逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話 作:LR44(ゆっくり)
後、お気に入り50人ありがとうございます。
「それにしても、何もしてこないのは不気味だな」
他メンバーより一足先に【幻影泥竜】を撃破し、後ろに下がって来た俺は【幻影海神】を見ながら呟いた。
鮫御大の時は中間防衛してたからその時のことは聞いた話でしか知らないけど、こいつが今の今まである程度まで近づいたら一切動いてないのが異常なのは流石に分かる。だとすると……
「条件を満たすか攻撃するまで動かないタイプ?」
「いや、流れ弾が被弾しても反応してなかったし、攻撃は攻撃でも一定以上のダメージが無いと反応しないんじゃないか?」
「おわっ!?」
ボソッと独り言のように呟いた言葉に反応があったことに驚いて声のした方を見てみると、
「レグルスさん……であってますか?」
「ああ、あってるぞ」
そこにいたのは……ジェネシックガオガイガーだった。いやまあレグルスさんだってのは分かるんだが、流石に驚いたというかなんというか、ってか
「ジェネシック、完成させてたんですね」
「ああ、今日に間に合うように急いで完成させたんだ。協力してくれた【アルムアイゼン】と【モトラッド艦隊UPO支部】に感謝だな。合体機構も必殺技も完璧に再現だ」
成程、流石に間に合わないと思っていたんだが、あの2ギルドに協力して貰えたなら納得だ。というか、
「この間合体機構はリソース足りないって言ってませんでした?」
一緒に黒ミズチを倒した時にそんなことを言っていたはずだが……
「バイク艦隊の人にアドバイス貰ってな。1つの特殊装備で完全再現しようとするから無茶だったんだ。ジェネシックガオガーが装備枠で、ジェネシックマシンはそれぞれで独立した特殊装備になってるんだ。で、それぞれに合体機構と武装を搭載してる」
「【提督】さんがやってる奴を発展させた感じですか。成程、そうすればよかったんですね」
そうか、どうしても合体後の姿の印象で1つの装備にしないといけないって思ってたけど、複数の装備を合体させればリソース問題は解決できるのか。
と、そんなことを話している内にアーテルさんやリーフさん、ロウさんも戻って来た。
「結構揃ってきたので【幻影海神】への対応について話し合いましょうか」
「そうですね。あ、【幻影海神】はアンデットじゃないので私はサポートに回りますね」
話し合いを始めてすぐにアーテルさんが発言する。あっ、そういえば
「じゃあ俺も。言い忘れてましたが【魔弾の射手】使ったので攻撃は出来ないものと思っておいて下さい。なので、俺もサポートに回らせてもらいます」
【魔弾の射手】のデメリットで次に攻撃したら問答無用で即死することを伝え忘れてた。うっかりしてたな
「俺の切り札なら多分ワンパン出来ると思うが、動かないのは不気味だな」
「全員が戻り次第取り合えず余裕がありそうなタタラさんに一発殴ってもらうのはどうですか? 丁度あっちも終わりそうですし」
確かにロウさんの言う通り耐久力もあって余裕も残ってるタタラさんに様子見してもらうのはいいかもな。
そんな呑気なことを考えていると、
「◼️◾︎◼️◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◼️!!」
突如として【幻影海神】の咆哮が響き渡った。
嫌な予感がしてステータスを見てみるとSANが4減少していた。その上作戦の中核を担うレグルスさんが一時的発狂*1、リーフとロウの二人は不定の狂気*2を発症していた。
よく思い出してみるとツムギさんとタタラさんが【幻影泥竜】を撃破してこちらに向かおうとしたタイミングでの咆哮だった。つまり、
「取り巻きの全滅がトリガーで動き出すタイプだった……ってことですかね? っと、危なっ!」
考察しているとロウさんに攻撃された。確認してなかったけど、どうやらロウさんの発狂内容は『殺人癖』みたいだな。これまた厄介な。リーフさんは多分釘付けでレグルスさんは反響動作かな?
ちゃんと保護魔法はかけといたのにそれ貫通して発狂させて来るとか……
「アーテルさん、3人の回復お願いします。俺は【幻影海神】の対処に回ります」
「分かりました。気を付けてくださいね」
アーテルさんの言葉に軽く手を上げて返しながら前線へと走る。
「被害状況は?」
「あっ飛燕さん。一時的狂気が5人と不定の狂気が2人です」
前線で式を担当しているプレイヤーの話を聞いた感じ……俺は紋章術で防御に専念するのがよさそうか?
「【幻影海神】の行動パターンは?」
「触手と鮫、爪の叩きつけにある程度の魔法。後は常時障壁による防御が展開されています」
成程、基本的には鮫御大と同じか。障壁は……秒間展開数500ってとこか。なら、
「防御力のある人は攻撃を防いで。確か新大陸組の紋章術師がもう二人いたよな、その二人に『紋章術で障壁を打ち消す』って伝言」
「分かりました!」
一般プレイヤーの紋章術師トップでも障壁展開数は200程度。俺みたいな紋章術特化じゃない上位プレイヤーや新大陸組じゃあ精々150がいいとこだ。それが3人で450,ギリギリ打ち消しきれないが……
「足りない分は勇気で補えばいい、なんちゃって」
そんな根性論がまかり通ったら流石にゲームとしてどうかとは思うが、実際にやってのける
そんなことを考えながら《障壁》の展開準備を行う。
「《障壁》っ!」
《障壁》を【幻影海神】の展開する障壁に合わせて展開し、障壁同士の干渉で相手の障壁を打ち消し続ける。
打ち消して、打ち消して、打ち消して、打ち消して……まだ足りない。予想通り打ち消しきれない障壁が50ほど出てきてしまっている。【空間認識能力】もリミッターが発動するまで展開してあるし、脳の処理能力もかなりギリギリだ。
それでも、ここを押さえないと勝ちの目は無くなる。だからこそ、自分に喝を入れるために一言、叫ぶ。
「まだだ!!」
スキルの【流星弓術(極)】を控えスキルの【空間認識能力・蕾】と入れ替える。
【空間認識能力・蕾】は少し前のアップデートで追加された特殊な空間認識能力であり、進化するまでのプレイヤーの行動によって様々な空間認識能力に進化するという代物だ。
その分進化するまでは気休め程度の効果しかないのだが、今回はそのおかげで今の状況を打破するには打ってつけだ。
「《障壁》、《障壁》、《障壁》ぃっ!!!」
僅かに増えた処理能力をフル活用して障壁を展開する。155、160、165……167に到達した所で限界を迎える。後少しが届かない。脳みそを限界まで酷使しながらどうにかこうにか足掻く。
そんな中、目の前に1枚のウィンドウが開いた。その内容を確認し……理解し、納得した。すぐさま装備欄を開き、受け渡された『
ユキさんが愛用しているものと同種の装備であるこれに備わっている5つの魔導書。うち1つは第5回イベントで交換したクトゥルフ系魔導書*3だが、残り4つは必死に集めた最上級魔導書。それも紋章術での脳への負担軽減と硬度確保に特化したもの。
魔導書のおかげで障壁の展開数が増え、必要だった200を少し超え203枚の障壁を展開する。それにより【幻影海神】の障壁展開数を超え、完全に障壁を打ち消すことに成功する。
◇
所変わって発狂した者が纏められている後方。特殊装備を解除したレグルスは他プレイヤーよりも優先して治療を受けていた。
「これで一応は回復だね。レグルス、大丈夫?」
「ああ。何とかな」
その回復により正気を取り戻したレグルスは、少しバツの悪そうな顔をする。
「……すまん。状況は?」
「飛燕くんたちが押さえてくれてるところ。でも、割と厳しいみたいだね。ああ、後リーフちゃんとロウちゃんは流石に時間が足りないから拘束しただけだよ」
アーテルの言葉にレグルスは少し悩む素振りをし、口を開いた。
「【農民】と【大工場】に連絡を。
「分かった。レグルスも準備進めといてね」
その言葉と共にレグルスは再び特殊装備を纏い、指定位置へと飛んで行った。
◇
「よ~し、皆聞いたな? フォーメーションG、発令や!!」
「「「「「了解!」」」」」
張翼射出司令艦『ツクヨミ』内部。アーテルから連絡を受けた【農民】ハーシルがフォーメーションGの発令を宣言する。そして、艦内のメンバーがそれに答える。
「ヴェル*4、
「イエッサー。だったな、確か」
ノリノリのハーシルとあまり乗り気ではないツヴェルフが、下からせりあがって来た台へと、アニメと同じセリフを叫びながら鍵を差し込む。
「「人類の英知と、勇気ある誓いの元に! ゴルディオンクラッシャー、発動」」
「承認!」
鍵を回すとご丁寧に『勝』『利』の2文字が現れた。
「これが、勝利の鍵や!! 」
そのセリフと共に、王都上空に浮いている3隻の船が変形を始める。
「張翼射出司令艦『ツクヨミ』展開」
一隻はそのT字型のボディーの両翼を折りたたまれる。
「極輝覚醒複胴艦『ヒルメ』展開」
一隻は開かれた円柱のようなボディーを半円柱状に展開する。
「最撃多元燃導艦『タケハヤ』展開」
一隻は前方半分が折りたたまれる。
「総員、既定の位置に急ぐんや。最終チェック忘れずにな!」
ハーシルの放送が艦内に鳴り響く。艦内では焦ったように走り回っているプレイヤーが多くいた。
「『ツクヨミ』『ヒルメ』、ドッキングします」
2隻が合体し巨大な円柱を作り出す。
「続いて『タケハヤ』、ドッキングします!」
もう一隻も合体し、巨大なハンマーのような形を作り出す。
「全出力、接続完了!」
システムが正常に作動したことを現すように全体が光輝く。
「『クシナダ』分離!」
小型の脱出船『クシナダ』が分離する。中に乗っているハーシルやツヴェルフ、他数名の【アルムアイゼン】所属のプレイヤーのステータスを見たならば、MPがすっからかんであることが分かるだろう。
この『ゴルディオンクラッシャー』、ぶっ飛んだ威力の実現とアニメの際現に力を入れすぎた結果とんでもないMP食い虫になってしまっているのだ。具体的な数値で表せば300000*5は要求されるほどに。
現在『クシナダ』内に10人、船内には20人のプレイヤーが存在する。うち15人は【アルムアイゼン】のプレイヤー。残りのプレイヤーで純魔は精々5人程度。圧倒的にMPが足りていない。
本来なら純魔で消費の大きい無属性魔法をメインに据えていることもありかなりのMP量を誇るリーフがMP供給役に参加する予定だったのだが、そのリーフが発狂してしまったがために参加プレイヤーのMP量がギリギリ足りていないのだ。
「なんやて!? MPが足りてないやって!?」
『はい! 起動には凡そ10000ほど足りません!』
「あの二人の分ってことかいな。一体どうしたもんか」
MPが足りないことにハーシルが頭を悩ませていると、一人のプレイヤーが船内に現れた。
「別に呼ばれてはいませんが、呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!! MP供給に来ましたグリモアです」
「あそこで自爆して死んでなければもっと早く来れたのに」
「グリモア!? せや、そういやあんたは無属性も使うからMPは多いんやな」
『っていうか、やっぱりあの時の自爆で死んでたんですね……』
そう、グリモアである。彼女は純魔と前衛の中間のような何とも言えないステータスやスキルの構成であるが、メインで使用している魔法は炎と無属性。MP消費の多い無属性魔法をメインで使用しているだけありMPはそんじょそこらの純魔と比べても遜色ない程度には確保している。
更に、あくまでデスペナで減少するのはステータスのみ。HPとMPは含まれていないため、先ほど死亡したことはMP供給において何も支障をきたさないのだ。
「これで行けるで! レグルス、こいつは急造やからコネクターがジェネシックガオガイガーには合ってないんや!!」
「後はガッツで補え! だったな」
ハーシルとツヴェルフの言葉に答えるように、レグルスは吼える。
「了解! よっしゃぁぁぁ!」
そのまま、右手を大きく振りかぶると、コネクターに目掛けて突き出した。
「クラッシャァァコネクトォォ!」
コネクターを突き破り無理やり接続する。
上部が8つのパーツに分離した。それら同士が光で繋がり巨大なハンマーを作り出す。
ゴルディオンクラッシャー、正式名称『グラビティ・ショックウェーブ・ジェネレティング・ディビジョンツール』。Zマスター級*6の敵を迎撃するために開発された、【アルムアイゼン】最後の切り札である。
◇
「これで勝ったつもりとは、笑止千万。【幻影海神】のリジェネはダメージをうけた直後に受けたダメージ分回復する特殊仕様。ゴルディオンクラッシャーが超絶火力の超多段ヒット攻撃だからと言ってワンパンは出来ないさ」
所変わって通常運営のサーバー。【幻影海神】を担当した運営は不敵な笑みを浮かべていた。
「いくら極振りとは言えこの短期間では10万もの敵を倒すことなど叶うまい*7。更に、例えリジェネが無かったとしてもMPが足りていないようだしな。倒しきれるまでには凡そ70000程足りていないな」
“勝った”。彼がそう思っていると背後から声が聞こえた。
「それはどうかな?」
「何っ!?」
反射的に振り向いた彼が見たものは、
「なっ!! お前は、極振り対策室チーフ!?」
極振り対策室チーフであった。驚いている彼を尻目にチーフは絶望的な宣告を告げる。
「お前はまだ極振り達について理解しきれていないようだな。ほら」
そう言い指さした先には真っ青な顔をして今にも卒倒しそうな運営が。その運営は信じられないものを見たかのような顔をしながら、口を開く。
「ご、極振りが……極振りが……」
「どうした? 極振りがどうしたんだ?」
【幻影海神】を担当した運営が続きを促したが、
「極振り達の手によって、隔離用特設サーバーがダウンしました。極振り達は現在通常サーバーに出現しています」
数十秒のフリーズの後、ようやく口を開いた彼は、
「……は?」
そう言うしかなかった。
◇
「一体どうやってこっちに? 確か特設サーバーは相当手がかかってるらしいですが」
「簡単なことです。ノリノリでモンスターを狩っていたのですが、丁度10万を超えた所で少々全員の全力の攻撃がぶつかり合ってしまいましてね。それだけなら問題は無かったのですが、そこに運悪くレンに吹き飛ばされていたり私が足を止めていたりで、モンスターが上の方まであり得ない密度で溜まっていたのですよ。それでサーバーが落ちたという訳です」
「えぇ……」
『碌式紅焔弓』*8と一緒にザイルさんに依頼した『弐型浮遊魔導書 伍式』を受け取った後、ザイードさんと少し話をしていた。
「ところで、どこに誰が行ったんですか?」
「ここには私とアキ、それとあちらの船内ににゃしいと翡翠が。東門にはザイルとユキが。レンとセンタとデュアルは南門の方へと」
一瞬考える素振りを見せた飛燕だったが、いつの間にか
「勝ちましたね」
「ええ、もはや負けはないでしょうな」
◇
「【幻影海神】にはもう既にリジェネは無い」
「【裁断者】!?」
いつの間にか近くにいた【裁断者】アキにレグルスは驚いたが、直後の声ですぐさま正気を取り戻す。
「そうですよ。この私がMPタンクなんてやってるんです。これで決めなかったら承知しませんよ!!」
「光になってしまっては食べられませんね。残念です。前のはおいしかったのできっと今回のも美味しいと思うんですがね。前は無かった醤油もありますし」
なんと、ゴルディオンクラッシャーのMPタンクとして【爆裂娘】にゃしいと【頂点捕食者】翡翠が搭乗していたのだ。
この二人の合計MPはもう少しで10万の大台に上るレベル。不足していたMPを補って余りある莫大なMPを供給されたゴルディオンクラッシャーは、心なしか光が強くなっているようだった。
「さあ、勇者王よ」
「【幻影海神】を」
「「ぶっ壊せ!!」」
◇
「本当にとんでもない代物を作ったもんだな、レグルスさんに【アルムアイゼン】の人達は」
「そうですな。これは我らも負けてはいられませんな」
地上。多くのプレイヤーが上を見上げレグルスの雄姿を見届けようとしていた。
◇
「おいおい、あれって……」
「ゴルディオンクラッシャー、だよな……」
東門。巨大化した【幻影巨神】の本体に苦戦していたプレイヤー達は揃って上を見上げていた。
ここに集まっているのはバイクや戦闘機、戦車が好きすぎてゲーム内での再現を行っている者たち。あれほどの再現度のゴルディオンクラッシャーには注目せざるを得なかった。
◇
「ねえ、藜ちゃん。あれって」
「レグルス、さん、の、切り札、です、ね」
西門での戦闘を終わらせ南門へと向かっているプレイヤー達はそのあまりの迫力につい足を止めてしまっていた。
無理も無いだろう。このゴルディオンクラッシャーはいくらダウングレードされているとは言えそのサイズは並大抵のものではない。王城など遥かに超えるサイズをしているのだから。
◇
「ねえ、あれって」
「レグルスさんが【アルムアイゼン】と開発してた奴だね。完成してたんだ」
南門。銀冠と金冠が入り混じり、時折プラチナまで出現し始めた戦場でプレイヤーは迎撃の手を止めないながらもついその注意を北門の方へと向けてしまっていた。
「ぐはぁ!」
「ぐわぁ!」
「ひでぶっ!」
そのせいで死亡したプレイヤーもある程度いたのは、ご愛嬌という奴だろう。
◇
「そうだ、俺は一人じゃない
俺たちは一つだ!! 」
レグルスは高らかにそう宣言する。ロールプレイの一環なのだろうが、その姿は妙に堂に入っていた。
巨大な光のハンマーが【幻影海神】へと直撃する。再生能力を失った【幻影海神】に、それに対抗するすべは無く。秒間1000ヒット、1ヒット20000ダメージという絶大な火力の前にその体力を一瞬にして削り切られたのだった。
夢中で書いてたら過去最大の文字数になってました(約7600字)。
因みに『ゴルディオンクラッシャー』は①多数のプレイヤーが必要②発動までの隙が大きい③どうしても攻撃が大振りになる といった欠点があるため極振り相手に使った場合はあっさり無力化されることでしょう。そもそも列奏アキさんの方が火力出るし。下手したらユッキーのステラ刀の方が火力上かもしれないし。
<今回のオリジナル要素&ネタ解説>