ディストピアゲーに転生したら行政側だった件について   作:我等の優雅なりし様を見るや?

23 / 23
【幕間⦅前編⦆】初陣。死都にて。 

首都の流通の要を担い、大戦中もその賑わいを絶やす事の無かったその港は今や、この世界の何処よりも人の肉が焦げる臭いで充満していた。

 

太陽の無い重化学スモッグに覆われた鈍色の空を業火が焦し、天空を茜色に染め上げる。大地を破り、遥か地下より炎熱地獄が這い出てきたかの様な惨状をこの地に齎した元凶は、余りにも優雅に天上を舞っていた。

 

翼がそこにはあった。数多の羽根を束ね、羽ばたく度に圧倒的な熱風を周囲へと振り撒き地上の人間の喉を焼き焦がす炎の巨鳥。

夜の海面に自らの炎の彩りを浮かべ、この世界に降り立ったもう一つの太陽であるかの様な輝きが港を真昼よりも明るく照らし出せば、港に配備されていた兵士達から焦燥の声が上がる。

 

「クソッ!海軍の奴等は何してやがんだ!?まさか、もう……?」

「馬鹿言うな……!あの大艦隊だぞ!あの数を撃破できるだけの大兵力があるならとっくの昔にレーダーに───」

 

だが、その言葉が最後まで紡がれる事は無い。喉を焼かれ、その全身の水分を余す事なく沸騰させながら、激痛と共にその生涯に幕を下ろした故に。それを齎したのはたった一度の羽ばたきだった。吹き荒れる熱風、そして火の粉というには余りに大きく高熱の巨鳥の炎で形作られた羽毛。

 

荒れ狂う炎によって肉体を編む事で顕現したその巨大な不死鳥は、其処に居るという事実だけで並の人間達を焼き尽くす。

 

重力の軛から解き放たれ、天は我が物であるとばかりに空を覆う一対の炎の翼はアスファルトを焦し、舞い散る炎の羽根は肉を焼き焦がし骨を炭へと変化させていく。

 

その暴虐に抗うかの様に、地上に等間隔に設置されていた銃座に据えられた砲塔が動いた。

 

かつて世界を二つに割った三度目の大戦以前に用いられていた火薬を用いた旧式の対空砲が、青い燐光を帯びた対異能行使者用のミサイルが、光学兵器が、耐熱装備に身を包んだ歩兵の持つ拳銃が、強化外骨格に備え付けられたライフルが。

 

およそこの地において空へと向ける事が可能な全ての兵器の先端に不可視の糸が結び付けられ、その糸の全てが炎の巨鳥へと繋がっているかの様な挙動で一糸乱れぬ動きを見せる。

 

この化け物を止めなくてはならない。この場にいる全ての人間がそう悟っていた。この化け物を殺しうる火力を、打撃を、全ての戦力を叩き込まねば、この地は世界で最も巨大な殺人オーブントースターへとなり果てる事になると。

 

誰が号令を発した訳でもなく、一斉射撃が始まった。無数の色彩の光線が、砲弾が、異能を無効化するミサイルが、炎の翼を突き破り、舞い踊る焔に隠された異能行使者の本体を目掛けて地上より放たれる。

 

轟音、閃光、その全てが如何なる異能行使者であれ殺しうるだけの力を持っていた。

戦時中に開発された異能行使者の齎す超常を打ち消す技術によって生み出されたミサイル。虎の子たるそれを惜しげもなく投入した全方向からの一斉掃射。それは、天空の暴君を殺すに足る攻撃の筈だった。

 

だが、しかし。

 

「嘘だろ……!」

 

炎が踊っていた。嘲笑うかの様に炎に形作られた鳥の嘴が開き、火の粉を散らす。

影法師を幼児が戯れに枝で突こうと何の変化も齎さぬ様に。水面に映る像に石をいくら投げ付けようと無駄であるかの様に。放たれる数多の攻撃は無意味に炎を突き抜けるのみ。

 

絶望が戦場に染み渡る。

兵士達の瞳に闘争心で押さえつけていた恐怖心が浮かび、地上からの攻撃の手が緩みかけたその時。男の声が響いた。

 

「撃ち続けろ!どんなカラクリがあるかは知らんが、異能行使者である以上はこの飽和攻撃が有効打になる筈だ!」

 

天空より降り注ぐ茜色の光で耐熱装備のバイザーの奥にある顔を照らしながら、その光に負けじと閃光を振りまく光学兵器の先端より発される熱線を放つその男は己の同胞へと大音量で言葉を紡ぐ。士気を下げさせぬべく放たれたその言葉には思考停止と現実からの逃避の色が多分に含まれていたが、限界状況の兵士達の兵士達を再び戦闘行為へと回帰させるには充分であった。

 

再びその数を増した周囲の攻撃を見ながら、瞳に恐怖と自己暗示の色を浮かべた男が譫言の様に低い声で繰り返す独り言は狂気の色をも帯びつつあった。だが、その言葉が最後まで紡がれることは終ぞ無かった。

 

「そうだ。異能は無効化できている筈なんだ。撃ち続けてりゃあの化け物もいつか、いつか死──」

「異能は、ね。悪いけど私のは特別製よ。」

「ギャアアアアッ!?あ"づッ!あ、あ"あ"あ"ぁ"!!!」

 

銀鈴を揺らしたかのような可憐な声と共に彼が立っていたその場所を業火が覆い、一瞬で熱によって収縮した筋肉が無理矢理に男を地面へと倒れ込ませる。耐熱装備の許容値を一瞬で上回った炎が喉を焦がし、言葉にならぬ悲鳴と共に肉の焦げる臭いが男は死の間際、己の死が決して孤独では無かった事を悟るだろう。

 

数百メートルに渡って銃座が配置され、多くの兵士が屯していたその港を今支配しているのは業火だけであった。

大地を、空気を、その場にある全てを港の全てを覆い尽くすかの様に肥大化した翼が一瞬にして覆い尽くし、件の男を含む全ての命を焼き尽くしたのだった。

 

炎の舌先が舐め回し、無数の黒焦げた人だった物が散らばるその地獄を1秒にも満たぬ時間で作り上げた、今やその翼の幅を数百メートルの規模へと成長させた巨鳥の炎で編まれた肉体が解け、そのウチに隠していた術者を曝け出す。

 

「バカスカ撃ってくれちゃって……!痛覚無効のナノマシンは打って無いから普通に痛いっての!」

 

巨鳥の身体が消え去り、残された翼を背中に背負うは炎よりも紅き髪を熱波に揺らす少女。

明らかに戦場に似つかわしく無いその容貌に身の丈。だが、全身に空いた風穴を補う様に炎が蠢き、瞬く間に無傷の状態へと変貌していくその姿は人外以外の何者でも無かった。

 

「まぁそのお陰で蘇生繰り返して火力上がったから良いか……。全く、こんなにうら若き乙女の服をよってたかって剥ぐ真似してこの国にはロリコンしか居ないのかしら。」

 

人を燃料に炎が踊るダンスホールへと変貌した港へと降り立った少女──赫羽焔が、己の身へと降り注いだ数多の砲弾でボロボロになったかつてスーツだった布の欠片を両腕で自らの身体に押し付けながら海へとナノマシンによって視力を強化された目を向ける。

 

港より数キロ。そこにはもう一つの戦場が広がっていた。

 

 

大戦において中立を宣言していたとある国家。運良く協商連合国陣営の消滅(この場合は正しく文字通りの意味で)に巻き込まれず、国家元首の血の滲むような努力によって大戦を乗り切ったこの国家に対し、大使館を通じて日本が最後通牒を突きつけたのは二時間前の事であった。最後通牒は単純明快。衛星国になる(奴隷として搾取される)か、国ごと消えるか。

 

不幸な事として。いや、覇権国家たる日本が今まで自身の権益領域へとこの国家を組み込む事を留保していた幸運の揺り戻しでもあるのかもしれないが。

それはともかくこの国において不幸だった事は彼等がなまじ兵力を持っていた事だったと言えよう。

 

大戦終結後に大量に市場に出回った不要となった兵器の数々を安値で手に入れ、神聖ライヒ=ユーロ同盟より買い付けた異能行使者対策の兵器の数々。高額に過ぎる最新兵器だったが、金に糸目は付けなかった。そして戦後に神聖ライヒ=ユーロ同盟と交わした密約。其れ等は彼等に「もしかしたら」を想像させるに充分であった。

 

もしかしたら。日本の侵攻を跳ね除けるとまでは行かずとも、拮抗状態を数日間は続けられるのではなかろうか。そうすれば、そうすれば────。

 

大総統と戦後に交わした密約。それは、万が一日本がこの国に侵攻を開始した場合は神聖ライヒ=ユーロ同盟の飛び地として統治を受け入れるというものだ。売国と罵られる事は百も承知。だが国としての主権を、歴史を、国家としての誇りを失うとしても日本の統治を受け入れるよりはマシだろう。

 

アジア平和友好条約機構。平和だの友好だのと宣っておきながら、実際のところは日本の大規模な搾取農場に過ぎない。衛星国の国民の生活に欠かせぬ民需工場は必要最低限の更に下の優先度でしか建設されず、国土の殆どはクローン、兵器、日本の3等国民以上の市民が利用する物品の製造プラントで埋め尽くされ、反対の声を上げよう物なら常駐している『同盟国の治安を守る』兵士達によって暗がりへと誘われる末路があるだけだ。

 

それに引き換え神聖ライヒ=ユーロ同盟は同盟とは言ってはいるものの実際は一つの歴とした巨大国家だ。国としての独立は保てぬとしても、日本に永遠に財産と人間を差し出さねばならぬ衛星国ではなく、国の一部として国民には最低限の権利が保障される。

 

「残念ながら我が国において総統とは独裁者では無いんだ。議会を纏め、そして君達の──否、私の庇護すべき神聖ライヒ=ユーロ同盟の新たなる大地へと私の兵を送り込むのに1日かかる。1日だけ、持ち堪えて欲しい。」

 

ならば、ならば。たったの1日耐えれば日本の攻撃は止まる。海洋には先の戦争で一切の損耗無く戦後を迎えた戦艦に、空中には無数のドローンを内包する空中母艦。1日ならば、あの日本相手とて持ち堪えてみせよう。

 

その、筈だった。

 

氷の華が咲き乱れ、最早本来の機能を果たす事が叶わなくなった兵器達。戦場にて収集したデータを元に、その戦場に最も適したドローンを生産し続ける『空飛ぶ工場』たる空中母艦の凍りつき、エネルギーの供給を果たす事がなくなった中枢動力炉。

 

其れ等の美しくも圧倒的な惨状とは裏腹に、船内の兵士達は冷静な面持ちだった。壁に立ち並ぶコンソールに手を掛け、船同士の連絡を密とすべく受話器に手を掛けながら何事かをメモする操縦士達。使命感に満ちた瞳に、適度な緊張に引き締められたその顔は正しく歴戦の兵士の貫禄であった。

 

その全てが、一切の動きを見せていない事以外は。船内は静寂そのものであった。氷が時たま軋む音以外は何の音も響かぬ氷の集団墓地。何も感じる事なく、何も気づく事なく、己の職務に殉ずる覚悟と共に永遠に凍りついた彼等は幸運だったのだろう。

 

凍りついた戦艦。そして海中から聳え立つ巨大な氷柱に貫かれ、この全身を凍て付かせた巨大な空中母艦達。

それらが乱立する海と空の船の墓場を彩る無数の氷の結晶はさながら献花の如く。その巨大な氷の墓地より港へと伸びる氷の道を靴で踏み締める音と共に、人影が一つ港へと降り立った。

 

数キロ先の海域から漂う冷気が港へと吹き込み、熱と冷たさの狭間で吹き荒ぶ蒸気にその白銀の髪を躍らせながら、一人で海を冷たき死の支配する領域へと変貌させた少女は息も絶え絶えに焔へと敬礼を向ける。

 

「ハァ……ッ……!ハーッ、ハーッ……!ひ、氷峰裁歌……合流します……!」

「……ねぇ、まさか走って来たの?あの海域から?此処まで?」

「い、移動用のドローンが壊れてしまって……!あ、焔さん、お召し物が……私ので良ければ此方をどうぞ!」

 

雪の妖精を思わせる銀髪を上気した頬に貼り付けたその端正な顔の眼下に隈を浮かばせ、疲労の余りに産まれたての子鹿のように脚を震わせる氷峰から上着を受け取りながら、微かに引き攣った笑みを浮かべる焔。

 

「別に合流じゃなくて通信だけ送ってくれば良かったのに……。サイバネティクスは仕込んで無いんでしょう?体力はなるべく温存しておきなさい。」

「も、申し訳ありません……考えつきませんでした……!」

「あんたね、そんなにペコペコしないのよ。あんたは今日から公務員なんだから。社会を管理する側としてしゃんとしなさい!」

 

自身の身長を二回りほど上回る氷峰の上着の袖をダボつかせた腕を組み呆れ顔を浮かべる焔は、自身へとペコペコと頭を下げる少女の頭をぺしりと余った袖で叩く。

 

「わ、分かりました。精一杯国家に尽くします!」

「力は適度に……いやまぁ、それでも良いか。ちょっとデバイス借りるけどアンタはそこで休んでなさい。私は局長と通信してるから。」

「はい!休みます!」

 

びしり、と肩肘張った敬礼をしながら波止場に腰を下ろし、体操座りを始めた新人を生温かい目で見やりながら氷峰の上着のポケットに入れられていた腕時計型デバイスに指を走らせ、目的の人物へとコールする。

 

数回鳴り響く呼び出し音の後に、通話開始を示すアイコンが緑色へと変化し、あどけない少女の声がデバイスより響く。

 

「やぁやぁ。進捗はどうかな?」

「はい、天威理事。私が沿岸部の陸上戦力の殲滅、氷峰調整官が海兵力及び航空戦力の殲滅を終了させました。首都からの陸路以外での離脱は困難でしょう。空間のジャミングも正常に作動しています。空間跳躍も不可能かと。」

「やだねぇ、親娘だろう?もっとフランクに行こうじゃないか、愛しの我が娘よ!ママとは呼んでくれないのかね?」

 

あどけない幼子の声ながら嗜虐心の滲む、恐らくは画面の先でニヤニヤといつもの様な邪悪な笑みを浮かべている己の母親──天威喪音の声に微かに溜息を吐きながら焔は言葉を続ける。

 

「首都内部の制圧は順調かしら……ママ。」

「よくぞ聞いてくれた、我が愛娘!まぁ期待はしていなかったがつまらんつまらん。中立国の立場に胡座をかいていた軍は脆弱に過ぎる。まぁ何はともあれ、“彼”が紳士的に私をエスコートしてくれたおかげで首相官邸の制圧は完了した。そちらの新人の調子はどうかな?使えるかね?」

 

“彼”。すなわち、先日のレジスタンス強襲事件において唯一生存した特異個体たるクローンの無表情の顔を思い浮かべながら、自身の背後にて体操座りで海に聳える無数の氷の墓標を眺める氷峰を目の端で見やる。

 

「戦略級の異能なのは間違い無いんだけれど、どうにも緊張が抜けて無いみたいよ。私に必要以上に怯えてるせいで柔軟さに欠けるわね。」

「ハハハハ!その異能の強さだけが彼女の心の支えだったのを君が蹂躙し尽くしたからだろう。家も、財も、地位も奪われた彼女だが、次は強さへの自信まで奪われた訳だからねぇ。」

「必要な事だったと思ってるわ。張り詰めた糸は一度切ってあげるのも一つの解決策だもの。」

 

自身の事が話題にされていると雰囲気から悟ったのか、びくりと肩を震わせながら怯えた表情を向ける彼女へと自身の腕には長過ぎる袖をシッシッ!と犬猫でも追い払う様な素振りで振りながら毅然とした態度で焔は答える。

 

「おやおや、まだ設立が決まった訳では無いのにもう上司気分かな?」

「設立しない、なんて選択肢は無いんじゃ無かったの?法務省異能関連犯罪対策委員会第一理事様?」

「そうだとも。これから先もこの長過ぎる肩書きを一々名乗らねばならないなんて耐え難いからねぇ。……!おや。なんと!ハハハ!小さな鍵(レメゲトン)を使ったのか!?切るぞ、我が愛娘。やはり”彼”は──!」

 

デバイスの奥で響いた爆音音と共に、明確な喜色を滲ませた天威の声を最後に打ち切られた通信画面を見ながら、何度目かの大きな溜息を吐く焔。

 

「……ま、頑張りなさいよ、魔人候補さん。」

 

法務省異能調整局。その創設前夜の一時は数多の死と共に過ぎていく。

 

 

 

時はわずかに遡る。

 

「素晴らしいな、う-2685号!その義肢は今回が初仕様だろう?まるで生来の部位のように動かすじゃないか!」

「……いえ。」

 

唐突な話なのだが、銃と刀剣はどちらが強いと思うだろうか。

これが至近距離での話ならばこの問いは多くの議論を呼ぶだろう。銃弾を銃口の向きから軌道を予測し、至近距離からの刀剣の一振りで決着だ。いやいや、連射の効く銃ならばやはり弾丸を避けるのは至難の業。近接武器使いなぞ蜂の巣、遠距離こそ文明の証なのだ、と。

 

だが俺のこの状況を議題にするならば、世の人々は満場一致で刀剣側の敗北を予測すると俺は確信している。

 

【問い】

20m程の部屋に強化外骨格フル装備の男達25名と閉じ込められました。遮蔽物はなく、相手は連射可能で一撃でも貰えば死が不可避の銃を保持しており、俺はナイフ一本が与えられているものとします。俺は生き残り、尚且つこの全員を撃破できるでしょうか?

 

無理です。満場一致。論争を交わしていた者達は手と手を取り合い、自分達の意見が一致した事に涙を流し、人類とは分かり合えるのだと実感する事間違いなしであろうこの問いだが、残念ながら不正解と俺は声を大にして言わせてもらおう。

 

『バ、ケモノめ……!』

 

数多の銃弾を受け止め、逸らした事でグニャグニャに曲がったナイフが虚空へと投擲され、何もない空間から鮮血が迸る。蜃気楼のようにその空間から滲み出すように現れた髭面の男は恨み言をこぼしながら、喉元へと鋭利な金属を捩じ込まれた喉を押さえながら地面へと崩れ落ちる。

 

彼の名前は……あー、髭男爵だ。勝手に俺が命名したわけだが、そのフランクな渾名に似合わぬ強さだったよマジで。光を曲げる異能で自身と部下の数を、場所を撹乱させ、俺を何度もひき肉にしたこいつだったが、ようやく231度目のループで全員の位置とフォーメーションの組み合わせを覚えることに成功した俺の前では無力だったようだ。

 

髭男爵……いや、公爵と呼ぶことにしよう。強かったし。髭男爵改め髭公爵が守っていたのはこの国の中枢たる施設、即ち大統領官邸だ。

俺達の任務はこの国の首都機能を麻痺させること!責任重大だぁ……さぞかし大部隊が派遣されとるんやろなぁ……(現実逃避)

 

「いやぁ、お見事お見事。今後もその調子で頼むよ。」

 

後ろにはニコニコと笑いながらコチラをワインレッドの目で見つめてくる幼女が一人。右には敵の死体。左にも敵の死体。前には髭公爵。あれ、おかしいな。友軍は?

 

……派遣兵力は二人です。はい。原作ラスボスと二人っきり!敵陣中枢ツアー!ポロリ(俺の首)もあるよ!舐めとんのか。しかも俺の使用が許可されたのナイフだけ。

縛りゲーは他所でやってくれないか!マジで!でももうナイフ壊れちゃったし、いいよな!?他の武器使ってさ!ね!?

 

「申し訳ありません、理事官殿。支給されたナイフが破損してしまいました……以後は支給されたこの銃を使用してもよろしいですか?」

「ダメだが。ほら、ナイフならこんなにあるぞ!好きなのを持って逝きたまえ。」

「……了解しました。」

 

満面の笑みで懐から数本のナイフを取り出す幼女。それどこにしまってたんだ?胸ポケット?足引っ掛けたら転んで刺さって死なねぇかなマジで……。

ラスボス討伐クエストを受注できる場所ないの?ない?原作開始まで待て?そっかぁ……。

 

じゃあなんで俺にこの銃を持たせたんだ?目線を腰に向ければ、黒光するホルスターに収められた大型の銃。赤黒い光のラインが所々に刻まれたこの禍々しい銃なのだが、すごく邪魔だし重い。お前原作では自分と取り巻きにバフかけて殴ってくる脳筋バッファーだっただろ。デバフだけ俺にかけてくんのやめてくんねぇかな。

 

「そんなに”ソレ”が使いたいのかい?止めはしないけどすっごく苦しんだ後に死ぬと思うね。」

 

……転職してぇ〜!




まだ、何も始まってはいない。

不死鳥の責任も
氷姫の執着も
魔神の恋慕も

そして、魔人の死の巡礼も


AI君に描いて貰いました。
【不死鳥】

【挿絵表示】


【氷姫】

【挿絵表示】


【アマイモン】

【挿絵表示】


【社畜】

【挿絵表示】

今後のこの小説について

  • そのまま続く
  • リメイク

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。