オリジナルの能力が出てきます。
最近、忙しくなり始めてかける時間がさらに少なくなってきました・・・
次の日。
初春は支部でパソコンに向かって頭を悩ませていた。
「どうしたの、初春ちゃん?」
「いえ、レベルアッパーの取引場所の候補がいくつか出てきたんですが、スラングとかが多くて・・・。絞り込めないんです」
心配になって聞く安倍に、初春が答える。その答えに、安倍は少し考え込むという。
「とりあえず、推測地点をリスト化してくれない?」
「いいんですか?軽く100はありますよ?」
「白井ちゃんは出れる?」
安倍はコーヒーを飲んでいる白井に聞く。固法は今日は休みである。
「当然ですわ」
「それじゃあ、僕と白井ちゃんで2手に分かれることにしようか」
「了解ですわ」
「え、一つ一つ潰すんですか?」
あまりに当然というように頷く安倍と白井に、初春が驚いたように聞く。
「時間がないしね」
「これ以上被害者が出ないうちに、片付けてしまいませんと」
「どっちが当たりを引くか、賭けでもするかい?」
「では、缶ジュースを1本賭けましょうか」
そう言って、印刷したリストを片手に、安倍と白井は支部を出て行った。
◆
(ここもハズレか)
安倍は既に34ヶ所目となる場所へと移動していた。リストの場所はたいてい裏路地や廃墟などだが、そのどれにも人影らしき人影が見当たらない。
(まあ、無駄足を踏むことになるのは分かっていたけど、このままじゃひとつもアタリがないかもな)
今回の廃墟は4回建てだったが、そのどの部屋にも人はいなかった。
ピピピピ。
ポケットに入れてあった携帯が鳴る。画面には、『白井』と書いてある。
「はい。安倍ですが」
『先輩ですの?そちらはどうですの?』
「34ヶ所目。全部ハズレだよ」
『わたくしは31ヶ所目ですが、全て外れですわね』
「了解」
『それでは』
電話を切り、安倍は次の場所を目指す。
◆
佐天は迷っていた。ひょんなことから隠しサイトを見つけて手に入れたレベルアッパー。使うかどうか迷っていた。
超能力を手に入れたくてやってきた学園都市。母親は心配していたが、父親はどんな能力を手に入れられるのか、楽しみにしていた佐天を見ながら、楽しそうにしていた。
でも、学園都市が佐天に下した判断は非情なものだった。レベル0。超能力が使えないという宣告。
どんな能力が手に入るのだろうか。そんな淡い期待は潰された。
でも、その希望を現実に叶えるための道具が今、自分の手の中にある。
でもそれは、一生懸命能力を手に入れようとして、手に入っていない人達からしてみれば、ずるい行為。チート。
それに、白井や初春も言っていたではないか。副作用がある可能性があると。
そんな悩んでいる彼女の耳に、誰かが争っているような声が聞こえた。
『れ、レベルアッパーを譲ってくれるって、言ったじゃないかよぉ!金も払ったろぉ!』
『ワリィ。さっき値上がりしたんだ。あと10万持って来い』
『じゅ、10万だなんて大金、用意できないよ!』
『そんじゃあ、諦めろよっ!』
最後の言葉とともに、ガラガラ、ドッシャーン!と、ものすごい音が聞こえる。
少し先の廃墟からのようだったので、佐天は廃墟の入口から、そぉーっと覗いてみる。
そこには、いかにも不良風な3人が、メガネをかけた太った高校生くらいの人に、暴行を加えている場面があった。
(あ、アンチスキルかジャッジメントに連絡しなきゃ!)
そう思って、ポケットから出した携帯の画面には、『電池がありません』という、無情なメッセージがうつる。
(嘘!充電切れ!?)
もう一度中を見ると、3人の中のボス格のような金髪のオールバックの奴が、こっちを見た瞬間だった。
「おいっ!そこに隠れている奴がいる!」
そんなそいつの掛け声で、男に暴行を加えていた2人のうち、赤髪の奴が近づいて来る。
(やばっ!)
佐天は思わず身を翻し、大通りの方へと逃げようとする。
(あの男の人もやばそうだけど、あたしに出来ることなんて何もないんだっ!って!?)
しかし、逃げ出した佐天の足が、空中で空回りする。思わず振り返ると、赤髪の奴が、佐天に手のひらを向けた状態で、腕を伸ばしていた。
「やべえ、やべえ。通報されるとこだったなぁ」
そのまま佐天は中にうかされた状態で、廃墟の中へと移動させられる。
「お、ちゃんと捕まえられたか」
「あたりめぇだよ。俺の能力は、今、レベルがあがってるんだからなぁ!」
未だに男を足蹴にした状態で、最後の一人の茶髪でサングラスの奴が赤髪の奴に聞く。
「ひゅ~。まだ中学生ぐらいの女じゃん!テンション上がっちゃうわ!」
茶髪は佐天の体を上から下まで舐め回すように観察する。
「おいおい。ロリコンかてめぇーは。こんな発展途上の体じゃ面白くもねえだろう」
「だからいいんじゃん!泣き叫びながら抵抗むなしくってのがさぁ!」
軽蔑したような赤髪の言葉に、それでも茶髪はテンションが上がるようだ。
「とりあえず、俺の能力かけちゃって、いいかなぁ!」
「・・・好きにしろ。通報さえされなければいい」
リーダーのような金髪は、面倒くさそうに肯定する。
「はいはいっ!そんじゃあ、いきますよっ!」
そう言って、茶髪は佐天へと手を伸ばす。佐天は逃げようとするが、未だに赤髪のやつの能力のせいで、宙に浮いたままである。
「そぉだ。お前、地面に下ろせよ。このままじゃ、いろいろできねぇだろ」
「わかったよ」
佐天の体が地面に近づく。地面についた瞬間逃げようかと思うが、既に右腕を茶髪に掴まれている。
地面に尻餅をつくような格好でついた瞬間、佐天の右腕を掴んでいた茶髪が、手を離した。
チャンスとばかりに逃げようとするが、佐天の体はうまく動かない。思わずびっくりした佐天の顔を茶髪が覗き込む。
「ざんねぇ~ん。俺の能力は
道理で、暴行されている男の人があまりに無抵抗だったわけだ。男のニヤニヤ笑いは止まらない。
「さぁ~てと、どうしよっかなぁ~」
その口調に、佐天はぞっとしたものを感じる。
思わず目を閉じる。
そんな佐天の耳に、聴き慣れた声が飛び込んでくる。
「ようやくアタリか」
「誰だてめぇ!」
赤髪の奴が荒々しく聞く。目を開けた佐天に見えたのは、茶髪の肩ごしに見える、廃墟の出口に立つ、刀を1本、腰に下げた高校生。
「いや、レベルアッパーの使用者や、その予備軍に話があったんだけどね。でも、方針変更だ」
赤髪も茶髪も、金髪も、安倍の方へと体を向ける。そして、金髪は気づいたようだ。安倍の右腕に珍しく巻かれているものに。
「・・・ジャッジメントか」
「Yes。正解です」
少しどけたように言う安倍。しかし、その目は全然笑っていない。
「いやいや、話を聞くだけのつもりだったけど、その子、僕の知り合いなんだよね。だから・・・覚悟を決めてもらわねぇとなぁ!」
刀の柄を握り、安倍はそれを腰に差していた状態から、鞘ごと右手に引き抜く。
「俺ひとりでやるぜ」
そう言って、安倍の方へ一歩進む。
「んじゃ!ジャッジメントさんにも見てもらわねぇとなぁ!俺らのレベルアップした力を!」
赤髪が右手を振るう。その手に連動して、廃墟の隅に積まれていたパイプが1本、安倍に向けて放たれる。
安倍はそれを何事もないかのように、かわす。
赤髪はそのまま安倍へと手を伸ばす。
(これ、あたしにしたように、拘束する気だ!)
赤髪の手を向けられた瞬間、安倍は何かに気づいたように、右へと跳ぶ。そのまま一回転し、すぐに目線を赤髪へと戻す。
「・・・てめぇ。サイコキネシストか」
「せぇかいだっ!」
そして、パイプが3本同時に飛ばされる。はじめの2本が安倍の左右に、そのあと1本が少し時間を空けて、安倍へとまっすぐ飛んでいく。
安倍は真っ直ぐ上へとジャンプする。しかし、跳んだ瞬間に、しまったという顔をする。
赤髪は、にやりと笑う。
「下駄もねぇのに、飛んじまったなぁ!」
赤髪はそのまま手を安倍へと向ける。その目的はもちろん、安倍を捕まえること。
「いまだ!固めちまえ!」
「わかってんよ!」
茶髪が安倍へと1歩踏み出した時、安倍の手から、刀が落ちる。
その刀は地面に落ちるかと思われたが、安倍のつま先の先を通る瞬間、安倍の足が振られる。
刀はかなりの勢いで、赤髪へと襲いかかる。
「ちっ!」
赤髪は刀を避ける。しかし、その動作のため、安倍へと降られていた集中力は消え、安倍への力が消える。
その隙に何もしない安倍ではなかった。
拳を握り、地面を蹴ると、茶髪の横を駆け抜けつつ、拳を振るう。
「がっ!」
茶髪は顔を殴られ、鼻血を出しながら尻餅をつく。
安倍は振り切った右手を地面につき、右足と右手を軸にして、左足で茶髪に蹴りを入れる。
そのまま仰向けになった茶髪のみぞおちに、安倍はかかと落としを入れる。
「ぐっ!」
そのまま茶髪は泡を吹いて、気絶してしまう。
「・・・どういうことだ?」
安倍は怪訝そうな声を出す。その視線は、既に体勢を立て直している赤髪と、ずっと見ているだけだった金髪へと注がれている。
「そいつの能力は珍しいが、それより珍しい、刀を持っているようなジャッジメントは、あの『鴉』だと思ったからなぁ。まずは実力を見たほうが良いだろぉ。それに・・・」
金髪は、安倍の上方の天井を見る。その目線に答えて安倍も上を見る。
佐天も天井を見る。すると、その目に入ったのは、いきなり落ちてくる、パイプの山。
「佐天!」
珍しく呼び捨てで佐天の名を呼び、安倍は佐天のもとへと急ぐ。
安倍が佐天の体を動かすと同時に、パイプの山が佐天の元いた場所へと降り注ぐ。
「つっ」
安倍の口から息が漏れる。佐天が慌ててみてみると、安倍の左足は、パイプの山に刺さったままである。
「安倍さん!?」
「へ~。頑張ってみたなぁ」
金髪が、感心したように口笛を鳴らす。事実、すぐに飛び込んだため、佐天の体には怪我はなかった。
しかし、安倍の左足は未だにパイプの山に突き刺さっている。それに、そのパイプの山からは赤黒い液体が流れ出ている。
「これは俺の能力じゃァねぇぜ?さ~て、どうやったでしょ~?わかんなかったら、お前に勝ち目はねぇよ」
赤髪のバカにしたような言葉が続く。そんな赤髪を睨み返し、安倍は口を開く。
「簡単なことだろ。そっちの茶髪の能力は物体の座標固定ってとこだったんだろ。そして、そいつの能力で固定していた物体が、そいつが気を失ったことによって解除されて、俺へと落ちてきた」
「ほう。正解だ。でもよぉ!」
感心したような赤髪の言葉。その言葉とともに安倍に近づき、頭を足で踏む。
「かっ」
「残念だったなぁ!正解がわかったところで!てめぇは!誰も!助けらんねぇ!」
段々とテンションが上がってきたのか、安倍へと足を振り下ろしながら、赤髪は絶叫する。そばにいるはずなのに、佐天には何もできない。
(あたしがいたから、安倍さんがパイプの下敷きになった。あたしには、力がないから、助けることもできない)
相手の座標固定は解除され、動けるはずなのに、佐天の体は動かない。今、佐天の体を縛っているのは、能力ではなくて、恐怖と無力感。
赤髪に蹴られ続ける安倍を見ながら、金髪は口を開く。
「俺らは、力がねぇから、見下され続けてきた。でも、今はちげぇ!レベルアッパーのおかげで!俺らは力を手に入れた!てめぇらみたいなジャッジメントや、アンチスキルにビクビクする日は終わったんだ!力を手に入れたからには!力のなかった俺等をいじめてきたテメェらに、復讐だ!」
そこまで言った金髪は、ふと、正気に戻ったように、落ち着く。
「俺はよぉ、お前にも期待していたんだぜ、『鴉』。能力者じゃねぇくせに、能力者と対等にやり合っているお前に。でも!今はわかるぜ!能力のねぇ!てめぇに未来はねぇ!」
ガシッ!
その金髪の言葉とともに、振り下ろされた赤髪の足を、安倍は掴む。蹴られ続け、アザができた腕を伸ばし、赤髪の足首を掴む。
「・・・だったら、俺も負けられねぇ!」
赤髪の足首を持ち、それを思いっきり、引っ張る。赤髪はバランスを崩して尻餅をつき、安倍の足は、血みどろになりながらもパイプの山から抜き出される。
「くそっ!」
手のひらを安倍に向けようとする、赤髪の手首に阿部は手刀を入れる。そのまま、赤髪の顔へと右足の膝を入れる。
思いっきり、額に当たったためか、赤髪は後ろへと倒れ、仰向けのまま、気を失う。
「借りもんの力で、威張っているてめぇには、負けらんねぇよ!」
叫ぶ安倍へと、金髪はバカにしたような目を向ける。なぜなら、その左足はどう考えてもたっているのがやっと。そこには、強者たる『鴉』の姿はない。安倍は、自分に向けられた目の意味を知る。
「いつまで余裕でいれるかなぁ!」
言葉とともに、まだ動く右足を踏み込み、拳を振るう。確実に当たるかに見えるその拳は、虚しく空を切る。
「なっ?」
驚く安倍へと、金髪の右足の廻し蹴りがとぶ。頭を狙ったかのように見える攻撃に、阿部はすぐに両手をクロスさせ、ガードの体制を取る。
だが、その廻し蹴りは、ボロボロの安倍の左足に入る。
「くそがっ!」
思わず左足を降り、膝をついた安倍の腹をめがけて、男の右足がまたもや飛んでくる。右手の裏拳でそれを弾こうとする安倍の手だが、その裏拳は虚しく空を切り、男のつま先が安倍の顔面を捉える。
たまらず後ろへと吹っ飛び、仰向けになってしまった安倍へと、金髪はニヤついた笑みを浮かべる。
「おいおい、余裕をなくしてくれんじゃなかったのかぁ?さっきからやられっぱなしのくせによぉ」
「くそがっ・・・」
安倍は顔を右手で押さえながら、ふらつきつつも立ち上がる。
「
「よくわかったなぁ!それが俺の能力だ!テメェの攻撃は当たらねぇし、俺の攻撃は必中だァ!」
「そうじゃねぇ・・・」
「ああぁ!?」
「お前の能力がそんなに便利なら、もともとほかの2人も助けられたはずだろう。でも、助けられなかった。つまりお前の能力は、そんなに便利じゃねぇんだろぉがァ!」
「それがわかったところで、テメェに何ができる!」
金髪のケリが安倍へと再度振り切られる。安倍は顔を防御する。しかし、相手のケリが入るのは、腹の中心。その蹴りの威力に、安倍が吹っ飛ぶ。
「なにもできっ!?」
安倍は、吹っ飛んだ先に転がっていた、自分の刀を掴む。金髪はそのことに驚き、納得したような顔になる。
「てめぇ。わざと吹っ飛んだな、今」
「さあなっ!」
安倍は近くに転がっていたコンクリートの塊を蹴り上げる。そのまま、目線の高さになった塊に、鞘に入れた刀を振るい、天井へと発射させる。
「おいおい!見当違いの方向だぜぇ!」
安倍が刀を持ったことに緊張していた金髪だったが、見当はずれの攻撃に、にやけた顔へと戻っていく。
「そうかな」
馬鹿にしたような金髪の言葉にも、安倍には余裕があり、地面からコンクリートの塊を次々と天井にぶつける。近くにある塊は、安倍の手によって、どんどんとなくなっていく。
「てめぇ?何がしたい?」
全く金髪を意に介さない安倍を見て、流石に金髪が苛立ったような声で聞く。
「さあねっ!」
安倍の近くに転がっていたものの中で、最後となる塊は、金髪の方へと飛ばされる。しかし、その塊は金髪に当たることなく、通り抜けるように金髪の背後の壁にぶつかる。
「はっ!当たるわきゃねぇだろ!俺の場所もわかってねぇくせに!」
金髪は自信満々に安倍へと走る。
「それはどうかな?」
安倍は、誰もいないはずの空間に鞘に入れたままの刀を振るう。
「なにぃ!?」
誰もいないはずの空間だったのに、鞘で右腕の肘を殴られた金髪が現れる。
「思考が止まってんぜ!」
阿部は容赦なく金髪へと追撃の振り下ろしを放つ。その振り下ろしは、すんでのところで回避しようとした金髪の右肩にはいる。
超能力は、思考をし続けていないと発動し続けることはできない。故に、見破られた驚きで、思考が停止している金髪の能力は発動しない。
「くそっ!」
金髪は安倍との距離を取る。実際、片足を怪我しているために、移動ができない安倍と戦ううえで、正解である選択。
さらなる安倍の追撃の、左から右への刀は空を切る。
後ろへ下がった金髪の体は、一瞬消え見当違いの方向に現れる。
「はっ!驚かされたが、遠距離で能力を発動さえさせれば、てめぇには攻撃できない!」
「それはどうかなぁ!」
安倍は転がるように、がれきの塊の多いところへと移動する。その中心で立ち上がり、塊をひとつ持ち上げる。それを思い切り振りかぶり、誰もいないはずの空間へと投げる。
「がっ!」
その空間から、腹にがれきが当たった金髪が現れる。安倍は追撃に、いくつも塊を投げる。両方、両膝、両腕、胴。様々な箇所へと塊が当たる。
「がっ!ぎぃ!ぐっ!くそがっ!」
金髪は能力を発動させることもできずに、一方的に攻撃を受ける。あまりの勢いに押されたのか、金髪が膝をつく。
「あぁ!?体が、痺れて、動かねぇ!?」
「《ファニーボーン》」
安倍はそう呟き、金髪へと歩み寄る。
「んだと?」
「肘を曲げて、出てくる骨を強く打って、腕を麻痺させたことはないか?人体は正確に攻撃をぶち込みさえすれば、麻痺させることくらいできんだよ。少しの間はしびれがとれねぇはずだぜ」
安倍はカバンへと手を伸ばし、捕獲専用の手錠を金髪や、既に気絶している赤髪や茶髪にも手錠をしてまわる。その後、安倍は佐天のところへと歩み寄る。その痛めた左足の杖がわりに、刀を使いながら。
「佐天ちゃん。大丈夫かい?」
「あっ。はいっ!あ、安倍さんは大丈夫ですか?」
「うん。多分大丈夫。佐天ちゃんは危ないから、ここから離れといてくれ」
いつの間にか、はじめの男の人はいなくなっていた。
「はっ、はい!」
「気をつけるんだよ」
「安倍さんも」
佐天はビルの入口から出ていく。それを見送り、安倍はもう一度金髪のところへと近寄る。
「なぁ」
「なんだい?」
「なぜ、俺の居場所がわかった?」
「ああ、それか」
金髪のつぶやいた疑問に、安倍が答える。
「君の能力は物体には働かない。そして、あの時、僕が天井にうったコンクリートの塊のせいで、この部屋は埃が舞っていた。だから、君のいるところだけ、埃が舞って無いから分かったってことさ」
その言葉をあっけからんという安倍を、金髪はぽかんとした表情で見上げる。そして、変わらない安倍の表情を見て、金髪は目をつぶって、下を向く。
「・・・完敗だ」
「ならば、教えて欲しい。君はレベルアッパーの使用者だよね」
「ああ」
「レベルアッパーとは、何なんだ?」
◆
佐天は歩く。
今、佐天は猛烈に力が欲しかった。
今日あったこと。
助けようとした男の人を助けられなかった。
男達に、好きにされそうになった。
安倍に庇われ、安倍に怪我をさせてしまった。
(ならば、私は―――)
佐天の手が、ポケットにある音楽プレイヤーに伸びる。
戦闘シーンって、どうやって書けば良いのか、どなたか教えてください・・・。
少しアニメとは、能力を変えさせていただきました。
3人ともかなりの出力になってしまった。
レベルいくつなんだろう・・・?