ウマ娘三部作Secondシーズン 鮮血の女王 ~メディアの覚醒~【完結】   作:DX鶏がらスープ

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バンブーメモリーが実装された後で、「これでウマ娘二次創作でもあまり登場しない彼女の活躍が増えるかも?」みたいなこと書いてる人を見かけたのですが...
個人的には作者は推しであるマヤちゃんにも、もうちょっとスポットライト当てて欲しいなと思うんですよね

いえ、もちろん公式からは結構優遇されてますよ?
衣装違いはもちろん、イベントストーリーでも結構出てますし、なんなら例のトップガンコラボもそう。
恐らくサクラローレルのマンガの方でも活躍はあるでしょうし、そう考えると割りとメジャーな方だとは思うんですよ。

ただ、二次創作界隈だとあまりメインで取り上げられることがない気がします。
無論マヤブラのくくりだと色々同人誌ありますし、ここハーメルンのウマ娘小説見てても、劇中で出てくる作品は少なくありませんよ?ただ、見てると比較的脇役としての活躍が主というか...あまり主役に据えてガッツリその活躍を書く作品がない気がするんですよね(マヤちゃんかわいい!みたいなキャラ萌えのテーマのものでない限りはですが)。

みんなもっとマヤちゃん主役の話書こうぜ!(確かに前作でマヤちゃん主役の話は書いてるが、よりにもよって別のウマ娘が主役の話の中でそれを言い出す重度のマヤノトップガン狂い)



因縁と再燃

 

 

 

イチバンであり続けなければならない、そう思っていた

 

 

 

(「はぁっ...はあっ...はあっ...」)

 

 

 

そして、その為にありとあらゆる努力をしてきた

雨の日も風の日も、例えどんな時でも、アタシは自らの歩みを止めたことなんて一度としてなかった

 

 

 

(「はあっ...はあっ...はあっ...」)

 

 

 

だからアタシはイチバンになれた

だからアタシはイチバンでいられた

そしてだからこそ、アタシはこうも思うようになった

 

 

 

(「はあっ...!はあっ...!はあっ!」)

 

 

 

頑張るのを止めなければ、きっとアタシはずっとイチバンでいられるって

諦めずに進み続ければ、結果は必ずついてくるって

過酷なレースの世界で、それでもアタシはやっていけるって

 

 

 

だからこそ

 

 

 

(『最終コーナーを曲がって、ウオッカ!ウオッカが上がってきました!ダイワスカーレットはもう目の前!』)

 

(「くっ!?」)

 

雲一つない青空に、実況の声が木霊する

長かったようで短かった選抜レースも既に終盤戦

最後の粘りを見せる後方のウマ娘達を、しかしものともせずにアタシは走り抜ける

 

それはまさに横綱相撲

圧倒的な大差を持ってして集団の先頭を駆け抜けるアタシに、もう追い付ける子は誰もいない

勝負は既に決まったとアタシも、そして誰もが思っていた

 

だけど

 

(「うおらぁぁぁああっ!!」)

 

(「ウオッカ早い!ウオッカ早い!驚異の末脚!ダイワスカーレットはもう目の前だ!」)

 

だけど違った

今まで誰も追い付けなかったアタシの背中に、しかし迫る一人のウマ娘

 

それは燃え盛る業火

それは全てを押し流す激流

 

ターフの上を、一陣の風が吹き抜ける

荒々しくも雄々しい、そんな命の息吹を連想させるような鮮烈な末脚

それがまるで、吹き荒れる嵐のように、周囲の全てを吹き飛ばしながら

アタシの元へと迫ってきて...

 

(「...っ!?」)

 

アタシは驚愕した

アタシは困惑した

 

...そして何より、アタシは恐怖した

 

なぜなら、アタシはその時まで一度たりとも負けたことがなかったから

後ろに迫られた経験すらなかったから

だからアタシは頭の中が真っ白になる。後ろから迫る未知の体験、それに恐れ戦く

 

(「うっ.........うぅぅぅ......!!

嫌よ......そんなの嫌!」)

 

そんな言葉を漏らしつつも、後ろから迫る影を振り払おうと、アタシは必死に速度を上げる

 

だけど...

 

(引き離...せない!そんな!?)

 

差が縮まってきている

その事に気付いた瞬間に、アタシの耳の内に突如として響くのは破砕音

青々と生い茂るターフの芝を踏みにじり、その下の地面までも粉砕する、そんな力強い足音がもうすぐ側まで迫っていて...

 

だからこの時、アタシは思い知った

中央のレベルを

自分がどれだけ井の中の蛙であったのかを

ウマ娘レース、自分が志すそれがどれだけ過酷なものなのかを

 

それでも...

 

(それでも...!)

 

もうこれ以上速度を出せない、そう訴える足を強引に動かす

もうダメかもしれない、そんな弱音を無理矢理捩じ伏せて、また一歩踏み出す

 

そうだ...それでもアタシはダイワスカーレット!

イチバンのウマ娘!!

 

だから!だから!!

 

(「1番はっ!

......っ!アタシのものなんだからぁぁーっ!!」)

 

声が枯れるほどの大声で、そんな虚勢を叫ぶ

しかし現実は非情だ

思いだけで奇跡を起こすことなど、そうそう簡単にはできない

 

だからこそ、彼女は止まらない

他の全てのウマ娘を刺しきったその末脚は、ついにアタシの首筋まで迫る

 

そして...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(『一着はダイワスカーレット!ダイワスカーレット!!激戦を制し、見事一着の座をもぎ取りました!!』)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワアアァァァアアアアァァッッ!!

 

 

 

 

 

 

(「はぁ...!はぁ...!はぁ...!」)

 

手をついたターフからは、湿った土と乾いた芝の匂いがした

 

息が出来ない

視界が霞む

流れ出た大量の汗が、体を伝いポタポタとターフの上に落ちていくのを感じる

 

文字通り死力を尽くしたレースだったのだ

もう一歩も動けない

乱れた息を整えるので精一杯だ

だというのに...

 

(「...ちっ、今回はオレの負けか」)

 

そう悔しげに言いながらこちらに近づいてくるコイツは、平然としていて

今にも気絶しそうな程に疲弊したアタシと違って、まだ少しだけ余裕があったから...

 

それで確信する

今回のアタシの勝ちは、決して必然なんかじゃなかったって

ただ、たまたま運が良かっただけなんだって

ほんの少し...それが何かは分からないけれど、それでもほんの少し何かが違っていれば、きっと今日の勝利はアタシのものではなかったって

きっとそれは、目の前のコイツのものだったに違いないって

 

それが悔しくて悔しくて仕方がない

だってアタシはイチバンになるためにこれまで頑張ってきたのだ

人生を捧げたと言っても良い

それなのに、なんだこの体たらくは!?

 

歯を噛み締める

こんな有り様じゃ、とてもイチバンのウマ娘になんてなれない!

どころか、すぐに周囲に置いていかれてしまうに違いない!!

 

だとしたら、だとしたら今アタシがやるべきことは...

 

(「まっ、でも良いレースだったぜスカーレット。立てるか?...っておい!」)

 

(「...」)

 

こちらに差し出されたウオッカの手を、しかし握ることなくアタシは立ち上がり、アタシはそのままその場を後にする

当然そんなアタシを批難するアイツの声がするけど...無視する

だってそんなものに構っている暇なんてないから

アタシは弱い。だからこそ、もっともっとアタシは強くならなきゃいけないから。それがイチバンのウマ娘になるということだから

 

レースが終わり、アタシへとスカウトをかけてくるトレーナー達に断りを入れながら、アタシはそのまま歩き続ける

 

後ろから感じる燃えるような視線を、それでも無視しながら

 

 

 

 

 

これは、アタシがトレーナーと出会う少し前のお話

中央トレセンに入学してから初めて走った選抜レースのお話

 

そしてこれは、思えばアイツとの...ウオッカとの初めてのレースのお話

それ以降何度も衝突することになるアイツとの、最初の因縁のお話...

 

 

 

........................

 

 

 

.................

 

 

 

.........

 

 

 

月が綺麗な夜だった

 

「...帰ってきてたのね、ウオッカ」

 

それなりに長い沈黙の後、アタシの口から出てきた最初の言葉は、そんな実にありがちなものだった

 

どうしてここにいるのか

なぜ今帰ってきたのか

...なにより、なんで何の相談もなしに突然一人で飛び出していったのか

 

たくさん言いたいことはあったはずなのに、それでも結局出てきたのは、そんな無難極まりない言葉

 

だけど、そんな簡素な言葉だからこそ目の前の彼女、ウオッカは特に含むところもなく素直に頷いた

 

「おう!

...とは言え、ちょっと寄り道してたら遅くなっちまってな

帰国自体は今朝なんだが、ここに辿り着いたのはついさっきだぜ?」

 

「呆れた...

アンタ今何時だと思ってんのよ。

遠足は家に帰るまでが遠足だ~、なんて子供でも分かるわよ?」

 

「うっせぇ!遠足じゃねぇよ、遠征だ遠征!!つぅか、テメェはオレのお袋かよスカーレット!?」

 

「バカねウオッカ

アタシがアンタの母親に見えるって言うのなら、それだけアンタが子供ってことよ」

 

「なにをぅ!!」

 

そう言って文句を言う彼女の姿は、以前と変わらない

月に叢雲花に風

そんな言葉を嘲笑うかのごとく、こうこうと輝く月明かりに照らされたその顔は、相変わらず能天気でバカ丸出しだ

 

だけど、今はなんだかそれが眩しい

そんな自分の思うカッコいいこと、それ以外何も考えてなさそうな、いかにも頭が空っぽって感じの目

でも、自分の信じるものを微塵も疑ってない、自分の歩む先には常に希望があると信じている

そんな目を見るのが今のアタシには辛かったから...

 

「...まぁいいや。それでスカーレット、実はお前に話が...――

 

「...ごめんなさい、ウオッカ

悪いけど、今日は帰ってくれないかしら?」

 

――...あぁん?」

 

ウオッカが訝しげな顔をする

それはそうだ。話を途中で遮られて愉快な顔をする人の方が少ないだろう

まして、せっかく訪ねてきたと言うのに帰ってくれというあんまりな返答だ。当然の反応だろう

だけどそれでも

 

「...なんだかね、今は誰とも話したくないの」

 

アタシは続ける

闇の帳に沈んだ中庭

そこに差し込む月の光が照らすウオッカの姿は、今のアタシとは真逆のもので...

 

(「あなたは、今回のライスさんのレースを見て何を考えましたか?」)

 

先のブルボンさんの言葉がふと思い出される

だけどアタシにはその質問に答えることができない

ただただ無様に動揺し、醜態を晒すだけ...

そんな自身の不甲斐ない姿が、コイツを見ていると一層惨めに思えてくるから...

 

「...だから、ね?悪いとは思ってるのよ?だけど今は、そんな気分じゃないから...」

 

そう言ってアタシはウオッカをやんわりと拒絶する

罪悪感がないわけじゃない

せっかく忙しい中、わざわざ会いに来たというのだ

それを考えるなら、いくらアタシとコイツの仲だと言っても、それ相応の対応をしてあげたいとは思うのだ

 

だけど、タイミングが悪い

あの壮絶なレースを見た後で、ブルボンさんの言葉を聞いた後で、冷静でなんていられるわけがなくて...

 

だから、アタシはウオッカに帰ってくれとお願いする

今回に限っては完全にアタシのワガママなだけに、わざわざケンカを吹っ掛けるということもない

出来れば穏便に済ませたいというのが本音だ

 

そんな思いを込めたアタシのお願いに、だからウオッカは口を開く

そしてそこから放たれた言葉はしかし、それまでのすべての文脈を完全に無視したもので...

 

「...なぁ、スカーレット。お前もしかして...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走るのが、怖くなったのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





おかしい...

ダスカとウオッカの因縁については、割りとサラッと流すはずだったのに...
一体どうしてこんなに過去話が長くなってるんだ?(困惑)

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