逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話   作:LR44(ゆっくり)

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第8話『ケッテンクラートに乗ってバグパイプ吹きながらパンジャンドラムを召喚するくらいしてくれないと』

 その日は、正に【集う聖剣】にとっての厄日であった。

 先日の夜中から常に何者かの気配を感じるが、周囲を探しても誰も見当たらない。そんな状況が続き精神的に疲弊していたところへと……

 

「チッ、敵襲だ!!」

 

 突如強い殺気を浴びせられたドレッドは反射的に殺気の弱いところへと動きながら仲間に警戒を促す……のだが、

 

「んだと!!」

 

 さっきまでいた場所……ではなく移動した先へと何本もの矢が降り注いだ。

 辛うじて避け、弾き、生き延びるが、

 

「うっそだろ、おい!!」

 

 先ほど矢が飛んできた方向とは真逆から心臓を狙った狙撃によりHPが全損し……【不屈の守護者】により1残ったところに、再びの矢の雨が降り注ぐ。それを何とかしのいだところに先ほどと同じく心臓狙いの一撃。

 

「同じ手は食わねえよ!」

 

 今度はしっかりと反応し、弾いた……所にその矢に隠れる軌道で飛んできたもう一本の矢に貫かれHPが0に落ちるところを【空蝉】により再びHPが残る。よく見てみると、刺さった矢には何か紙のようなものが巻き付いていた。

 

「ちょっ、確かこれって」

「起爆!!」

 

 その紙の正体に気付いたペインが対応するより先に走って来たプレイヤーがそう言い、矢に巻かれていた紙が爆発したことにより今度こそHPが0へと落ちた。そして、走って来たプレイヤーは口を開く。

 

「初めまして、【集う聖剣】の皆さん。俺は飛燕、見ての通りさっきドレッドさんを狙撃したプレイヤーですね」

 

 我に返った【集う聖剣】の3人は飛燕に対し構える。

 

「へえ、君ほどのプレイヤーを噂も聞いたことが無いのは少しショックだよ。でも、判断を誤ったんじゃないかな?」

「あのまま狙撃してればよかったんじゃないかってことですか? 残念ながら、相方がそれじゃあ満足しないんですよね」

 

 そう言った飛燕は片手を上げ、誰かに合図するように下へ下ろす。

 

「今だ!!」

 

 その言葉に身構える【集う聖剣】だったが、

 

「……? 何も起こらない?」

「どういう……ことだ?」

 

 しばらくたっても何も起こらないのに一瞬気を抜いてしまった、その瞬間。

 

「この瞬間を、待っていたんだ!! なんてね」

 

 爆発的な速度で突撃してくる人影。瞬く間にフレデリカに肉薄すると、籠手に覆われた右手を振りかぶり

 

「【点火(イグニッション)】!! なんちゃって。まあ、こっちじゃ無いから気分だけなんだけどね」

 

 思い切り放たれた一撃──否、一撃と見紛うほどの三撃によって一気にHPが全損した。

 

「ありゃ、流石に【空蝉】は持ってないか。三発目は余計だったね」

「ハハッ……まさか、【不屈の守護者】の無敵時間を完璧に把握しているのかい?」

「当然でしょ。このゲーム唯一の通常入手可能な死亡回避スキルなんだから」

 

 籠手を装備したそのプレイヤーはナギ。ペインもドラグも、そして先ほど死に戻ったドレッドも前回イベントにて敗北した経験のあるプレイヤーだ。異常なほどの高い技術により他の上位プレイヤーが必ず1つは持っている『運営の悪ふざけシリーズ』を1つも所持していないにも関わらず最強の一角に名を連ねるという、ある種異様なプレイヤー。

 

「さて、ペインさん、ドラグさん。悪いですがメダルは置いて行って貰いますよ」

「あれから二人がどれだけ強くなったのか、私も楽しみなんだよね」

 

 

 そこからの勝負は一方的なものだった。なんせ、片や1対1でペインやドラグ相手に圧勝できるナギと、PvPは特段巧い訳ではないがナギと組んだ時に限り非常に高い対人戦闘力を誇る飛燕。片や1対1ではナギにボロ負けし2対1でも勝てる見込みの薄いのに2対2を強いられているペインとドラグ。どうなるかは一目瞭然だろう。

 

「相変わらず攻撃が全く当たらないな」

「その上当たっても上手く受け流されてロクにダメージが入らねえ。しかも」

 

 ナギの拳を大斧で防ごうとしたタイミングで矢によって軽く武器を弾かれ、それによって生まれた僅かなスペースを縫ってナギの拳が直撃する。いくら軽装とはいえ腐っても前衛。先ほど死に戻ったフレデリカとは違い、一撃で全損はしなかったものの、半分以上はゆうに削られてしまう。

 

「チッ、またかよ。あの飛燕とかいうプレイヤー、ほんっと嫌らしいタイミングで狙撃してきやがる。もうポーションが残り少ねえぞ」

「早くしてくれ。流石にナギを相手に一人で支えるのはかなり厳しい」

 

 

 これまでの戦闘でナギのダメージは1割行くかどうか、飛燕に至っては狙っている余裕も無く一切のダメージを負っていない。対してペインもドラグも何度もHPを危険域まで削られ、回復のためにポーションを大量に消費してしまっていた。

 そして、そこからくる焦りが彼らに大きな判断ミスを引き起こしてしまう。

 

「だぁあ、このままじゃ埒が明かねえ。【ノーガード】【フルパワーアタック】【地割り】!!!」

「ダメだ!!! 焦るな、ドラグ!!!」

 

 VitとIntを少しの間0にする代わりに次の与ダメを3倍にするスキル【ノーガード】。DexとAglを少しの間0にする代わりに与ダメを3倍にする【フルパワーアタック】。そして高倍率高火力の攻撃スキル【地割り】。いずれも現状ドラグしか所持していない強力無比なスキル。更にナギと飛燕の両方を巻き込むように放たれたスキルはナギに避けることを許さない。これだけの火力があればナギの体力を消し飛ばしてお釣りがくる……かに思われたが、

 

「《エンチャント・バイタリティ》、“呪いポーション”投げたぞ、接地5秒後」

「諒解、【カバー】! ダメコンは完璧なんだよ?」

 

 スキルが使用不可になる状態異常『呪い』を与えるが、ポーションの 『通常では自身のみ、高価な店売りアクセサリがあれば自身又は味方に使用できる』 という仕様により産廃扱いされている状態異常ポーションの一つ“呪いポーション”を、カバーの効果が切れると同時に効果が発動するよう投げる飛燕。完璧なダメージコントロールによって【不屈の守護者】を発動させず体力が1割を切るナギ。

 ナギを相手に体力を中途半端に削ることが致命的であることは、ペインとドラグの二人は前回イベントでよく知っている。

 

「不味い、ナギの体力が1割以下になったぞ」

「【火事場の馬鹿力】と【逆境】に【決死】と【ド根性】だっけか? なんであんなピーキーなスキル上手く使えんだよ」

「それだけじゃないぞ。呪いも受けてるから【死中に活】と【根性】も発動しているだろうな」

「うげっ……ってことはナギは今……」

「ステータス1.716倍に攻撃力は2.184倍だよ。どこまで耐えれるかな?」

「んなもん耐えれる訳ねえだろ!!?」

 

 HPが25%以下の時全ステータスが1.1倍になる【火事場の馬鹿力】、状態異常を受けている時全ステータスが1.2倍になる【死中に活】、HPが10%以下の時全ステータスが1.3倍になる【逆境】。HPが25%以下の時攻撃力が1.2倍になる【決死】、状態異常を受けている時攻撃力が1.3倍になる【根性】、HPが10%以下の時攻撃力が1.4倍になる【ド根性】。いずれも町で購入出来たり広く知られるクエストの報酬で貰えるスキルであり、実際【根性】や【死中に活】程度であれば一応所持しているプレイヤーは多いのだが、非常にピーキーなため実戦レベルで使いこなせているプレイヤーは皆無と言っていい。

 

「狙い撃つぜ、なんてな」

「っ、しまった!!」

 

 飛燕の死角からの狙撃に気を取られている隙に、真上から降って来た矢によって貫かれHPを危険域へと落とすペイン。当然、その隙を逃すナギでは無かった。

 

「隙を見せたね!!」

「これは……かなり不味そうだな」

 

 一瞬でペインの懐に潜り込み、右手を大きく振りかぶり、

 

「まず一つ!!」

 

 ナギの拳が直撃し、ペインのHPが【不屈の守護者】により1になり、

 

「二つ!!!」

 

 反転し、ペインを足場にドラグの方へ踏み込む。ついでに踏み込みが攻撃と認識され、ペインの体力が0に落ちる。

 

「三つ!!!!」

 

 踏み込んだ勢いのまま叩き込まれる右手によって【不屈の守護者】を発動させるドラグ。

 

「お、ジャストタイミング。美味しいとこは貰ってくぞ、ナギ」

 

 そこにタイミングを見計らったかのように心臓(クリティカルポイント)へと矢が吸い込まれ、死に戻っていった。

 

 ==========

 四日目。

【集う聖剣】に勝負を仕掛けた。まず最初に狙ったのはドレッドさん。殺意やら何やらに敏感なプレイヤーらしいので敢えて狙撃地点への殺気を薄くしたら綺麗に引っかかってくれた上、その後の真逆からの狙撃→矢の死角に矢→爆破のコンボで即死していった。UPOでは引っかかる方が稀なのに。その後は普通にナギが無双していた。まあ、前回イベントでは2対1でも普通に勝てたらしいから2対2なら余裕だろうな。

 その後は戦果なし。今回のイベント初戦果は金メダル3枚だった。

 ==========

 

 ◇

 

「……アレって」

「【炎帝ノ国】のミイさん、シンさん、マルクスさんにミザリーさんだね。どうする? 私は行けるけど?」

「……行ける、な。うん、問題ない」

 

 4徹目は流石に経験が少ないので自分の状態をしっかりと確認した上で返答をする。

 

「じゃあ、まずはあの白黒の『マルクス』さんってプレイヤー落としてくれる? トラップ仕掛けてくる割と面倒なタイプのプレイヤーだから。そしたら私があの『ミザリー』さんって見ての通りヒーラープレイヤーを落とすから」

「んで、残るのはミイさんとシンさんか。オーソドックスな前衛と純魔かな?」

「シンさんは……SAOのアリスの劣化みたいな感じ? ミイさんは……にゃしいさんの完全下位互換? 例えるなら……にゃしいさんを上手い人のウロボロスとしたら、ミイさんは初心者のトライブリードみたいな感じ?」

「成程……よし。じゃあ、“氷結ポーション”使って、《エンチャント・ストレングス》《エンチャント・デクステリティ》《エンチャント・バイタリティ》《エンチャント・インテリジェンス》。んで、【ターンオーバー】っと」

 

 スタミナの消費量が増加し回復量が低下する状態異常『氷結』を自身に与え、自分とナギにバフをかけ、HPとMPを逆転させるスキル【ターンオーバー】によりHPを1割以下に減らす。

 

「準備終わったから、何時でも行っていいぞ」

「分かった。じゃあ、突っ込むよ【ワイバーンストレート】!!」

「よ~く狙って……【アローレイン】からの【スナイプ】!!」

 

 昨日ドレッドさんにもやった【アローレイン】を囮にした急所狙い【スナイプ】の初見殺しコンボで……あ、こっちは【不屈の守護者】持ってないのか。爆符一枚無駄にしたなあ。それにしても、このバフガン積み状態やっぱ凄いな。そこまでレベル高い訳じゃない俺が上位プレイヤーをワンパンできるんだもの。これでフルバフじゃないんだから恐ろしいよ。

 

「な!!? マルクス!? ミザリー!?」

「っ、敵襲だ! 数2、【集う聖剣】の主力部隊を壊滅させたというナギと飛燕だと推定!!」

 

 シンさんは驚き、ミイさんは急いで他のメンバーに指示を出そうとするが、ちゃんと他メンバーが駆けつけるのに少し時間がかかるタイミングを見計らって仕掛けているので応援が来る前に余裕で殲滅可能だ。……シンさんって言うとちょっとファフナーキャラみたいだな。マークデスティニーのパイロットの。

 

「行け、【崩剣】って、今の完璧に死角から狙ってたのに何で避けれんだよ!!?」

「情熱も思想も理念も頭脳も、気品に優雅さに勤勉さ。そして何よりも早さが足りないんだよ!! 私を倒したかったらケッテンクラートに乗ってバグパイプ吹きながらパンジャンドラムを召喚するくらいしてくれないと」

「何なんだ、そのカオスな絵図は!!??」

 

 

「【炎帝】って、なぜ今のを避けられる!!?」

「湖を支流ごと消し飛ばすレベルとまでは言いませんが、もっと広範囲か高速か必中効果付きかじゃなきゃあ簡単に避けれますね」

「お前もナギの同類なのか……」




飛燕とナギが強すぎる? 10分の1ユキの支援を狙撃しながら出来る奴と【舞姫】や【オーバーロード】相手に勝率平均3割強ある奴なんだぞ? こんくらい余裕だろ。因みに構想段階ではここでナギがフレデリカに大雪山おろしやってました。

<今回のオリジナル要素&ネタ解説>

・【不屈の守護者】
 アニメでは見た目の問題からか、盾を装備していないペインが【不屈の守護者】を発動させていた。類似効果の未知のスキルの可能性もあるが、本作では『大楯が必須なのは習得時のみで効果自体はどの武器種でも発動する』という設定に。そのせいで【集う聖剣】が全員【不屈の守護者】所持となり戦闘シーンでの【不屈の守護者】の登場回数がとんでもなく増加した。

・【不屈の守護者】の無敵時間
 無かったら判定が残存する攻撃で即リスキルされるため0.1~0.3秒ほどある設定。当然【空蝉】にも存在する。

・【ノーガード】【フルパワーアタック】
 極振りの《殉教(まるちり)》をモチーフに作ったオリジナルスキル。『NWOだし、こんくらいぶっ壊れでもいいでしょ』的なノリで出来た。名前の由来は【ノーガード】はポケモン、【フルパワーアタック】はDX3rd。

・ポーションの仕様
 アニメの描写より。後述のスキルを活かすためにあることにした状態異常ポーションが産廃クラスで使えないアイテムになることに書いてる途中に気付いた。

・【火事場の馬鹿力】【逆境】【決死】【ド根性】【死中に活】【根性】
 詳しくは本文中か『キャラ設定』参照の所謂背水系のスキル。類似スキルとしてHPが残り1の時全ステータスが1.4倍になる【背水の陣】、状態異常を受けており、尚且つHPが1の時全ステータスが1.5倍になる【不屈】、HPが1の時攻撃力が1.5倍になる【真・根性】、状態異常を受けており、尚且つHPが1の時攻撃力が1.6倍になる【不退転】が存在する。全て入手は容易だが非常にピーキーなスキルであり【火事場の馬鹿力】【死中に活】【決死】【根性】以外の採用率は低い。

・ミイがにゃしいさんの下位互換
 『継戦能力に難のある』『純魔』で炎と爆裂。友人とバトスピしてる時にふと共通点が多いことに気付いたので例えとして採用した。因みに対戦カードはウォズ(友人)VSギルモン(筆者)。友人のプレミでギリギリ勝って10連勝を果たしたギルモンがコラボ戦で使用禁止となった。その後00もなった。アルパラ(オールコラボ仕様)は流石に使うの自重してる。

・【ターンオーバー】
 本編の説明通り、HPとMPを逆転させるスキル。魔法キャラのMP回復手段としては微妙だが、HPを自分から減らす手段としては非常に優秀。元ネタは『VRMMO学園で楽しい魔改造のススメ~最弱ジョブで最強ダメージ出してみた~』の同名スキル。

・【氷結】
 スキル構成上ダメージを受けない状態異常が必要だったため。元ネタはモンハンの氷属性やられと水属性やられ。特大ではない。

・【ワイバーンストレート】
 ダメージ倍率の高いストレート。元ネタはログホラの同名スキル。

・マークデスティニーのパイロット
 スーパーロボット大戦UXにて機動戦士ガンダムSEED DESTINYのシン・アスカが蒼穹のファフナーとの絡みが非常に多かったことにより生まれたネタ。因みにスパロボUXはデモベがX-Ω以外で唯一参戦している作品。

・情熱も思想も…
 スクライドよりクーガー兄貴の有名なセリフ。厳密には極振りのクーガー兄貴をリスペクトしている【限定解除】レンさんの真似をしているだけ。

・ケッテンクラートに乗ってバグパイプ吹きながらパンジャンドラムを召喚する
 極振りの【ラッキーセブン】シルカシェンさん。剣を分裂させるよりパンジャンドラムの大群が襲ってくる方が何倍も厄介という例え。

・湖を支流ごと消し飛ばす
 極振りの【爆裂娘】にゃしいさんが第一回イベントにてやらかしたこと。
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