のんびりと、香りだけが残った夏の朝日が屯する通学路に、一筋の影が立っている。
「スズカさ〜ん!」
マチカネフクキタルだ。
◇ ◇ ◇
「はぁ…どうしましょう……。」
「珍し…くもないわね、何をそんなに落ち込んでるの?」
普段はうざったいほどに元気なのに、偶にありえないほどにネガティブになる。
そんな時は大抵…
「もしかして…また占い?」
「そうですとも…。あぁ〜!もうおしまいです!」
頭を抱え込んで、うんうんと唸るフクキタル。
「…取り敢えず具体的に話してもらえるかしら。」
「あぁ、すみません。私としたことが…。ほら、明後日、選抜レースがあるじゃないですか。」
「ああ、確か、あったような気がする…。」
「そしてまあ、やっぱりこんな私も勝ちたいなと言う訳でして、今朝張り切って占ってみたんですよ。」
「大凶」
「みなまで言わないで下さいな〜…スズカさんは冷たいです!」
「別に…占いの吉凶ぐらいそんな大した事かしら…。」
「大したことですよ!あぁ…最早迷える私は”シラオキ様”に念じるしか無いのかもしれません…うぅ…。」
フクキタルは占いに対する思い込みが強すぎるというか、古今東西のスピリチュアルを絶対的に信用しているのだ。
そして、何故かは分からないけど、その中でも特に”シラオキ様”という聞いたこともないような奇天烈な神様を崇拝している。
…神社の巫女なのに神道じゃなくて良いのか、と言うのは禁句らしい。
「あれじゃない、多分、ラッキーアイテムとか、ラッキーパーソンとかあるでしょう。」
「本当ですか!?」
「適当よ。」
そのおかげで、感情や意思を占いの結果にコントロールされてしまったり。何かと情緒が不安定で、騒がしいウマ娘になる。
というかフクキタル自体が元より不安定なところもあるけれども。だから、ちょっとだけ彼女は面倒くさい。
「そんなぁ〜…。」
けど、どこか憎めなくて、愛くるしいような…それが彼女の魅力の一つ、なのかもしれない。
「…まあ、フクキタル。取り敢えず、少しでも結果が良くなるように今は練習をしたらどうかしら。付き合ってあげるから。」
「ありがとうございます…!」
「それじゃあ、ここから学園まで競争しましょうか!もちろん全力で。」
「それはスズカさんがやりたいだけじゃないですかぁ!!」
どこまでも高い空が追い風を連れてきてくれる。振り向くと、少し後ろでは騒ぎながらもフクキタルが満更でもなく楽しそうに走っていた。
河川敷に生い茂る草に日が当たって、濃い緑色を空へと送る。
こんな美しい日常というものがが続くのであればどれだけ良いのだろうか。
透き通る空色の隙間、先頭にぽつんと、入道雲を見つけた。