ウマ娘三部作Secondシーズン 鮮血の女王 ~メディアの覚醒~【完結】 作:DX鶏がらスープ
遂にユキノビジン実装されましたね
正直発表当初は「前の服の方が...」とちょっと思いましたが、よくよく見ると「これはこれで...」となるあたり、本当サイゲってスゴいですよね
神様仏様サイゲ様ですよ、本当に
???side
...――つまらない
いてもいなくても変わらないような、そんな人間
それが、あの頃の僕の自己評価だった
.............
.........
...
ガコンッ
そんな音と共に、ゲートが開く
そしてそれと同時に一斉にウマ娘達が目の前のターフへと飛び出していく
そんな光景を、僕は他のトレーナー達と共に観客席から眺めていた
季節は春
それは新しい命が芽生える季節
長く厳しい冬を乗り越えたものだけが至ることができる始まりの季節
そしてだからこそ、今回の選抜レースに参加したウマ娘達は走る
夢を叶えたいと
立ちはだかる数多の試練を乗り越えて、ようやくここまで来れた
その努力の成果を、今ここで示すんだと
若く、そして生命の力に溢れた彼女達の力強い足音が、青い空の彼方へと木霊していく
まだうっすらと肌寒さが残るグラウンドをしかし、彼女達は大量の汗を撒き散らしながら全速力で駆け抜けていく
跳ねる泥と混じり合い、ぐちゃぐちゃになった体操服でである
だがそんな彼女達の姿を、一体誰が貶めることができるだろうか。
むしろそんな彼女達の姿は
大汗をかき、髪を振り乱し、泥だらけになりなからも、それでも必死にゴールを目指すそんな彼女達の姿は
一般的な女性観からしたらみっともない格好としか言い様のないはずの今の彼女達の姿は、それでもなぜかどんなドレスを着ている時よりもはるかに輝いて見えていて...
ワアアアアアァァァァアアッッ!!
さっき始まったと思っていたレースも、いつの間にかもう終盤だ
時速60キロを越える超スピードで展開されるレースは、それだけにあっという間に始まりあっという間に終わる
そしてだからこそ、走るウマ娘達も最後の意地を見せる
最終直線、これまで後方に控えていたあるウマ娘が、そこに入った瞬間に一気に加速する
一人、二人、三人と、次々に前を走るウマ娘達を抜かしながら加速するそのウマ娘の走りは、瞬く間に先頭を走るウマ娘の首もとへと迫る
だが先頭のウマ娘もまた負けてはいない。絶対に、意地でも抜かさせてなるものかと、最後の力を振り絞り、必死に後ろから迫るウマ娘を引き離そうと試みる
どちらも譲らず、レースはもう完全に二人の一騎討ちだ
だが、そんな風に彼女達が全力で走るのも当然のことではある。なにせ短いレースの時間に反比例してしかし、この僅か数分の中にはこれまでの彼女達の人生の全てが濃縮されているのだ
故にこそ彼女達は走る
その小さな体をそれでも懸命に動かして、時速60キロオーバーの青春を駆け抜ける
だからこそ
「...」
そんな彼女達の姿は
「...」
今の僕には眩しすぎたから...
「.........」
無言で僕は目を閉じる
と同時に、歓声が爆発する
レースが終わったのであろうということは言うまでもない
レース場の人々がターフへとかける歓喜と祝福の声がそれを物語っているし、僕の近くに座っていたトレーナー達もまた、次々と席を立っていく
それは無論、有能なウマ娘にスカウトをかけるため
だからこそ、彼らは他のトレーナー達に出遅れないように、我先にと目を付けていたウマ娘達のもとへと駆け出していく
そして、それは僕もまたしなければならないこと
この春からトレーナーとなった僕もまた、本来ならそんな彼らと同じように一秒でも早く席を立ち、自身の本分を果たすべきなのだ
だけど
「...」
僕はちらりとレース場を一瞥する
するとそこには、一人のウマ娘の周りに群がるたくさんのトレーナー達の姿が見える
それは、さっきレースの終盤で先頭を走っていた彼女だ。ゴールの瞬間を見ていなかったけど、この反応を見るに、恐らく最後まで先頭を守りきったのだろう。レース直後だからか多少ふらつきつつも、それでも周囲のトレーナー達の話に誠実に受け答えをしている栗毛のツインテールのウマ娘の姿は、泥だらけで汗まみれで、だけどそれなのにこの上なく美しいものだったから...
(...きっと、彼女のような子が歴史を紡いでいくんだろうな)
...何の価値もない自分とは違って
そんな諦観と共に、僕もまた席を立つ。だけど、今まで周りにいたトレーナー達のようにターフへと下りることはない
そのまま目の前のターフに背を向けた僕の後ろでは、いまだにさっきのレースの熱狂の余韻が残っていて...
「...」
誰もいない冷たい廊下を見る僕の後ろには、祝福と歓喜に包まれた暖かな春のターフがあって
だけど
「...」
それでも、僕は振り返ることができなくて...
コンクリートの床に踏み出した一歩の足音が、やけに周囲に響くような気がして...
――...あぁ、だからその時、僕は思っていたんだ
――...自分はなんてダメな奴なんだ、と
さっきのレースで一着を取った彼女とはなんて違うんだ、と
――...きっと今日この時から、彼女の伝説は始まる
今あそこにいる誰かと契約した彼女は、そこから輝かしい未来へと歩き出すに違いない、と
――...そんな彼女と対照的に、自分はなんてダメな人間なんだろう、と
いてもいなくても変わらない、つまらない人間なんだろう、と
きっと僕は死ぬまでこうなんだろう、と
――...だからこそ
「離してください!タキオンさん!!」
「やれやれ、君も大概頑固だねぇ!スカーレット君!!」
「...?」
ーー...僕はその時は思わなかったんだ
「くっ!?」
「まったく...言わんこっちゃない...」
そんな言葉と共にトレセン学園の保健室の一角、カーテンで遮られたベッドの方から聞こえていた音が止まる
とは言え、聞こえていた声を聞く限り、どうも穏やかな事情ではなさそうだ
だからこそ、一応ウマ娘を支える職業であるトレーナーである身としては、何があったのかは確認せざるを得ない訳で...
――...そんな自分の予想していた未来が、ある日突然ガラリと変わってしまうことになるなんて
そのきっかけが、まさか今この瞬間
であることだなんて
そしてなにより...
開いたカーテンの向こう側にいたのは二人のウマ娘だった
一人はマッドサイエンティストとして名高い、しかしかつては"超光速のプリンセス"という二つ名を欲しいままにしたという恐るべきウマ娘、アグネスタキオン
今まで特に面識はなかったけど、他のトレーナー達から噂だけは聞いていただけに見た瞬間にそれと分かってしまったのは、果たして良いことなのか悪いことなのか
そしてもう一人は...
「アタシは...アタシは...!!」
「ん?」
全身包帯まみれでタキオンに押さえ込まれ、それでも深紅の瞳にいっぱいの涙をためながらもがく栗毛のツインテールの彼女は...
「君は確か...――」
見た瞬間に気が付いた
そして同時に愕然とした
それは勿論、もう直接会うこともないだろうと思っていたからというのも勿論あるが、それ以上に彼女の身体に巻かれた包帯に目がいったから
春の選抜レース、それであれほどの走りを見せた彼女が、一体どうして今こんなことになっているのか
それがまったく想像できなかったからで...
――...そう、それに何よりそれが、もう会うこともないだろうと思っていた彼女とのその出会いが、後に僕の人生を大きく変えることになるだなんて...
「――...ダイワ...スカーレット?」
――...その時の僕は、思ってもいなかったんだ...
と言うわけで、今回はここまでです。
本当は今回出した分もまとめて、第六部完結まで一気に出そうと思ってたのですが、この辺は逆に小出しした方が良いかなと思ったので、先に出しときますね
さて、では次は一気に第六部ラストまでまとめて出します
多分ここに関しては、小出しするよりスピード感が出ると思うので、もう最後まで一気に行っちゃいます!
是非是非お楽しみに!