ウマ娘三部作Secondシーズン 鮮血の女王 ~メディアの覚醒~【完結】   作:DX鶏がらスープ

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そう言えば、皆さんは初うまぴょいのウマ娘や初Aランクのウマ娘って覚えていますか?

作者は前者はミホノブルボン、後者はオグリキャップです

だからなんだという話でもありますが、
そういうウマ娘って、自分の育成の壁を破った象徴でもあるので、ついつい特別視してしまいますよね。
例えチャンミで勝てなかろうと、闘技場で勝てなかろうと、それでもウチのウマ娘が一番ですって思える位入れ込めるのが、このゲームの最大の良いところなのではないでしょうか?

ちなみに作者の場合



初うまぴょい:ミホノブルボン
初温泉:ヒシアマゾン
初Aランク:オグリキャップ
初A+ランク:トウカイテイオー
初Sランク:マヤノトップガン
初S+ランク:ナリタブライアン
初SSランク:ナイスネイチャ



という具合になっております。
こういうのって見てるだけでも楽しいですよね




警告と予兆

 

 

「...そうか」

 

そう言うとタキオンさんはひどく悲しそうな、苦しそうな顔をする。

そこには大切なものを自身の手で守ることができなかった、という無力感がありありと滲み出ていて...

 

「...そこまで決意が固いのならば...もうどうしようもない。

残念ながら、私では君を止めることは出来ないようだねぇ...」

 

そう言って立ち上がるタキオンさんに、アタシは謝罪する。

 

「...ごめんなさい、タキオンさん」

 

「...なに、別に謝る必要はないよ」

 

しかし、タキオンさんは悲しげに笑うだけ

 

「決めたのだろう?それなら貫くが良い。

せめてそれが間違ってないことを、君が後悔しないことを、私は祈るだけさ...」

 

そう苦笑するタキオンさんの姿に、

アタシは心乱される。

憧れの、大切な先輩にここまで心配

をかけさせてしまったことに対する罪悪感が胸を突く

 

だけどそれでも、アタシは今立ち止まる訳にはいかない。

今立ち止まってしまったら、今までの全てが無駄になる。

ここまで積み上げてきたもの全てが、価値を失ってしまう

 

そして...

 

(「スカーレット...」)

 

「...」

 

思い浮かんだアイツの顔は、なぜか悲しげなもので...

アタシはそんなイメージから目をそらす

 

と、そんなアタシに

 

「...ひとつだけ、忠告をしておこう」

 

そう言ってタキオンさんが話してくれたのは

 

 

 

.............

 

 

 

.........

 

 

 

...

 

 

 

「ハァッ...ハァッ...ハァッ...」

 

駆ける駆ける駆ける

 

「ハァッ...ハァッ...ハァッ...」

 

アタシは草原を駆け抜ける

地平線の彼方まで続く、雄大な緑の光景の中を、力の限り走り抜ける

 

「ハァッ...ハァッ...ハァッ...」

 

だけど、いくら走っても景色は変わらない

抜けるような青空はどこまでも果てしなく広がり、足元の芝もまた途切れるところを知らない。

 

それは一種の完成された世界

過去も未来も現在も、時間という概念が欠如している代わりに、永遠にその姿を保ち続ける、そんな絵本の挿し絵のような非現実的な世界で...

 

だからこそ、そんな病的なまでに広く果てしない世界の中を駆け抜けながら、アタシは必死に周りを見回す

 

誰か!誰かいないの!?

 

そんな思いで見回した周囲にはしかし、誰もいない

何故ならここは広すぎるから

例えば、サハラ砂漠の真ん中に取り残された旅人が、そう簡単に人を見つけられるだろうか?

例えば、太平洋の真ん中で座礁した船が、そう簡単に陸地を見つけられるだろうか?

大いなる地球の圧倒的スケール感を前にした時、人は自分達の存在がどれだけちっぽけなものなのかを思い知る

 

だからこそ、その例に漏れず何一つとして他の生き物の気配すら感じられないこの場所に、ポツンと一人残されたアタシもその例外ではなく...

 

「...っ!!」

 

胸の中で急速に広がるのは、圧倒的な不安と孤独感

 

それは紙に垂らした墨汁のように、アタシの心を少しずつ蝕んでいく

 

もし、このまま誰も見つけられなかったら?

 

もし、走り抜けた先に何もなかったら?

 

もし...ずっとこのままだったら?

 

不安は焦燥に変わり、耳鳴りがしそうなほどの静寂が孤独感をことさらに煽る

そしてそれは、次第にアタシの中に、現状への無力感と絶望感を芽生えさせる。

 

無駄なんだよ。もう何をしてもここから出られないんだよ。

 

そんな心の声を、いつしかアタシは無視できなくなっていて...

 

「...ぁ」

 

気が付くとアタシの足は止まっていた。

その事実に気付いた瞬間に、体から力が抜けたアタシは地面に膝をつく。

 

しかし、それでも周囲の景色は変わらない。

それはまるで、たかだか一個人の生き死にが、遥かなる星の運行になんの影響ももたらさないように。

例え誰かにとっては特別な1日であったとしても、世界全体から見ればそれは極めて凡庸な1日であるように。

草原は広がる

無限にして永遠なる草原、それはアタシの嘆きも絶望も、それら全てを飲み込むように広がっていて...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガバッ、と音をたててアタシは跳ね起きる。

心臓はバクバクいってるし、体も汗でびしょびしょだ。

それでも、そこはアタシの部屋

夜の闇に包まれたその部屋は、決して先のような無限の空間ではなく有限の空間であったから...

 

(夢...)

 

その事実に気付いた瞬間に体から力が抜ける。

深い安堵と共にもう一度ベットに投げ出した体を、ポスッと軽い音をたてて寝具が柔らかく受け止める

それは間違いなく現実の感触で、それがアタシにさっきまでの光景が全部夢であったことをことさら強く実感させる。

それでも...

 

「...」

 

天井を見上げる

そこに広がるのは、どこまでも飛んでいけそうな青空ではなく、見慣れた天井。外界とこの部屋を区切る頼もしい仕切り。

それを見つめるアタシの目蓋の裏に投影されるのはさっきの夢。

無限に広がる草原の夢。

それはいつからか時々視界にちらつくようになった景色

誰もいない無人のターフの先に見える景色

 

そしてそれはきっと...

 

(「...なぁ、スカーレット君」)

 

タキオンさんの忠告、それそのもので...

 

(「君は、ウマ娘の可能性について考えたことはあるかな?」)

 

 

 

.............

 

 

 

.........

 

 

 

...

 

 

 

「ウマ娘の可能性...ですか?」

 

「あぁ、そうだよ。

正確には我々ウマ娘という種族、その能力の限界点についてだ」

 

質問の意図が読めず、思わず聞き返したアタシの言葉に、タキオンさんは首肯し、そのまま少しだけ歩き出す

 

「考えてもみたまえ

有史以前から現在に至るまで、この世界には多くのウマ娘達が生まれ、競い合い、数々のドラマを生み出してきた

それがウマ娘という種族の歴史であり、その営みの中で、私達は数々の英雄達の偉業を目撃してきた」

 

例えば、とタキオンさんは続ける

 

「我らがトレセン学園のスクールモットー、その元となった伝説のウマ娘、エクリプス

100バ身という常識を疑うような着差でレースを制した”ビッグレッド”ことマンノウォー

史上初の無敗アメリカ三冠ウマ娘セクレタリアトに、無敗で54連勝という大記録を成し遂げた"ハンガリーの奇跡"、キンチェム...

 

無論この国にも無敗三冠を成し遂げた"皇帝"シンボリルドルフなどのような素晴らしいウマ娘はいるし、比較的最近の話をするならば、世紀末を圧倒的な強さで駆け抜け覇王と呼ばれたテイエムオペラオーに、言わずと知れた"黄金世代"

彼女達より少し前の世代だが、逃げ先行差し追い込みの4つの脚質全てを使いこなしたURAファイナルズ初代女王マヤノトップガンなどなど...

 

このように連綿と紡がれてきたレースの歴史の中で、私達は多くの英雄達の偉業を目撃してきた」

 

だがね

 

そう言って一度言葉を区切ったタキオンさんの口からでた言葉には

 

「...私は思うんだ

確かに彼女達はとても強いウマ娘達だ

それこそ歴史に名を残すような、まさに偉人と言うのが相応しい一騎当千のウマ娘達だ。

それでも...」

 

押さえきれない狂気が滲み出ていて...

 

「あぁ、それでも...きっと、まだ足りない。足りないんだよ!」

 

そう言ってタキオンさんは振り返る

 

「繰り返すが、彼女達の強さを否定する気は私には一切ない。

だがね、それでもと私は思うんだ!

こんなものじゃない、と!

私達ウマ娘は、もっと先に行ける!!

スピードの向こう側...その先の世界へと!!

それこそが、私の目指すもの!生涯をかけて追い求めるものなんだ!!」

 

そして...

 

と一気に語り終えたタキオンさんは

 

「私は一度だけ、その片鱗を直に見たことがある。

それこそが、私が君に忠告したいことなんだ」

 

そう静かにアタシへと語りかける。

その様子は先の熱烈な語りとは打って変わったように静かで、しかしそれでいて、先のそれよりも遥かに重い空気を纏ったものであったから...

 

「...」

 

ゴクリとアタシは唾を飲み込む

語られる内容が、決して生半可なことではないことを確信する。

きっと、聞いてしまったらアタシはもう戻れない。これが分岐点であることを無意識に認めてしまったから

 

見つめ合うアタシ達の目線の先を、白い蝶がゆっくりと横切る

時計を見ていないから正確な所は分からないが、恐らくそろそろ昼休みが終わるのだろう。

気付けば周囲のウマ娘達はどこかに消えており、中庭にいるのは私とタキオンさんだけだ。

 

だからこそ

 

「...教えてください、タキオンさん」

 

アタシの声は確実にタキオンさんに届いたはずだし

 

「あなたがアタシに忠告したいことは...なんですか?」

 

それでも...例え戻れなくなったとしても、その先の話を聞きたい

むしろ、聞かなくてはならない気がする

その為の覚悟を決めたアタシの視線は、しっかりとタキオンさんの目に映ったはずだったから

 

「...なに、そこまで難しいことではないよ」

 

そう呟くタキオンさんの声は、誰もいない中庭にはっきりと響くもので...

 

 

 

「サイレンススズカ、というウマ娘を、君は知っているかな?」

 

 

 






という訳で、今回の更新はここまでです。

次回、ダスカは大阪杯へと出走します。
そして、そこから物語が大きく動き出します。


また次の更新がいつになるかは作者にも分かりませんが、
それまでどうかのんびりとお待ちしていただけると幸いです
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