ウマ娘三部作Secondシーズン 鮮血の女王 ~メディアの覚醒~【完結】 作:DX鶏がらスープ
※注意
今回かなりショッキングなシーンが出ます
具体的に言うと、血とか骨とかめっちゃ出ます
別にウマ娘とかキャラクターが出血するわけではないですが、過去一グロいので、そのあたりを覚悟してからお読みください
...透き通るような青い空が、どこまでも、どこまでも広がっている
そんな日だった
ワアアアァァァァアアァァッッ!!
レースの結果が読み上げられると共に、観客達の歓声が爆発する
弾けるような喜びと、あらんかぎりの祝福に満ち溢れた声が、遠い遠い空の彼方へと吸い込まれていく
だが、それでも彼らは叫ぶのを止めない
なぜなら彼らは伝えたかったから
今ここにいる者達だけにではない
世界中にこの喜びを、祝福をこそ伝えたかったから
だからこそ彼らは叫ぶのだ
届け!と
どこからか、いろとりどりの紙吹雪が舞い始める
この幸せと祝福よ!世界へと届け!!と
人々の歓喜を乗せて、いくつものアドバルーンが遠い空へと解き放たれる
互いに抱き合い、歓喜を、感嘆の涙を分かち合いながら、彼らは叫び続ける
ともすれば、それは祈りでもあったのかもしれない
この至上の幸福を、皆で分け合いたい
そんな純粋で尊い祈り
だからこそ、耳に届くその歓声はどこか暖かい。
大地を震わせるそれは、しかしそれでいて母親の子守唄のように穏やかで優しい
でもそれは、今のアタシにとってはある意味当然のことだ
ワアアアァァァァアアァァッッ!!
晴れ渡る空を見上げる
雲一つない空に響き渡る歓声に耳を傾けながら、アタシは目をつぶる
なぜならそう...それはこの祝福の声が、すべてアタシに向けられたものだから
この歓声全てが、アタシのためのものだから
そしてその時、レース場に響き渡る実況の声が、再度レースの結果を読み上げる
それはアタシの掴んだもの
歩き続け、その果てにたどり着いた到達点
だからこそ、それは高らかに響く
「ダイワスカーレット!ダイワスカーレット選手!!
激戦を制し!見事第■代URAファイナルズ女王の座を勝ち取ったのは、ダイワスカーレット選手です!!」
ワアアアァァァァアアァァッッ!!
再び歓声があたりを包む
それは走り抜けた3年間、それが最高の結末を迎えたことを告げる福音のようだったから...
すうっ、とアタシは大きく息を吸い込み、そして吐き出す
心地よい風が、肌を撫でる
そんな中、改めてアタシは快哉を叫ぶ
「やっ...た...!」
アタシはやったんだ!と
イチバンのウマ娘になれたんだ!!と
乱れた呼吸で、それでもそれを今この場所に、世界へと刻み付けるようにアタシは叫ぶ
自身の内から滲み出る歓喜を噛み締めるように、高くどこまでも広がる空の彼方を見つめる
と
「スカーレット」
ターフに仰向けに寝転び、荒い息を整えていたアタシを呼ぶ声に、身を起こす
するとそこにはアイツが...こんなアタシのことを信じ、3年間一緒に走ってくれた掛け替えのないトレーナーがいる
「おめでとう、スカーレット」
そして、そう言ってアタシを立ち上がらせてくれたトレーナーの指差す先には、大好きなママやパパ、トレセン学園の大切な仲間達がいて...
「おめでとう!」
「おめでとう!スカーレット!!」
「よく頑張ったね!!」
そんなみんなの暖かな言葉を前にして、アタシは胸思わず涙ぐんでしまう
だって...嬉しかったから
イチバンのウマ娘になる、そう決めて走り抜けた日々が脳裏を過る
それは決して楽な道のりではなかった
それは決して簡単な道のりでもなかった
辛くて...苦しくて...何度も泣いたし何度もトレーナーと喧嘩した
時には全部が嫌になることもあったし、逃げ出してしまいたくなることだって何度もあった
それでも...
(それでも...アタシは走り抜いたんだ!!)
そして、その先に夢を叶えることが出来たんだ!
そんな実感が、みんなの言葉を聞いているとゆっくりと胸の中に下りてくる
そして、
「さぁ、スカーレット」
これは、君のものだ
そう言ってトレーナーがアタシに差し出してきたのはURAファイナルズのトロフィー...それは、今日までアタシが頑張ってきたことの何よりの証
だからアタシは
「...ありがとう!トレーナー!!」
万感の思いでそれへと手を伸ばす
「アタシと一緒に走ってくれて、本当にありがとう!トレーナー!!」
そして...あぁ、だからこそ
「.........あのね、トレーナー...」
...もう、良いよね?
ずっと前から決めていたことを、遂に実行する覚悟を決める
(...)
心臓の鼓動がうるさい
無性に喉が渇いてくるし、直接見たわけではないけど、顔だって湯だったトマトのように真っ赤になってるはずだ
「スカーレット?」
そして、そんなアタシを見てトレーナーが不思議そうな顔をしている
どうかしたのだろうかと、そんな純粋に心配そうな目で見つめられると、ほんの少し...ほんの少しだけ胸の中で弱音が出てくる
やっぱりやめよう
別に今じゃなくても良いじゃないか
機会なんていくらでもあるよ
でも、それでも
(それはダメ!!)
心の中の弱い自分を押さえつけ、アタシは勇気を振り絞る
だって、もしここで言えなかったら、きっとアタシはもう二度とこんなことトレーナーに言えない
今以上に素晴らしいタイミングなんて、これから先の人生で絶対に訪れない
だから!!
(...!!)
反らしかけた目で、しっかりとアタシはトレーナーの目を見つめる
もしもトレーナーが...なんて考えを必死に押し殺して、しゃんと背筋を正す
そしてアタシは一世一代の勝負に挑む!!
そうだ!アタシは...アタシは!!
「アタシ、アンタに...――!!」
ずっと、伝えたいと思ってたことが...――!!
べちゃ
「.........べちゃ?」
突然響いたその音に首をかしげる
決定的な一言を言いかけて...それでも近くで聞こえたその音と、手の平から伝わる妙な感触に、思わずその言葉を止めて手元を見る
「...?」
そこにあるのはトロフィーのはずだった
それは、URAファイナルズの優勝トロフィー
アタシがイチバンのウマ娘になれたという証
だからこそ、アタシはそれを見て絶句する
何故ならそれは、トロフィーなどではなかったから
白くて、丸くて...想像よりもずいぶんと軽い
アタシの手の中にある、底が見えない空虚な二つの穴が空いたそれは間違いなく
人の...頭蓋骨で...
「い、いやぁぁぁっっ!?」
反射的に手を離したそれが、ターフの上をカラカラと転がり、何かにぶつかって止まる
そうナニカ
障害物などないはずのターフのど真ん中で、アタシの手を離れた頭蓋骨は、そこにあったナニカにぶつかってようやく止まる
だからアタシは気付く
何かが...何かがおかしい!!
そう思い咄嗟にあたりを見回したアタシの眼前に広がっていたのは...
「な、何よ...これ...」
それは、端的に言って地獄だった
折り重なる白骨の山に、足元を満たす赤黒い血の海
淀んだ空気の中には不快な臭気が漂い、青いはずの空はしかし、どこまでも不気味に赤く染まっている
屍山血河とは言ったもので、そこにあるのは濃密な死の気配のみ
まさしくそれは、呪われた光景と言う他ない、そんな絶望的な光景
だけど
「どうして...」
アタシは一歩後ずさる
それと共に、ぴちゃりと音を立てて足元の血が跳ねる
しかし
「なんで...なんでなの...?」
そんな些細なことを、今のアタシは気にしていられない
何故なら、すでにアタシの全身は血まみれだから
血だらけの頭蓋骨、それを持っていた両手だけでなく、いつの間にかアタシの身体中に、それがべっとりとこびりついていたから
そして何より...
「どうして...!」
アタシは叫ぶ
地獄のような光景のど真ん中で、それでもアタシは叫ぶ
ギョロリと、積み上げられた骸骨達の空洞のような目が、怨めしげに向けられたような気がする
だけど、それよりも恐ろしい事実に、アタシは戦慄する
だって、おかしいじゃない!!
こんなに...こんなにもおぞましい景色なのに!こんなにも酷い景色なのに!!
なのに...なのに!!
耐えきれず、叫んだのは
「どうしてアタシは...!!」
この景色を、知っているの!?
『簡単だよ。見たことがあるからだよ』
「!?」
気が付くと、そこには■■ちゃんがいた
かつての親友...そして、最終的には道を違えた彼女は、アタシがトレセン学園に入る直前、親の都合で遠くに引っ越してしまい、以来数年連絡を取っていない
だけど、忘れるはずがない
その姿は最後に会ったあの日のものと全く同じだ
だからこそ
『...ねぇ、本当は気付いているんでしょ?』
アタシは彼女から目が離せなくて...
『いつ、どこでこの光景を見たのか...あなたは本当は分かってるはずだよ?』
聞きたくない
そう思っても、その言葉はするりと耳から入り込んできて...
『それでも知らないフリをするんだね、スカーレットちゃん...あなたって子は本当に...』
だからアタシは気付いてしまう
いや、気付いていないフリができなくなってしまう
...あぁそうだ
アタシはこの光景を知っている
何度も...何度もアタシは目の前に広がるこの地獄を見たことがある
だってそれは...それは...
『...スカーレットちゃんは、いつも自分のことばっかりだよね』
これが夢かどうか?
...タイトル通りとだけ言っておきましょう
それから、今回の更新でダスカの精神をどん底まで追い込みます。その為、更新が終わるまでは精神的にキツイシーンが大量に出てきます。
物語の構成上必要なことであり、無駄に痛め付けるつもりなど一切ないのですが、それでも小説情報にも書いたとおりの暗い展開になることだけは、覚悟しておいてください。