ウマ娘三部作Secondシーズン 鮮血の女王 ~メディアの覚醒~【完結】   作:DX鶏がらスープ

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ちなみに作者はガチャチケ一枚でブライト引きました

やはり祈祷力!祈祷力は全てを解決する!!




不穏な明日

 

 

 

(「バカにすんな!!」)

 

 

 

 

それが、アイツの第一声だった

 

(「っ!!」)

 

思わずたじろぐアタシに、アイツは畳み掛ける

 

(「俺は自分の“かっこいい”を貫くためにダービーを選んだんだ!!半端なんかじゃねぇ!!」)

 

そう言ってこちらを睨み付けるアイツの目は

 

(「何も分かってないくせに!!」)

 

あまりにも真っ直ぐで、正直な怒りに燃えていて...それは中途半端な覚悟で走るような人間なら、絶対に出来るような目じゃなかった。

 

(...だからかその時、アタシは思っちゃったんだ)

 

直接アイツ自身に言いはしなかったけど、もしかしたらアタシはアイツを見誤ってたのかもって、アイツの覚悟を理解しきれてなかったのかもって

 

そして、アイツはそれを証明した。

 

日本ダービー

日本中の全てのウマ娘が憧れる、最高の舞台

宣言通りアイツはそれに挑み、そして勝利した。

...ちょっと癪だけど、あの時のアイツはちょっとカッコよくて...それこそアタシの思うイチバンのウマ娘そのもののように思えて...

 

でもだからこそ

 

(「お前の言う“イチバン”って言葉に、意味なんてねぇ...」)

 

アタシはアイツの言葉を無視することができない

 

(「幼稚で!適当で!!そして何より空っぽなんだよ!!」)

 

他ならぬ自身の手で、自らの言葉を証明したアイツに言われた言葉が、未だにアタシの耳から離れなくて...

 

 

 

 

...............

 

 

 

.........

 

 

 

...

 

 

 

 

 

「...そっか。だからレースが終った後、浮かない顔をしてたんだね」

 

そう言いながら隣を歩くトレーナーに、アタシは頷く

そして、そのやり取りを最後にアタシ達の間の会話は途切れる。

 

壁に付けられた頼りない照明に照らされた足元は、しかし沈黙に沈んでいる。

ウイニングライブも終わり、すでに関係者ぐらいしか残っていないレース場には、昼間の熱気の残滓すら、もう残ってはいない。

だからこそ、あたりはちょっと前の歓声が嘘のように静まり返っており、それはこの駐車場も同じ。

つい数時間前にはぎゅうぎゅうに車が押し込まれていたはずのそこには、今や一台か二台程度の車があるだけだ。

 

 

 

カツーン...カツーン...

 

 

 

誰もいない駐車場に、二人の靴の音が静かに木霊する。

その音が、今アタシ達の歩いている空間の広さと空虚さをつまびらかにする。

 

 

 

カツーン...カツーン...

 

 

足元から伸びる影が、不気味なシルエットを形作る

ゆらゆらと揺れるそれを見て、まるでここは深海のようだと思うのは、果たして見当違いだろうか?

 

小さな足音はどこまでもどこまでも、深い深い海の底に沈んでいくように、目の前の暗闇の中に溶けて消えていく。

さながら深海魚のように、ひっそりと、存在したことすら残さずに、静かに、静かに消えていく。

 

 

 

カツーン...カツーン...

 

 

 

ぼんやりとした明かりに照らされた、薄暗く、そして伽藍堂な駐車場

まるでそれは太陽の光の届かない深海のようで...

 

 

 

(「お前の言う"イチバン"って言葉に、意味なんてねぇ...」)

 

 

 

そんな下界からの情報が乏しい場所故に、意識は自然自身の内に向く。

 

(...)

 

アタシは俯く

しかしそれでも、目の前に横たわる静寂を前にして、アタシの中ではアイツの言葉が回り続けていて...

 

 

 

(「幼稚で!適当で!そして何より...ーー」)

 

 

 

(...違う)

 

そう思っても

 

 

 

(「ーー...空っぽなんだよ!」)

 

 

 

(空っぽなんかじゃない!アタシの、アタシの目指すイチバンは...!!)

 

しかし、その先の言葉をどうしてもアタシは想像することが出来なくて...

 

(...っ!)

 

歯を食い縛る

それでも、アタシは言い返すことが出来ない。

何故なら、アイツの言葉は別に間違ってる訳じゃないから

悔しいし、腹が立つけども、それでとその言葉には一抹の真実が含まれているからで...

 

 

 

カツーン...カツーン...

 

 

 

虚空に足音が消えていく。

そんな中で考えるのは、アタシの走る理由

 

イチバンのウマ娘

 

小さな頃から追い求めてきたそれは、思えば確かに悲しくなる程に曖昧なもの

 

そもそもイチバンとは何か

文字通りに捉えるなら1番になること、レースで1番になることだろう。

だけど、本当にそれだけが目的ならアイツの言う通り勝てるレースだけ出れば良い。そうすればきっと、アタシは1番であり続けることができる。

でも...

 

(違う...そんなの...そんなの!!)

 

それはきっとイチバンではない。

もしそれがイチバンだとしても、それはきっとアタシの求めているものではない。

なぜならイチバンとは尊いもの、絶対のもの、そして何よりアタシが1番欲しいもの。

簡単に手に入るものでないからこそ、それは価値があるもので、だからこそ、そんなものがイチバンであるはずがないのだ。

 

だけど...

 

 

 

カツーン...カツーン...

 

 

 

それならイチバンとは何かと聞かれても、それならお前は一体何を求めているのかと聞かれても、アタシはその質問に答えることができない。

なぜなら、アタシがこれまで求めてきたものは、イチバンという言葉は、アタシが思う以上に空虚で、空っぽな言葉で...

その意味を、そこに込められた自身の本当の願いを、未だアタシははっきりとそれを言語化することができていなくて...

 

(アタシの...アタシの求めるイチバンは...)

 

思考が空転する。

自分という存在を支える芯の部分に、亀裂が走る。

しかしそれを、アタシは見ていることしか出来ない。

 

イチバンになる

 

それがアタシの、これまでの人生における至上命題

 

だけど、今のアタシにはそれがどんなものなのか分からない。

いや、むしろそんな概念自体が存在するのかすら分からない

 

 

 

カツーン...カツーン...カツーン

 

 

 

響く足音が、アタシを責め立てる。

お前の言うイチバンなど、所詮はハリボテに過ぎない。

子供が意味も分からずに口にする、空虚な言葉に過ぎない、と。

 

だからアタシは...

 

(アタシ...は...)

 

どうして走ってるのか、それが分からなくなりかけていて...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...気にすることはないよ、スカーレット」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アタシははっとする。

そこはただの誰もいない駐車場

どこにでもある、ありふれた光景の一つ

そして...

 

「誰が何と言おうと、僕は君の頑張りを知っている。

それを他の誰にだって否定させない」

 

隣でそう言いながら

 

「君は立派だよ、スカーレット。自信を持って」

 

柔らかく、アタシの手を握ってくれたのは...

 

 

 

(「ダイワスカーレット!」)

 

 

 

突如として、セピア色の光景が目の前の光景に重なる。

それはアタシとこの人の始まりの記憶、掛け替えのない大切な記憶で...

 

(...あぁ)

 

それを思い出した瞬間に、アタシは何だか力が抜けてしまう。心がスッと軽くなるのを感じる。

 

そうだ、この人は何時でも、どこでも、どんな時でも

 

(「僕を...僕を...!」)

 

アタシと一緒にいてくれた人、アタシを支えてくれた人

 

(「君の!トレーナーにしてくれないか!?」)

 

アタシの大切な...トレーナーで...

 

 

 

 

薄暗い駐車場の中で、トレーナーは立ち止まりアタシの手を握る。

その手は、普段の自身無さげな様子からは想像できないほどに大きくて...暖かい

 

だからこそ...

 

「ふ、ふん!当たり前でしょ!!」

 

それが何だか恥ずかしくて...その優しい笑顔を見続けることができなくて、アタシはトレーナーの手を振りほどくと、そのまま少しだけトレーナーから離れたところまで歩く

 

...本当は嬉しかったのに

...本当は救われた気がしたのに

それを素直に表に出せないのがアタシの悪いところなのだとは分かっていても、アタシはついつれない態度をとってしまう

 

それでも

 

「でも...ありがと」

 

彼の言葉がに対して小さく呟いた言葉は、間違いなくアタシの本心からの感謝の言葉の結露で...

 

あぁ、そうだ。

きっとこの人となら、アタシはどこまでも走っていける。

自身の目指すイチバンの意味を、きっと一緒に見つけられる、そう思ったから...

 

アタシは振り返る。

 

今はまだ、あなたへの感謝を、この胸の奥の気持ちを、ちゃんと伝えることはできないけど...それでもいつかきっと...

だから、その時が来るまでずっと一緒に...

そんな願いを込めてアタシは...ーー

 

「トレーn...――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドサッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

...え?」

 

 

 

 

 

 







「...トレーナー?」




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