機械仕掛けの妖精   作:不可思議可思議

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 なんとか服を調達し、依頼人に報告と報酬の受け取りを終えたグレイは、未だ全裸のマキナのもとに着替えを持って研究所へと戻ってきた。

 

「しっかし、人が連れ込まれるとかって話はどうなってんだ?」

 

「さてねぇ。オレは全く心当たりねぇが、まぁ推測は出来るだろうさ」

 

 ここを使っていた研究者は数百年前には死亡しており、いつからか旅から戻ってきたマキナも長いこと眠っていたらしい。鉄の扉も簡単に開くものではないし、町の住人も基本的に近寄らない。

 

「どーせ、町の領主みたいな偉そうなやつが適当に事件をでっち上げて、ここの土地を欲しがったんだろうさ。案外、魔道士に取り壊しもさせるつもりだったんじゃねぇの?」

 

「……心当たりがありまくるな」

 

 フェアリーテイルには依頼達成のために町や建物を壊すことで有名な魔道士が複数いるし、グレイも扉を破壊している。もし本当にそういう裏事情があったのなら、この依頼が研究者揃いのギルドではなく、問題児揃いのフェアリーテイルに届いたのも不思議ではないだろう。

 

「評議院っつったっけ? そのべらぼうに偉そうな奴らが一枚噛んでるのも気になるけど、まぁそんときゃそん時でいんじゃね?」

 

「お前がいいならそれでいいんだが……。それよりお前、これからどうするんだ?」

 

 マキナは質素なワンピースを四苦八苦しながらなんとか着て、思案する。

 

「ベーつに、大した目標もいまさら無いしなぁ」

 

 爪のない棒のような指で机を叩き、コツコツと鳴らしながら更に深く思考を巡らせる。

 それからさらに数分。累計年齢数百歳故の呑気さなのか、じっくりと考えた上でようやっと結論を出した。

 

「うし、とりあえずフェアリーテイルにでも行ってみるか」

 

「……長々考えてそんだけか?」

 

「ギャハハ。自慢じゃねーが、オレは頭の回転は遅い方なんだ。走ったほうが速いぜ」

 

「マジで自慢にならねーな……」

 

 

 


 

 

 

 日に三日の馬車でマグノリアに帰還、マキナを連れてフェアリーテイルに帰ってきたグレイは、何やら騒がしいギルドの扉を開けた。

 

「メーイビースちゃーん、あーそーぼー」

 

「初代がいるわけねぇだろ」

 

 マキナが声に似合わぬ、わざとらしいくらいに子供らしい台詞を吐き、グレイがツッコミを入れる。

 

 一瞬、騒がしかったギルドが静まり返り、そしてすぐに叫びがあちこちから飛び交う。

 

「グレイが女連れてきたぞ!!!」

「何ぃ!?」

「漢ぉおお!!」

 

 表情を引き攣らせたグレイは獲物を見つけたような様子の男たちに引き摺りこまれていき、マキナは門前で立ちすくんだ。

 

 いや、立ちすくむと表現するにしては、ひどく口角がつり上がっているけれども。

 

「ギャハハッ! いいねぇ! 相も変わらず賑やかそうでなによりだ」

 

 あちこちから飛び交う暴力やら酒瓶やらに怯むことなく、マキナはカウンターの方へと直線に進む。

 途中、全身にワインを瓶ごと浴びながらもたどり着くと、白髪の女性――ミラ・ジェーンに声をかけられる。

 

「あら、あなたも新人さん?」

 

「あー? んー、微妙に違う気もするけど、まぁそんなとこだな」

 

 果たして、新入りと言っていいのか、仮であっても古参というべきなのか。悩ましく思いながら、マキナは赤ワインで染まったワンピースを躊躇いなく脱ぎ去り、背の紋章を見せる。

 

「ちょ!? なんで脱いでるの!?」

 

「ギャハハハハッ! 脱がなきゃ見えねーだろうがよっ! ……あと濡れててキモかった」

 

 近くでツッコむ金髪の巨乳少女――ルーシィに笑いながら返し、マキナは近くの椅子に腰掛けた。

 

「ウチにあなたみたいな人はいなかったと思うんだけど……」

 

「ギャハッ、奇遇だな。オレもここの連中に誰一人と見覚えはねぇさ」

 

 突如現れ、その上全裸になったマキナに男衆の注目が集まる。……が、そんなことマキナは微塵も気に留めずに頬杖をつく。不遜な態度の不審人物に、ミラは眉間に皺を寄せながらどうしたものかと思案し始める。

 

「ギャハハハハハッ! オレはそんな小難しいキャラしてねーよ。新人扱いでかまわねぇさ」

 

 珍獣を嘲笑うようにミラを観察するマキナ。「うーん、それなら……」と納得しかかっているところで、事件は起きた。

 

「あ、オレのパンツが!?」

 

「へっへっへ!!」

 

 マキナを放置して喧嘩に仲間入りしていったグレイは、またも全裸になっていた。

 しかし今回は、パンツを桜髪の青年――ナツ・ドラグニルに奪われたらしい。

 

「お嬢さん、よければパンツを貸してくれないか?」

 

「貸すか!!」

 

 目ざとくルーシィに目をつけたグレイだったが、すげなく断られる。すると今度は、マキナの方を向く。

 

「じゃあマキナ、お前の貸してくれ」

 

「ワイン濡れのワンピースでよければ好きにしろ。返さなくていいぞ」

 

 マキナはグレイの股間部めがけて、赤い塊のようになったワンピースだったものを投げつけた。

 

「俺に女装の趣味はねぇよ!!」

 

「ギャハハッ! 存外癖になるやもしんねーぞっ!」

 

「なるかよ!!」

 

 言いながら、グレイは腰に巻き付けて喧嘩に戻っていく。

 

 

 次第に喧嘩は激化していき、怪我人が続出する中で、魔法が使われ出す。

 魔道士ギルドといえども、建物自体はただの建造物。炎に氷にと飛び交ったら、流石に壊れかねない。誰も止めようとしない中で、マキナはふと頭上を見上げる。

 

「やめんかぁぁあああ! バカたれ共!!!」

 

 そこには、巨大な顔があった。

 

 否。それは巨人。筋骨隆々の老人のような巨人の一括により、喧嘩騒ぎはたちまち鳴りを潜める。

 

「でかーー!?!?」

 

「ギャハハッ。さすがはフェアリーテイルってとこかねっ」

 

 驚愕を超えて絶叫しているルーシィの横で、マキナはやはり笑う。

 

「だっはっはっ! みんなしてビビりやがって! この勝負、俺の勝ピッ」

 

 一人勝ち誇ったナツをあっさりと踏み潰した巨人の視線は、ルーシィとマキナのいる方へと向く。

 

「……む、新入りかな?」

 

「は、はいぃぃ……」

 

 鈍角ながらも鋭い視線に、すっかり怯えた様子で堪えるルーシィ。

 

「ふんぬぅぅうう!!」

 

 しかし、巨人は踏ん張るような雄叫びをあげ、次第にその体は子供ほどまで縮んでいく。

 

「よろしくネッ!」

 

「ちっさ!?」

 

「ギャハハハハハッ! いいねっ! 知らねぇ魔法だ!」

 

 

 

 今日、フェアリーテイルに新たに一人――ルーシィが仲間に加わった。

 

 そしてマキナに関しては、ギルドきっての読書家であるレヴィ・マクガーデンによる捜索の末、マキナ・ギアの名が過去の名簿から、六人目の魔道士として発見され、復帰という形で改めて加入することが決まった。

 

 

 


 

 

 

 マカロフ・ドレアー。……ドレアー?

 

 ってまさか! お前、……えーっと、あいつ。雷のあのー……、そうだユーリ! まさかユーリの孫か!

 ……あ? 孫じゃなくて息子だぁ?

 ギャハハッ! なぁに気にすんなよ! 大して変わらねぇさ。

 

 やめろやめろ! オレを敬うんじゃねぇよ気色わりぃ!

 オレはあいつらの友達でしかねーの。

 メイビスちゃんとかゼレフくんと違って、割とムカつくキャラしてたぜ? うわぁ、よく見りゃ面影あるわー。

 

 んなことより知ってっか? あいつら、ギルド作る前は墓荒らし(トレジャーハンター)してたんだぜ?

 ユーリなんてメイビスちゃんに喧嘩売ってボロ負けしたり、無理くり宝石ぶんどって、バケモンになって暴れまわったりよー。ウケたわー。

 

 ……んー? 待てよ?

 お前がユーリの息子っつーこたぁよ、あいつ結婚しやがったの!? 相手は誰だよ! まさかメイビスちゃん!? あの下まつげ野郎ロリコンだったのか!?

 

 あ、ちげーの? ……リタ?

 

 んだよ、マジで違うのか。そいつは知らねーなー。

 

 いや、オレが覚えてねぇだけかもだが。

 


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