【妹が】猿だと思っていた妹に猿だと呼ばれた件について【魔法使い】 作:かりん2022
古臭い家だ。
偽らざる第一印象はそれだった。
電化製品が一つも見当たらない。
妹は杖を一振り、暖炉に火をつけた。
「まずはお風呂ね。お兄ちゃん、お願い。いくら猿でもそれぐらいはできるでしょ? 私はその間に料理を作るから」
「ここは……私の箱庭よ」
そして、妹は杖を振る。食材達が杖に従って包丁に切られて鍋に飛び込んでいく。
それは気になるが、今は子供達だ。
夏油は子供達をお風呂に入れた。
なんとシャワーがなかったが。なかったが! お湯が張ってあったので、なんとかそれで済ませた。
「いたた……」
「ごめんね、染みるよね。硝子がいたらいいんだけど」
お風呂から上がると、3人揃って薬を飲まされた。
傷が癒えた。何これ怖い。
それから、暖かい食事を食べた。
なんだか妹がお菓子箱から這い出るカエルのチョコをボリボリ食べる衝撃映像があったような気がしたが、とにかく眠かった。見れば妹の目元もクマで真っ黒だ。多分私も。
「ま、明日ね。3人とも、お眠りなさい」
ソファーに横になると毛布がふわりと浮かんで私を覆った。気がつけば、私は眠っていた。
翌日。いい匂いがして目が覚めると、妹が食事の準備をしていた。
食事をする。随分とスッキリした気がする。
「働かざるもの食うべからず! 手伝いなさいよ」
「いいよ、何を手伝おうか」
「美々子も手伝う」「奈々子も手伝う」
それから、私達は庭に出た。
家庭菜園には、ファンシーな小人が小さな家を作って生活していた。可愛い。
妹は家を踏み潰し、小人をぐるぐる回して放り投げた……。
ミミナナはもちろん、私も固まってしまう。
「害虫全部退治したら朝ごはんよ」
「私がしよう。美々子と菜々子は毛布を畳んでくれるかな」
「み、美々子もできる」
「奈々子もできる」
「お兄ちゃん、この子達は猿と違って魔法使いよ。甘やかさないで」
そういう問題ではないのだけど。
そのあと、1時間ほど働いて、朝ごはんを食べて、お茶を用意して、ようやく話となった。
「それで、魔法使いってなんなんだい?」
「私が小さい頃から全寮制の学校にいってたのは知ってるでしょ。魔法使いの学校に行ってたのよ」
「魔法……使いの、学校?」
「そうよ。魔法界にある、魔法使いの学校。魔法使いはね、小さな魔法界に閉じこもって、いつも猿に怯えて暮らしている。猿よりも遥かに素晴らしい力を持っているのに! 猿はね、魔法使いが支配すべきなの。それが自然の摂理ってものよ。来る日も来る日も、魔法使いの痕跡を消して、記憶を消して……誰にも魔女狩りをする権利なんてない。いいえ、むしろ魔法使いが猿を狩る権利があるのよ! だから、私は決めた。魔法使いによる猿の支配を!!」
「……えーと。それで、魔法使いは、何人くらいいるのかな?」
「日本の魔法使い学校は一校で、マホウトコロっていうんだけど、大体一クラス30人くらいの4クラスからしら」
「呪術師よりは多いな……。それでも少ないけど」
「それで、お兄ちゃんは?」
「私は、高校の時から呪術師専門学校に通ってね。一学年一クラス5人はいないな。それくらいで、二校」
「は? 少な。そこまで少ないなら師弟制度でいいじゃない」
「呪術師の仕事は」
「呪殺とか?」
「逆。呪霊という、人には見えない化け物を狩るんだ」
「なんで?」
「呪霊が人を襲うから」
「なんで?」
「呪霊は負の感情から生まれるからだと思う」
「そうじゃないわよ。なんで守るの? 猿がどうなろうがどうだっていいし、そんな人数じゃ守りきれないじゃない」
「そうだよ。だから、いつだって呪術師は人手不足で、すり潰されていく。呪霊は非術師から生まれるんだ。だから、私は猿を皆殺しにしたい」
「お兄ちゃん馬鹿ぁ? 呪術師が一クラス5人はいないって言ったわよね? なんとか無双のゲームかよ。例え一騎当千だとしても殲滅に何年掛かるんだよってレベルじゃない。大体、魔法界ではそんな被害聞いたことないわよ。ちゃんと魔除けのお守りしてないからそんなことになるのじゃない?」
「は?」
それから、私の呪霊を調べて、魔法界で当たり前に流通しているお守りは呪霊を防ぐことがわかった。
「流石猿www 随分と無駄なことしてんのねwww やっぱり猿は魔法使いが支配してあげなきゃダメねwww」
「ッ!! いまだに羊皮紙使っている原始人に言われたくない!」
「なんですって!?」
「電化製品使えないくせに!」
「あんたの野望かなったらどっちみち原始時代に逆戻りじゃない! 大体、マゾよマゾ! 人間を守るぅ? 勝手に死なせとけばいいじゃない、どうせ増えるわよ!」
「うるさいな! とにかく私は猿を皆殺しにするんだ!」
「支配の方がまだ現実味あるわよ!」
「携帯どころか電話も使えないくせに笑えるね!」
わあわあわあわあわあ。
美々子と菜々子は、恐る恐る声を上げた。
「美々子、誰にもいじめられない場所で、静かに暮らしたい」
「奈々子、虐めたくない。虐められたくない。夏油様達がいれば、それでいい」
「美々子、奈々子……」
「ああ、なんっていい子なの! そうね。まずは力が必要ね。何をするにも、力を蓄えないと」
そうして、潜伏して準備をすることを決めた四人なのだった。
応援するのは?
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殺っちゃえ、呪術師!
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魔術師にひれ伏せー!
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数こそ力! 猿!
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平和に生きたいミミナナ