幻影とマチカネフクキタル   作:寒茜

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序 マチカネフクキタルと運命の人
幻影の夢


今日はいつにも増して姉の帰りが遅い。

もうとっくに夜になったというのに

待っても誰一人と帰らないのでいよいよ寂しい思いを抑えながら暇を持て余していた。

 

それから20分と経ったところで、

母から電話がかかってきた。

 

電話を取った。

 

「ーーーーーーーーーーー!!」

 

多分、姉の訃報だったと思う

 

途中からはよく聞き取れなかった、と言うよりも頭が聞こうとしていなかった。

 

何かの冗談だろうか。

聞いた途端に体の力が抜けて、床にうつ伏せになって倒れ込んでしまった。

今にも壊れてしまいそうなくらい早く大きい心臓の音がとても鮮明に聞こえてくる。

意識せずともひとりでに涙が頬を伝い落ちる

視界がチカチカと歪んで、もはや目を開けることさえも辛い。

 

私はそのままゆっくりとまぶたをおろして

冷えた自室の床に死んだように眠る

これが夢であることを信じてーーーー

 

 

 

 

 

「フギャー!!!」

 

と朝一番、

目覚まし時計の鳴らす音よりけたたましい奇声を上げてマチカネフクキタルは起きた。

ついでに同室のおマチさんも起きた。

ベッドには寝汗のあとが付いており、背中は少しひんやりしていた。

なんという悪夢だろうか

いや、厳密に言えば正夢なのか。

 

「どぉしたんですかぁ…フクちゃん先輩ぃ…ふぁ〜ぁ…」

 

「なんでもないですよぉー」

 

と、おマチさんと同じような、へにゃっとした声で返事をして、フクキタルはもう一度布団に潜り、夢の続きを見ないように目だけを閉じて寝っ転がることにした。

が、背中が冷たくてすぐ起きた。

 

クリーニングが大変そうだ。

 

◇ ◇ ◇

 

フクキタルは食堂で何時も通りの朝食を食べながら、今日見た悪夢について考えていた。

 

なにかと占いと夢には強い結びつきがある。

 

吉夢、だとか、予知夢だとか。

あるいは何かをシラオキ様は伝えようとしているのか。

少なくともこの夢に関して、私はそうは思えなかった。

 

何かを暗示するような物ではなく、明確な、少なくとも出来ることなら思い出したくなかった、過去の記憶だから。

 

 

何かを考えながら食事をすると、箸のスピードが無意識に速くなってしまう。

 

結局考えは纏まらず、私は悶々としたまま授業に向かった。そのせいで今日の授業の内容は一ミリも頭に入らなかった。

 

寮に戻ったら夕食を食べて、おマチさんに「おやすみなさい〜」と言ってすぐ布団に潜り込む。

朝早く起きてしまったせいで若干睡眠不足気味だったからだ。

おマチさんもフクキタルの声で驚いて二度寝も出来ないくらいに覚醒してまい、こちらも睡眠不足だったので「おやすみなさいぃー」と返して、すぐ寝た。

 

早い時間からいびきが響き始めていたせいで部屋の前を通った自室に向かう途中のウマ娘から苦情が来たのはまた別の話。

 

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