【遊戯王GX × ZEXAL】十代と決闘庵‼︎/遊馬VSクロノス校長‼︎ 作:ふれれら
◼︎ゼアル15話の決闘庵には、六十郎じっちゃんが「旅立つ弟子」のために掘った「ネオス」と「フレイムウィングマン」の木像があります。
◼︎つまり、決闘庵には十代が、間違いなく滞在したことがあるのです。
「始まりは遥かな昔。何も存在しない暗闇に、最初に一枚のカードが生まれた。そして、表と裏が決まり、世界の始まりが訪れた」
(GX177話 ダークネス)
「遊馬、多次元世界って知ってるか。この世界はひとつにしか見えないけどな、色々な世界がくっついてるってことだ」
(ZEXAL19話 九十九一馬)
「すっげえ!レッドアイズ、ネオス‼︎ ブラックマジシャンガールまで!」
「驚いたか、この木像はのう、ワシが魂を込めて作ったデュエルモンスターズじゃ。弟子が一人巣立つたびに、木像を一体作ってきたのじゃよ」
「弟子?」
「ああ。この決闘庵はのう、デュエルの修行場として栄えた由緒正しき草庵じゃ」
(ZEXAL15話 九十九遊馬、六十郎)
「そういえばお前の瞳って左右違うよな」
「オッドアイと言って、人間の場合はメラニン色素の変化で起きる。有名人はアレキサンドロス8世、ローマ皇帝、そして、遊城十代などがいる」
「だ、誰それ!?」
(ZEXAL143話 遊馬、アストラル)
「今度の土曜日に同窓会があってのう。トメさん、お菊さん、元気かのう」
(ZEXAL19話 九十九春)
◇ ◇ ◇
キミは、憶えているだろうか。
ヒーローを冠するモンスターたちと異世界を超えて冒険と戦いを繰り返した「遊城十代」の物語を。
アストラルと共にナンバーズをめぐる大きな戦いへ身を投じた少年「九十九遊馬」の物語を。
デュエルの歴史に刻まれた、この二大英雄譚は、時に全く別の物として語られる。
だが、その裏には深い繋がりがある。
伝説の力「ゼアル」の裏側にある、隠された繋がりを、
最後の希望、遊城十代に。
かつて、世界の裏側から呼び覚まされたダークネスは、こう語った。
始まりは遥かな昔。何も存在しない暗闇に、最初に一枚のカードが生まれた。
そして、表と裏が決まり、世界の始まりが訪れた、と。
そのカードこそが、ヌメロンコード。
世界を創り上げた全能の力である。
幼い遊馬を連れて冒険に出た父、九十九一馬は、かつて遊馬にこう言った。
「遊馬、多次元世界って知ってるか。この世界はひとつにしか見えないけどな、色々な世界がくっついてるってことだ」
かつてユベルが破壊しようとした次元の数は十二。
そう、次元は十二に分かれ、表と裏が存在する。
この全てを総称して二十四次元と呼び、それらを解析したドクターフェイカー、そして九十九一馬は、彼らの生きる世界を除く23次元全てに通じる法則性を見出し、これを「23次元方程式」と呼んだ。
当時は、多次元はあらゆる事象の観測結果に基づく21ヶ所、つまり「21次元方程式」という学説が主流だった。九十九一馬はそれを覆し、こう言った。
「抜けてるんですよ。あと二か所。答えは、23次元方程式だ!」
そう、遊城十代の生きる時代と、九十九遊馬の生きる時代には、ヌメロンコードと世界の成り立ちの歴史に纏わる、明確な繋がりと法則性がある。
では、時代は?
これは日常の中にヒントがある。
九十九遊馬の祖母、九十九春は御年七十歳にして薙刀の達人であり、温厚な見た目とは裏腹に非常にパワフルな人物である。
参観日を控えた遊馬は、姉と祖母にそれを打ち明けられず、黙っていたことがあった。
その時、遊馬の祖母は、こんなひと言をこぼしている。
「今度の土曜日に同窓会があってのう。トメさん、お菊さん、元気かのう」
遊馬の祖母、九十九春と親交の深い、彼女の同級生、トメさん。
そう、かつて遊城十代の世代の伝説を見送り、アカデミアを定年するまで生徒たちを見守り続けた、生徒に愛されし購買のおばちゃんである。
女性に年齢を尋ねるのは無粋だが、遊城十代の世代の生徒たちの思い出に残る「トメさん」は、見た目30〜40代のおちゃめな中年女性だ。
そして九十九春は70歳。二人は同級生である。
つまり、「遊城十代」の伝説と「九十九遊馬」の時代には、ちょうど約30年程度の隔たりがあると証明できる。
────そう、30年ほど、昔の話だ。
融合召喚が全盛期だったのもこの頃で、当時デュエルアカデミアの校長を務めた鮫島校長は、「サイバー流」という最も栄えたデュエル道場の師範だった。
主流な流派であるサイバー流に成り代わるために、サイコ・ショッカーを操る「サイコ流」という流派がサイバー流を潰しに来たこともあった。
そう、この頃はデュエル道場の全盛期。
つまり、九十九春の知人で、遊馬の師匠「六十郎」が師範を務める決闘庵も、この「デュエル道場全盛期」に栄えた融合道場のひとつであると分かる。
決闘庵は、融合召喚を主要な召喚方法として、木像や木製のデッキを用いて修行する、かつて栄えたデュエル道場だ。遊馬は融合を操る六十郎とデュエルしたこともある。
デュエル道場、[[rb:決闘庵 > デュエルあん]]の師範、六十郎。
カイトとの初デュエルに敗れて意気消沈する遊馬に道を示した人物であり、遊馬からは師匠と呼ばれ慕われる老人。
九十九遊馬がその門を叩いた時、寂れた道場には既に門下生は一人も残っていなかったが、そこには「E・HERO ネオス」の木像と「E・HERO フレイムウィングマン」の木像が、生き生きと道場の中で時を止めていた。
あの時、遊馬と六十郎はこう語った。
「すっげえ! レッドアイズ、ネオス‼︎ ブラックマジシャンガールまで!」
「驚いたか、この木像はのう、ワシが魂を込めて作ったデュエルモンスターズじゃ。弟子が一人巣立つたびに、木像を一体作ってきたのじゃよ」
「弟子?」
「ああ。この決闘庵はのう、デュエルの修行場として栄えた由緒正しき草庵じゃ」
気付いただろうか。
決闘庵に、ネオスとフレイムウィングマンの木像があることの意味を。
そう、遊城十代は、確かにここに立ち寄ったことがある。
舞台は絶海の孤島、デュエルアカデミア。
そこはデュエルを学ぶ全寮制学校であり、ここで数々のデュエリストが育ち、巣立っていった。伝説が多く残るこの島には、かつて遊城十代という生徒がいた。
あらゆる伝説が数多く残された、遊城十代とその世代。
デュエルの世界に名を刻んだ者も、数多のデュエリストに埋没していった者もいた。
その一人、「三沢大地」という、かつてのラーイエロー首席の青年。
異世界へ旅立った彼の出身を知る者は今となっては少ないが、入学して間もなく数多くのデッキを持ち歩く彼のスタイルは、明らかにアカデミアに入る以前から培われたものだ。
では、彼のルーツはどこにあったのだろうか?
その答えに、ひとつの推測が立つ。
遊戯十代の世代から約三十年。
知っていただろうか。
九十九遊馬の縁者の、ひとりの老人。
遊馬に師匠と呼び慕われる決闘庵の主、六十郎は。
本名を「三沢六十郎」という。
ぜひ確認して欲しい。
遊馬はそれを、六十郎がギラグの石像を見つけた際のテレビ特集の中で、間違いなく見ていたのだ。
第一幕【十代と決闘庵】
これは、ひとりのヒーローが。
学校を卒業してしばらくして、世界中を放浪する中で。
一度だけ、この街、ハートランドに。
ふらりと現れた日の、今となっては木像と老人しか知らない物語だ。
「悪りぃな、三沢の親父さん、泊めてもらっちまってよ」
「なぁに、音信不通のバカ息子の実家を訪ねてきてくれた貴重な客人じゃ、たいしたもてなしはできんが、ゆっくりしていってくれ」
そう言って六十郎は、赤いジャケットの少年を道場に快く招き入れた。
少年は旅慣れた埃っぽさをまとって、バツが悪そうに頭を掻きながら、赤いズダ袋と一匹の猫を背負って道場へと足を踏み入れた。
「オレがまだデュエルアカデミアの一年だったときかな。三沢とはよくデュエルしてさ。三沢ってデッキを何個も持ってて、何度デュエルしてもデッキが違ぇから、すっげえワクワクしてさ。その時、たまたま、ポロッと聞いたのを思い出して」
『ああ、ウチは親父がデュエル道場をやっててな。デッキは修行の名残ってやつだ。いつかお前も遊びに来るといい』
「思い出したのは卒業してずっと後だったし、アイツと別れて時間も経っちまってたけど、鮫島校長が──三沢の親父さんの道場はまだやってるって教えてくれて。そんで」
「そうかそうか。
六十郎は膳を前に、十代に飲み物を注いでやって、そう苦笑した。
「まあサイバー流のモンたちとは反りが合わんくてな。喧嘩ばっかしとって腐れ縁で敵みたいなモンじゃったが、何が縁になるか分からんものよな。うちのせがれも、道場を出て鮫島なんぞのやってる学校に行くと言い出したもんじゃから、散々親子喧嘩したわい」
六十郎は遠い目で、昔日を懐かしむように目を細めた。
「バカ息子に跡を継がせるつもりだったんじゃが、この通り音信不通の親不孝モンでな。こうしてせがれの友達が来てくれたのも、何かの縁じゃわい」
数人の弟子がひっそりと修行する、この山奥の道場も、夕方になれば完全に息を潜める。
日暮れにカラスの鳴き声が響いて、物悲しかった。
「……あいつ、すげー頭よかったんだぜ。オレは授業は寝てばっかだったけど、三沢は勉強は学年で一番だったんだ」
「そうか。……そうか、そうさの。あやつは、ワシには分からん小難しい本が好きだったのう」
十代は、しばらく三沢の父親が求めるまま、記憶にある三沢とのやりとりをできるだけ語った。
異世界に残ると決めた三沢の決意も。
「まったく、あの親不孝モンめ、しょうがないのう。まあ、男は自分で決めた道を勝手に行くモンじゃ。あやつもそうだったんじゃろう」
その時期が、少し早かっただけの話さのう。
くいっと六十郎はお猪口を煽って、度数の高い日本酒で顔を赤くして、トン、と膳に置いた。
「あんちゃんも、若いナリしとるが、いっぱしの男の顔をしとる。ずいぶん帰ってないんじゃないかの」
「あー、まあ」
「たまには帰ってやるといい。今、頭に浮かんだ人がいる内はのう」
そこに込められた実感に、十代はさらにバツが悪そうに頭をかいて背を丸めた。
ヤンチャ坊主が叱られたようなそのナリに、六十郎は高らかと笑って、お猪口をもう一杯手酌した。
「さあて、ここはデュエル道場、由緒正しき決闘庵じゃ」
六十郎が、お猪口をカッと勢いよく置く。
「デュエリストの客人は、デュエルで迎えるが礼儀よ」
「お! やったぜ! そうこなくっちゃ!」
十代はご馳走もそこそこに、待ちきれないように立ち上がった。
「ほっほっほ。我らが決闘庵の自慢の木像モンスターをお見せするとするかね」
「うおー! デュエル道場『決闘庵』か、どんなデュエルをするんだ!? 最高にワクワクしてきたぜ!」
「し、師匠ーー!」
十代を道場に案内する六十郎の前に、飛び込んできたひとりの弟子が、ボロボロで廊下に走り込んだ。
「またサイコ流のヤツらが…!」
「なんじゃと!?」
◇ ◇ ◇
「なんだなんだ?」
外が騒がしかった。
矢のように飛び出した六十郎を追って、十代は騒ぎの中心へ向かいながら、首を傾げた。
「サイコ流? サイコ…サイコ…? どっかで聞いたような…?」
「あんちゃん、隠れとれ!」
轟音。
飛び出した十代が見たのは、暴力を振るう複数の男性たち。
道場の壁に穴が開けられ、屋根の瓦がガラガラと落ちてきた。
「うわっ!? 三沢の親父さん、何だアイツら!?」
「かつて外道と蔑まれたサイコ流の男どもよ」
六十郎は道場の廊下に立ち、門弟たちを庇いながら顔をしかめた。
「ヤツら、サイバー流の新たな後継者に敗れてから、各地のデュエル道場を見境なしに襲うようになりおった」
「サイバー流の後継者? カイザーの跡を継いだのって、確か……」
十代が思考を飛ばした瞬間、六十郎が十代を後ろに押し退けて鋭い声を上げた。
「いかん! 下がっとれ!」
「親父さん、危ねえ!」
崩れた決闘庵の天井。
上から降ってくる木材。壊れた屋根が崩れ落ちる。
「し、師匠ー!!!」
幼い門弟が叫んだ。
上がった煙。モクモクと立ち登る土煙に、狂った笑い声が上がった。
「はははは! 決闘庵のジジイ、ようやくくたばりやがった! これで、これで、オレのサイコ流は…!」
瓦礫の中から、ガラリと音がした。
「ふー! なんとか間に合ったぜ」
重い木材を押しのけ、六十郎を脇に抱えて、十代は額の汗を拭った。
十代の瞳が、左右で違うオレンジと緑に光る。
頭上で崩れた屋根を支えたのは、召喚されたネオスだった。
「これは……あんちゃん、お前さん……もしや」
「サイコ流……思い出したぜ」
十代は六十郎を避難させると、スタッと地面に飛び降りて、ビシッと指を指した。
「誰だキサマ!!」
「アンタはオレを忘れちまったみたいだが、オレはアンタを忘れてないぜ!」
六十郎とサイコ流の男の間を遮るように、十代は堂々と立ちはだかった。
「今でもハッキリ覚えてるぜ、アンタのデュエル! アンタはカイザーを襲って、翔に負けた道場破りだった!」
「カイザー、翔…丸藤翔か!?」
サイコ流の男はハッとした。
「キサマ、あのときカイザーやカイザーの弟と一緒にいた…!?」
男は顔を片手で押さえ、手の下からギラリと狂った目を向けた。
「そうだ、思い出した…! 憎き丸藤亮、丸藤翔といた、赤ジャケットの男!? いや、そんなバカな!!」
男の瞳孔がカッと開いた。
「ありえん!! アレは十五年も前だぞ!?」
男は化け物でもみるような目で、十代を見た。
「なぜキサマ、あの時と同じ姿をしている!?」
ぽりぽり、とうなじを掻いて、十代は明後日のほうをみると、肩をすくめて、おちょくるような調子で言った。
「さあてね。地獄から蘇ったんじゃないか?」
「この……ふざけるな! 格下道場がぁ!! おちょくりやがって……オレはサイバー流を超える男!! キサマらのような弱小道場など、オレが、オレがァ!」
へっ、と声を出して、十代は首の後ろを掻いた。
「翔はあのデュエルで強くなった。アイツの未来を変えたデュエルだった。けど、アンタはどうやら、デュエリストの誇りを忘れちまったみたいだな!」
「黙れ黙れ黙れ黙れ!!」
激昂した男が、バッドを振り回して叫んだ。
「この亡霊が! 俺が地獄に送り返してやる! 名を名乗れ!」
「デュエリストの誇りを忘れちまったアンタに名乗る名は無いね! ……ん、いや、そうだな」
十代は顎をさすって、面白いことでも思い付いたように。ニヤッと笑った。
「いいぜ、名乗ってやろうじゃねえか。オレはこの決闘庵の弟子、『三沢大地』だ!!」
「!! あんちゃん」
六十郎は大きく目を見開いた。
主犯格の男は、ヒステリックに叫んだ。
「バカな! 決闘庵の息子は死んだはず!? まさか、本当に亡霊だとでも言うのか!?」
「勝手に殺してんじゃねえよ! だいたい、三沢は異世界に……おおっと。あー、三沢は、違う、オレはだな、えーっと、ちょっと遠くに行ってただけだ!」
細かい説明は苦手だとばかりに、雑に男に返した十代は、赤いデュエルディスクを構えて、余裕たっぷりに笑ってみせた。
「このオレが帰ってきたからには、もう好き勝手させねえ! デュエルだ! 翔に負けて腐ったテメエの性根、デュエルで叩き直してやる!」
「黙れ黙れ黙れ黙れ!」
「デュエリストの誇りを忘れちまったアンタに、親父さん……ええっと、師匠! 師匠の相手はもったいないぜ! 弟子のオレが相手してやる! だからこれ以上、この決闘庵に手を出すな!」
「少年、おまえさん……」
「悪りぃな親父さん、勝手に名前借りてよ。アイツにはいつか異世界で謝っとくから────……仲間の借りと一宿一飯の恩、ここで返させてもらうぜ!」
「「デュエル!」」
◇ ◇ ◇
「先攻はオレがもらうぜ、オレのターン! ドロー!」
高らかと宣言し、不敵に笑った十代は、素早くカードをセットした。
「来い! E・HERO スパークマン!」
現れたヒーロー、青い装甲に金の鎧を纏って、光を迸らせる戦士が、堂々と雄叫びを上げる。ヒーローの手の中で、光のプラズマが好戦的に弾けた。
「さあ、かかってこいよ! ターンエンドだ」
十代はヒーローに並んで、挑発するように指先をくいっと引いた。
男は俯いたまま、病的に落ち窪んだ目をギョロリと動かした。
「サイコ流の恐ろしさを思い知るがいい…! 俺のターン、ドロー!」
強烈なドローが風を起こす。
男は腕を振り上げた。
「俺は《人造人間─サイコ・リターナー》を攻撃表示で召喚!」
現れたのは、サイコ・ショッカーを彷彿とさせる小柄なモンスター。サイコ・ショッカーを一回り小さくしたような人造人間だった。
十代は、記憶に引っかかるその姿に、柳眉をピクリと跳ね上げた。
(! サイコ・リターナー……アレは確か、墓地のサイコ・ショッカーを呼べるカード……)
「《人造人間─サイコ・リターナー》はダイレクトアタックできる。やれ! サイコ・リターナー!
構えたHEROをすり抜けて、雷をまとったプラズマ波が激突する。十代に600のダメージが入る。
「ぐっ。……へっ、こんなモンかよ!」
「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド」
男が不気味なほど静かにターンを終える。
吹き飛ばされた十代は、仰向けから両足をぐいっと伸ばして起き上がって、そのまま胡座をかいた。
十代は余裕ありげに顎をさすって「うーん」と思案げに唸った。
「《サイコ・ショッカー》デッキか。厄介なカードが控えてんな。けど、オレのヒーローたちはまだまだこっからだぜ、オレのターン!」
元気よく跳ねるように立ち上がった十代が、勢いよくドローする。引いたHEROを大きく掲げた。
「来い、第二のヒーロー!《E・HERO バーストレディ》!」
雄叫びを上げるバーストレディ。赤く美しい炎の衣を纏って降り立つ。並んだ二体のヒーローが、呼応するように飛び上がった。
「モタモタしてるとサイコ・ショッカーが飛んできちまうからな、その前に潰させてもらうぜ!」
十代が手刀を真上に振り上げると、HEROたちが咆哮した。
「いくぜ、バトルだ!」
「この瞬間、速攻魔法《サイキック・ウェーブ》発動!」
男が素早く伏せカードをオープンする。
「デッキから《人造人間-サイコ・ショッカー》を墓地に送り、600ポイントのダメージを貴様に与える!」
「いってっ!」
不意打ちを食らって、十代の残りライフは2800となった。
出鼻を挫かれた十代は、鼻をさすりながらぼやいた。
「サイコ・ショッカーが墓地に来ちまったか、そう簡単には攻略させてくれないってわけだな。けど、オレとヒーローたちは、そのぐらいじゃ止まらないぜ!」
十代は腕を勢いよく振り下ろした。
「いくぜ! まずはスパークマンで、サイコ・リターナーを攻撃だ!」
「永続トラップ《グラビティ・バインド-超重力の網-》! レベル4以上のモンスターは攻撃できない!」
「おおっと。スパークマンはレベル4だから、攻撃できなくなっちまったか。けど、甘いぜ! バーストレディはレベル3! サイコ・リターナーを攻撃! バースト・ファイヤー!」
サイコ・リターナー:ATK600
バーストレディ :ATK1200
男に600ダメージが入る。男のライフは残り3400。
破壊されたサイコ・リターナーに、男は動じず、想定内というように目だけをギョロつかせた。地面に手がかざされる。土の中からモンスターが、ボコリと這い上がってきた。
「サイコ・リターナーが墓地に送られた時、墓地の《人造人間─サイコ・ショッカー》を特殊召喚できる! よみがえれ、サイコ流の申し子!」
入れ替わるように現れたのは、サイコ・リターナーとよく似た、しかし一回り大きな人造人間だった。十代は見上げて、デュエルディスクを構え直した。
「出てきたか、サイコ・ショッカー! あらゆる罠を封印しちまうモンスター、分かっちゃいたが厄介な能力だぜ」
ピッとカードを立て、十代は勢いよくセットした。
「ならこっちは魔法で対抗だ。永続魔法《強欲なカケラ》を発動! ドローのたびにこのカードに強欲カウンターを起き、カウンターが二つ乗ったとき、オレは2枚ドローできるぜ。これでオレはターンエンド!」
「俺のターン、ドロー!」
再びドローが風を巻き上げる。男は落ち窪んだ目で、ぼさぼさの前髪の下から幽鬼のように睨んだ。
「本来は《グラビティ・バインド》でレベル4以上のモンスターは攻撃できない。だが、サイコ・ショッカーの前にすべてのトラップは無意味と化す!」
サイコ・ショッカーが両手を掲げ、フィールドに電撃が走る。
フィールドのすべての伏せカードは電気を纏い、既に発動している罠カードも電撃をまとって封じられた。
十代はサイコ・ショッカーを見上げて身構えた。
「これで《グラビティ・バインド》は無効…サイコ・ショッカーは攻撃が可能ってことか!」
「バーストレディをひねり潰せ!
サイコショッカーの攻撃力は2400、対して十代のバーストレディは1200。その差1200のダメージが十代に容赦なく襲い掛かる。
「ぐっ…!」
十代のライフが急落し、残り1600となる。
男はダメ押しとばかりに手札からカードを掲げた。
「さらに手札から、永続魔法《トラップ・リクエスト》を発動する! 自分のターンのスタンバイフェイズ、相手のデッキを確認し、トラップカードを1枚選択して相手の魔法・罠ゾーンにセットできる! そのカードが場を離れたとき、相手プレイヤーは1000ポイントのダメージを受ける! 俺はこれでターンエンド」
「また厄介なカードだな……オレのターン、ドロー! 強欲なカケラの効果で、強欲カウンターを1つ置く!」
フィールドにカケラがひとつ生まれて、割れた《強欲な壺》の形を成していく。完成間近の割れた壺が消える。
「行くぜ、オレは《E・HERO フェザーマン》を召喚!」
十代はニッと笑って素早く手首を返し、ピッと魔法カードを表にする。
「ヒーローは相手が強ければ強いほど燃えるんだぜ! 装備魔法《下克上の首飾り》を発動だ! コイツを装備したモンスターが自分より高いレベルのモンスターと戦うとき、その差×500ポイント、攻撃力がアップするぜ!」
フェザーマンの攻撃力が急上昇して、体がひと回り大きくなる。
「サイコ・ショッカーのレベルは6、フェザーマンは3! 攻撃力は1000から2500にアップするぜ!」
十代は勢いよく拳を前に突き出した。
「バトル! サイコ・ショッカーを攻撃! フェザーブレイク!」
フェザーマンの攻撃が、サイコ・ショッカーの胸を撃ち抜く。
フェザーマンの攻撃力は2500、サイコ・ショッカーは2400。その差100のダメージが男に入る。男のライフは残り3300となった。
「そしてスパークマンで
「俺のターン!」
十代が伏せた二枚のカードに見向きもせず、男は食い気味にドローした。
「この瞬間、《トラップ・リクエスト》の効果を使う! 貴様のデッキを確認し、トラップカードを伏せさせる!」
空中に表示されるデッキたち。
覗き見られたデッキに、十代は舌打ちした。
「ちっ」
「はん、ザコが使うデッキはしょせんザコだな。俺は貴様の《ミス・リバイブ》を選択し、セットさせる」
(ミス・リバイブは、相手の場にモンスターを召喚するカード……しかも今使うと1000ダメージのオマケ付きか。今の手札じゃ、みすみすアイツを有利にするだけだ。けど……)
十代は、ギラリと光る橙と緑の
「オレのデッキを侮ったこと、必ず後悔することになるぜ」
「ほざけ! 現れろ、第三の人造人間! 《人造人間-サイコ・ジャッカー》を召喚! その効果により、自身を生け贄とすることでデッキから人造人間を手札に加える!」
男がデッキから手札に加えたのは、二枚目の《人造人間─サイコ・ショッカー》だった。倒したばかりのモンスターの再来に、十代は眉間に皺を寄せた。
「……」
「さらに! 貴様のセットカードを確認し、罠の数だけ手札から人造人間を特殊召喚!」
「またカードを確認するカード…!」
十代は眉根を寄せ、相手に見えるようにデュエルディスクをグイッと引き上げた。
「オレのセットカードは……《ヒーロー見参》と《
「罠は2枚か! ならば好都合、俺は2体の《人造人間-サイコ・ショッカー》を特殊召喚!」
二体のサイコ・ショッカーがずらりと並ぶ。
その壮観さに、ぴゅう、と十代は口笛を鳴らした。
「六つ星モンスターを一気に2体も呼び出すなんてな、おもしろくなってきたじゃねえか。けど《下克上の首飾り》は、攻撃する時も攻撃される時も攻撃力をアップできる! サイコ・ショッカーの攻撃力じゃ、フェザーマンには勝てないぜ!」
「ならば見せてやろう! サイバー流などとうに超越した、真のサイコ流の力を! 俺はレベル6のサイコ・ショッカー2体でオーバーレイ!」
突如、光球に変化したモンスターたちが、紫色の渦に吸い込まれる。
「!? ……なんだ!?」
「2体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築!」
紫色の渦から、光が爆発する。
「まさか、これって…!?」
「エクシーズ召喚! 現れよ!これが人造人間の究極形!《人造人間-サイコ・レイヤー》ッ!!」
現れたサイコ・ショッカーの進化系。
豪華な衣装を身に纏った、巨大な人造人間が、圧倒的なプレッシャーを放った。
光の球が二つ、流星のようにモンスターの周りを飛び回る。
じり、と十代は地面を踏み鳴らした。
「これが、モンスターエクシーズ…! 噂には聞いてたが、見んのは初めてだ。遊星のシンクロ召喚とも違う、未来の召喚方法…!」
「エクシーズ召喚は二体以上のモンスターから、まったく姿形の異なるモンスターを特殊召喚する! 召喚に特殊なカードは不要!」
男は突如、腕を大きく広げて叫んだ。
「いわば『融合』の要らぬ融合召喚! 融合を超えた融合!」
十代はピクッと眉を動かした。
「融合を超えた融合…?」
怪訝に呟いた十代は、やがて、元の表情に戻って、ニヒルな表情を作ってみせた。
「けど、サイコ・ショッカーを墓地に送ったのは間違いだったんじゃないか? サイコ・ショッカーがいなくなって、封印されてた《グラビティ・バインド》も復活だ。ソイツがどんなに強くても、上級モンスターは攻撃できなくなっちまう、だろ?」
「愚かな! エクシーズモンスターはレベルを持たない。よって《グラビティ・バインド》の効果を受けず、《下克上の首飾り》の効果も発動しない!」
「えっ、レベルを持たないモンスターだって!?」
十代は慌てて振り返った。
上級モンスターを封じるはずの《グラビティ・バインド》がまったく反応していない。男は腕を振り上げた。
「サイコ・レイヤーの効果! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、貴様のモンスターの精神を操作する!
「しまった、スパークマン!」
ゆらりと不自然に体を揺らがせたHEROの体が、赤く発光する。男の側に移ったHEROに、十代が悔しげに歯噛みした。
「くっ…! コイツ、ブレインコントロールの効果が使えるのか…!」
「さらに魔法カード、《洗脳-ブレインコントロール》を発動! 800LPを払い、フェザーマンのコントロールを得る!」
フェザーマンの目が、不自然に赤く発光する。正気を失ったHEROが、ゆらりと相手の場に移った。
「フェザーマンまで…!」
十代の場のHEROはすべて相手に渡り、十代の前はガラ空きだった。
「サイコ・ショッカーとブレインコントロールを駆使したデッキ…!」
「そうだ、これがサイコ流の極意!」
男が手のひらを勢いよく掲げた。
「ひねり潰してやる、サイコ・レイヤーで
十代はぐっと眉間を寄せて、デュエルディスクを引き上げた。
「トラップ発動、《ヒーロー見参》! オレの手札がモンスターだった場合、特殊召喚!オレの手札はコイツだ、マイフェイバリットヒーロー!」
ピッと表にしたカードが、光り輝く。
「来い! 《E・HERO ネオス》」
現れたネオス。ヒーローと肩を並べ、十代は満足そうにネオスに笑いかけた。
ネオスの纏う空気もまた、十代に向けて微笑んだようだった。
ネオスの攻撃力は2500、サイコ・レイヤーは2400だ。男は歯噛みして、サイコ・レイヤーの攻撃を止めると、ヒステリックに腕を振り上げた。
「ならばフェザーマンで攻撃! 《下克上の首飾り》の効果でレベルの差だけ攻撃力をアップし、貴様のモンスターを葬る!」
フェザーマンの攻撃力が2000アップし、3000まで急上昇する。
フェザーマン:ATK3000
ネオス :ATK2500
十代のライフが、1600から1100まで削られる。
ネオスは味方の攻撃を真正面から受け止めて、十代を庇って光になって散った。
「くっ……ネオス!」
「ハハハ! 装備魔法が仇となったな!」
男は引きつった不自然な笑い声を上げた。
男はフィールドを今さらのように見回して、そのカードに目をつけた。
「強欲なカケラは次のターンで完成か。ならば、サイコ・レイヤーのさらなる効果! 自分のモンスターを1体リリースして、表側表示のカードを1枚破壊する! 俺は貴様から奪ったスパークマンをリリースして、強欲なカケラを破壊!」
「あっ…! 強欲なカケラが…! くそっ」
完成する前に破壊されてしまった強欲な壺が、細かい破片になって消える。
ターンが終わり、フェザーマンのコントロールが戻る。赤く変化していたフェザーマンの目が元に戻り、十代の横に降り立つ。
十代は手を伸ばすようにして歓迎した。
「おかえり、オレのHERO」
十代は男に向き直った。
一方、ターンを終えた男は、ブツブツと口の中だけで唱えた。
(そう…たとえヤツがどんな手で来ようと、俺の備えは万全。次の俺のターンに《トラップ・リクエスト》でトラップカードを強制的にセットさせ、この《大嵐》で破壊すれば俺の勝ち!)
「見たか…見たか!これがサイコ流の真髄!進化した俺の、サイコ流の真の力だ!」
ハハハ!と男の嘲笑が轟いた。
「融合など、もはや時代遅れなのだ。今はエクシーズの時代!」
ピクッと、十代は無言で片眉を跳ね上げた。
「そうだ……融合など、サイバー流など恐るるに足らず!」
「さあ、それはどうかな!」
「……なにぃ!?」
「アンタのデュエル、ずっと独りよがりだ。ずっと違和感を感じてた。変則的な
「この俺が、怯えているだと!? 愚弄するなァ!」
「いいや、よーく分かったぜ。アンタは信じられなくなっちまったんだ。デッキを、自分を! アンタは怖いんだ、カイザーが、翔が受け継いだサイバー流が、進化し続けるアイツらが!」
「黙れ…」
「サイバー流を目の敵にするのも、そのくせ他の融合道場を襲うのも! アンタはただ怖くて仕方ないんだ、デッキを信じデッキに応える、アイツらとカードとの絆が!! それが自分に無いことが!!」
「黙れ、黙れぇぇぇぇええええええ!」
「それに、どんなに時代が変わっても、変わらねえモンもあるぜ。カードの精霊たち、デッキを信じる決闘者の魂! そして────」
赤い上着をはためかせて、十代はニッと笑った。
「『ヒーローは必ず勝つ』ってことさ!!」
十代はデッキに手を伸ばした。
デュエルディスクを水平に構える。場には帰ってきたフェザーマンと、伏せカードだけ。手札はゼロだ。
(《下克上の首飾り》はレベルの差の分だけ攻撃力がアップするけど、モンスターエクシーズは
十代は構えたまま、フーッと長く息を吐いた。
(伏せてる《
目の前に立ちはだかる、オーバーレイユニットを纏った未知のモンスター。
絶体絶命に思える状況にも、十代は怯まなかった。むしろ、背筋を走るのは、ゾクゾクとした興奮だった。
(ここから逆転するには、あのカードしかない!)
十代はデッキに指を置き、目を閉じた。
「応えてくれ、オレのデッキ」
指先がドクン、と震える。
感じた鼓動に、十代は笑った。デッキの返事を、十代は笑って受け取った。
「ああ。行くぜ……ドローッ!」
引いたカードが、キラリと光を反射した。
「来たぜ! 魔法カード《ミラクル・フュージョン》を発動! このカードは、フィールドと墓地のヒーローで、融合召喚する!」
「なに!? 墓地のカードと融合だと!?」
「さあ、見せてやるぜ、オレのヒーローたちを!」
腕を高く振り上げて、十代は不敵に笑った。
「この姿は世を忍ぶ仮の姿! ヒーローたちは今この瞬間、真の姿を表す! フィールドのフェザーマンと墓地のバーストレディで、融合召喚!」
二体のヒーローが、宙でぶつかり合い、生まれ変わる。
「出でよ、《E・HERO フレイム・ウィングマン》ッ!」
バサリ、と白き翼が大きく羽ばたく。
大きな白い片翼に緑色の肢体、ドラゴンを模したような赤く大きな右腕。変わらぬ十代のフェイバリットヒーローが、その姿を現した。
男は一瞬愕然としたが、やがて我に返ったように笑い出した。
「攻撃力2100…ははは、その程度か! その程度のモンスターで、この俺のモンスターエクシーズが倒せるものか!」
「リバースカードオープン、《
「忘れているようだな、そいつも《グラビティ・バインド》の効果で攻撃できない! カードを使い切ったようだな……俺の勝ちだ!」
「いいや、まだ1枚残ってるぜ! アンタがわざわざ用意してくれたカードがな! リバースカード《ミス・リバイブ》発動!」
トラップカードが立ち上がる。
「なに!? 俺のモンスターを復活させるカードを発動だと!?」
「ああ! よみがえれ、《人造人間─サイコ・ショッカー》!!」
男の場に、サイコ・ショッカーが守備表示で再び現れる。男は嘲笑した。
「バカめ! そのカードは地雷付きなのを忘れたか! 《トラップ・リクエスト》でセットされたカードが墓地に送られたとき、1000ダメージを受ける! 食らえ!」
「っ…!」
堪えた十代のライフが、1100からわずか100まで転落する。
もはやライフに猶予はない、絶対絶命だった。
「ザコカードが! 残りライフはたった100! 俺のエースモンスターを復活させるトラップに、何の意味がある!」
「アンタはそんなことも分からないのか!?」
十代は叫んだ。十代の気迫に、嗤っていた男は思わず呑まれた。続く言葉を忘れた男を、十代は勢いよく指さした。
「アンタはデュエルから、自分のデッキから逃げたんだ! だから見ようとしない……アンタのカードの本当の強さを!」
「俺のカードの真の強さだと…!?」
「《人造人間─サイコ・ショッカー》の効果! すべてのトラップは無効になる!」
フィールドに電撃が走る。
トラップカードがすべて痺れて動かなくなった。
「あ……あ……! 《グラビティ・バインド》が…!」
「そうさ、これがアンタのカードの力、アンタのデッキの可能性だ!」
モンスターの攻撃を阻むものは無くなった。
場には守りを失い、棒立ちとなったモンスターだけ。
「さあ、クライマックスだぜ? ネオスでサイコ・レイヤーを攻撃ッ! ラス・オブ・ネオス!」
サイコ・レイヤー:ATK2400
ネオス :ATK2500
ネオスに吹き飛ばされたモンスターエクシーズ。衝撃に男はうめいた。
「ぐうっ……!」
「さあ、フレイム・ウィングマンでサイコ・ショッカーを攻撃!」
守備表示のサイコ・ショッカーが、フレイム・ウィングマンの攻撃を受けて粉砕される。頭を振り乱して、男は叫んだ。
「サイコ・ショッカーは守備表示、戦闘ダメージはない! そうだ、俺の勝ちだ……次のターンで俺の勝ちだァ!」
「あいにくだったな! 言っただろ、ヒーローは必ず勝つってな!」
十代はビシッと指をさした。
「フレイム・ウィングマンの効果! 破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを受けてもらうぜ!」
「なんだと!?」
男は愕然とした。
「バカな、サイコ・ショッカーの攻撃力は……」
宙に浮かぶ攻撃力2400の表示。
そして男の残りライフは────
「2400……! そんなバカな、バカなバカなバカな!」
「いっけえ、フレイム・ウィングマン!! フレイム・シュートォォォォォオオ!」
「この俺が、サイコ流が、またしてもこんな、こんなヤツらにィィィィィィ!」
吹き飛んだ男のライフがゼロになり、決闘終了のブザーが鳴り響いた。
「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」
◇ ◇ ◇
十代は決闘庵の門に立ち、六十郎に別れの挨拶を告げた。
「世話になったな、三沢の親父さん」
「そりゃこっちのセリフじゃ。サイコ流のヤツらも懲りたじゃろ。お前さんのおかげじゃ」
握手を握り返した六十郎に、十代はパッと破顔した。
「いや、オレはいつもみたいにデュエルしただけさ。デュエル道場『決闘庵』、楽しかったぜ!」
「ガッチャ!」と十代は二指を額に当てたあと、指を前に突き出した。
「ブラックマジシャンもブルーアイズもレッドアイズも、スゲー格好良かったぜ! 伝説のモンスターの像が眠るデュエル道場、スゲー楽しかった!」
くうう、と十代は子供のように体を震わせた。
「オレのヒーローたちもいつか、あんなふうにカッケー像になるのを見てみてえなぁ!」
「ほっほっほっ。そう言うと思うたわ」
弟子がガラガラ、と押し車を押してくる。
荷台に乗っていたのは、二つの未完成な木像。作りかけの、ネオスとフレイムウィングマンの木像。十代は目を丸くした。
「親父さん、これ……!」
「あんちゃんが旅立つまでに完成させたかったんじゃがの。若者はせっかちでいかんわい」
六十郎は顎をさすりながら笑った。
ネオスの木像も、フレイムウィングマンの木像も、まだ未完成だというのに躍動感にあふれている。
「我が決闘庵は、弟子の旅立ちの
「う、おおおおおおおおおお! マジかよ! ネオス! フレイム・ウィングマン! スッゲー!!」
十代は目を輝かせ、子どものように無邪気に飛び跳ねながら、「すげー!」とか「カッケー!」とひたすら叫びながら、様々な角度から木像を眺めた。
無言の未完成の木像が、心なしか照れくさそうに時を止めていた。
ワクワクした態度を隠しもせずはしゃぎ回る十代は、やがてチラッと振り返った。
十代だけに見えるネオスとフレイムウィングマンが、心なしか嬉しそうな気配をまとってスッと消えた。
「完成する頃にまた遊びに来るといい。お前さんは我が決闘庵の恩人、立派な弟子じゃ」
ほっほっほっ、と六十郎は高らかと笑った。
「じゃあの。またおいで、あんちゃん」
「ガッチャ! またな、親父さん!」
手を振る六十郎と弟子たち。
十代が振り返った彼らの背後に、ゆらりと揺らめく陽炎のように、デュエルの精霊たちの気配が揺れた。
十代は、はしゃぐように軽やかに、決闘庵の階段を駆け降りていった。
「なあユベル、あの木像さ、カードの精霊の気配がしなかったか」
「そうだね」
「不思議だな。カードの精霊が、カードじゃなく木像に宿るなんてさ」
「何も不思議じゃないよ。昔は精霊は石板に宿るものだったんだからね」
ユベルは黒い翼をゆっくり伸ばしながら、腕を組んだまま青空を見上げた。
「本当に不思議なのはいつだって
「人が大事にした物に宿る精霊、か。そういや、そんな話が
ザァァ、と風が吹いた。
十代は振り返って、街を見下ろした。
ハートランドと呼ばれる、近代的な街を。
「そう、
Generation next story to Yu-Gi-Oh ZEXAL
(物語は次の時代へ)
▼第二幕
【デュエルアカデミア体験入学⁉︎ 遊馬VSクロノス校長‼︎】