ウマ娘三部作Secondシーズン 鮮血の女王 ~メディアの覚醒~【完結】 作:DX鶏がらスープ
はい、ここからまたダスカの時間軸に戻ります
トレーナーの余命宣告
それを受けた彼女はこれからどんな道を歩んでいくのでしょうか?
それでは、どうぞ
アタシの両親は、昔から忙しい人だった
(「ママー!」)
空港のロビー
久しぶりに会うママに、幼いアタシは全力で飛び付く
そしてそれを、仕方ないわねと苦笑しながらも、それでもママは優しく受け止めてくれる。
それがあの頃のアタシには嬉しくて嬉しくて...
(「あのね、ママ!聞いて聞いて!!」)
(「はいはい、なあにスカーレット?」)
尻尾をブンブン振りながら、幼いアタシはママに思いっきり甘える
全力で甘え倒す
それはアタシがママのことが大好きだというのも当然あるけど、それ以上に普段中々こういう時間が取れないからだ。
アタシのママ...現役時代は圧倒的な成績でその名をターフに轟かせ、引退した今でも海外を飛び回って様々な事業を手掛けるカリスマウマ娘
そんなママは、強くてかっこ良いだけじゃなくて、すっごく優しい人で...そんなママのことがアタシは今でも大好きだ
だから、ママに甘えるこの時間はその頃のアタシにとっても本当に大切な、掛け替えのない時間で...
(「アタシね!この前のかけっこでクラスでいちばんだったの!!すごいでしょ!!」)
(「まぁ!スゴいわねスカーレット!!流石は私の自慢の娘ね!!」)
(「えへへ♪」)
ママが優しく頭を撫でてくれる
それが嬉しくて、アタシもなんだかぽわぽわした気分になる
と
(「...お~い、パパもいるよ~」)
(「あー!パパだー!!」)
ママの後ろからかけられた声に、幼いアタシがとてとてとその声の主の方に駆けていく
(「おかえりー!!」)
そしてそうやって抱きついてきたアタシを抱き返しながらその人、パパは苦笑する
(「まったく...本当にスカーレットはママのことが大好きだな?」)
(「うん!ママ大好きー!!」)
(「あらあら、スカーレット?
パパのことはどうなの?」)
(「パパも好きー!!」)
(「最初からいたのに、完全無視でママに抱きついたのを見ていると、説得力がないな~...」)
そう言って遠い目をするパパ
でも、そんなパパもまた久しぶりのアタシとの再開は嬉しいみたいで
(「よしっ!じゃあ皆でご飯を食べに行くか!!
スカーレットは何が食べたい?」)
すぐに復活して、そうアタシに尋ねる。
だから...
(「う~ん...にんじんハンバーグ!!」)
(「よし分かった!それじゃあママ、行こうか!!」)
(「はいはい。それじゃあスカーレット、行くわよ?」)
(「うん!!」)
アタシは手を繋ぐ
大好きなママとパパ、その二人と手を繋ぎながら、アタシ達は空港を後にする
それは、アタシの幸せな記憶の一つ
幼い頃の、大切な思い出の一ページ...
.............
.........
...
光陰矢の如し、という諺がある
月日が流れる様を、飛んでいく矢の速さに例えたことわざだ。
これは個人的には良くできた諺だと思う。何故なら、確かに時間の流れる速度というのはあっという間だからだ。
つい昨日のことだと思っていたはずなのに、過去は一瞬にして遥か彼方へと過ぎ去ってしまう。
アタシ達が過去から未来へと一方通行で走り続けている以上、それは避けられないこと。
その様を矢に例えるというのは、なかなかにユニークで、それでいて確実に的を射た発想だと、アタシはそう思う。
だからこそ
ワァァァァアアァァァァァッッ!!
飛んでいく矢のように、高速で疾駆するアタシ達ウマ娘の人生の体感時間が...
「またしても!またしてもこの子です!!」
その諺のように、むしろそれ以上に早いのは当然のことで...
フワッと、アタシのツインテールが靡く。
それを気にせずゴール板を駆け抜けたアタシは、勢いを徐々に止め、やがて立ち止まる
そうして見上げた空は、憎らしいほどに青く穏やかに晴れ渡っていて...
「...」
それをじっと眺めるアタシの後ろでは、実況の声がターフに響き渡っている
そしてそれは、とりもなおさず今のアタシの現状をそのままに語っていて...
「ダイワスカーレット!ダイワスカーレット選手です!!
今回のレースでも一着を射止めたのは、真紅の女王ダイワスカーレット選手!果たしてこのまま、次の大阪杯でも栄光を手にしてしまうのか!?」
実況の声が響く
そんな中...
「...」
アタシは観客席の端に目を向ける
大勢の群衆がひしめき合うその場所の一角、そこを見つめる
でも...
(「おめでとう!スカーレット!!」)
そこにいるはずの、当たり前にいるはずの
(「よく頑張ったね!」)
そう言って誉めてくれるあの人の姿はどこにもなくて...
「...」
目の前の空白から目をそらす。
観客席にお辞儀をして、アタシはターフの上から去っていく
...と
(...?)
どこからか飛んできた何かが鼻先を掠める
気になって手に取ったそれは、桜の花びらで...
(...そっか)
それを見て、アタシは痛感する
あれからどれだけの時間が経ったのか、今までどれだけの時間を走ってきたのか、そして...
フワッ
アタシは手の中の花びらをそっと手放す。
すると、それは瞬く間に風に拐われて、どこまでも青い空の彼方へと消えていく
それを見届けたアタシは、今度こそターフの上から去る。
空っぽの...なんの役にもたたない王冠を抱いて
季節はもうすぐ春
トレーナーが倒れてから、約半年...
と言うわけで、何だかんだで劇中では半年という時間が経過しました。
それはダスカの身の回りの物事を半年分進めると同時に、
彼女のトレーナーの命のタイムリミットを半年分縮めるということです。
残された時間は後半年
その時間を彼女が一体どう過ごすのかは...続きを読んでのお楽しみです