とある異能の少年   作:エスパーラ

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第14話 レベルアッパー

 

「もう泣きたいよ」

 

 ここは病院の1室。安倍はようやく意識を取り戻し、ベッドに座った状態で177支部のメンバーと対面していた。

 

「なんか、僕がいない間に事件は解決しちゃうし、復活したよってメールを送ったのに反応ないし・・・」

 

 そう、安倍が泣きたいといった理由は、彼が目を覚まし177支部にメールを送ってから3日間、なんのレスポンスもなかったからである。

 

 3人とも、事件の報告書をまとめたりするのに忙しかったのと、全員非番の日を1日作ったからなのであるが。

 

「ごめんって、安倍君。機嫌を直して」

 

「そうですわ。男性のいじける姿なんて、誰も得しませんわ」

 

「そ~言う問題じゃないと思いますよ?白井さん」

 

 そして、今日メールを見て、3人とも着たわけなのだが・・・。

 

「まあそれより、この全員で考えなきゃいけない議題があるでしょう?」

 

「そうですね」

 

 固法の言葉にふざけていた安倍も真面目になる。

 

「なんのことですか?」

 

「これまでの事件の犯人達よ」

 

「どういうことですか?」

 

「グラビトン事件の犯人、介旅初矢はレベル2。常盤台狩りの重福もレベル2。前の銀行強盗のパイロキネシストもレベル1。ただしこれはバンクの情報だけどね」

 

「でも、それぞれの犯人達は、捕まった時にはそれからレベルが2も上がっていたわ。新学期にシステムスキャンをしたって言うのにおかしいでしょ?」

 

 安倍の説明の後を固法が引き継ぐ。

 

「それはおかしいですね・・・」

 

「妙ですわね・・・」

 

「私たちも、次にこういうケースが出てきたら、177支部全体でこれについて考えようっていう話をしていたところなの」

 

「安倍先輩のご意見はないんですの?」

 

「う~ん。僕も突拍子もない考えしか思いつかないんだよね。例えば、他人の能力を上げる能力、とか?」

 

「ありえなそうですね」

 

「そうね。そんな能力が出てたら学園都市が大騒ぎしそうだし、何より、犯人たちに共通の知り合いがいないといけないわ」

 

「そーなんですよね。僕もあり得ないとは思っているんですけど・・・」

 

「あの~」

 

 今まで発言していなかった初春がそろりと手を上げる。

 

「レベルアッパー・・・って聞いたことありませんか?」

 

「レベルが上がるっていうやつか」

 

「でも、それこそないんじゃないかしら?」

 

「そうですわよ、初春。そんなものがあったら誰も苦労しませんわ」

 

「で、ですよね」

 

 3人とも肯定してくれなく、初春は少し落ち込む。

 

「いや、でも、火のない所に煙は立たぬっていうし、調べてみる価値はあるかも」

 

「本気で言ってますの?」

 

「確かにそうね。噂が多すぎる噂だし・・・」

 

「一度調べてみるというのもアリかな」

 

「本気ですの・・・?」

 

 自分以外3人の言うことが信じられないというような白井。

 

「まあ、無駄足になるかもしれないけどね」

 

「でも、調べてみて、なにもなかったらそれはそれでいいじゃない」

 

「んじゃ、調べはじめますね」

 

 初春はパソコンを出して起動させる。そのままインターネットに接続して検索かけているのか、画面をのぞき込む。

 

「でも、能力のレベルを上げることなんてできますの?」

 

「うーん。でもさ、能力って、集中力を使うわけだから、その集中力を上げさせる・・・とか?」

 

「それなら有り得そうね」

 

「あ!すごいのがありました!」

 

 初春は3人に向けてパソコンを見せる。

 

「ネットの掲示板なんですけど、レベルアッパーを使ったって言っている人達のたまり場みたいなんですよ」

 

「「どれどれ」」

 

 安倍と固法、白井も掲示板を覗き込む。

 

「本当にあるんですの?自称なだけでは?」

 

「うーん。わからないわね」

 

「とりあえず、ここに行ってみますか?」

 

 安倍はそう言って、掲示板の一角を指す。そこには、ファミレスの名前と、そこに集まろうという意味のメッセージが書いあった。

 

「本当にいるとしたら、ものすごい馬鹿ですわね」

 

「確かに、自分たちの居場所を知らせるなんてね」

 

「いや、もし、レベルアッパーを売って、金にしているのだとしたら?」

 

「そ~いうことですか」

 

「とりあえず、行ってみよう」

 

 そう言って、立ち上がろうとした安倍に、固法のチョップと、初春のパソコン、白井のパンチが飛ぶ。

 

「けが人は無理しないの」

 

「そうですよ~。ちゃんと安静にしててください」

 

「わたくしたちに任せておけばいいんですわ」

 

「いや、その扱いがけが人にするものじゃないかと思うが・・・。それに、任せられないと思うんだが・・・」

 

「とりあえず、安倍くんは待機。退院するまで、仕事からは外れてもらうし、ここに仕事を持ってこないことにするわ。行くわよ、2人とも」

 

「はい」

 

「はいですの」

 

 そう言って、3人は病室を出ていく。

 

「大丈夫かねえ」

 

 安倍はそう言って、ベッドに横になった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

「で、なんで御坂ちゃんがいるの?野次馬?」

 

 1週間後、ありえないぐらい異様に早く退院し、ジャッジメントの支部に戻った安倍の第一声はそれだった。

 

「アタシだって別に、野次馬ってわけじゃ―――」

 

「野次馬ですわね」

 

「先週、レベルアッパー使用者と思われる人達のたまり場に行ったでしょ、その時に会っちゃって」

 

「固法さん、その会っちゃって、っていい方はひどくないですか?」

 

「仕方ないですよ~、御坂さん。あれだけ捜査に首を突っ込まないでって、固法先輩が言うのに無視するんですもん」

 

「ぐっ。そ、それは」

 

 安倍は大きくため息をつく。

 

「もういい。仕方ないね。で、捜査の方はどうなの?」

 

「それが・・・」

 

 安倍と目があった白井が目をそらす。

 

「それがね、話を聞いていた人たちが全員意識不明になっちゃったのよ」

 

 黙ってしまった白井に変わって、固法が話す。

 

「また、一から使用者を探さないといけないんですよ~」

 

 初春はパソコンに向かったまま話をする。目がちょっと充血気味なところから、随分と調べているようだ。そんな時、

 

 コンコン。

 

 ジャッジメントの支部の扉が叩かれる。

 

「あ、そういえば、今日来る事になっていましたわね」

 

 そう言って白井がドアを開けに行く。

 

「来る?誰が?」

 

「大脳学者の先生ですよ~」

 

 疑問に思う安倍の質問に初春が答え、固法はコーヒーの準備をする。

 

 部屋に入ってきたのは、目の下に随分クマを作った、ボサボサの髪の白衣を着た女性だった。

 

「おや。初めて見る顔があるな」

 

「安倍龍善といいます。しばらく用事で外れていました。よろしくお願いします」

 

「木山春生だ。よろしく頼む」

 

 律儀にお辞儀をする安倍に、木山も自己紹介をする。

 

「木山先生は大脳学の専門家なの。使用者の昏睡に関する調査をしているのよ。この前お会いした時には忙しくて時間が取れなかったから、今日のためにアポイントを取っておいたのよ」

 

「しかし、汗をかいてしまったな・・・」

 

 固法の説明の最中に、何を思い立ったのか、いきなりワイシャツのボタンを外し始める。

 

「・・・始まった」

 

「何をいきなりストリップしてますの!」

 

 頭を抱える美琴に、いきなりのできごとに大声を出す白井。安倍は固法に目潰しをくらい、目を抑えていた。

 

「いや・・・。汗をかいてしまったからな・・・」

 

「殿方の目がありますの!」

 

「下着を着けていてもダメなのか・・・?」

 

「ダメです!」

 

 木山のワイシャツのボタンを止めるのを手伝いながら、白井は怒鳴る。安倍は未だに視力が回復しないらしく、目をこすっている。

 

 とりあえず、服を元に戻した木山は、ソファーに腰掛け、その向かい側に女子4人が座る。安倍は女子の座っているソファーの背に手をかけ、そこに立っている。

 

「では、今日の議題だが、なぜ同程度の露出でも、下着はダメで水着は良いのだ・・・?」

 

「いえ、そんなことではなく―――」

 

「いや、見せることを前提にしているかどうかが問題なんでしょ」

 

 木山の言葉に白井が突っ込みを入れようとするが、意外と律儀に安倍が答える。

 

「ならば、見せる目的の下着というものがあったのなら、それはそれで良いということなのか・・・?」

 

「いいでしょ。見せ下着っていう概念がっ!」

 

 会話に耐え切れなくなった固法のチョップが安倍の顔面に入る。

 

「ひどいな固法先輩。僕は木山先生の疑問に答えていただけで」

 

「話が進まないから、元に戻すわよ。木山先生。今回あなたに聞きたいこととしては、最近レベルアッパーというものがありまして、それを使用していたというのが今回昏睡した学生たちの共通点なんですよ」

 

「・・・なるほど。君たちはそれが理由ではないかと疑っているというわけだね。でも、どういうシステムなんだ?その形状は?どうやって使う?」

 

「まだわかりません」

 

「では、なぜそのような話を私に?」

 

「能力が上がるということは、脳に影響を与えている可能性が高いと思われます。ですので、もし見つかった時は、専門家として、先生に調べてもらえないかと」

 

「むしろ、こちらから協力をお願いしたい」

 

「う~い~は~る~!」

 

 そんな話の最中に、ドアが勢いよく開き、佐天が入って来る。

 

「とうとう手に入れちゃったよ!夢のアイテム!・・・って、お客さんだった?」

 

 音楽プレイヤーを片手に勢いよく入ってきた佐天は、木山を見て動きを止める。

 

「もうっ。佐天さんったら。ちょっとは落ち着きましょうよ。こちら、木山先生。大脳生理学の学者さんです」

 

「佐天涙子って言います。初春の友達です!」

 

「木山春生だ。よろしく」

 

「先ほどの話に戻るが、君たちはこれからどうするんだい?」

 

「我々としては、レベルアッパーの使用者を見つけて、保護しようと思います」

 

「副作用がある可能性がありますしね~」

 

「それに、容易に犯罪に走る傾向がございますしね」

 

 白井が吐き捨てるように言うと、佐天がうつむく。しかし、ほかの人たちは話に夢中でそれに気づいていないようだった。

 

「木山先生、本日はお忙しいところ、ありがとうございました」

 

「いや、気にしなくていい。私もレベルアッパーとやらには興味があるからね。私もいろいろ考えてみよう。なにか進展があったら教えてくれ。これが私の連絡先だ」

 

「はい」

 

 木山は名刺を固法に渡して、部屋を出ていく。

 

「で、佐天さんはなんの用ですか~?」

 

「なんか、いい音楽でも見つけたのかい?音楽プレイヤーを持っていたけど」

 

「あ、い、いや、なんか学校で、パーソナルリアリティについて調べてこいって宿題を出されちゃってさ~。初春の力を借りようと」

 

「佐天さんが授業中にぼーっとしていたのが悪いんじゃないですか~」

 

「いや、でも、わかんないんだもん」

 

 初春の質問に慌てたように答える佐天。

 

「それに、自分だけの現実って言ってもねぇ」

 

「確かにわかりづらいわよね」

 

 佐天の言葉に美琴が同調する。一応レベル5の美琴が同調しても、なんの説得力がないのだが。

 

「安倍くんならわかるわよね?」

 

「う~ん。妄想とかそんなものでもあるしね。有名な話がシュレディンガーの猫の話なんだけど・・・。要は、世界にありうる可能性を意思の力で変えられるかって話なんだな」

 

 頭をガシガシと書きながら話す安倍の話に、残念ながら佐天はついていけてないようだ。

 

 その後、しばらくパーソナルリアリティの談義になったジャッジメント177支部。操作の方は、完全に放置されていた。

 

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