

 そんな絶望的な状況でも安倍は笑う。

 

 出せうる最高の速度を出している安倍が選んだのは、簡単な答え。

 

 女子生徒の横を、姿勢を低くして駆け抜ける。それは固法を選んだと思える行動。右腕を伸ばす。

 

 

 

 その右手が掴んだのは、ぎりぎりまだ物体として持てる、爆弾たるウサギの人形。

 

 

 

 驚く固法の横を駆け抜ける。

 

(ならば、2人は助ける!)

 

 

 

 その瞬間、人形が大規模な爆発を起こす。

 

 

 

 店内にあるものが吹き飛ばされる。

 

 とっさに女子生徒をかばうように立った固法だったが、爆風はほとんど飛んでこなかった。

 

 振り返った固法の目に入ったのは、地面に転がる安倍の姿だった。

 

 固法たちに爆風が届かないように人形を胸元に持って行ったのだろう。腕や胸に大きなやけどがある状態で力なく横たわる。

 

「あ、あ・・・。ああ・・・」

 

「安倍君!安倍君!!」

 

 助けられた女子生徒は、目の前の現状にまともな声が出せない。固法の叫び声に、ほんの少し顔の向きを変える安倍。その唇からほんの少しの声が漏れる。

 

「は、犯人、の狙いは・・・、ジャ・・・・・・、まだ、この近くに、いるは、ず・・・」

 

 そして、安倍は意識がなくなったのか、目を閉じる。

 

「安倍君!安倍君!!」

 

 残った固法の、叫び声だけが響き渡った。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ピピピピ

 

 ジャッジメント177支部に、初春と白井の携帯の音が響く。

 

「なんだろー。連絡が来ましたー」

 

 相変わらずじゃれあっている、本人たちにしてみれば喧嘩している美琴と白井を無視し、初春は自分のパソコンの携帯を見る。

 

「なんだって?」

 

「んー。今から本部で緊急会議だそうです。グラビトン事件について。今さっきも被害が出たそうですねー。被害者・・・」

 

 じゃれあいに参加していない佐天の疑問に答えていた初春の声が途絶える。その携帯を持つ目が大きく開かれている。

 

「初春?どうしたの?」

 

 佐天の怪訝そうな声に、白井と美琴も動きを止める。

 

「白井さん・・・。今回の被害者は・・・、『ジャッジメント最強候補』安倍、龍善だそうです・・・」

 

「えっ!!嘘でしょ、初春!?」

 

「・・・ウソですわ!!」

 

 白井は初春の携帯を奪うようにして画面をのぞき込む。

 

「・・・なぜですの・・・」

 

「アイツがやられたの!?アタシの能力ですら効かないのに!?」

 

「あの、安倍さんがやられたの・・・?」

 

「ど、どうしましょう・・・」

 

「どうもこうも・・・。ここに書いてある通りですわ。『最強とうわさされたジャッジメントがやられたため、もっと連携の強化を』。急いで本部まで行きますわよ!」

 

「はい!」

 

 初春は白井の手をつかむ。

 

「申し訳ありませんが、わたくしたちは少し、席をはずします」

 

 その言葉を置いて、白井のテレポートで2人はジャッジメントの本部へと急ぐ。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「一週間前に、初めての犠牲者が出たのを皮切りに、威力と範囲が広がるグラビトン事件。今回、私達177支部の安倍龍善がやられました」

 

 ジャッジメントが一堂に集められた大学の講堂のような場所で、壇上の固法が説明をする。

 

「今回の事件、場所も時間も関連性が認められず、遺留品をサイコメトリーで調べても、いぜん手掛かりをつかめていません。これ以上の犠牲者を出さないために、アンチスキルとの協力と、支部同士の連携を強化すること。そして、一層の警戒強化と事件解決に全力を」

 

「発言いいか?」

 

 3列目ぐらいの高校生くらいの男子が手を上げる。

 

「どうぞ」

 

「やられたのは、あの、安倍龍善か?だとしたら、なんでやられた!」

 

 その言葉に周りがざわつき始める。

 

「そうだ、あの、安倍だろう?」

 

「『鴉』の」

 

「・・・はい。あの安倍龍善です。今回、爆弾が体勢を崩した女子生徒の近くにあったため、それをかばう形で、彼はやられました。その直前に、彼が言っていたことがありますので、ここで皆さんに伝えたいと思います。まず、『今回の件は、バンクでは低レベルの判定が出ている犯人の可能性がある』」

 

「どういうことだ・・・?」

 

「最近、事件でつかまえた犯人の能力レベルと、バンクのレベルが合わないことが続いています。理由はまだわかっていませんが、その可能性は考慮すべきだと。次に、『なぜ重力子の加速から爆発までにタイムラグがあるのか』」

 

「確かに・・・。それはレベルの問題ではないのか?意外とレベルは低い・・・?」

 

「そして・・・、爆発でやられた際に、犯人の狙いと、『近くにいるはず』という言葉を残しました」

 

「犯人の狙いは?」

 

「・・・それが、のどが、やられていて、声が聞き、取りづらくて・・・」

 

 その悲惨な状況を思い出したのだろう。固法の言葉は歯切れがよくない。そんな固法のマイクを別の壇上の人間がとる。

 

「とりあえず以上だ。全員、バンクを頼り切らない方がよいかもしれん。それと、犯人は爆発の際に近くにいる可能性を念頭に置くように。また、十分に気を付けること。以上だ!」

 

 そして、会議はお開きになった。

 

 

 

 

 

 

 学園都市、とある病院。

 

 病院内だというのに固法は走り、一つの病室までたどり着く。安倍龍善というネームプレートのかかったそこには、すごくカエルに似た顔をした医者がいた。

 

「彼は、大丈夫、なんですか?」

 

 一生懸命走ったためだろう。息が切れている。その後ろから、白井と初春も来る。

 

「大丈夫だと思うよ。僕を誰だと思っているんだい?やけどの跡もなくなったよ。ただ、しばらくは絶対安静だろうね。」

 

「よかった・・・」

 

 固法はベッドに寝かされた安倍に近づく。

 

 手術が終わり、首や腕には包帯は巻かれているが、その顔にはきちんと生気が戻っていた。

 

「ただ・・・。そうだね。あまりに怪我がひどいから、しばらく目を覚まさないと思うよ」

 

「そうですの・・・」

 

「それでは僕はここで、失礼しようかな」

 

 そう言って医者は出ていく。

 

「でも、良かったですね」

 

「うん・・・」

 

 初春の言葉に固法は頷く。

 

「しかし、安倍先輩がかけたというのは痛いですわね」

 

「そうですね」

 

「でも」

 

 固法はベッドの上に転がる安倍の手を取る。

 

「彼が帰ってくるまでに、できることはやりましょう」

 

「はいっ」

 

「はいですの」

 

 安倍の手を優しく安倍の胸に置く。

 

「そうと決まれば、やりましょう」

 

 固法は部屋を出ていく。

 

「また来ます」

 

 初春もつぶやき、白井とともに部屋を出ていく。

 

 3人の覚悟は決まった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 3日後、白井は目の下に凄い熊を作りながら、美琴と歩いていた。

 

「まったく、大丈夫なの?昨日も夜遅くまで調べていたんでしょ?グラビトン事件」

 

「仕方ありませんの。捜査が全く進展しない以上、見落としがないか確認しなければいけませんし」

 

「仕事熱心なのはわかるけどさ。あんまり無理しないようにね」

 

 その言葉を聞いた白井の顔に生気が戻る。

 

「まぁ!お姉さま!そんなに黒子が心配なんですのねぇ。でしたら今夜添い寝でもしていただけたら―――」

 

「そんな―――」

 

「まあ、冗談ですけどね。それに、わたくしはまだましですわ。固法先輩などは、安倍先輩のお見舞いに毎日行きながら調査しておりますし」

 

 そうして2人は登校する。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 佐天は、一人考え事をしながら歩いていた。

 

 安倍が入院している。その事実は聞いているし、命に危険はないが、まだ目覚めていないということも聞いた。

 

 佐天の考え事とは、お見舞いに行くべきかどうかということだ。

 

(だ、だって、用もないのに一人でお見舞いって・・・ねぇ)

 

 そんなことを考えながら、ふらふらと歩く。

 

「佐天さーん」

 

 どこからか声がかかる。

 

 顔を上げて前後を見るが、誰もいない。

 

 なんか声が御坂さんっぽかったな。とか思って道の向こう側を見ると、美琴がこっちへ手を振っている。

 

 近くの横断歩道の信号が青になり、美琴が渡ってくる。

 

「佐天さんも一人?」

 

「はい。初春は今、グラビトン事件で忙しいらしくて」

 

「まあ、アイツのあんな姿を見るとね・・・」

 

「えっ。御坂さんは安倍さんのお見舞い、行ったんですか!?」

 

「うん。なんか、黒子が行くっていうからついていっただけだけどね。佐天さんは行ってないの?」

 

「な、なんか行く勇気がなくて・・・」

 

「そう」

 

 そのまま無言で二人は歩く。しかし、静かなのに耐えられないのか、美琴が口を開く。

 

「で、なんか進展したのかねぇ、捜査の方は」

 

「初春は、一心不乱に調査してますよ。少し女を捨ててる感じがしてますけどね」

 

「アハハ。黒子もそうよ。なんか、目に凄いクマができているし」

 

「初春も似たようなもんですよ」

 

「そうだ!明後日あたりに、気分転換に買い物に誘おうよ。確か、2人とも非番のはずよ」

 

「いいですね!洋服でも買いに行きます?」

 

「そうね。そうしましょう」

 

 そして、二人は分かれ道へと差し掛かる。

 

「じゃ、佐天さんは初春さんを誘っておいてね」

 

「はい。それじゃ、またメールします」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 2日後。

 

 待ち合わせ場所には、美琴、初春、佐天の3人がいた。

 

「あれ、白井さんは?」

 

「んー。黒子はもうちょっと調べたいことがあるって」

 

「白井さんは、安倍先輩のヒントを調べているんですよ」

 

「そうですか」

 

「ま、今日は気分転換だしね。事件の事なんて気にせずに行きましょう」

 

 3人はセブンスミストに移動する。

 

「2人は何を見たい?」

 

「そ~ですね~。どうしましょうか」

 

「初春はやっぱり、もっとまともな下着を買うべきかと。やっぱりこ~んなんじゃねぇ」

 

 言葉とともに初春のスカートを思いっきり持ち上げる佐天。

 

「さ、佐天さん!やめてくださいっていつもいつもいつも・・・!」

 

「じゃあ、下着売り場に行く?」

 

「御坂さんもスルーしないでくださいよ!」

 

「御坂さんは何が見たいんですか?」

 

「う~ん。寝巻が欲しいのよね・・・」

 

「なんなんでしょう。この捲られ損な感じ・・・」

 

「じゃあ、寝巻売り場にさきに行きましょう。そっちの方が近いです」

 

 そう言って3人はエスカレーターを上がっていく。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ジャッジメント177支部。

 

 パソコンに向かっている白井に、固法がコーヒーの入ったカップを渡す。

 

「少し、休憩しましょ」

 

「そうですわね・・・」

 

 おとなしくコーヒーを飲み、にらめっこしていたパソコンから目を離す。

 

「何かわかった?」

 

「分かりませんですの・・・。安倍先輩は、犯人の目的がわかったとのことでしたが・・・」

 

「場所も時間も共通点がない・・・」

 

「それに、犯人が近くにいるということから、狙われた人がいるのではと思ったのですが、安倍先輩がかばった人や、今までジャッジメントにかばわれた人、ジャッジメントの被害者にも特に共通はなく・・・」

 

「もう、ジャッジメントからの被害者は2ケタいきそうよ・・・」

 

 その固法の言葉に、白井がピクリと動く。

 

「固法先輩・・・。いくらなんでも多すぎませんか・・・?」

 

「それぐらい、実力者もやられてるってことよ。被害にあいそうな人を瞬間的にかばえるような人たちも―――」

 

「それが逆なのだとしたら?」

 

「・・・どういうこと?」

 

「もし、かばうまで待たれていたのだとしたら・・・」

 

「もしや犯人の狙いは・・・」

 

「「ジャッジメント!」」

 

 二人、顔を合わせ、叫ぶ。

 

「それならば、加速から爆発までの時間が長いことも・・・」

 

「犯人が近くにいるはずという安倍先輩の言葉にもつじつまが合いますわ!」

 

 そんなときに重力子加速の警報が響く。

 

「どこですの!?」

 

「場所は・・・、第7学区の洋服店、セブンスミストよ!」

 

「分かりました!初春へと連絡します!」

 

「お願い!私はアンチスキルに急行するようと連絡!支部にいない人のために、他のジャッジメントにメールするわ!」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 セブンスミストに入っているお店の一つの前で、3人は品物を見ていた。

 

「初春、携帯なってない?」

 

「あ、ほんとだ。はい。もしも―――」

 

『初春!今どこですの!?グラビトン事件の続報ですの!』

 

 いきなり聞こえた白井の叫び声に、初春は思わず耳から携帯を引き離す。

 

 あまりに白井の声が大きすぎたせいか、佐天や美琴にも聞こえていた。

 

「え?」

 

『学園都市の監視衛星が、重力子の爆発的加速を観測しましたの!』

 

 その言葉を聞き、初春はおっとりした雰囲気から、しっかりしたものへと変わる。佐天や美琴も、興味津々というように耳をそばだてる。

 

「か、観測地点は?」

 

『近くのアンチスキルを急行させるように手配していますの!あなたは速やかにこちらに戻りなさい!』

 

「ですから!観測地点はどこですか!」

 

『第7学区の洋服店、セブンスミストですの!』

 

 あまりのタイミングの良さに、3人とも言葉が止まる。

 

「丁度いいです!私、今そこにいます!すぐに避難誘導を開始します!」

 

 そう言うが早いか、初春は通話を切る。

 

「なんてこと・・・」

 

「二人とも、聞こえてましたね。悪いですが御坂さん、避難誘導のお手伝いをお願いできますか?」

 

「分かったわ」

 

「佐天さんはすぐに避難を」

 

 初春にそういわれ、佐天の表情が曇る。

 

 でも、すぐに気持ちを切り替え、初春に笑みを見せる。

 

「初春も気を付けてね」

 

「はい!」

 

 そう言って、初春と美琴は走り出す。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「ちょっと、初春!」

 

 白井は通話を切られた携帯に叫ぶ。しかし、携帯はうんともすんとも言わない。

 

「なんですって・・・」

 

「初春さん、どうかしたの?」

 

「初春が、セブンスミストにいるそうです・・・」

 

「ってことは、今回のターゲットって―――」

 

 固法の言葉に白井は頷く。2人の頭には同じ考えが浮かんでいた。

 

「白井さん!テレポートで現場に急行して!私もすぐに追いかけるわ!」

 

「了解ですの!」

 

 白井はテレポートで、固法はドアから走って出ていく。

 

 あとに残されたパソコンには、新着メールを告げるランプが点滅していた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

『お客様にご案内申し上げます。店内で電気系統の故障が発生したため、誠に勝手ながら、本日の営業を終了させていただきます。係員がお出口までご案内いたしますので、皆様にはご協力お願いします』

 

 セブンスミストにいた人々は、不満と疑問の声を上げながら、店の外へと出ていく。

 

 そんな中、上のほうの階の通路で、初春は白井へと電話をかける。

 

「全員の避難、終了しました!」

 

『今すぐそこを離れなさい!』

 

「え?」

 

『過去の事件の被害者は、全員ジャッジメントですの!犯人の狙いは、現場近くのジャッジメント!今回の場合は、初春、あなたですのよ!』

 

「え?」

 

「お姉ちゃーん!」

 

 驚く初春に、女の子の声が届く。

 

 初春が後ろを振り向くと、そこには大きなカエルのぬいぐるみを持って駆けてくる、女の子がいた。

 

 避難し終えてない女の子がいたことに気づき、見つかったことに初春は思わず顔をほころばせる。

 

 ちょうど、避難誘導を手伝っていた美琴が、遠くの角を曲がったところだった。

 

「眼鏡をかけたお兄ちゃんが、お姉ちゃんに渡してって!はい!」

 

 女の子は、カエルのぬいぐるみを初春の方へと差し出す。

 

 手を伸ばした初春の手元で、カエルのぬいぐるみが縮小し始める。

 

 それは、今までの事件と同じように。

 

「はっ!」

 

 初春は思わずそれを投げ捨て、女の子を抱きかかえ、うずくまる。

 

「御坂さん!逃げてください!あれが爆弾です!」

 

 バウンドするカエルのぬいぐるみはどんどん一点に集中していく。

 

 美琴は、2人と爆弾の間に入る。

 

 それは、レールガンで爆弾子と吹き飛ばすため。

 

 ポケットから、コインを取り出す。

 

 

 

 しかし、神様は無情だった。

 

 

 

 取り出したコインは、指からこぼれ、床の上をはねる。

 

 

 

 しまったと思ったときには。

 

 

 

 美琴の視界が白く塗りつぶされた。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 ドォォォォォォォン!

 

 セブンスミストの一角が、大爆発を起こす。

 

『なんだ?爆発したぞ!』

 

『例の連続爆破テロじゃない?』

 

『ジャッジメントがまだ中にいたって!』

 

『危険です!離れて』

 

 佐天の目に、紅蓮の炎が見える。

 

 外にいる佐天にできることは、手を合わせ、中にいるはずの友人2人の無事を祈ることだけだった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 介旅初矢は、紅蓮の炎を見、それに背を向けて裏路地に入る。

 

「ククク」

 

 思わず笑いがこぼれる。

 

 徐々に強い力を扱えるようになってきている。さっきの爆発など、今までで一番いい出力だった。

 

「もうすぐだ。あと少し回数をこなせば。無能なジャッジメントも!あの不良どもも!まとめてふきとばっ!」

 

 その独り言を言い終わる前に、介旅は後ろからの蹴りによって、道の途中にあったゴミ箱へと吹き飛んでいく。

 

「な、何が―――」

 

「ハァーイ!要件は言わなくてもわかっているわよね。爆弾魔さん?」

 

 茶髪の少女、美琴は、倒れた介旅に声をかける。

 

「な、何の事だか、僕にはさっぱり―――」

 

「まあ、確かに威力は大したものよね。でも、ざんねーん。死傷者どころか、誰一人かすり傷を負ってないわよ」

 

「嘘だ!僕の最大出りょ―――」

 

「へえ」

 

 美琴は笑みを浮かべる。介旅はようやく、ハメられたことに気づく。

 

「い、いやあ。外から見てもすごい爆発だったので・・・。中の人はとても助からないんじゃないかってぇ―――!」

 

 カバンに隠した、アルミ製のスプーンを投擲しようと振りかぶる。しかし、

 

 

 

 ドォォォォォン!

 

 

 

 美琴の指によってはじかれたコインが、その2つ名のレールガンとなって、スプーンを消し去る。

 

「がぁぁぁぁぁぁ!」

 

 レールガンの余波の爆風で、介旅も吹き飛ばされる。

 

「レ、レールガン・・・」

 

 美琴の見下すような視線に、介旅は目を合わせようともしない。

 

「あは・・・、今度は、常盤台のエース様か・・・。いつもこうだ。なにをやっても、力でねじ伏せられる・・・」

 

 介旅の声はだんだんとヒートアップしていき、ついには絶叫になる。

 

「殺してやる!お前みたいのが悪いんだよ!!ジャッジメントだって同じだ!!!力のあるやつは、みんな、そうだろーがぁぁ!!!」

 

「力、力って・・・」

 

 ビリ。

 

 美琴の額から電撃が漏れる。

 

 そのまま美琴は左手で介旅の襟をつかむと、立ち上がらせる。

 

「歯を、食いしばれ!!」

 

 バキ!

 

 裏路地に、人を殴る音が響く。

 

「ったく」

 

 美琴は、身をひるがえして路地裏から出ていく。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 白井は路地にいた容疑者である介旅初矢を逮捕した後、ジャッジメントとして、現場検証をしていた。

 

 現場は、地面の一部が隆起して、半球状の盾のようになって一部の場所だけが爆発を免れていた。

 

(不思議ですわね)

 

 白井は疑問に思う。

 

 初春も、女の子も、美琴に助けられたと口をそろえていっていた。一応精密検査に行ってもらっているのだが。

 

 だが、美琴の能力は電力と、それから派生した磁力。磁力によって盾を作るところは何度か目撃している。

 

 だが、その盾は磁力で作るため、金属しか使用することができない。

 

 でも、この盾は地面との接合部が滑らかすぎる。

 

 まるで、コンクリートまで操れたかのように。

 

(どのように能力を使用したら、こうなりますの・・・?)

 

 

 

 ◆

 

 

 

 美琴は自分の寮へと歩いていた。

 

 今回、被害者を出さなかったのは、美琴のおかげということになっていた。

 

(でも・・・)

 

 美琴は思う。

 

 あの時、彼女はコインを落としてしまっていた。だから、レールガンを放てなかった。

 

 そんな彼女の前に、突然、白いマントで、白い仮面をつけた男が現れた。

 

 まるで、テレポートしたかのように。

 

 だから、ジャッジメントのテレポーターが助けに来たのかと思った。

 

(なのに)

 

 男は持っていた分厚い本のページをめくると、地面に手をついた。そして、次の瞬間には地面が隆起し、半球状の盾が彼女たちの前に現れた。

 

 テレポーターには絶対にできないような現象。

 

 そして、もう一度本のページをめくり、彼はテレポートしたかのように帰っていった。

 

 あのマントの能力は何だったのか・・・

 

「あ~っ。もうっ。わっかんない!」

 

 美琴の声が、夕焼けの空に響いた。

 

 

 





ちょっと、グラビトン事件がやっつけになってしまったことを、ここにお詫びします。
でも、先の構想ばっかり浮かんできて、焦っているのです。
そして、今回から改行してみました。
見やすくなったでしょうか?




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