ウマ娘三部作Secondシーズン 鮮血の女王 ~メディアの覚醒~【完結】   作:DX鶏がらスープ

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長く作者の話を読んでくださってる方ならご存知だと思うんですが、作者は何話かキリの良いところでまとめて話を投稿するので、今書いてる前書きって実は投稿した日と書いた日がズレてるんですよね

ですから、今書いてるタイミングでの最新ニュースはシャカール実装のニュースなわけで...

あれ?シャカールさん
まだ固有の動画が出てないから結論は出せませんが、なんかちょっとイメージ違くありません?
もうちょっとこう、姉貴みたいな感じの固有かなって思ってました。

→はい、シャカールの固有ちゃんと見ました
やっぱりサイゲは神様なんだなって(白目)




少女が見たもの

 

 

スカーレットちゃんへ

 

 

 

これを読んでるってことは、もう起きたってことだよね。

まずは、先に帰っちゃってごめんなさい。

あの後、スカーレットちゃんは泣き疲れて寝ちゃったんだ。だから、ブルボンさんと相談して、そのまま寝かせてあげようってことになって、ライス達は先に帰りました。

本当はライス達も、スカーレットちゃんが起きるまで側にいてあげたかったんだけど、寮の門限になりそうだったから、保健室の先生に任せることになりました。

仕方なかったとは言え、最後まで一緒にいられなくてごめんなさい。

 

それで、そのことを伝えたくてこの手紙を書いたんだけど...ねぇ、スカーレットちゃん。もし...もし良かったらなんだけど、ライスの最後の走りを見てくれないかな?

 

...うん、これが無茶なお願いだってことは分かってるよ。

確かにライスとスカーレットちゃんはつい数日前に会ったばかりだし、スカーレットちゃんのことを本当に理解できてるだなんて言えない。

だからこそ、このお願いをスカーレットちゃんが無視しても、別にライスは怒ったりしない。元から無茶なお願いだからね

 

でもね、そんな一歩距離を置いた関係性だからこそ、ライスはスカーレットちゃんのことを客観的に見ることができる。そしてだからこそ、スカーレットちゃんが何に悩んでいるのかも、それが正確でなくても近いところまで分かるような気がするんだ。

 

その上で、もう一回言うね。

スカーレットちゃん、もし良かったらライスの最後のレース、宝塚記念を見にきてくれないかな?

多分だけど、ライスの推測が正しいなら、きっとライスの走りはスカーレットちゃんの役に立つ。スカーレットちゃんがもう一度立ち直るために必要だと思うの。だから、もし少しでもライスの話を信じてくれたなら...ライスのお願いを聞いてくれると嬉しいな

 

 

 

ライスシャワー

 

 

..............

 

 

 

.........

 

 

 

...

 

 

 

走る走る走る

 

 

廊下は走ってはいけません

それが普通の学校の校則だそうだけど、ウマ娘という走ることが存在意義そのものである種族の学校であるトレセン学園に、それは当てはまらない

だからこそ、アタシも遠慮なく全力で廊下を駆け抜ける

 

 

 

走る走る走る

 

 

 

休日の昼下がり

普段はそこかしこに人がいる廊下には、今はほとんど人がいない

窓から見える青空の下、通りすぎた空き教室の中では、誰も座っていない椅子と机が、静かに午後の日差しの影の中に沈んでいて...

 

 

 

「あ、スカーレットちゃん!元気になったん...――

 

「ごめん!今急いでるの!!」

 

――...え、ちょっと!」

 

 

 

...何か学園に用事でもあったのだろうか?

廊下の角でばったり出くわした友人はしかし、アタシを見るなり安心したような顔で近付いてくる。だけど、そんな彼女の言葉にまともに取り合わず、アタシはトレセンの廊下を疾走する

 

だって見てしまったから

 

ふと開いてしまったスマホ

そこに映っていたそれは、あまりにも残酷なものだったから

 

いまだに脳裏に焼き付いているそれが、とても本当のことだと信じられなかったからで...

 

「...っ!」

 

アタシは走る

ウマ娘にとって生きる意味そのものとも言われるレース、それに勝るとも劣らない必死さで、アタシはトレセン学園を疾走する

 

そしてその間に、部屋を飛び出す時に持っていたスマホに番号を打ち込んだアタシは、通話状態になると同時に電話口の相手に叫んだ

 

「ブルボンさん!」

 

「落ち着いて下さい、スカーレットさん」

 

聞こえてきた彼女の声は、思ったよりも静かで落ち着いたもので、だからアタシは一瞬だけ二の句を告げずにたたらを踏む。

だけど、事態が事態だ。そんなことを言っている場合ではない。そう思いながら続けたアタシはしかし

 

「ライスさんは!?」

 

「恐らく今私が持っている情報は、そちらと全く同じものです。観客席もまた、混乱の最中にあります」

 

「そんな...」

 

依然状況は変わらず、手出しすらできない、そんなブルボンさんの言葉に、自身の血の気が引いていくのが分かる

 

だってそれはさっき見たものが嘘ではないってことで...

 

そしてそうであるならば、今のライスさんは...

 

「...ライス...さん!」

 

思わず口をついたその言葉は震えている。事実をもう一度確かめたい、そんな感情と共に沸き上がる、この先にあるものを見たくない、知りたくないっていう感情がぐちゃぐちゃに混じりあって訳がわからなくなる

 

それでも、そんな内情とは裏腹にアタシの足はついにトレセンの食堂へと辿り着く

だからアタシは、そのままの勢いで食堂の扉をこじ開けて...

 

「!!」

 

ほとんどもぬけの殻と言ってもよかった校舎と違い、食堂には多くのウマ娘達が集まっていた

それは無論、時刻が昼食の時間帯だったからという理由があるんだろうけど、いずれにせよそこに集まったウマ娘達は皆、食堂に備え付けられた大型テレビを食い入るように見つめている

そしてそれは、そこに映っていたものは、間違いなくさっきスマホで見たものと同じで...

 

「あ...あぁ..」

 

それを見た瞬間に、アタシはその場に膝から崩れ落ちる

もしかしたら見間違いなのかもしれない、そんなあまりにもちんけで甘い希望的憶測は、一瞬で粉々に砕け散る

 

 

 

そこには、絶望が鎮座していた

 

 

 

 

あの時...第3コーナーを抜け、第4コーナーへと至ろうとしたところで、ライスさんは転倒した

 

吹き飛んでいく小さな体

ズタズタに引き裂かれる勝負服に、宙を舞う、青薔薇のアクセサリーがついた帽子

 

それは一瞬のこと

だけどだからこそ、気付いたときにはもうそこにライスさんはいなくて...

 

ざわざわと、食堂のテレビを見るウマ娘達が動揺している

画面の中のレース場もまたいまだに混乱に包まれていて、今ようやく救護班の人々が横たわるライスさんへと近付いていく

だけど、ライスさんは動かない

うつ伏せで倒れているためにその顔を見ることは出来ないけど、それでもターフの上に横たわったその体はピクリとも動かなくて...

 

「ライス...さん」

 

呆然と呟く声は、しかし届かない

 

「...ライスさん!!」

 

いてもたってもいられず、テレビの前に群がる他のウマ娘達を押し退ける。当然怪訝な顔や、迷惑そうな顔をされるが、気にしない。しかしそれでも、食堂の大画面テレビの前に出て叫んでも、それでもアタシの声は届かない

 

ライスさん...たった数日前に出会ったばかりのアタシの先輩...

だけど、壊れそうになっていたアタシの心をギリギリのところで救ってくれた恩人に、しかしアタシの声は届かない

無言で横たわるボロボロの小さな体の上には、そんなことなど知ったことではないとばかりに、恐ろしく晴れ渡った青空が広がっていて...

 

 

 

「...アタシの...せいなの?」

 

 

 

うつむき、ポロリと口からこぼれたその言葉はしかし、あまりにも荒唐無稽なものであるにも関わらず、まるで真実のようにアタシの中に染み渡っていく

 

「アタシが...ライスさんのレースを見に行かなかったから...?」

 

そうだ...思えばアタシは今までたくさんのウマ娘達を不幸のどん底に叩き込んできた

イチバンのウマ娘になる、そんなエゴの為だけに何人も何人も...

それなら、そんなアタシの存在は、ある意味では不幸の象徴と言っても良いのではないか?

 

腐ったみかんを一つ箱に入れるだけで、中に入っていたみかんは全て腐り落ちる。窓に入った一筋の割れ目は、やがて他の窓にも伝播し、町全体を荒廃させる。そしてアタシが出たレースに関わった人達は、皆不幸になる。それなら今起こっている事態も、元を正せばアタシのせいなのでは?アタシがライスさんを直接応援しに行かなかったから...ううん、アタシがライスさんに関わってしまったから、今こんなことになっているのでは?

だとしたら...

 

(『...スカーレットちゃんは、いつも自分のことばっかりだよね』)

 

...だとしたら、もしかしたらアタシは存在すら許されないのでは?イチバンになる、そんなことを言う以前に、そもそも生きていてはいけないウマ娘だったのでは?

 

だったら...だったらアタシは...

 

(「ーー...空っぽなんだよ!」)

 

アタシは...!

 

(『あ~...またスカーレットの勝ちか...』)

 

アタシは...!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかりしなさい!ダイワスカーレット!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

それは、手に持っていたスマホからの声

繋がったままだったスマホから聞こえるその声はしかし...

 

「そもそもあなたは今ここにはいない!常識的に考えて、そんな人が今走っているライスさんに危害を加えることができるはずがないでしょう!!」

 

「それ...は」

 

もっともなブルボンさんの指摘に、アタシは返事が出来ない

それでも、普段あまり感情を表に出さないのであろうブルボンさんの声は、怒りに満ちていて...

 

「...分かったらスカーレットさん、テレビを見なさい」

 

「...え?」

 

その言葉に、思わずアタシはスマホを見る

だけど、そこには通話中の画面があるだけだ

そしてブルボンさんは続ける

 

「あなたはライスさんから手紙をもらっているはずです。そしてその内容は、ライスさんからの、自分の走りを見て欲しいというお願い。違いますか?」

 

「い、いえ...」

 

「それならあなたは見届けるべきです。

...もし、あなたが手紙の内容に従っていなかったのなら、私は何も言いませんでした。しかし、あなたはどんな意図があったにしろレースを見た。ライスさんの手紙の内容に、心を動かされた。

であれば、あなたにはそれを見届ける義務があります。彼女の...ライスさんの走りを見届ける義務が...」

 

「ちょ、ちょっと待ってください、ブルボンさん!」

 

なおも続けようとするブルボンさんの言葉を、アタシは途中で遮る

 

だって

 

「現状を分かって言っているんですか?ブルボンさん!ライスさんは...もう...」

 

走れない...そこから先を言えず、結局アタシの言葉は尻切れトンボになってどこかへと行ってしまう

でもそれはきっと間違いじゃない

なぜならあそこまで派手にレース中に転倒したのだ、きっと足の骨は確実に折れているし、そうでなくても身体中がボロボロなのだ。そんな状態ではいかにライスさんが強いウマ娘であっても、もうレースの続行は不可能だ

 

 

 

...そのはずだったのに

 

 

 

「...そうですねスカーレットさん、あなたはライスさん...ライスシャワーというウマ娘を知らないんでしたね」

 

「.........え?」

 

そんなブルボンさんの言葉と共に、周囲のざわめきの質が変わる。それはさっきまでの困惑からくるものではなく、明らかな驚愕から来るもの。

だからアタシは、頭を上げてもう一度テレビを見据えて...

 

「...うそ」

 

思わず取り落としそうになったスマホから、ブルボンさんの声が聞こえる。だけど

 

「...良く見ておきなさい、スカーレットさん。あれがかつてヒールと呼ばれたウマ娘、誰からも嫌われ、疎まれた、そんな悲劇のウマ娘の姿。そして...」

 

返事ができない

アタシはもう、目の前の光景から目が離せない

だから、息をのむ周囲のウマ娘達と同様に、ただただそれを見ていることしか出来なくて...

 

 

 

「...あれが、あれこそが、本物のヒーローの姿です」

 

 

 

愛おしむような、慈しむような、そんなブルボンさんの声を聴きながら、アタシと周囲のウマ娘達はテレビ画面を食い入るように見つめる。いや、見つめざるを得ない。

だってそれはあまりにも劇的な光景だったから。誰も予想できなかった光景だったから。

 

静まり返った食堂に、テレビから流れてくる歓声が大きく反響する

それでも、誰も何も言えなくて...

 

 

 

...ゆっくりと、しかし確かに自分の力で立ち上がるライスさんの姿を、アタシ達は呆然と見守るしかなかった...

 

 

 






さて、それでは次からいよいよライスの視点に切り替わります
そしてそのまま宝塚記念を終わらせます。

果たしてライスはどうなるのか、無事に走りきることができるのか

乞うご期待

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