「空が蒼いねぇ。さすが異世界。」
「こんな風景なら、北海道にだってありますよ。」
伊丹が呟くと倉田三等陸曹が答えた。
「ところで、マレニアさんはどうして俺たちについて来ようと思ったの?」
「ん?理由か………もし、もしもの話なんだがこの世界、『特地』といったか。この世界が私がいた世界から何十年、何百年、いや、何千年経った世界かもしれないと思うとどうしても気になってしまった。付いてきた理由はそんなところだ。」
「なるほどね。そういえば、マレニアさんの世界の話を聞いてみたいんだけどいいかな?」
「長くなるが大丈夫か?」
「大丈夫だよ。」
それから私はあの世界、狭間の地の話をする。
移動中の暇つぶしにはちょうどいいだろう。
狭間の地の話をし始めてから数時間が経ち、夕日が出てきた頃に話は終わった。
「黄金樹に祝福された土地、その土地を治めるデミゴッドの一族、それに、褪せ人か。この世界もファンタジーだけどマレニアさんの世界もファンタジーだったか。」
「マレニアさん!質問です!」
「なんだ?」
倉田が興奮気味に質問をする。
「マレニアさんの世界にケモ耳、ケモ耳はいましたか!?」
「伊丹、ケモ耳とはなんだ?」
「普通の人間に獣の耳を生やした人っていえばいいのか?」
「なるほど、そういったものはいなかったな。混種という人間と獣を混ぜ合わせたような見た目のものはいたが…」
「その混種には美少女はいましたか!?」
「いない。」
そう答えると、倉田はショックを受けたのかがっかりしている。伊丹たちはその様子を見て苦笑しているときだった。
「火事?」
距離はあるがこれから向かう先であろう森が燃えていた。
燃えている森の目の前まで来ると一時停車する。
「燃えてるねぇ」
「倉田だったか。燃えていることに注目するのはいいがその双眼鏡というもので森の奥を見てみろ。」
「え?隊長、あれって…」
「あぁドラゴンだな。」
「伊丹、どうする?」
「そうだな。適当なところに隠れて、ドラゴンがいなくなったら森の中に入ろう。おそらくコダ村で聞いた集落をドラゴンが襲ってる可能性がある。生き残りがいれば助ける。以上。」
ドラゴンが飛び立ち、森から離れ、火が消えたのは翌日の朝だった。
伊丹たちは森の中に入り、集落だったと思われる場所に到着したが、焼け焦げた死体や燃えた家の後しか見当たらない。
私も生き残りがいないか捜索しているが見当たらない。
諦めて伊丹のところに戻ると耳の長い少女を救助しているところだった。
どうやら井戸の中に隠れていたようだがかなり衰弱しているようだ。
その後、この少女を連れてコダ村に戻り、集落の現状を伝えると、村を捨てて逃げるということになった。
人の味を覚えたドラゴン、コダ村の村長が言うには炎龍というらしい、はまた人を襲いに来るという。
村人たちの護衛を伊丹たちはするようだ。
どこまで逃げるのかわからないが避難できるまで付いていくという。
「伊丹。」
「どうしたの、マレニアさん。」
「一つだけ言わせてもらうが貴殿は甘すぎる。我々がここまでする必要はないと思うが?」
「それもそうなんだけど、ここで見捨てるのは後味悪いでしょ?それに俺たちは国民に愛される自衛隊だよ。ここで見捨てたら上になんて言われるか。」
「そうか。」
「あの、隊長。」
「どうした倉田?」
私と伊丹の会話が終わったタイミングで倉田が話しかけてきた。
「あそこ、見てもらってもいいですか?」
倉田が指をさした方向を伊丹が双眼鏡で見ると、そこにいたのはフリルが大量に付いたドレス、所謂、
「ゴスロリ少女?」
ゴスロリ少女(仮)が私たちと一緒に乗っているコダ村の男の子と話をすると私たちが乗っている車両に乗り込んできた。
追い出すわけにもいかず、伊丹たちは仕方なくこの少女も連れていくことにした。
(それにしても、この少女、かなりの手練れだな)
私は内心そう思いつつ、少女を無視することにした。
それから数時間が経ったであろう頃だった。
ガアアアアアアアアアアア!!!
突然、何かの咆哮が響き渡る。
「前方にドラゴン!」
「なんでこんな時に!?」
ドラゴン、炎龍は村人たちを襲い始める。
それを見かねた伊丹たちは銃で牽制するが効いていない。
そんなとき、集落の生き残りであるエルフという種族の少女が目を狙えと特地の言葉で教えてくれた。
それを伊丹に伝えた。
目を狙い始めた伊丹たちに苛立ち始めたのか、炎龍はこちらに敵意を向けてきた。
「勝本!パンツァーファウスト!」
伊丹がそう指示すると勝本がパンツァーファウストという武器を取り出した。
「後方の安全確認」
「「「「「とっとと撃て!」」」」」
発射されたのはいいが、炎龍は軽々とそれを避けてしまう。
「くそっ!」
伊丹たちが悪態をつく中、私は、
「伊丹、少し体を動かしてくるが構わないな?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!マレニアさんに何かあったら!?」
「大丈夫だ。あの程度のドラゴンであれば余裕だ。」
今装着している義手を義手刀に付け替えると私は車両から飛び出し、炎龍に向かい駆け出す。
炎龍は私に炎を吐いてくるが、私はそれを避け、足元にまで潜り込む。
「さて、炎龍よ。貴様の腕、一本で勘弁してやろう。」
私は跳躍し、炎龍の腕を義手刀で一閃する。
「存外、柔いものだな。」
私の足が地に着いた瞬間、炎龍の腕も地に落ちた。
炎龍はその痛みで巨大な咆哮を上げると空に飛び立ち逃げていった。
伊丹たちがこちらに近づいてきた。
「マレニアさん、あんた強すぎでしょ。」
「強いとは思うが私を一度殺したものもいる。私より強いものはいくらでもいると思うぞ。」
その後、行き場所がある者たちは次々と目的の場所に向かっていくが、行き場所がない者たちは伊丹たちを頼ってきた。
それに対して伊丹は、
「ま、大丈夫。まかしておきなって。」
笑いながらそう口にする。
これはあとで怒られるだろうな。
そう思いつつ、私たちはアルヌスの丘に帰還する。