もうじき死ぬオリ主に稲妻キャラが会いに来る話   作:鍵穴に詰まった埃

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なんかお気に入りと評価がすげぇや。

やっぱみんなこういうの好きなんすね()



私は関東の人なんで宵宮の口調がガチ似非関西弁になってるけど許し亭ゆるして。


宵宮

 

 

 綾人に戸を閉めてもらったからこそ感じる、稲妻の夏の蒸し暑さ。

 

 かつては姉弟で屋敷を駆けまわったり、神の目を使って涼んだりしたけれど、もうそんなことをできる筋力は残されていないし、神の目の力を使う気力も残っていない。

 

 

 桶に水を張ってそこに足を付けながらスイカを食べた日もあった。

 眼下に広がる海へ家族で出かけた時もあった。

 稲妻城で開催されたお祭りに出向いて遊んだ年もあった。

 

 

 あぁ、そしてお祭りで毎回打ちあがる長野原の花火を見て、感動に心を打ち震わせていたっけ。

 

 

「綾音さん……」

 

「来てくれてありがとう、宮ちゃん。どうぞ、座って……?」

 

 

 まだ真昼間だというのに燭台の灯だけが照らす私の部屋にやってきたのは、先ほど思い返していた花火を作っている職人の女の子。

 

 明るく、元気で、いつも子供と仲よく遊んでいた彼女の顔には、今は作られた笑顔が貼り付けてある。

 宵宮の笑顔は、こんなに機械的な笑みではない。宵宮が持つ炎の神の目のように、稲妻の夜空に煌めく花火のように、テイワットを照らす太陽のように、みんなを等しく包み込む暖かいものだったはずだ。

 

 

「宮ちゃん、無理……してないかしら?」

 

「へっ……う、ううん!? ぜ、全然してへんよ? これがいつものウチや。子供をぎょうさん笑わせる天下の宵宮ちゃんやで?」

 

 

 気丈に振舞っているように見えるけれど、やはりその顔は苦しそうだった。

 そもそも、なぜ宵宮がここへ来たのか定かではないのだ。……やはり、虫の知らせとかそういうものが彼女に働いたのだろうか。

 

 

――――だとしたら、その知らせはきっと正しいものだろう。

 

 

「……ウチな、今一週間後にやる祭りの花火作ってるんやけどな。

 今までで一番でっかい花火なんや。それでいてめっちゃ綺麗なんや」

 

 

 なんとなく、宵宮がその先に言わんとしていることが分かった気がした。

 

 

 私がかつて神里家の当主の座に収まり、祭りの下準備として長野原家の店主、龍之介様と顔合わせをした時。

 

 

『なぁ、おねーさん、ウチが作った花火、見てってくれへん?』

 

 

 その誘いは突然だった。

 右斜め下に視線を向けてみれば、黄白色の髪の毛を後ろで一つ結びにした女の子が、少しだけ形の歪な花火玉を持って私の足元に立っていた。勿論、宵宮である。

 

 社奉行の当主である私に、子供とはいえ何の許可もなしに話しかけてしまった宵宮を家の奥へ引っ張っていこうとする龍之介様を止めて、私は宵宮にまだ試作品であろうそれを打ち上げてくれないかと頼んだ。

 

 

『ほんまか!? なら、今すぐ街の外でやろうや!』

 

 

 その時見せた向日葵のような笑顔こそが、今も花火の次に来る宵宮の代名詞。

 

 結局、その試作品は空にうちあがる前に爆発して地面すれすれのところで色とりどりの灰へと変わってしまったけれど、そこから宵宮は機会を見つけては試作品を私に見せて感想を求めてくるようになった。

 

 

 時には綾人や綾華と共に神里家の庭で線香花火をやったりして、宵宮は兄妹たちとも親交を深めていった。

 特に綾華とは年が近いこともあって、互いに下の名前で呼び合う仲になっている。

 

 

『今度の祭り、みんなを驚かせたるから覚悟しときぃ?』

 

 

 言い方は違えど、宵宮は自身の作った花火が祭りで打ちあがる時には必ずこのようなことを言っていた。

 

 そして、花火が打ちあがった翌日、必ず感想を求めにやってくる。

 

 

 

 

「綾音さんに、一番見てほしいんや……あの日、初めて会ったとき、ウチが打ち上げに失敗したあの花火……

 

 今度こそ……必ず打ち上げて見せるさかい……絶対、見てほしいんや……」

 

 

 

 

 

 宵宮が花火を作ると決めた時から、ずっと構想を続けてきた特大花火。

 

 初めて作った試作品は打ちあがる前に爆散してしまったけれど、今の宵宮ならば必ず稲妻の夜空を彩ることができるであろうそれ。

 

 

 

 

――――もう少し横に広くした方がいいかしらね。

――――弾けた後に色が変わるのはどうかしら。

――――形を作るのはやめて、王道の円形にした方が見栄えがいいわね。

――――少し密度が高すぎる気がするわ。もう少しだけ隙間を作りましょう。

 

 

 

 

 

 宵宮への花火の感想に、嘘をついたことはない。

 嘘をついたところで何にもならないのは確かにそうではあるが、それ以上に、宵宮がキラキラとした眼をこちらへ向けてくるのに、中途半端な嘘などつけるはずがない。

 

 

「だから、またっ、感想聞かせてほしいんや……ウチと一緒に、花火を作ってほしいんや……それだけで、ウチは満足なんや……」

 

 

 宵宮の貼りついていた笑顔が、だんだんと崩れていく。

 太陽のように暖かい笑顔は、私と言う名の雲に隠されてどんどんと曇っていってしまう。

 

 そんなの、私は望まない。そしてきっと、宵宮も望まない。

 

 

「宮ちゃん、私、楽しみにしてるわね……約束よ」

 

 

 だから私は、初めて宵宮に嘘をついた。

 

 

 それは、本当に微々たる変化。

 風がほんの少しだけ雲を攫っていくような、そんな小さな変化。

 

 けれど、確かに太陽はそこにあって。

 

 

「絶対……約束やで……」

 

 

 宵宮の小指と私の小指が結びついて、願掛けをして。

 

 

「「指切った」」

 

 

 私の小指は、本当に切れてしまいそうだったけれど、宵宮にかかっていた雲は大きく切れて。

 

 

 

 

 

「感想言わへんのは、絶対に許さへんからな」

 

 

「ええ。分かっているわ」

 

 

 

 

 

 

 去り際に本当の笑みを浮かべて、宵宮は水平線の向こう側に沈んでいく太陽のように、私の部屋から去っていった。

 

 

 

 

 

 

「……宮ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 宵宮を悲しませることは、きっと稲妻城の子供たちまでも悲しませることになる。

 私が吐いた小さな嘘のせいで、宵宮はきっと苦しんでしまうことになる。

 

 だけど、最期に宵宮のあの笑顔を見たかったから、私は自分の我儘を優先してしまった。

 

 

『ほんまか!? なら、今すぐ街の外でやろうや!』

 

 

 

「……ごめん……なさい……っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――おうおう、氷瀑の姫君が随分と辛気臭ぇ顔してんじゃねぇか」

 

 

 

「っ……いっ……と?」

 

 

「おう、この俺様が、病弱なライバル様の為に来てやったぜ」

 

 

 

 辛気臭い顔をしているのはどちらか。

 

 思わず出かけた言葉を咄嗟に飲み込んで、私は瞳からこぼれた涙を拭う事が出来ぬままに新たな客を迎えた。




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