ウマ娘三部作Secondシーズン 鮮血の女王 ~メディアの覚醒~【完結】 作:DX鶏がらスープ
グランドライブ...良いですよね、大好きです
特にグランドのあたりが...(どこぞの総大将風)
選曲も相まって、本当に特別感が凄く出て涙腺に刺さりまくりですよ
でも「特別なライブ」の開催があれで結構難しい...
いつかマヤちゃんで開催したいな...(10敗)
???side
ガシャンッ!!
その音に振り返ると、そこには小さな写真立てが落ちていた
青白い月が、誰もいない部屋の中を静かに照らし出す
沈黙に満ちた空間に、朧気な光を受けた柱の影が音もなく延びていく
そんな中で、床に転がるそれの破片が鈍く光る
キラキラ、キラキラと
闇の中で小さな水晶のように光るそれは、まるで誰かが落としていった儚い夢の欠片のような幻想的な光を宿していて...
「...」
ゆっくりと近づき、写真立てを拾い上げる
すると、ひび割れたガラスの下には一枚の写真があった
それは、遠く過ぎ去った優しい過去の欠片
どこにでもありふれた、それでも大切な思い出の記録
割れたガラスで指を切らないように気を付けながら、そっと写真に手を触れる
どこかの街中
クレープを片手に微笑む自身とあの子と...そしてあの子の.........トレーナー
そんな3人を映した一枚の写真の表面を優しく撫でる
かつて確かにあった幸せな時間の切れ端
瓶の中に詰められた海の砂のように、かけがえのない思い出を詰め込んだ大切な写真
それに映る3人は、しかしその先にある悲劇など知るよしもなく楽しげに微笑んでいて...
そんな写真の中の自分達を見ていると、胸の内側が少しだけ暖かくなる
あぁ、こんな暖かい時間もあったんだな、と
辛く苦しいだけの旅路の中にも、それでもこんなにも輝くような愛しい時間があったんだな、と
確かに...確かにこんな幸せな時間は実在したんだな、と
思わず浮かべた微笑みが、果たしていつ以来のものなのか...もはや自分でも覚えていない
だけどそれでも、ほんの数瞬のまばたきよりも短い回想であったとしても、思い浮かべたそれは本当に...本当に大切な宝物...世界中のどんな宝石よりも価値のある、一番の宝物だ
だからこそ
「...ッ!!」
ぎゅっと、壊れた写真立てを抱き締める
強く、強く抱き締める
誰にも渡さないように
理不尽な運命から、大切なものを奪われないように
...もうこれ以上、何も失わないように
床に膝を着きうずくまる
その姿は、見ようによっては祈りを捧げる姿のようにも見えるのかもしれない
だけど、夜空にポッカリと浮かぶ月は何も答えてはくれない
ただ、静かに地上を照らすだけだ
それでも
(お願い...無茶だけはしないで)
突如として感じた、言いようもない不吉な予感
それを必死に打ち消すように祈るのは
(あの人だけじゃなく、あなたまで失ってしまったら...)
きっと耐えられないから
今度こそ、もう立ち直れないから
だから...だから...!!
固く目をつぶる
その目蓋の裏に映るのは
(「.........ねぇ、もし良かったらなんだけど...」)
たった一人の
(「アタシと...友達にならない?■■■?」)
親友の姿で...ーー
(「...スカーレットちゃん!!」)
写真の中の少女達は、ただ静かに微笑んでいた...
・・・・・・
「...オレの勝ちだな」
それが、愕然としていたアタシに突きつけられた現実だった
だけど
「...」
アタシは何も言わない、いや言えない
だってもう、アタシには何も残っていないから
大切なものは全部この手からこぼれ落ちていったから
そしてこの模擬レースでアタシは
(「約束するよ、スカーレット」)
アタシは...一番大切なものを
(「君をイチバンのウマ娘にしてみせる!!」)
全部を失って、それでも最後に残っていたものを..."イチバン"を失ってしまったから...
こうこうとあたりを照らす満月の下、ターフに膝を付いたままのアタシは沈黙を貫く
言葉が出ないんじゃない、そもそも何もないのだ
語る言葉も、流す涙も、もうアタシには残っていない
だってアタシの世界はもう終わってしまったから
何も...何も残っていない
そんなアタシには、もうその場に座り込むことくらいしか出来なくて...
そんなアタシを他所に、少し離れた場所に立っているウオッカの言葉は続く
「...オレは最初に言ったはずだぜ?
ハンデはつけなくて良いのかって
オレだって鬼じゃない。大阪杯でお前が怪我をしたこと位調べればすぐ分かることだし、それを考えればしばらくまともなトレーニングしてねぇだろ?お前」
「...」
「だからこそ、オレもある程度のハンデは飲むつもりだった。
本音を言えば、絶好調のお前と勝負したいところだったが...そうでねぇなら仕方がねぇ。誘ったのはこっちだし、だからこそ公平な勝負が出来るように必要な譲歩をするのは当たり前のことだろ?」
「...」
「だからオレは何も言わないぜ。これはお前の選択の結果だ。
まぁ、例えハンデ有りでもオレはお前をぶっちぎる予定だったが...それでもお前は自分の傲慢と驕り、つまらないプライドのために負けた。これが事実だ」
そこまで言うと、ウオッカは一度言葉を切って言う
「それで?スカーレット
生涯初めての敗北の感想はどうだ?」
・・・・・・
ウオッカside
思えば、スカーレットとは初めて会った瞬間からケンカしてたっけ
(「よろしく」)
(「...いや、ちょっと待ちなさいよ!?」)
寮の部屋で挨拶をしてから荷解きをし始めたオレに、アイツがいきなり突っかかってきたのをよく覚えている
(「なんだ?オレ忙しいんだけど」)
(「忙しいって...荷解きしてるだけじゃない!」)
(「そうだけど...それの何が悪いってんだよ」)
(「それより先に!もっと他にすることあるでしょ!!」)
そう言って怒るスカーレットに、それじゃあ何をするべきなんだよって聞いた時の答えが自己紹介だって言うもんだから
(「...ウオッカだ、よろしく」)
そう言って作業に戻ろうとするオレに、だけどアイツはまだ不満があったみたいで
(「違うでしょ!?」)
(「良い加減にしやがれ!そういう話は後々ゆっくりできるだろ!!オレはまず先に、自分の荷物を出してぇんだよ!!」)
(「別に荷解き自体を責めてるんじゃないわよ!もっとお話しましょうって言ってんのよ!!せっかく同じ部屋になったんだから!!」)
(「あん?んなもん後でいくらでも出来るだろ?オレは取り敢えず荷物をだなぁ...」)
(「だから!別に喋るだけなら荷解きしながらだって出来るし、なんなら手伝うわよ!!アタシが言いたいのは、もっとこう初対面なんだからお互いに...」)
(「あーもう、いちいちめんどくせぇ奴だな...」)
(「それはこっちの台詞よ!」)
(「あぁん?」)
(「何よ?」)
それがスカーレットとの初めての出会い兼初めてのケンカ
...今思えば中々に濃い馴れ初めなわけだが、それでもそんなアイツとの日々は
(「な・ん・で・つ・い・て・く・るの・よ!ウオッカ!!」)
(「そ・れ・は・こ・っ・ち・の・セ・リ・フ・だ!スカーレット!!オレは今から朝練なんだよ!ついてくんな!!」)
(「アタシだってそうよ!あんたこそそこ退きなさいよ!!邪魔なのよ!!」)
(「んだとこらぁ!?だったらグラウンドまで競争だぁ!!」)
(「なに勝手なこと言ってんのよ...って待ちなさいよバカ!!」)
お互いにギャーギャー言いながら過ごす騒がしい日々は、意外と悪くなくて
(「...えて...くれ...」)
(「ん?何かしら、良く聞こえないけど?」)
(「~っ!!スカーレット!ここの数学の問題教えてくれ!!」)
(「よろしい♡
フフン、まったく...最初から素直にそう言えば良いのよ。バカねウオッカ」)
(「ぐおぉぉぉっっ!!いくらうっかり赤点取っちまったからって、コイツの力だけは借りたくなかったぁぁっ!!」)
(「はいはい、悔しいのは分かったから始めるわよ。それでここの問題は...――」)
ムカつく奴ではあるけど、それでも自分の夢を叶える為だって言って毎日毎日バカみたいに努力し続けるコイツの姿が...
イチバンになる、そんな抽象的で中身のない幼稚な夢を、それでも全力で追いかけるコイツの姿が...
(「zzz」)
(「ただいま~...って寝てんのか
まったく優等生様が机の上で居眠りだなんて聞いてあきれるぜ」)
(「zzz」)
(「まっ、オレはだれかさんと違って優しいから?毛布位はかけてやるよ、風邪引くなよ?」)
(「zzz」)
(「...しっかしまぁ、確かに最近かなりハードなトレーニングしてるみたいだったしな
ったく、健康管理は優等生として当然とか言ってるくせにこれだもんな、とんだお笑い草...」)
(「...に」)
(「ん?」)
(「アタシは...絶対に...イチバンに...」)
(「...」)
(「なるん...だからぁ...zzz」)
(「夢の中でもイチバンかよ...ホントぶれねぇよな、お前は...」)
...眩しかったから
本人には絶対に言わないけど、それでもいつでも、どんな時でも、ひたすら真っ直ぐに自分の夢を追い続ける、そんなアイツの姿がオレは好きだったから...
(だからこそ、オレは走ったんだ)
そんなお前と対等でありたいって、一緒に走りたいって、心から思ったから
だからオレは走った
あの選抜レースの日、初めてお前と公的な場で走って以来、オレはお前を追い続け...しかし負け続けた
あまりにも圧倒的なお前の強さに、誰も着いていけなかったから...
オレだけじゃない、皆がお前に追い付けなかったから...
だけど
(それでも...それでも)
俺が諦めなかったのは...
(「今度こそ勝つ!勝負だスカーレット!!」)
(「また?こりないわねアンタも...」)
お前のライバルだ、そう自称しながらもそれでも一度も勝てなくて...
(「なんでウオッカはオークスじゃなくて日本ダービーに出るんだ?」)
(「スカーレットに勝てないからじゃね?」)
(「なるほど、納得」)
(「.........」)
(「...聞くなウオッカ」)
日本ダービーへの出走や海外遠征も、お前からの逃げだって言われて...
(「もう止めろウオッカ!それ以上は...」)
(「止めないでくれトレーナー!!こうでもしないとオレは...オレは...!!」)
(「ウオッカ、お前...」)
それでも...それでも...
(オレが...諦めなかったのは.........!!)
「...もう......いい.........」
静粛な月夜の沈黙を壊したのは、やはりスカーレットだった
ウマ娘の人間よりも高い聴力で辛うじて聞き取れる程に小さな声
座り込んだままポツリポツリとそれを呟くコイツの顔は
「.........もう......疲れた......」
まるで世界が終わった後のような...
人混みで迷子になってしまい、どうすれば良いか分からず途方にくれた子供のような、そんな戸惑いと悲壮感が満ちていて...
「アタシには...もう......何もない...
だったら.........」
今にも、死んでしまいそうな顔で...
「もう...生きてる理由も...ないよね?」
...あぁ、だからこそ、そんなコイツのそんな顔を見た時に胸に去来したのは同情や労り、そんな感情じゃない
「.........そうかよ」
胸に沸き上がる感情のままにオレは歩く
ゴール地点に座り込むスカーレットの元まで近づいたオレに、しかしスカーレットは何の反応も示さない
だから
「...!?」
胸ぐらを引っ付かむ
それに驚き、思わずスカーレットがオレを見る
だけどそんなことは関係ない
何故なら、オレが今抱いている感情など一つしかないから
やはり一緒に走って確信した
オレがコイツにしなければならないことは、今オレの内で煮えたぎるこの思いを、そのままコイツにぶつけることだって
だからオレは叫ぶ
この声の限りに、動揺するスカーレットへと叫ぶ
その感情は...――
「...ふっざけんなぁぁぁっっ!!」
...――怒りだった
ちなみに、わざわざ書かなくても分かるとは思いますが、
ウオッカの日本ダービーへの出場に疑問を呈する聴衆達の声を、彼女に聞くなと言っているのはウオッカのトレーナーです。
別に全員分考えているわけでもないですし、主人公のトレーナー以外のトレーナーはどちらかというといつの間にか生えてたキャラであることが多いのですが、一応作者のこのシリーズに出てくるウマ娘は全員トレーナーがいる設定ですので、急遽登場していただきました。(恐らく)今後登場することはないと思います。