ウマ娘三部作Secondシーズン 鮮血の女王 ~メディアの覚醒~【完結】   作:DX鶏がらスープ

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さぁ、ある意味ここからがこの物語の始まりです
それではどうぞ




それが罪だとしても

 

 

呆気に取られた

 

と言うのも、レースが終わり座り込んでいたアタシは、いきなり胸ぐらを捕まれ大喝されたからだ

流石に驚いて何も言えなかったアタシは悪くないと思う

 

それにウマ娘特有の身体能力の高さ、すなわち恵まれた心肺機能から叩き出されるとびっきりの大声で、これまたウマ娘特有の感度の良い耳が付いている顔の近くで思いっきり叫ばれたのだ

突然のことによる驚きというのも当然あるが、目の前のウオッカの情け容赦のないそれに脳を揺らされたというのも、その暴挙にすぐに反応できなかった大きな要因であるに違いない

 

脳が揺れる

精神的要因と物理的要因、両者の合わせ技で頭が一瞬まっしろになる

 

それでも、そんな風に急な事態に混乱するアタシに構うことなくコイツは叫ぶ

 

「答えろスカーレット!お前は一体誰だ!?」

 

そう言いながらアタシを真っ直ぐ見つめるコイツの目には

 

「華やかな栄光に彩られた常勝無敗の絶対の女王か?全ての敵を情け容赦なく屠る悪逆非道の鮮血の女王か?

違うだろ!!そうだけど、そうじゃねぇだろ!?

お前の本質はイチバンのウマ娘!

いつもいつもいつも!バカみたいにイチバンになるって周囲に公言し続けて!そしてその言葉通りに常にイチバンであろうとし続ける!そんなバカみたいに幼稚で、バカみたいに単純で...それでもイチバン自分の夢に対してはバカみたいに真っ直ぐなウマ娘!

イチバンバカのウマ娘、ダイワスカーレット!!そうだろ!?」

 

だったら!!

そう叫ぶウオッカの燃え盛る怒りを称えた目の端には

 

「バカはバカらしく!イチバンになるって言えよ!!

アタシがイチバンだって、オレにそう言って見せろよ!!

いつもみたいに!周囲のことなんか気にせずに!アタシがイチバンのウマ娘なんだって、そう高らかに宣言して見せろよぉっ!!」

 

 

 

キラリと、何か光るものが見えた気がして...

 

 

 

「ア、アンタ...」

 

それを見て思わず漏れた言葉に、しかし一切の関心を示さずウオッカは続ける

 

「...お前が走ることで誰かが不幸になる?あぁ、その通りだ

勝負だからな。引き分けなんて結末にならねぇ限りは絶対に勝者と敗者は生まれるし、精一杯頑張った奴が負けた時に絶望するのも当たり前の話だ

なんせそれまでに積み上げてきた全て...費やしてきた時間に抱いていた想い、背負った夢や希望、その他諸々全てを無価値だと一蹴されるんだ。負けるってことは本来そういうことだし、それを考えるならお前の至った答えは正しい

正真正銘、お前は一緒に走るウマ娘にとっては絶望の象徴で、お前の走りは一緒に走ったウマ娘達の努力の価値を破壊する

そういう意味で言うなら、確かにお前の手は血に濡れている。..."鮮血の女王"とは良く言ったもんだよ、本当に」

 

だけどな

そう言って紡がれた言葉に

 

「だけどな、スカーレット。お前本当に分からないのか?

そんな呪われた称号はだけど、凡百のウマ娘なら絶対に誰にも得られねぇものだってことが

ある意味、お前だからこその称号だってことが

忌々しい名前ではあっても、それでもそれは間違いなくお前のこれまでの努力の成果ではあるんだよ!」

 

「...!」

 

思わず見返したアイツの目の中には、確かにアタシの顔が映っていて...

 

「...以前オレはお前のことを空っぽだって言ったな?

あの時はオレも色々あって内心荒れてた時期だったから、カッとなってキツい言い方したことに関しては悪かったと思ってる

だけど、言った内容自体が間違いだったとは思ってないし、それはお前自身も分かってんだろ?」

 

「...」

 

「イチバンになる

...なんて抽象的で中身のない目標なんだろうな?

そもそもイチバンってなんだよ。レースで一番になることか?一番目立つことか?一番凄い功績を挙げることか?

どれも合っててどれも間違ってる。全部複合してて、そのくせ具体的な達成のビジョンを何一つとして挙げられない。言ってみれば幼い子供の妄想と変わらない中身のない目標、空っぽの夢

それが、お前が盲信していたイチバンという概念、その正体だ」

 

「...っ!」

 

その言葉に、アタシは咄嗟に目を反らそうとする

だってアタシはもう耐えられなかったから

見つめたアイツの目に映る自分の姿に

何もかもを失い途方に暮れる惨めな自分の姿に

走り抜けた先に何かを掴める、そう信じて沢山の夢と希望を踏みにじり、その果てに何も得られなかった哀れな敗北者の姿に

だからアタシは今だ自身の胸ぐらを掴んだままのコイツの目線から逃げるように顔を背け――...

 

「だけどな!スカーレット!!」

 

「!!」

 

それを一瞬早く察したウオッカが、素早くまたアタシと視線を合わせる

そして...

 

「例えお前の手が血まみれだったとしても!例えお前の信じてきたものが空っぽの夢だったとしても!全部全部が偽物だったとしても!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...――それでも!!お前がここまでそれを信じて頑張ってきたことだけは!紛れもない本物!誰にも否定できない事実だろ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ...」

 

「だったら貫けよ!

例えそれが茨の道でも!沢山の人達の夢と希望を踏み潰す悪鬼羅刹の所業でも!

いつもみたいに胸張って!自分の進む道に悔いなんてないって!堂々と進めよ!!それに足るだけのものを!お前だって費やしてきただろ!!

それがダイワスカーレットの!イチバンのウマ娘の!!

 

 

 

...――オレが憧れた最高にカッコ良いウマ娘の生きざまだろ!?

 

 

 

 

 

 

その瞬間に唐突に脳裏を過るのは、ブルボンさんとの会話の続き

 

(「...すみません、スカーレットさん。意地悪を言い過ぎましたね」)

 

宝塚記念におけるライスさんの命がけの走り

それを見たアタシに

 

(「ですが、スカーレットさん。私もまた、これでも元無敗の二冠ウマ娘です

ですからライスさん程ではなくても、それでもある程度はあなたの心情を察することはできると思っています

だからこそ...えぇ、聞き方が悪かったですね」)

 

ブルボンさんが本当に聞きたかったことで...

 

(「スカーレットさん、あなたは...――」)

 

あの時答えられなかったそれに

 

(「あなたが本当に欲しかったものは...――」)

 

今なら答えられるような気がして...

 

 

 

だからこそ...

 

 

 

「ス、スカーレットさーん!!」

 

 

 

運命は加速する

 

唐突に聞こえた第三者の声に、思わず目を向けると、そこには息を切らした一人の女性がいて...

 

「はぁっ、はぁっ...

さ、探しましたよスカーレットさん!」

 

「た、たづなさん?」

 

予想外の人物の出現に戸惑うアタシに彼女が語るそれは...

 

「た、大変です...スカーレットさん...

入院中のあなたのトレーナーさんが...心肺停止の状態に陥り、意識を失ったそうです」

 

「...え?」

 

長い長い夜の終わり

絶望と停滞に満ちた悪夢の終わりが近づいている

それを暗示しているようで...

 

 

 

「...っ!

いつ死んでもおかしくない一刻を争う状況だそうです!!

ですから今すぐ着いてきてください、早く!!」

 

 






星晨は廻る

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