逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話   作:LR44(ゆっくり)

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 そういや防振りってリアル回が極端に無かったなと思ったのでリハビリがてらリアル回です。
 一昨日ハーメルン10周年だったらしいですね。おめでたいです。後、UA8000ありがとうございます。


第22話『たーまやー!』

 夏休みも終わりに近づいたある日の夜。俺と夕凪は地域の夏祭りへと参加していた。

 

「理沙ちゃん達、遅いね」

「準備に時間かかってるんだろ。むしろ俺らみたいに浴衣の着付け慣れてる方が珍しいし」

「確かに。飛燕のお母さん、そういうの好きだったもんね」

 

 元々は二人だけで参加するつもりだったのだが、NWOでイベントリザルトを確認していたところ、メイプルさんからお誘いがあったため、現在本条さんと白峰さんを待っている所なのだ。

 

「そういや幸村先輩たちもこの夏祭りには来るらしいな」

「へえ、3人で?」

 

 俺はナギの言葉に対し、首を横に振って否定で返す。

 

「いや、【すてら☆あーく】のオフ会だって言ってた。去年もやったらしいぞ」

「そうなんだ。オフ会かぁ、【楓の木】の面々でやったら楽しそうだね」

 

【楓の木】でオフ会か。確かにリアルであの面々で集まるのはなかなかに楽しそうだけど、

 

「どこに住んでるかも分からないし、きついだろ」

「まあ、そりゃあそうだよね」

 

 とまあ、そんな風にとりとめのない話をしながら待つこと15分程。よく知る顔が二人こちらへやってくるのが見えた。

 

「ごめん、お待たせ」

「待たせちゃったね」

「ううん。気にしなくていいよ」

 

 本条さんと白峰さんがやって来たのだ。本条さんは黒に紫の薔薇をあしらった浴衣、白峰さんは淡い青の浴衣である。ゲーム内の装備を意識したんだろうな。因みにここまで触れてなかったが、俺は黒みがかった紫の浴衣、夕凪は黒地に赤と青の模様が入った浴衣を着ている。俺の母親が服作りが趣味で、押し入れに残ってた布を使ってゲーム内の装備を意識して作ってみたのだ。有効活用って奴だな。素人が製作期間約3週間で作ったにしては割と上出来だと思う。

 というか……

 

「何か俺だけ場違いな感じがするな。別で回るか?」

「それ言ったら私たちの方は馬に蹴られてもおかしくはないんだけどね」

 

 そう言いながら白峰さんは肩をすくめる。まあ、確かに状況だけ見れば俺の方が居心地が悪いけど、内容を知ってれば居心地悪いのは白峰さんたちの方か。じゃあ、

 

「分かれて回るか? 俺と夕凪、白峰さんと本条さんって感じで」

「私も賛成するよ。花火の時間になったら……あそこのベンチの辺りに集合ってことで」

 

 俺の提案に夕凪も賛成してくれ、2人ずつに分かれて屋台を回ることになった。

 

 

 

「じゃあまずはいつも通り?」

「だな。夏場は電気代がかさむのが痛いなぁ」

 

 屋台の方へと足を進めながら俺と夕凪はどこから回るか相談をする。因みにいつも通りというのは、型抜きで+になった分だけを屋台での飲み食いに使うというものだ。小さいころに小遣い500円でいかに多くの店を回るか考えた結果できた習慣で、最初の年は碌に+にならなかったものの、駄菓子屋で売ってる型抜きを使って練習したりした結果翌年からは少しづつ+が増えていき、UPOで鍛えられ始めた去年からは妙な難癖すら付けられない程に完璧な抜き方が出来るようになったのだ。

 今足を運んでいるのはこれまでずっとお世話になってる型抜き屋台である。何気にこの人10年以上型抜き屋台を出し続けてるんだよな。去年ついに最高難易度だった三色団子(3000円)を抜かれたのが悔しかったようで、今年は更に難しいのを用意して待っているといわれたこともありかなり楽しみにしているのだ。

 

 いるのだが……

 

「ああ、星が、星が見える。いあいあ」

「「ちょっ! 大丈夫!?」」

 

 何か型抜き屋台の店主さんがちょっとダメな方向にイッちゃってました。なんかラインナップに『ニャルラトホテプ』とか『クトゥルフ』とか見える気がするけど俺は何も見えてない。あ、精神分析(物理)でいいですか? 流石に老人にそれはダメ? 

 

 ◇

 

「ねえねえ、この綿菓子美味しいよ。里沙も食べる?」

「じゃあ私からもポン菓子どうぞ」

 

 二人と別れた楓と里沙の二人は、祭りを満喫していた。タコ焼きに焼きそば、りんご飴にかき氷に綿菓子とポン菓子。その他一通りお祭りらしい食べ物は網羅していた。現在進行形でSAN値が削れるような型抜きをしている飛燕たちとは大違いである。

 

「あ、金魚すくいだって。やっていかない?」

「そういえば暫くこういうのしてないわね。楽しそうだし、やってみようか」

 

 二人が金魚すくいの屋台へ行くと、そこでは大学生くらいに見える黒い髪を長く伸ばした女性が一人に、老人が一人の二人で屋台をやっていた。

 

「いらっしゃい。一回どうだい?」

「あ、お願いします。……楓?」

 

 ふと、楓が何も言わないのが気になった里沙が隣を見てみると、楓はじっと女性の方の店員を見つめていた。

 

「ちょっと、どうしたの。そんなに見つめて」

「なんかね、どこかで見たことあるような」

 

 そう言われた里沙が改めてよく見てみると、確かに見覚えがあるような気がした。

 

「私の顔に何かついているか?」

 

 そう店員に言われ、理沙はハッとし、

 

「あ、すいません。ちょっと見覚えがあるような気がして」

「そうだったのか……いや、言われてみればこちらも見覚えがある気がしてきた。あれは……」

 

 頭に手を当て、少し考える素振りを見せたのち、合点がいったような顔で

 

「ああ、そうだ。ゲーム内での友人に似ているのだ」

「ゲーム、ですか?」

 

 楓が投げかけた疑問は、理沙が持っていた『もしかしたら』という予想を決定づけるものであった。

 

「ああ。『New World Online』というゲームなのだが」

 

 そう言われ、楓と里沙の二人も合点のいった顔をし、

 

「「もしかして、カスミ(さん)?」」

「「何故私のプレイヤーネームを!? まさか、メイプル!? それにそっちはサリーか!!」」

 

 

 

「カスミさんってこの近くに住んでるんですか?」

「ああ。祖父が隣町で古物店を営んでいてな。よくその手伝いをしているのだ」

 

 店にいた老人──カスミの祖父に『知り合いなら一緒に回って来い。店は自分一人で回せる』と言われ送り出されたカスミは、楓と里沙と共にベンチに座っていた。

 

「ごめん、遅くなったね」

「ちょっと精神分析に手間取ってな」

 

 そこへ型抜き屋の精神分析を終わらせ、屋台の食べ物を抱えた夕凪と射的の景品を抱えた飛燕がやって来た。よく見れば二人は腕に金魚がいっぱいに入った袋を下げていた。

 

「ちょっ、その金魚どうしたの?」

「明日の晩御飯だよ。結構おいしいんだよ」

 

 事もなげに言う夕凪と、当然だろうとでも言うように頷く飛燕。

 

「金魚って食べられるの?」

「大雑把に言ってしまえば品種改良したフナだからな。ちゃんと調理すれば結構美味しく食べれるぞ」

 

 とは言え、美味しく食べるには結構手間がかかるのだが。と飛燕は苦笑いしながら肩をすくめる。

 

「ところで、その景品の山はどうしたの?」

「これでも出禁にならない程度に抑えてるんですよ。これでも【狙撃手】なんでね。射的はお手の物なんですよ」

 

 そう言いながら景品の山の中にあったNWOのゲームソフトを持ち上げて見せる。因みにではあるが、このゲームソフトは後ろを金具で固定して倒れないようにされていたのだが、飛燕がUPOで鍛えた狙撃テクニックにて倒してしまったという経緯があったりする。

 

「でも、NWOのソフトか……どうしようかねぇ」

「今度のイベントじゃあもうちょっと人手が欲しいし、誰か知り合いにでもあげてみる?」

「それがいいかな? っと、そういえば」

 

 そう言って、飛燕と夕凪はカスミの方を向き、

 

「「カスミさん、ですよね?」」

「「「えっ!!」」」

 

 飛燕と夕凪の言葉に、思わず驚きの声を上げる3人。

 

「えっ!? 私、そう言ったっけ?」

「いや、状況とかから考えたらそれしか考えられないでしょ」

「だな。この状況で白峰さんと本条さんと一緒にいることとか、俺が知る限りのリアルの二人の交友関係にこんな人いなかったりとか。まあ後は見た目ほぼそのまんまだし、癖なんかも一緒だし」

 

 UPO上位プレイヤーはゲーム内のレベルやスキルだけでなくプレイヤー本人の技術も磨く必要がある。更に、【弱者の盾】デュアルのような例外を除けば殆どの上位プレイヤーは【空間認識能力】*1を所持している。

 それによりUPOプレイヤーは、リアルのスペックに至るまでが鍛えられているのだ。

 

「そ、それで分かるのか……あぁ、そうだ。自己紹介していなかったな。八雲 霞(やくも かすみ)だ。よろしく頼む」

「こっちこそ。千影 夕凪です」

「来島 飛燕です。人のこと言えませんが、名前そのまんまなんですね」

 

 笑顔で挨拶する夕凪と苦笑いの飛燕。

 そんな風に軽く談笑をしている間に、花火が上がり始めた。

 

 爆発音、火薬の香りに眩い光。幸村先輩が喜んでそうだなぁと、そんなことを考えているとどこからか声が聞こえてきた。

 

「たーまやー!」

 

 それに対抗するようにどこからか声が聞こえてくる。

 

「かーぎやー!」

 

 そして最後に、去年の焼き増しのように対岸からも声が聞こえてきた。

 

「エクスプロージョン!!!」

*1
周囲の状況がよく分かるようになるスキル(ゲーム内説明)。ただし実際には範囲内の、風で揺れる草木の様子から大気中の塵の様子に至るまでありとあらゆる情報を脳にダイレクトに送り付けてくるため、実質の思考加速&並列思考&リアルの脳のスペックを鍛えるスキルと化している。




 ちょっと更新休んでた間、『ヒャッハーな幼馴染み達と始めるVRMMO』って作品にはまりましてね。これが面白いのなんのって。今まで書籍のあらすじの『無自覚最強』ってので敬遠してましたが、全っ然無自覚じゃ無かったです。自覚ありまくりでした。正直今まで読んだ中で3~5番目には面白かったです(1番は『極振り』、2番は『元検証班共が征く』。その後に『シャンフロ』と『ランダムでキャラを作ったんだが詰んだかもしれない』と『ヒャッハー』が大体同列)。
 んで、そのヒャッハーにゲーム内での知り合いにリアルで会う回があったんですよ。自分、そういう話が結構好きなのに加えてヒャッハーでのリアル回が非常に面白かったのもあって、リアル回が書きたくなったので今話が出来上がりました。カスミを選んだのは和風キャラが好きなのもあって防振りのキャラの中では一番好みだったからです。

<今回のオリジナル要素&ネタ解説>

・金魚が明日の晩御飯
 『暗殺教室』よりのネタ。試したことはないけど食べられるらしい。

・八雲 霞
 カスミのリアルの名前を考えるのが面倒だったので名前はそのまま霞に。最初に思いついたのは『霧原 霞』だったけど、これプリコネじゃんってなったので適当に和風な名前ってことで丁度読んでた東方三月精(Strange and Bright Nature Deity)の3巻に出た『八雲 紫』から取って苗字が八雲になった。

・たまやかぎやエクスプロージョン
 極振り第84話 夏祭り②のネタ。にゃしいさんと思しき人がエクスプロージョンって言った。第97話 高難度ボス戦(幸運)のユッキーのセリフの『本職の花火師の人』ってのも多分にゃしいさん?
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