ウマ娘三部作Secondシーズン 鮮血の女王 ~メディアの覚醒~【完結】   作:DX鶏がらスープ

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さぁ、いよいよライスシャワー視点です
それではどうぞ!!

※すいません、予約投稿の時間を間違えてしまいました。
遅くなりましたが、どうぞご覧ください






ささやかな祈り

 

 

???side

 

 

とてもむかしの話です。

 

あるところにたくさんのバラが植えられた小さな庭がありました。

 

その庭の持ち主達は、先祖代々受け継いできたその美しい庭をとても誇りに思っていて、常に手入れをかかしません。

 

お陰でその庭にはいつも、色とりどりのバラが咲き誇り、そこを訪れる人達はみんな、幸せな気持ちになりました

 

しかし...ーー

 

 

 

...

 

 

 

「ーー...ある日、その庭に誰も見たことのない真っ青なバラの蕾が顔を出します」

 

そう言ってお母様が絵本のページを捲ると、真っ赤なバラの中に一本だけポツンと佇む真っ青なバラの蕾が描かれたページがライスの前に現れます。

そして、そのページをライスが見ている間にも、お母様の語りは続いていて...

 

「それを見た他のバラ達は口々に言います

 

「私達バラは、むかしの、そのまたむかしから、赤か、白か、もしくは黄色だと神様に決められている!青いバラなんて見たことがない!なんて気味が悪いんだろう!!」

 

また、庭を見に来た人達も言います

 

「神様が決めた色でないバラなんて、なんて罰当たりな!きっとこれは不幸を呼ぶバラに違いない!!」

 

 

いつしか、お母様の手元にあった絵本のページは、たくさんの怖い顔をしたバラや大人の人達に囲まれて、項垂れる青いバラの蕾の絵が描かれているページに移り変わっていて...

 

「それを聞いた青いバラの蕾はこう思います。

 

「あぁ...みんながボクを見て怖い顔をする。それはきっとボクがダメな花だからなんだ。ボクはみんなにとって邪魔な花なんだ」

 

すっかり落ち込んでしまった青いバラの蕾は、段々と萎んでしまいます

 

そう項垂れる青いバラの蕾が、あんまりにも、あんまりにも可愛そうだったから...

 

「...あらあら」

 

そう言って、お母様は一旦絵本を読むのを止めます。

だって...

 

「...あなたは本当に優しい子ね、ライス」

 

そう言って、お母様は少し困ったように、それでもとっても優しい顔でライスに微笑みます。

でも、そんな大好きなお母様の笑顔を見ても、ライスは悲しくて悲しくて仕方がありません。涙が、後から後から溢れてきて止まりません。

だって...だって...

 

「青いバラの蕾が...かわいそうだよ...」

 

ライスはそう口に出します。

何も悪いことをしていないのに...ただ精一杯生きているだけなのに...それでもみんなに嫌われ、遠ざけられる青いバラの蕾が、かわいそうでかわいそうで...

 

「そんなの...あんまりだよぉ...」

 

そんな一人ぼっちの青いバラの蕾のことを思うと、悲しくて悲しくて...

 

そしてその姿はまるで、行く先々で周りの皆を不幸にしてしまうライス自身の姿に重なるようで...

 

ライスは涙を流します。

なんて、なんてヒドイお話なんだろう、と

どうしてこんなヒドイお話が書けるんだろうと、青いバラの蕾の孤独を想い、涙を流します。

 

でも

 

「...大丈夫よライス」

 

お母様の手が、ライスの頭にそっとのせられます

それは、とっても暖かくて安心できるものだったから...

 

「...ぁ」

 

ライスも思わず泣き止んでしまいます。

そして、それを確認したお母様は、ライスの頭にのせた手で、そっとライスの頭を撫でながら続けます。

 

「このお話にはまだ続きがあるの」

 

「...続き?」

 

ライスが首を傾げると、お母様はまたページを捲りながら続けます。

 

「えぇ。こんなヒドイことを言われ続けた青いバラの蕾だったんだけど、やがて一人の男の人と出会うの」

 

そう言いながら開いたページには...

 

 

 

 

 

......................

 

 

 

.................

 

 

.........

 

 

 

(「おいおい大丈夫なのかよ?」)

 

 

 

(「いくらヒールだからと言って...流石にこの場で事故死なんてのは後味が悪いぞ?」)

 

 

 

(「ちっ、生きてても死んでても厄介な奴だな...」)

 

 

 

「...?」

 

ざわざわと周囲から聞こえる声に、ふと目を覚ますと、まず感じたのは土の匂いと芝の香り

それで自分がうつ伏せに倒れていることに気が付いたライスは、一瞬困惑します

 

(あ、あれ?ライス一体...)

 

とっさに自分の今の状況が思い出せず、ライスは焦ります

だけどそんなことを考える前に

 

(っっっ!?え?え?な、何これ!?)

 

突然の痛みに、ライスは悶えます

全身から伝わってくる痛みの奔流

それも、今まで体験したことのない程のとんでもない痛みの奔流が、ぼんやりとしていたライスの意識を覚醒させ、現実へと急速に引き戻します

 

だけど、そのお陰でライスは今の自分の状況を思い出すことができて...

 

(...あぁ...そっか...)

 

転げ回りたくなるほどの痛みに耐えながら、思い出すのは脚が空を蹴る感触と悲鳴

ぽきっ、だなんてあまりにも安っぽくて、だけどあまりにも絶望的な音と共にターフを転がった記憶

それが一気に思い出されて...

 

(やっぱり...こうなっちゃうのか...)

 

そんなことを思いながら、ライスは少しだけ笑います

だってこの結末を、なんとなくライスは分かっていたから

自分はもう、ウマ娘としてのピークはとっくに過ぎている

それを分かっていての出走だったからかな?何となく、本当になんとなくライスは今の状況に陥ることが予め分かっていて...

 

「っ!!」

 

痛む体で、それでもなんとかライスは体を回転させて仰向けになります

すると、当然目の前に広がるのは青く高く広がる空

そして聞こえるのは、徐々に落ち着きを取り戻していく観客席の中から聞こえる心ない人達の声で...

 

 

 

(「やれやれ...ライスシャワーもこれで終わりか。まぁ、かわいそうではあるが、ヒールとしては順当な末路かもな」)

 

 

 

(「そうだな、随分と長い間未練がましくレースの世界にかじりついていたわけだが...流石にこれで終わりだろう」)

 

 

 

(「はっ、あんな奴に同情なんていらねぇよ。ともかくヒールがヒールらしくくたばったんだ、ざまぁねぇな」)

 

 

 

そんな目を覆いたくなるようなひどい声が、ざわめく観客席に徐々に広がっていきます

流石に素人目に見ても分かるほどの凄惨な事故だからこそ、表だったブーイングの声が上がることはないけれど...それでも観客席の空気が時間と共に淀んでいくのがライスには分かります

それを見ていてると、かつての似たような光景が思い出されるような気がして

 

(あの時、みたいだな...)

 

そうやって思い出すのは、かつての菊花賞と春の天皇賞

両方ともライスが勝ったはずなのに、観客席からライスに届けられたのは賞賛ではなく非難の声

そんな状況がまたも目の前で繰り広げられていたから...

 

(ままならないな...本当に...)

 

そんなことを思いながら、ライスは果てしなく広がる空を見上げます

だけど、空は変わりません。明日も明後日も、きっと100年後だって変わらない青空を見ていると、今の状況が昔とまるで何も変わっていないことを痛感します。

 

そう、昔から何も変わってなんかいない

ライスの周りには常に不幸と悲しみが付きまとう

それはまるでライスは誰も幸せにできない、そんなダメなウマ娘だって事実を改めて目の前に突きつけられているようで、本当に悲しくなります

 

でも、だからこそ...

 

(「バ、バカな!」)

 

(「おいおいウソだろ?」)

 

(「マジか!?」)

 

その場でゆっくりと立ち上がったライスに、観客席の人々がざわつきます。

でも、正直なところ今のライスに対応している余裕なんてなくて...

 

「あうっ!!」

 

ポッキリと折れた左足、そこに走る稲妻のような鮮烈な痛みに耐えきれず、ライスはまた転んでしまいます

 

だけど

 

「っ!!」

 

またライスは起き上がります

そうして少しずつ、少しずつ進むライスを見ている観客達の間には戸惑いの声が少しずつ広がっていきます

 

(「な、何やってんだ!おい救護班、なんとかしろ!!」)

 

(「その足でゴールするのはもう無理だ!大人しく諦めて、早く病院に行け!!」)

 

(「そ、そうだ!もう無理なんだ!!早く諦めろ!!」)

 

レース場は再び混乱に包まれています。ただし、先と違ってそれは驚愕から来るもの。誰がどう見ても無茶な諸行を行うライスの姿を見て、半ば悲鳴に近い声が上がります

 

それでも

 

「うあっ!」

 

「くっ!」

 

「あぁっ!」

 

(「もう良い!もう良いから!!」)

 

(「やめろ!やめてくれライスシャワー!!」)

 

(「お願いだ!これ以上、これ以上無茶をしたら...!!」)

 

それでもライスは歩き続けます

何度も転んで泥だらけになりながら、もう感覚すらない折れた左足を引きずりながら、必死にライスを止めようとする救護班の人々の助けをやんわりと断りながら、それでも前へ

 

そうやって進む内に、少しずつゴールは近づいてきて...あれほどまでに騒がしかった観客席も、いつの間にか静かになっていて...

 

だけど...

 

 

 

「っ~~~~~~~~!!」

 

 

 

もう何回目だろうか?

 

転んでは立ち上がり、また転んでは立ち上がる、そうやって少しずつ進んできたライスにも、ついに限界は訪れます。もう一歩も歩けない、それほどまでに体力を削られたライスは、もうその場から動くことすらできなくて...

 

(まだ...まだライスは...!)

 

そんな風に思いながら、必死に体を動かそうとしても、指の一本すら動かなくて...

 

(動いて!ライスの体!!)

 

脳裏を過るのは今までの自身のレース人生

頑張っても頑張ってもちっとも報われず、むしろ誹謗中傷を投げ掛けられた、そんな人生

 

だけど!

 

(それでも!!)

 

ライスは歯を食い縛ります

だって信じているから。ライスシャワーは祝福の名前だって!きっと皆を幸せにできるはずだって!!

 

そしてそんなライスの脳裏に浮かぶのは、一人のウマ娘

勝って勝って勝ち続け、その果てに孤独になってしまった一人のウマ娘

 

その姿は、かつて周囲からの心ない言葉に傷付き、暗い部屋のすみで泣いていたライス自身の姿にそっくりだったから...

そんな彼女に泣かないでって、せめて言ってあげたいって思ったから!!

 

 

(お願い!)

 

だからライスは

 

(動いて!!)

 

こんなところで...

 

(...お願い!!)

 

こんな、ところで...!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頑張れ!ライスシャワー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回、宝塚記念完結

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