逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話 作:LR44(ゆっくり)
イベント開始直前。戦艦からオーラマシンやらガンダムやら、ヨロイやら勇者ロボやら劔冑やらが発進しているのを横目に装備の耐久と消費アイテムの確認を行いながら、話し合いをしていた。
「この配分だと、ちょっと南門の方が危ないかも。私そっち行くね」
「ん。こっちは多分十分だろうから存分に暴れてこい」
「それなら私も行く。こんな
今俺とナギがいる北門にはレグルスさんをはじめとする検証仲間と、【アルムアイゼン】の中でも戦えるメンバーや一部ユニーク持ちが配属されている。
西門には【すてら☆あーく】と【空色の雨】、【ボクと団長と酒と愉快な仲間たち団】がユキさんを除いたフルメンバーで待機している。
東門には【クロイカラス】【戦車はいいぞ】【モトラッド艦隊UPO支部】と、【アーマードコジマ】*1という、特殊装備使いが集まっている。
残りメンバーが南門に当てられているため、ここが最もユニークの配属数が少ないのだ。【牧場主】時雨さんや【ラッキーセブン】シルカシェンさんなど、強力なプレイヤーも勿論多いのだが、仮に鮫御大レベルやそれを超える強さのボスが出た場合ここが一気に瓦解しかねないというのが他の場所とも相談した上での判断だ。
そのため、こちらのメンバーの中でも耐久に優れたナギと常夜さんの二人を送り出してタンクをしてもらうことにしたのだ。
「《望遠》っと。さて、そろそろボスが現れてもおかしくない時間帯だが?」
「どうだ? 飛燕、何か見えるか?」
レグルスさんにそう言われ、《望遠》の紋章を更に重ね掛けして遠くを見る。
「まだボスらしきは……いや、見えました! 小型1000、別の小型100、大型10、超大型1!! それぞれ見た目はインスマス面、魔術師らしきローブ、異形な西洋系ドラゴン、鮫御大!!」
「【鑑定】します! 《望遠》下さい!!」
ここは適任だろうと、オーロラさんに《望遠》紋章を重ね掛けし鑑定して貰う。地味に《望遠》を他人にもかけれるように改造するの大変だったんだよな。
「っ、超大型、名称【幻影海神】で、HPは10ゲージで1ゲージ1000万の計1億! 全状態異常無効、オーバーダメージ無効で全ダメージ半減の極大リジェネ持ち!」
HP1億で極大リジェネ? これ絶対極振り側での弱体化前提のステだよな。ってことは……
「極振りが弱体化してくれるまで耐久戦、ですかね?」
「そうなるだろうな。他の所も似たり寄ったりみたいだし。オーロラ、取り巻きのステは?」
極振り側の弱体化項目に『討伐数10万:一部モンスターの持つリジェネ効果無効』ってあったし、確定でいだろうな。これは取り巻きのステ次第で戦い方を変えないといけないな。と考えていると、
「大型のは【幻影泥竜】で、HP5ゲージ計1000万のオーバーダメージ無効。小型は【邪神の尖兵β】と【
オーロラさんから上がって来た報告は、想定していた最悪と比べるとまだマシ程度の代物であった。え~っと、これは……
「ここにいる方で、100万くらいのダメージをポンと出せる人はいますか?」
「俺の切り札なら100万どころか1億くらいは余裕で出せるが、それ使っちまうとイベント中役立たずになっちまうからな」
「私はそもそも戦闘向きではありませんし、リーフもロウも流石にそこまでの爆発力は無いですね」
「射手子ちゃんが預かってる極振り弾でも一掃は出来ないでしょうしね。Sereneちゃんの毒もタタラちゃんの即死もどれだけ効くか分かりませんし」
それならレグルスさんは論外。オーロラさんたちもせめて取り巻きが近づくまでは役に立たない。アーテルさんの見立てが正しければ【蝕毒腐敗】【淑女冥土】も待機安定。とすると……
「じゃあ、遠距離組は射程に入り次第順次雑魚から攻撃を。後方支援組は乱戦にもつれ込んだ時に備えてMP温存して下さい。近距離組はマージン取りつつ雑魚を削るようお願いします。レグルスさんは隙を見て件の切り札をボスに頼みます」
100万ほどポンと出せる人がいれば、それで雑魚を一掃してもらうのが一番良かったのだが、流石にいなかったため遠距離メインでチマチマ削る戦法で行く。
倒しても新たに湧いたりして持久戦を強制されるならそれこそ乱戦に持ち込まないといけなくなるが、そうなっても一方的な蹂躙にならないだけの戦力はあるから大丈夫だろう。
雑魚の体力が遠距離で削り切るのが現実的な数値で助かったな。
◇
「懐かしいのが来たね。藜ちゃんはどう? 行ける?」
「流石に、全部一気は、厳しいと、思います。一体ずつ、引き離す、のが、いいんじゃ、ないんで、しょうか?」
所変わって西門側。現れたボスは【幻影機龍001】から【幻影機龍003】までの計3体。1億5000万という非常に高いHPに加え、オーバーダメージ無効・全ダメージ半減・全状態異常無効といういつもの耐性3点セットを持った厄介なボス。
北と違い取り巻きが1体もいない代わりに単体でも面倒なボスが3体も配置されていた。
「じゃあ私が2を、イオ君が3を引き付けて、その間に他の皆で1を叩いて貰うって感じで!」
「それなら、1番を、倒したら、先に、3番に、行くのが、良さそう、ですね」
西門側が最もユニークの数が多く、強力なプレイヤーが揃っている。尚且つ
【すてら☆あーく】はユキ以外の全員がアタッカーをこなせるという超脳筋ギルドである。その与ダメージが7割増しになるならば、どうなるかは火を見るより明らかであった。
更に、ユニーク称号効果によってステータスが大幅に底上げされている【ナイトシーカー】カオルや、システム限界である2000に到達していた魔法同時展開数が、ユニーク称号の上限引き上げとユニーク装備の追加発動によって3125という超人的な領域へと至った【賢者の石】ブランが所属するギルド【ボクと団長と酒と愉快な仲間たち団】や、初心者応援ギルドというだけあり支援と戦線維持能力はピカ一のギルド【空色の雨】もいるのだ。
ここまで長々と語ったが要するに、この程度のボスに苦戦するような戦力ではないという事であり、それを裏付けるように西門における戦闘は4か所の中で最も早く終結することとなるのだが、それはまだ少し先の話である。
◇
「これはまた、我らの戦いに打ってつけの相手が来ましたな」
「あの時は結局とどめは極振り達に持っていかれたからな」
東門では戦車や戦闘機、バイクな戦艦とコジマ汚染されてそうな集団と相対していたのは【幻影巨神】、3億のHPとオーバーダメージ無効・全ダメージ半減・全状態異常無効のいつもの3点セットを持ったボスである。それが多数の取り巻き*3を引き連れてやって来たのだ。
ミスティニウム解放戦において岩の巨人、及び【Mistinium Old Geist】と戦闘を行ったのはバイク艦隊のメンバー程度しかいないが、全員がイベントを経験した身。バイク艦隊はアドラステアを引っ張り出しており、【戦車はいいぞ】【クロイカラス】も戦車や戦闘機をあるだけ持ってきている。【アーマードコジマ】も主力の1パーティーだけではあるが不明なユニットがどうたらこうたらとか警告が流れそうな装備を引っ提げている。
ビジュアル的にはこのメンバーが負けるところが全く想像できないレベルである。
「どうやらあの時と同じく内部に入って踏破しなければ巨人の体力は減らせない様子。我らと【アーマードコジマ】の方々がが内部に入る故、そちらは取り巻きを頼みたい」
「了解した。【クロイカラス】への連絡はこちらが受け持とう」
戦車や戦闘機の支援を受け、シドとハセが右足に、ZFとバイク艦隊のメンバー数人が左足に。そして【アーマードコジマ】のメンバーのうち、半分が右腕、もう半分が左腕へと突入した。
それを確認したコバヤシとchaffeeは他のメンバーに指示を飛ばす。
「これで周りを気にする必要は無くなった! 思いっきりぶっ放せ!!」
「全機爆撃用意、焼け野原にしてやれ!!!」
その指示の元戦車の波状攻撃が、戦闘機の爆撃が、モンスターの大群へと降り注いだ。いくらイベント用に強化されたモンスターであっても、流石にこれだけの攻撃には耐えられないようで、次々にその数を減らしていく。
しばらく経つと内部の踏破がされたようで、四肢にHPが現れた。だが、その頃には雑魚を粗方片づけ終わり余裕が出来ていた戦車と戦闘機、そして満を持して参戦したアドラステアによって秒で溶かされて行った。
だが、その程度で終わるほどボスは甘くは無かった。内部へと突入したメンバーはこの先真の絶望を知ることとなる。
◇
「おいおい、流石にこれはヤバいぞ」
「明らかに物量で来てますね。処理が追い付きません」
南門は最も厳しい戦闘を強いられていた。現れたのは【灰被り姫β】や【狂信者β】といった歴代イベントに登場した小型モンスターの強化版が、地平線まで埋め尽くすほどに集まっていた。
個々の能力は他3か所と比べると極端に低いが、その分数が極端に多い。【ラッキーセブン】や【戦闘狂】ならまだしも、【牧場主】ですら苦戦するレベルと言えばその異常性が分かるだろう。
普段使いのマスケット銃が単発式であり、広範囲に高火力をばら撒けるパンジャンドラムも残弾性な【ラッキーセブン】シルカシェンや、ペットによる制限で魔法を使えず、スキルによる制限で通常の遠距離武器を使えない上、特殊装備も近接特化な【戦闘狂】ナギが苦戦するのは理解できる。だが、テイムモンスターとペットとが合わせて17000を超える数に分身し、高火力の自爆攻撃を仕掛ける広域殲滅が、ある程度無制限に可能な【牧場主】時雨ですら苦戦しているというのは、その物量がどれほど異常かを表していた。
「増援来るのに時間かかりそうだね。どうする? っと、あっぶな!!」
「銀冠灰被り……やっぱりどんどん敵が強くなってる」
更に最悪なことに、時間がたてばたつほど敵が強くなっていた。その証拠についさっきまで銅冠だった灰被り姫に銀冠個体が現れており、銅冠の感覚で殴り掛かったナギが手痛い反撃を喰らいかけていた。
「他も結構厳しい所が多いみたいだし、暫く救援は期待できなさそうだね」
「西が一番早く終わりそう。【ナイトシーカー】と【賢者の石】いるし、来るまで耐久重視?」
広範囲殲滅能力に欠ける南門メンバーでは、広範囲殲滅が容易な他門から救援が来るまで耐えるのが最善手なのは全員が理解できている。だが、
「それが最善手だろうが……それじゃつまらないだろ?」
「ですね。どうせですし救援が来る前に全滅させるくらいのつもりで行きましょう」
それが最善手だからと言ってそれを行うかどうかはまた別の話。守りに徹するのは性に合わなかったり、防御を高めている理由がやられる前にやるためだったりするプレイヤーが集まっているのだ。
その結果、ここに積極的に敵の殲滅を図る耐久戦という奇妙なものが始まろうとしていた。
◇
所変わって、周囲に建築物が一切無い特殊エリア。
王都防衛をしているプレイヤーとは一線を画す風格を醸し出す9人のプレイヤーが動き出そうとしていた。
「創生せよ、天に描いた星辰を──我らは煌めく流れ星」
「蠢動しな、死棘の魔槍」
「善因には善果あるべし、悪因には悪果あるべし」
「黒より黒く闇より暗き漆黒に、我が深紅の混淆を望みたもう」
「ふふっ、美味しそうなのがいっぱいです」
「ラディカルグッドスピード脚部限定!」
「最終日だというのにこの程度ですか。他愛なし」
「どうせだ。めいいっぱい暴れてやろうか!! オン・コロコロ、センダリマトウギソワカ」
「多くのプレイヤーを屠った9つの極天が、未だ最先端である事の証の為に……!」
今ここに、一方的な蹂躙が始まる。
やっぱ極振りの方が書きやすいですね。(今話約4800字を4日で。前話約6600字に10日以上)ですが、1か月程前の0評価コメントで「防振り二次か分からないレベルで出番無い」って言われてたんでちょっと防振りキャラの出番増やさないとなぁ
<今回のオリジナル要素&ネタ解説>
・【幻影海神】
シャークトゥルフの強化版。名前はナナドラの隠しダンジョンのボスたち(幻影○○という名前の強化版シナリオボスとの戦闘を行う。○○にはそのボスを現す二字の漢字が入る)その他イベントモンスターの名前もナナドラ隠しダンジョンが元ネタ。