ウマ娘三部作Secondシーズン 鮮血の女王 ~メディアの覚醒~【完結】   作:DX鶏がらスープ

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ところで皆さん、アストンマーチャンは引けましたか?
作者は恒例の祈祷力で祈り落としましたが(20連)、前情報など一切調べずに育成を開始した結果、無事に脳を焼かれて灰になりました☆



???「(往年のkey作品並みの激重ストーリーに性癖と情緒をぐちゃぐちゃにされた状態で)こんな時、どんな顔をすれば良いか分からないの」

???「笑えばいいと思うよ(白目)」






鐘は未だ鳴らず

 

 

???side

 

 

 

――昔から、大抵の事はうまくこなせた

 

(「すごいじゃないか■■!あんな難しいテストで満点を取るなんて!!」)

 

――もちろんそれに見合った努力は必要だった。だけど、今まで取り組んできたことの中で、努力しても出来ないなんてことは一つも無かった

だから究極的に、あの頃の僕に出来ないことなんて一つもなくて...

 

(「えぇ!あなたは私達の誇りよ、■■!!」)

 

――何より、そうやって頑張れば皆は僕の事を褒めてくれたから

先生や友達、それに何より、仕事で忙しくてあまり家にいない父さんと母さんが、僕のことをたくさん褒めてくれたから...

 

(「えへへ、ありがとう!父さん!母さん!」)

 

――だから僕は思ったんだ。みんなの期待に応えたいって

父さんや母さん、先生や周りの大人達が言うようなイイ子でいようって

そうすれば皆僕の事を褒めてくれるから

そうすれば皆僕の事を見てくれるから

 

――それがきっと正しいことだって、良いことだって、あの頃の僕は信じていたから...

 

(「本当にイイ子ね、■■」)

 

(「あぁ!これからも頑張るんだぞ?」)

 

(「うん!」)

 

――あの時、そう言って頭を撫でてくれた父さんと母さんの言葉は本当に、本当に嬉しくて暖かくて...だからその言葉をきっと守ろうって、二人が自慢できるようなとびっきりのイイ子でいようって、僕はそう思ったから...

 

 

 

 

 

 

...それは、今は遠い遥か昔の記憶

僕が幼く、まだ何も知らなかった愚かな子供の時の記憶で...思えばある意味一番幸せだった時の記憶...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

窓の外から夕日が差し込んでいる

そしてそれに照らされた部屋の中が真っ赤に染まる

それは一日の終わりが近づいているということ

役目を終えて帰路に着く太陽の残滓に、部屋の柱が黒く長い影を伸ばす

僕以外誰もいない部屋の中に、トレーニングの一環なのだろう、校舎の外のグラウンドをジョギングするウマ娘達の掛け声が、外からかすかに響いてくる

 

逢魔が時、昼と夜の間に挟まれたなんとも言えないクールタイムの中で、下界から隔絶された部屋の中はとても静かだ

だからこそ落ち着いてこれまで作業が出来ていた訳なのだが、同時に静かすぎたのだろう

窓から差し込む夕日が顔に当たるまで、僕は完全に時間感覚を失っていた

思いの外仕事に集中し過ぎてしまったらしいな、とぼんやり思いながら、僕は椅子の上で軽く体を伸ばす

 

「ん...」

 

昼からずっと書類仕事をしていたせいか、身体はあっちこっちが固まっていた

パキパキと鳴る関節の音が、耳にも小気味良い

そのままちらりと横目に見た時計は、そろそろ帰る時刻であることを告げている

だから僕も道具を片付けて席を立ち、部屋を出ようとして...――

 

「...」

 

ふと窓の外を見た僕はため息をつく

それは地平線の彼方へと消えていく、真っ赤な太陽の神秘的な美しさに見とれたから――では勿論ない

だからこそ

 

(...家に帰るのはもう少し後になりそうだな)

 

そんなことを思いながら、僕は机の上のものを片付けて、仕事をしていた部屋から出る

そしてそのまま職員室へと向かい、部屋の鍵を返したその足で、さっき窓の外から見えた影を追って校舎の外へと出た

 

 

 

世界が赤く染まっている

空に、大地に、その狭間に佇む校舎や木々だけではない

たまにすれ違うウマ娘達に、そんな彼女達に挨拶をしながら歩く僕自身もまた赤く赤く染まっている

その様はまるで景色に赤いフィルターをかけたようで、そんなどこか現実感の薄いその光景の中を僕は歩く

 

まだそこまで遠くには行っていないはず

そう思いながら校舎沿いにしばらく進むと、案の定

紅に沈む世界の片隅で、一人その場に佇む少女がいたから

 

「...また無茶な自主トレをしようとしているのかい?」

 

そう声をかけると、どうやらこちらに気付いていなかったらしい

ギクリと動揺した様子で振り返る彼女の姿は、いい加減ここ数日で見慣れたものになっていて...

 

「...はぁ、またアンタ?いい加減しつこいわよ?」

 

「それはこちらの台詞だよ。

自分だって分かってるんでしょ?こんなことを長く続けられる訳がない

いつか致命的な怪我を負いかねないって

タキオンさんも心配してるよ」

 

「うっ...」

 

こちらの言葉にバツが悪そうに目をそらす彼女の顔を見るのも、もう何度目か

だけど、彼女は止まらない

自分の状態が分かっていない訳でもないし、心配してくれる友人達への罪悪感がないわけでもない

それでも、限界を超えて自分を追い込まなければ満足できない彼女の性質はあまりにも厄介なもので...

 

「はぁ...」

 

ため息の一つもつきたくなるのは、仕方がないことだろう

 

...そもそもだ、どうして僕が今もこうして彼女に関わっているのか

担当がいない新人トレーナーとて暇ではない、それがどうして目の前の彼女の為にわざわざ時間を割いているのか

それは...

 

 

 

「...もう少し、自分を大切にしたらどうだい?ダイワスカーレットさん」

 

 

 

それは、少し前

あの日の保健室まで遡る

 

 

 

.............

 

 

 

.........

 

 

 

...

 

 

 

「ふぅ...やれやれ、ようやく落ち着いてくれたねぇ」

 

そう言ってタキオンさんは、自身の制服の裾を整えると、その後すぐにこちらを向き僕に頭を下げた

 

「ありがとう、通りすがりのトレーナー君。正直私一人では手を焼いていた所だったんだ。

君がいてくれて本当に助かったよ」

 

特に奇をてらうことのない素直な感謝の意

それを普通に示すタキオンさんを見ていると、先輩方から聞いていた彼女に対するイメージ...話の通じない狂ったマッドサイエンティストというイメージと、目の前にいる彼女の姿との解離に少しだけ僕は戸惑う

 

保健室にはかすかに薬品の匂いが漂っている

そんな非日常の空間の中で、更に非日常な相手からしかし日常的なことをされると言うのは、なかなかに困惑するものだ

 

無論僕は彼女のことをまだよく知らない

だからこそ、多分僕の知らないマッドサイエンティストと呼ばれるに足る部分はきっと彼女にはたくさんあるのだろうし、今目の前にいる彼女の印象だけで彼女の総体としての評価を定めるのはあまりにも早計と言うものだ

 

とは言えだ

それでも目の前で真摯に僕に頭を下げる彼女の姿は、今この瞬間だけは、間違いなくマッドサイエンティストなんかではない、ちゃんと話が通じるまともな人間のように見えたから

 

「い、いや、別に僕はそこまで大したことはしていないよ。それよりも...」

 

そう首を振りチラリと目線を逸らす僕の意図に、彼女はすぐに気付くと苦笑する

 

「あぁ...まぁ、そうだねぇ

ここまで手伝ってもらっておいて、何も語らないというのは不義理が過ぎるかな?」

 

そう言って僕に彼女が話してくれたのは一人のウマ娘の話

 

それはすなわち、今僕の前にあるベッドで寝息を立てている彼女

包帯だらけのボロボロの姿で、それでも保健室から抜け出そうとし、途中で入ってきた僕の、トレーナーというウマ娘の専門家である立場を使った説得を駆使してようやく静まってくれた彼女、ダイワスカーレットさんの話に他ならなくて...

 

「...なに、簡単な話さ。

この子はイチバンになりたい、ただそれだけなのさ」

 

「...と言うと?」

 

「文字通りの意味に捕らえてもらって構わないよ。この子は何でも一番で無ければ気が済まない性格でねぇ

勉強にスポーツにその他諸々...

とにかくあらゆることで自分が一番で無ければ満足できないんだ」

 

そう語るタキオンさんは、やれやれと首を振る

 

「だからこそ、その為の努力をこの子は惜しまない

常に一番であり続ける為に、この子は何時だって精一杯努力をし続けていて...故に、時に無理をしでかす」

 

今日だってそうさ、とタキオンさんは続ける

 

「君も見ただろう?彼女の身体中に巻かれた包帯を。あれは日頃の無茶な自主トレが祟った結果だ。

今回は幸い数日寝ていれば良くなる程度の怪我で済んだが、それでもしばらくは安静にしなければならない怪我であることは間違いない

それでも保健室の先生の目を盗んでトレーニングに行こうとするんだから、流石に私も肝が冷えたよ」

 

そう言ってタキオンさんはそっとベッドに横たわる彼女、スカーレットさんの頭をなでる

愛おしそうに、まるで壊れやすいものを扱うように大切そうに彼女の頭を優しく撫でるタキオンさんの横顔はハッとするほど美しくて、だけど同時に

 

「まったく...一体何がこの子をそこまで動かすのか...

一体何がこの子をそこまで駆り立てるのか...

私には皆目見当がつかないよ」

 

どこか悲しそうな...まるで子供の心配をする母親のような、そんな心の底から彼女の行く末を不安に思っているような顔をしていて...

 

「本当に、困った子だねぇ...」

 

そうポツリと呟くタキオンさんの顔が忘れられなかったから...

 

 

 

.............

 

 

 

.........

 

 

 

...

 

 

 

「...――別に僕もタキオンさんも、トレーニングをするなと言っている訳じゃない。体調を考えてくれと言っているんだ」

 

そんな話をするのも、もう何度目か

目の前の彼女からしたら、耳にタコが出来るであろう程に聞かされたであろう言葉を、僕は今一度口にする

あの日から、何だかんだで関わってくる僕のことを、彼女が内心うっとおし思っているのは当然分かっている

だけど、それでも僕はそれを止めない

 

それは勿論ダイワスカーレットさんのことを心配するタキオンさんのことが放っておけなかったというのも勿論ある。

マッドサイエンティストだなんだと言われていても、それでも大切な人が傷付くのを見ていることしか出来ないという状況のあの時のタキオンさんが見ていられなかったというのもあるし、単にトレーナーとしてウマ娘の無茶を放っておけないというのもまた理由の一つ

他にもトレセン学園の関係者として、一人の大人としてなどなど

そんな風に、僕がスカーレットさんに構う理由はいくつかある

だけど何より僕には彼女が

 

「たった数日

ほんの数日の間大人しくしてくれればそれで良いんだ

それで怪我が治った後にトレーニングをするのなら、僕らも何も言わない

だから...――」

 

何度も会い、最近は体裁を取り繕うこともなくなってきた、そんな彼女が

まるで何かに追い詰められているかのように、自身の鍛錬に固執するその姿が、どうしても気になってしまったからで...

 

 

「――...あぁ、もう!分かったわよ!!」

 

 

 

突然そう言うなり、スカーレットさんは足元に置いていた自身のカバンを拾い上げる

そうかと思うと、キッと吊り上がった目で彼女は僕を睨む

 

「今日のところは引いてあげるわ!いい加減アンタに付きまとわれるのも面倒になって来たし、流石にタキオンさんにこれ以上心配はかけられない...

忌々しいけど今回はアタシの負けよ。アンタの言う通り、ちゃんと怪我が治るまでは大人しくするわ

これで満足でしょ?」

 

そう言って渋々ながらにその場を後にする彼女は、当然一人だ

それは単に今彼女が一人であるというだけの意味ではなく、もう一つ

無理無茶無謀を地で行く彼女を支えるトレーナー、それが今の彼女にはいないことを示している

 

「...」

 

それは何故か

簡単な話だ。あの選抜レースの後、彼女をスカウトしようとするトレーナー達に、スカーレットさんは一つの条件を付けたからだ

曰く「自分が出走する全てのレースにおいて自分を勝たせること、一番にすること」

そのあまりにも難解かつ傲慢...悪く言えば思い上がっているとしか思えない条件の前に、彼女に声をかけようとする者達は皆去っていて...

だからこそ、彼女はまだ誰とも契約していない

 

磨けば光る原石

しかもとびきりの...新人トレーナーである僕ですら分かるほどの、それこそ歴史に名前を刻むことすら夢ではないのではないか、そう思わせるほどの特大のダイヤモンドの原石

だけど、それにも関わらず彼女を磨こうとする者は誰一人としていない

 

無論本人にやる気が無いわけではない

むしろ誰よりもやる気に満ち溢れていると言っても良いし、それは今のこの状況こそが何よりの証拠だろう

最高の才能に十二分な努力

二つとも揃っているにも関わらず、それでも彼女はひとりぼっちで...

 

沈みかけていた太陽の最後の灯火は、ここに来ていよいよ消えようとしている

まるで蝋燭に灯る火のような微かな明かりが、地平線の彼方へとゆっくりと消えていく

 

そんな中で僕は、こちらに背を向けて去っていくスカーレットさんの背中を見つめる

 

 

 

(...ねぇ、スカーレットさん

君はどうしてそんなにもイチバンに拘るんだい?)

 

 

 

...また聞くことができなかったそれを口の中で小さく呟きながら、僕はただその場に立ち尽くすのだった

 

 

 






ちなみに作者、結構長いことウマ娘やってますが未だ無ラチナです
作者が弱いのではない…ガチ勢が強すぎるのだ…(言い訳)


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