とある異能の少年   作:エスパーラ

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オリジナルの能力が出てきます。

最近、忙しくなり始めてかける時間がさらに少なくなってきました・・・





第15話 揺れる心

 次の日。

 

 初春は支部でパソコンに向かって頭を悩ませていた。

 

「どうしたの、初春ちゃん?」

 

「いえ、レベルアッパーの取引場所の候補がいくつか出てきたんですが、スラングとかが多くて・・・。絞り込めないんです」

 

 心配になって聞く安倍に、初春が答える。その答えに、安倍は少し考え込むという。

 

「とりあえず、推測地点をリスト化してくれない?」

 

「いいんですか?軽く100はありますよ?」

 

「白井ちゃんは出れる?」

 

 安倍はコーヒーを飲んでいる白井に聞く。固法は今日は休みである。

 

「当然ですわ」

 

「それじゃあ、僕と白井ちゃんで2手に分かれることにしようか」

 

「了解ですわ」

 

「え、一つ一つ潰すんですか?」

 

 あまりに当然というように頷く安倍と白井に、初春が驚いたように聞く。

 

「時間がないしね」

 

「これ以上被害者が出ないうちに、片付けてしまいませんと」

 

「どっちが当たりを引くか、賭けでもするかい?」

 

「では、缶ジュースを1本賭けましょうか」

 

 そう言って、印刷したリストを片手に、安倍と白井は支部を出て行った。

 

 

 

 ◆

 

 

(ここもハズレか)

 

 安倍は既に34ヶ所目となる場所へと移動していた。リストの場所はたいてい裏路地や廃墟などだが、そのどれにも人影らしき人影が見当たらない。

 

(まあ、無駄足を踏むことになるのは分かっていたけど、このままじゃひとつもアタリがないかもな)

 

 今回の廃墟は4回建てだったが、そのどの部屋にも人はいなかった。

 

 ピピピピ。

 

 ポケットに入れてあった携帯が鳴る。画面には、『白井』と書いてある。

 

「はい。安倍ですが」

 

『先輩ですの?そちらはどうですの?』

 

「34ヶ所目。全部ハズレだよ」

 

『わたくしは31ヶ所目ですが、全て外れですわね』

 

「了解」

 

『それでは』

 

 電話を切り、安倍は次の場所を目指す。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 佐天は迷っていた。ひょんなことから隠しサイトを見つけて手に入れたレベルアッパー。使うかどうか迷っていた。

 

 超能力を手に入れたくてやってきた学園都市。母親は心配していたが、父親はどんな能力を手に入れられるのか、楽しみにしていた佐天を見ながら、楽しそうにしていた。

 

 でも、学園都市が佐天に下した判断は非情なものだった。レベル0。超能力が使えないという宣告。

 

 どんな能力が手に入るのだろうか。そんな淡い期待は潰された。

 

 でも、その希望を現実に叶えるための道具が今、自分の手の中にある。

 

 でもそれは、一生懸命能力を手に入れようとして、手に入っていない人達からしてみれば、ずるい行為。チート。

 

 それに、白井や初春も言っていたではないか。副作用がある可能性があると。

 

 そんな悩んでいる彼女の耳に、誰かが争っているような声が聞こえた。

 

『れ、レベルアッパーを譲ってくれるって、言ったじゃないかよぉ!金も払ったろぉ!』

 

『ワリィ。さっき値上がりしたんだ。あと10万持って来い』

 

『じゅ、10万だなんて大金、用意できないよ!』

 

『そんじゃあ、諦めろよっ!』

 

 最後の言葉とともに、ガラガラ、ドッシャーン!と、ものすごい音が聞こえる。

 

 少し先の廃墟からのようだったので、佐天は廃墟の入口から、そぉーっと覗いてみる。

 

 そこには、いかにも不良風な3人が、メガネをかけた太った高校生くらいの人に、暴行を加えている場面があった。

 

(あ、アンチスキルかジャッジメントに連絡しなきゃ!)

 

 そう思って、ポケットから出した携帯の画面には、『電池がありません』という、無情なメッセージがうつる。

 

(嘘!充電切れ!?)

 

 もう一度中を見ると、3人の中のボス格のような金髪のオールバックの奴が、こっちを見た瞬間だった。

 

「おいっ!そこに隠れている奴がいる!」

 

 そんなそいつの掛け声で、男に暴行を加えていた2人のうち、赤髪の奴が近づいて来る。

 

(やばっ!)

 

 佐天は思わず身を翻し、大通りの方へと逃げようとする。

 

(あの男の人もやばそうだけど、あたしに出来ることなんて何もないんだっ!って!?)

 

 しかし、逃げ出した佐天の足が、空中で空回りする。思わず振り返ると、赤髪の奴が、佐天に手のひらを向けた状態で、腕を伸ばしていた。

 

「やべえ、やべえ。通報されるとこだったなぁ」

 

 そのまま佐天は中にうかされた状態で、廃墟の中へと移動させられる。

 

「お、ちゃんと捕まえられたか」

 

「あたりめぇだよ。俺の能力は、今、レベルがあがってるんだからなぁ!」

 

 未だに男を足蹴にした状態で、最後の一人の茶髪でサングラスの奴が赤髪の奴に聞く。

 

「ひゅ~。まだ中学生ぐらいの女じゃん!テンション上がっちゃうわ!」

 

 茶髪は佐天の体を上から下まで舐め回すように観察する。

 

「おいおい。ロリコンかてめぇーは。こんな発展途上の体じゃ面白くもねえだろう」

 

「だからいいんじゃん!泣き叫びながら抵抗むなしくってのがさぁ!」

 

 軽蔑したような赤髪の言葉に、それでも茶髪はテンションが上がるようだ。

 

「とりあえず、俺の能力かけちゃって、いいかなぁ!」

 

「・・・好きにしろ。通報さえされなければいい」

 

 リーダーのような金髪は、面倒くさそうに肯定する。

 

「はいはいっ!そんじゃあ、いきますよっ!」

 

 そう言って、茶髪は佐天へと手を伸ばす。佐天は逃げようとするが、未だに赤髪のやつの能力のせいで、宙に浮いたままである。

 

「そぉだ。お前、地面に下ろせよ。このままじゃ、いろいろできねぇだろ」

 

「わかったよ」

 

 佐天の体が地面に近づく。地面についた瞬間逃げようかと思うが、既に右腕を茶髪に掴まれている。

 

 地面に尻餅をつくような格好でついた瞬間、佐天の右腕を掴んでいた茶髪が、手を離した。

 

 チャンスとばかりに逃げようとするが、佐天の体はうまく動かない。思わずびっくりした佐天の顔を茶髪が覗き込む。

 

「ざんねぇ~ん。俺の能力は座標固定(フィクセイション)。俺が触ったものの座標を固定できる能力だから、君の体はもう、自由に動けないよぉ!」

 

 道理で、暴行されている男の人があまりに無抵抗だったわけだ。男のニヤニヤ笑いは止まらない。

 

「さぁ~てと、どうしよっかなぁ~」

 

 その口調に、佐天はぞっとしたものを感じる。

 

 思わず目を閉じる。

 

 そんな佐天の耳に、聴き慣れた声が飛び込んでくる。

 

「ようやくアタリか」

 

「誰だてめぇ!」

 

 赤髪の奴が荒々しく聞く。目を開けた佐天に見えたのは、茶髪の肩ごしに見える、廃墟の出口に立つ、刀を1本、腰に下げた高校生。

 

「いや、レベルアッパーの使用者や、その予備軍に話があったんだけどね。でも、方針変更だ」

 

 赤髪も茶髪も、金髪も、安倍の方へと体を向ける。そして、金髪は気づいたようだ。安倍の右腕に珍しく巻かれているものに。

 

「・・・ジャッジメントか」

 

「Yes。正解です」

 

 少しどけたように言う安倍。しかし、その目は全然笑っていない。

 

「いやいや、話を聞くだけのつもりだったけど、その子、僕の知り合いなんだよね。だから・・・覚悟を決めてもらわねぇとなぁ!」

 

 刀の柄を握り、安倍はそれを腰に差していた状態から、鞘ごと右手に引き抜く。

 

「俺ひとりでやるぜ」

 

 そう言って、安倍の方へ一歩進む。

 

「んじゃ!ジャッジメントさんにも見てもらわねぇとなぁ!俺らのレベルアップした力を!」

 

 赤髪が右手を振るう。その手に連動して、廃墟の隅に積まれていたパイプが1本、安倍に向けて放たれる。

 

 安倍はそれを何事もないかのように、かわす。

 

 赤髪はそのまま安倍へと手を伸ばす。

 

(これ、あたしにしたように、拘束する気だ!)

 

 赤髪の手を向けられた瞬間、安倍は何かに気づいたように、右へと跳ぶ。そのまま一回転し、すぐに目線を赤髪へと戻す。

 

「・・・てめぇ。サイコキネシストか」

 

「せぇかいだっ!」

 

 そして、パイプが3本同時に飛ばされる。はじめの2本が安倍の左右に、そのあと1本が少し時間を空けて、安倍へとまっすぐ飛んでいく。

 

 安倍は真っ直ぐ上へとジャンプする。しかし、跳んだ瞬間に、しまったという顔をする。

 

 赤髪は、にやりと笑う。

 

「下駄もねぇのに、飛んじまったなぁ!」

 

 赤髪はそのまま手を安倍へと向ける。その目的はもちろん、安倍を捕まえること。

 

「いまだ!固めちまえ!」

 

「わかってんよ!」

 

 茶髪が安倍へと1歩踏み出した時、安倍の手から、刀が落ちる。

 

 その刀は地面に落ちるかと思われたが、安倍のつま先の先を通る瞬間、安倍の足が振られる。

 

 刀はかなりの勢いで、赤髪へと襲いかかる。

 

「ちっ!」

 

 赤髪は刀を避ける。しかし、その動作のため、安倍へと降られていた集中力は消え、安倍への力が消える。

 

 その隙に何もしない安倍ではなかった。

 

 拳を握り、地面を蹴ると、茶髪の横を駆け抜けつつ、拳を振るう。

 

「がっ!」

 

 茶髪は顔を殴られ、鼻血を出しながら尻餅をつく。

 

 安倍は振り切った右手を地面につき、右足と右手を軸にして、左足で茶髪に蹴りを入れる。

 

 そのまま仰向けになった茶髪のみぞおちに、安倍はかかと落としを入れる。

 

「ぐっ!」

 

 そのまま茶髪は泡を吹いて、気絶してしまう。

 

「・・・どういうことだ?」

 

 安倍は怪訝そうな声を出す。その視線は、既に体勢を立て直している赤髪と、ずっと見ているだけだった金髪へと注がれている。

 

「そいつの能力は珍しいが、それより珍しい、刀を持っているようなジャッジメントは、あの『鴉』だと思ったからなぁ。まずは実力を見たほうが良いだろぉ。それに・・・」

 

 金髪は、安倍の上方の天井を見る。その目線に答えて安倍も上を見る。

 

 佐天も天井を見る。すると、その目に入ったのは、いきなり落ちてくる、パイプの山。

 

「佐天!」

 

 珍しく呼び捨てで佐天の名を呼び、安倍は佐天のもとへと急ぐ。

 

 安倍が佐天の体を動かすと同時に、パイプの山が佐天の元いた場所へと降り注ぐ。

 

「つっ」

 

 安倍の口から息が漏れる。佐天が慌ててみてみると、安倍の左足は、パイプの山に刺さったままである。

 

「安倍さん!?」

 

「へ~。頑張ってみたなぁ」

 

 金髪が、感心したように口笛を鳴らす。事実、すぐに飛び込んだため、佐天の体には怪我はなかった。

 

 しかし、安倍の左足は未だにパイプの山に突き刺さっている。それに、そのパイプの山からは赤黒い液体が流れ出ている。

 

「これは俺の能力じゃァねぇぜ?さ~て、どうやったでしょ~?わかんなかったら、お前に勝ち目はねぇよ」

 

 赤髪のバカにしたような言葉が続く。そんな赤髪を睨み返し、安倍は口を開く。

 

「簡単なことだろ。そっちの茶髪の能力は物体の座標固定ってとこだったんだろ。そして、そいつの能力で固定していた物体が、そいつが気を失ったことによって解除されて、俺へと落ちてきた」

 

「ほう。正解だ。でもよぉ!」

 

 感心したような赤髪の言葉。その言葉とともに安倍に近づき、頭を足で踏む。

 

「かっ」

 

「残念だったなぁ!正解がわかったところで!てめぇは!誰も!助けらんねぇ!」

 

 段々とテンションが上がってきたのか、安倍へと足を振り下ろしながら、赤髪は絶叫する。そばにいるはずなのに、佐天には何もできない。

 

(あたしがいたから、安倍さんがパイプの下敷きになった。あたしには、力がないから、助けることもできない)

 

 相手の座標固定は解除され、動けるはずなのに、佐天の体は動かない。今、佐天の体を縛っているのは、能力ではなくて、恐怖と無力感。

 

 赤髪に蹴られ続ける安倍を見ながら、金髪は口を開く。

 

「俺らは、力がねぇから、見下され続けてきた。でも、今はちげぇ!レベルアッパーのおかげで!俺らは力を手に入れた!てめぇらみたいなジャッジメントや、アンチスキルにビクビクする日は終わったんだ!力を手に入れたからには!力のなかった俺等をいじめてきたテメェらに、復讐だ!」

 

 そこまで言った金髪は、ふと、正気に戻ったように、落ち着く。

 

「俺はよぉ、お前にも期待していたんだぜ、『鴉』。能力者じゃねぇくせに、能力者と対等にやり合っているお前に。でも!今はわかるぜ!能力のねぇ!てめぇに未来はねぇ!」

 

 ガシッ!

 

 その金髪の言葉とともに、振り下ろされた赤髪の足を、安倍は掴む。蹴られ続け、アザができた腕を伸ばし、赤髪の足首を掴む。

 

「・・・だったら、俺も負けられねぇ!」

 

 赤髪の足首を持ち、それを思いっきり、引っ張る。赤髪はバランスを崩して尻餅をつき、安倍の足は、血みどろになりながらもパイプの山から抜き出される。

 

「くそっ!」

 

 手のひらを安倍に向けようとする、赤髪の手首に阿部は手刀を入れる。そのまま、赤髪の顔へと右足の膝を入れる。

 

 思いっきり、額に当たったためか、赤髪は後ろへと倒れ、仰向けのまま、気を失う。

 

「借りもんの力で、威張っているてめぇには、負けらんねぇよ!」

 

 叫ぶ安倍へと、金髪はバカにしたような目を向ける。なぜなら、その左足はどう考えてもたっているのがやっと。そこには、強者たる『鴉』の姿はない。安倍は、自分に向けられた目の意味を知る。

 

「いつまで余裕でいれるかなぁ!」

 

 言葉とともに、まだ動く右足を踏み込み、拳を振るう。確実に当たるかに見えるその拳は、虚しく空を切る。

 

「なっ?」

 

 驚く安倍へと、金髪の右足の廻し蹴りがとぶ。頭を狙ったかのように見える攻撃に、阿部はすぐに両手をクロスさせ、ガードの体制を取る。

 

 だが、その廻し蹴りは、ボロボロの安倍の左足に入る。

 

「くそがっ!」

 

 思わず左足を降り、膝をついた安倍の腹をめがけて、男の右足がまたもや飛んでくる。右手の裏拳でそれを弾こうとする安倍の手だが、その裏拳は虚しく空を切り、男のつま先が安倍の顔面を捉える。

 

 たまらず後ろへと吹っ飛び、仰向けになってしまった安倍へと、金髪はニヤついた笑みを浮かべる。

 

「おいおい、余裕をなくしてくれんじゃなかったのかぁ?さっきからやられっぱなしのくせによぉ」

 

「くそがっ・・・」

 

 安倍は顔を右手で押さえながら、ふらつきつつも立ち上がる。

 

偏光能力(トリックアート)、か・・・」

 

「よくわかったなぁ!それが俺の能力だ!テメェの攻撃は当たらねぇし、俺の攻撃は必中だァ!」

 

「そうじゃねぇ・・・」

 

「ああぁ!?」

 

「お前の能力がそんなに便利なら、もともとほかの2人も助けられたはずだろう。でも、助けられなかった。つまりお前の能力は、そんなに便利じゃねぇんだろぉがァ!」

 

「それがわかったところで、テメェに何ができる!」

 

 金髪のケリが安倍へと再度振り切られる。安倍は顔を防御する。しかし、相手のケリが入るのは、腹の中心。その蹴りの威力に、安倍が吹っ飛ぶ。

 

「なにもできっ!?」

 

 安倍は、吹っ飛んだ先に転がっていた、自分の刀を掴む。金髪はそのことに驚き、納得したような顔になる。

 

「てめぇ。わざと吹っ飛んだな、今」

 

「さあなっ!」

 

 安倍は近くに転がっていたコンクリートの塊を蹴り上げる。そのまま、目線の高さになった塊に、鞘に入れた刀を振るい、天井へと発射させる。

 

「おいおい!見当違いの方向だぜぇ!」

 

 安倍が刀を持ったことに緊張していた金髪だったが、見当はずれの攻撃に、にやけた顔へと戻っていく。

 

「そうかな」

 

 馬鹿にしたような金髪の言葉にも、安倍には余裕があり、地面からコンクリートの塊を次々と天井にぶつける。近くにある塊は、安倍の手によって、どんどんとなくなっていく。

 

「てめぇ?何がしたい?」

 

 全く金髪を意に介さない安倍を見て、流石に金髪が苛立ったような声で聞く。

 

「さあねっ!」

 

 安倍の近くに転がっていたものの中で、最後となる塊は、金髪の方へと飛ばされる。しかし、その塊は金髪に当たることなく、通り抜けるように金髪の背後の壁にぶつかる。

 

「はっ!当たるわきゃねぇだろ!俺の場所もわかってねぇくせに!」

 

 金髪は自信満々に安倍へと走る。

 

「それはどうかな?」

 

 安倍は、誰もいないはずの空間に鞘に入れたままの刀を振るう。

 

「なにぃ!?」

 

 誰もいないはずの空間だったのに、鞘で右腕の肘を殴られた金髪が現れる。

 

「思考が止まってんぜ!」

 

 阿部は容赦なく金髪へと追撃の振り下ろしを放つ。その振り下ろしは、すんでのところで回避しようとした金髪の右肩にはいる。

 

 超能力は、思考をし続けていないと発動し続けることはできない。故に、見破られた驚きで、思考が停止している金髪の能力は発動しない。

 

「くそっ!」

 

 金髪は安倍との距離を取る。実際、片足を怪我しているために、移動ができない安倍と戦ううえで、正解である選択。

 

 さらなる安倍の追撃の、左から右への刀は空を切る。

 

 後ろへ下がった金髪の体は、一瞬消え見当違いの方向に現れる。

 

「はっ!驚かされたが、遠距離で能力を発動さえさせれば、てめぇには攻撃できない!」

 

「それはどうかなぁ!」

 

 安倍は転がるように、がれきの塊の多いところへと移動する。その中心で立ち上がり、塊をひとつ持ち上げる。それを思い切り振りかぶり、誰もいないはずの空間へと投げる。

 

「がっ!」

 

 その空間から、腹にがれきが当たった金髪が現れる。安倍は追撃に、いくつも塊を投げる。両方、両膝、両腕、胴。様々な箇所へと塊が当たる。

 

「がっ!ぎぃ!ぐっ!くそがっ!」

 

 金髪は能力を発動させることもできずに、一方的に攻撃を受ける。あまりの勢いに押されたのか、金髪が膝をつく。

 

「あぁ!?体が、痺れて、動かねぇ!?」

 

「《ファニーボーン》」

 

 安倍はそう呟き、金髪へと歩み寄る。

 

「んだと?」

 

「肘を曲げて、出てくる骨を強く打って、腕を麻痺させたことはないか?人体は正確に攻撃をぶち込みさえすれば、麻痺させることくらいできんだよ。少しの間はしびれがとれねぇはずだぜ」

 

 安倍はカバンへと手を伸ばし、捕獲専用の手錠を金髪や、既に気絶している赤髪や茶髪にも手錠をしてまわる。その後、安倍は佐天のところへと歩み寄る。その痛めた左足の杖がわりに、刀を使いながら。

 

「佐天ちゃん。大丈夫かい?」

 

「あっ。はいっ!あ、安倍さんは大丈夫ですか?」

 

「うん。多分大丈夫。佐天ちゃんは危ないから、ここから離れといてくれ」

 

 いつの間にか、はじめの男の人はいなくなっていた。

 

「はっ、はい!」

 

「気をつけるんだよ」

 

「安倍さんも」

 

 佐天はビルの入口から出ていく。それを見送り、安倍はもう一度金髪のところへと近寄る。

 

「なぁ」

 

「なんだい?」

 

「なぜ、俺の居場所がわかった?」

 

「ああ、それか」

 

 金髪のつぶやいた疑問に、安倍が答える。

 

「君の能力は物体には働かない。そして、あの時、僕が天井にうったコンクリートの塊のせいで、この部屋は埃が舞っていた。だから、君のいるところだけ、埃が舞って無いから分かったってことさ」

 

 その言葉をあっけからんという安倍を、金髪はぽかんとした表情で見上げる。そして、変わらない安倍の表情を見て、金髪は目をつぶって、下を向く。

 

「・・・完敗だ」

 

「ならば、教えて欲しい。君はレベルアッパーの使用者だよね」

 

「ああ」

 

「レベルアッパーとは、何なんだ?」

 

 

 

 ◆

 

 佐天は歩く。

 

 今、佐天は猛烈に力が欲しかった。

 

 今日あったこと。

 

 助けようとした男の人を助けられなかった。

 

 男達に、好きにされそうになった。

 

 安倍に庇われ、安倍に怪我をさせてしまった。

 

(ならば、私は―――)

 

 佐天の手が、ポケットにある音楽プレイヤーに伸びる。

 





戦闘シーンって、どうやって書けば良いのか、どなたか教えてください・・・。

少しアニメとは、能力を変えさせていただきました。

3人ともかなりの出力になってしまった。

レベルいくつなんだろう・・・?

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