逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話   作:LR44(ゆっくり)

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 そういや今話のためにWeb版読んでて知ったんですが、【鍛冶】とか【調合】って生産職限定のスキルだったんですね。
 っていうか、漫画でもWebでも書いてあったんで多分小説にもあるんでしょうが、『生産職が作れるポーションは下から2番目まで』ってちょっとひどすぎませんかねぇ。生産職の意味とは……
 後、UA9000ありがとうございます。


第25話『キックだけでモンスターを倒してみましょうか』

 

「はい。じゃあ今から白黒姉妹&メイプルさん・サリーさんの特訓兼新人二人のパワーレベリングを始めたいと思います」

 

 俺とナギを教官役に据え、マイさん・ユイさん(白黒姉妹)とメイプルさん、サリーさんの6人は3層の街のリスポーン地点から一番近い出口からフィールドに出ていた。

 

「白黒姉妹って……あっ、リンちゃんとシルクちゃんはこの奥でレベリングしといてください。二人ならここでも時間をかければかてると思うので」

 

 街からそれなりに離れた狩場を指さしながらナギがそう言う。因みにナギが指さしている狩場はモンスターは特殊な能力がある訳でもないのに、単純なステータスの高さによって非常に難しい狩場と言われている場所だ。

 

「メイプルちゃんとサリーちゃんは私とPvPシステム使って特訓だね。マイちゃんユイちゃんは飛燕にStr補正使って高速移動する方法を教わって下さい」

 

 決闘メニューを開きながらメイプルさん、サリーさんに言葉を投げかける。ついでに俺に新人二人の特訓を押し付けてきた。

 

「じゃあ、行ってきますね。取り合えず30超えるまでは戻ってこないので」

「【食人鬼】の経験値量は結構凄いので二人で食べ合うのが最高効率な気もしますが……流石にシルクさんには厳しいですし仕方ないですね」

 

 おいおいリンさんや、何かとんでもないこと言ってないですかねぇ。というか、まさかあのレベル15って【食人鬼】の経験値が主なのか? 

 

「じゃあ私たちも行こうか。一先ずは……アストのフルバーストをノーダメで凌げるくらい、じゃあ通じないか。え~っと、秒間100発のレーザーが5連続、をノーダメで凌げるくらいの技術にはなってもらうよ」

 

 ちょっと二人に要求するハードルが高すぎやしませんかねぇ……。一応UPO(うち)でも中堅上位くらいの技術はありそうなサリーさんならともかく、メイプルさんにまでそのレベルを要求するのは酷ってもんじゃないのか? 

 

「あ、流石にメイプルちゃんには厳しいだろうからそっちはハードル下げるよ」

 

 あ、そういう事なら一安心。流石にメイプルさんにまでサリーさんと同じレベルを要求してたら時間がいくらあったって足りないしな。

 

「じゃあマイさん、ユイさんは……取り合えずStr補正を脚力にする練習が必要ですかね? キックだけでモンスターを倒してみましょうか」

 

 ◇

 

「《エンチャント・ストレングス》《エンチャント・アジリティ》っと。はい、バフかけなおしましたよ」

「ありがとうございます。《パワーショット》、《スナイプ》」

 

 リンとシルクの二人は通常であれば勝負にもならないレベル差の相手を、UPO仕込みのPSを活かし余裕で相手どっていた。

 

「流石にこれだけレベル差あると一戦一戦に時間がかかりますね」

「ですね。ちゃんとバフ貰ったうえでクリティカル狙わないと碌にダメージが通りませんし」

 

 とは言え、ステータスの関係で一筋縄ではいかないようで、小さいダメージを積み重ねる関係でどうしても戦闘時間が長引いてしまっていた。

 

「【円環の蛇】の倍率は高いんですが30秒っていうのが厳しいですね。せめて部位欠損を治癒する魔法やスキルでもあればいいんですけど」

「そもそも回復専門の魔法が見つかってないんでしたっけ? 飛燕くんは、ミザリーさんって方のスキルがそうなんじゃないかとは言ってましたけど」

 

 現状一般プレイヤーが使える回復魔法は【光魔法Ⅰ】の《ヒール》程度しか見つかっていない。それ故、基本的にほとんどのプレイヤーはポーションがメインの回復手段であり、回復量も心もとない魔法をメインの回復手段としているプレイヤーはほとんどいないのだ。

 

「まあ、レベル差が凄いのでレベルはとんでもない勢いで上がるんですけどね。ここまでとなると黒化ボスTAをやった時以来じゃないですかね?」

「あぁ、懐かしいですね。私とシルクちゃん、飛燕くんにナギちゃんとリーフちゃんロウちゃんの6人で2週間ほど頑張りましたが、結局【爆破卿】さんの記録は抜けませんでしたね」

 

 とは言え、1層探索が適正なレベルの2人が3層の難関と呼ばれる狩場にこもっているため、経験値効率は非常にいい。ついさっき目標レベルを30から35に引き上げたくらいには。

 

「さあ、上がった分のステータス振り終わったら狩りを再開しましょうか」

「ですね。もうすっかりNWO(こっち)の狩りにも慣れましたし、更に効率上げていきましょう」

 

 ◇

 

「じゃあ……まずは有名プレイヤー対策からかな? 一通りやっちゃえばメジャーな武器種には対策できるし」

「え? ナギの使ってる武器って籠手じゃ?」

 

 決闘用の特殊フィールド。ナギとメイプル&サリーが特訓の準備をしていた。

 

「これでも【戦闘狂】だからね。一通り武器種ごとの長所短所は把握して、最低限使えるようになるまで練習して、それから対策を立ててるんだよね。まあ、流石に実用レベルな武器種の数はロウちゃんには適わないけど」

「えぇ……有名プレイヤーって事は大剣とか短剣とか、後杖と斧なんかも使えるってことよね」

「まあね。第1回イベントの時の映像見て予習もしてきたし、7~8割くらいの再現率はあるはずだよ」

 

 UPOの全プレイヤー中最もPvPに力を入れていると言っても過言ではないナギ。その情熱は様々な武器種を最低限使えるレベルまで練習し、その上で対策を立てるまでに及んでいた。そのかいあってUPOで彼女とPvP経験のあるプレイヤーからは『的確にやられると嫌なことをしてくる』や『正直よく使うアーツの当たり判定に判定持続時間、よく積まれてるスキルまで記憶してるのは最高に頭おかしい』*1と言われていたりする。今回はその能力をメイプルやサリーの特訓に応用している、という訳である。

 

「最初は大剣、つまりペインさん対策だね。UPOじゃあまり人気ないから再現たいへんだったよ」

「え!? 大剣って人気無いの!?」

「大剣っていうより大振りな武器全般が人気無いんだよね。基本的に受けるより回避が強いから、武器も精々刀とか槍くらいのが多いんだよ」

 

 ナギの言う通り、UPOでは一発が強力な武器よりも手数武器が人気な傾向がある。*2極振りレベルは論外としても、【舞姫】や【オーバーロード】相手に大剣や大斧担いでいって当てられるかという話である。

 

「じゃあ、サリーちゃんは余裕をもって全部を、メイプルちゃんはせめて本命の攻撃だけは回避できるようになるのが目標ね」

 

 ◇

 

「よし、予想より時間はかかったけどキックだけでモンスターを倒せるようになりましたね」

「思ったより大変でした」

「武器を使わないのってこんなに大変なんですね」

 

 予想ではそろそろナギは双短剣──ドレットさん対策の訓練に入っているであろう頃に、白黒姉妹は蹴りだけでモンスターを倒す感覚を掴んでいた。とは言え、モンスターはしっかり拘束した上で、だが。

 

「じゃあ、次は全力で上に飛び上がってみてください」

「全力で」

「上に、ですか?」

「ええ。ほら、やってみてください。そうすると……」

 

 そう言いながら上空へ飛び上がっていく白黒姉妹を見送る。この勢いは、まあ、予想通り

 

「着地の時に落下ダメージでリスポーンします。お二人には飛び上がる勢いを調整して、着地の時に衝撃を殺すことによってこのダメージを抑える訓練をして貰います……って、聞こえるわけないですね」

 

 落下ダメージでリスポーンしていく白黒姉妹を見ながら、そんなことを呟く。

 

「さて、いくら町の近くだからってあの二人じゃ復帰に時間かかるし迎えに行くか」

 

 メニューを開き、リアカー*3があるのを確認してから、リスポーンしていった白黒姉妹を迎えにStr任せに地面を蹴り出すのだった。

 

 なお、白黒姉妹がStr補正を利用した高速移動を最低限実用レベルで運用できるようになったのは、イベント開始の前日のことなのであった。

 


 

<おまけ>

 

「そういや、何で二人ってハンマー使ってるんですか? DPS的には刀とか、そっち系の方が出ると思うんですが」

 

 もう既に何回目か数えるのすら億劫になるほどの死に戻りを白黒姉妹が経験した頃。俺はリアカーに乗っている二人に、そんなことを問いかけていた。

 

「ディーピーエス……ですか?」

「そう。Damage Per Secondの略で、日本語にするなら1秒間当たりの平均ダメージってとこですね」

「え~っと……そういうの考えて武器選んだわけじゃないので……」

 

 じゃあどういう訳なのかって聞いてみれば、リアルじゃ持てないような巨大武器を持ちたかったという話だ。

 

「ところで、刀の方がDPSっていうのが出るって、どういうことですか?」

「まあ、ちょっと計算すれば分かるんですがね」

 

 そう言いながら、ウィンドウに表示したNWO攻略サイトの武器ごとのステータス補正基準値のページを二人に見せる。

 

「それ見て貰えれば一目瞭然だと思いますが、刀ってStr補正が相当高いんですよ。あれだけ取り回しの良い武器なのに、大剣とか大斧の次くらいに高い補正値を誇るんですよね。多分両手武器ってのが関係してるんだと思いますがね」

 

 多分これに関してはイズさんの方が詳しいとは思うが、装備にはその種類ごとにつけられるステータス補正やスキルには個別の傾向がある。

 極論だが、“受ける”という行為に向いていない刀に*4“受け”へ補正を加えるスキルを付与したところでそれを活かすことは出来ないし、明らかに純物理ビルドなプレイヤーが使うような大型近接武器に高いInt補正がついていたところでそんな武器は箸にも棒にもかからないだろう。

 

 とまあ、そんなことを説明した辺りで話が脇道にそれ過ぎていることに気付いたので、本筋に戻ることにした。

 

「で、お二人のレベルから考えると刀を使えば、ハンマーで1回殴る間に1.5~2回くらい殴れればDPSは上になるんですよ」

 

 かなり雑な計算ではあるがよっぽどハンマーの方が上手く扱えるとかでもない限りはハンマーよりも刀の方がDPSが出ることは確定的に明らかなのだ。

 

「ハンマーって取り回しも悪いですし、手放しに初心者に進められる武器じゃ無いんですよね。戦闘のイロハだったらそれこそ片手剣に楯みたいなオーソドックスなスタイルの方が学べますし」

 

 ただまあ、二人がハンマーを使いたいというのならこちらはそれでより火力が出せるように戦い方を教えるだけだ。

 

「そういえば、飛燕さんはUPOってゲームやってるんですよね?」

「ええ、そうですね。それがどうかしました?」

「いえ、UPOの方ではハンマーってどんな感じなんですか?」

 

 UPOでのハンマーか。……有名プレイヤーに使い手無し、そもそも火力を出すなら抜刀術でいい。スタン狙いはそこまで強いという訳でも無いし、PvPではそもそも当たる訳無い。

 総合的に考えれば……まあ……

 

「不遇武器、ですかね? 少なくとも自分の周りでは使ってるプレイヤーは見かけませんね」

 

*1
後者は主に飛燕の手助けあってこそ、である

*2
例外:にゃしい・レグルス 火力と手数が非常に高いレベルで両立されている人外:アキ・センタ

*3
イズさんの特製品。両手の武器枠を埋める代わりにアイテムを大量に運搬できる。人を運ぶ用途で使うものではない。

*4
刀は横方向からの衝撃には弱い。ゲームなので多少は緩くなっているものの、それでも横からのダメージでは耐久減少が増加する仕様が存在する。




 因みに本作では【】はスキル名、《》はUPOでは魔法やアーツ(《フルエンハンス》や《アローレイン》)、NWOではスキルに付随する魔法等(《スナイプ》や《ヒール》)という風に使い分けています。つまり極振り準拠です。もしかしたらミスってるところがあるかもしれませんが。

<今回のオリジナル要素&ネタ解説>

・ハンマーと刀
 アニメの『クリスタルハンマー』がStr+25、Web版の『身喰らいの妖刀・紫』がStr+30。単純比較は出来ないものの、攻撃回転のことを考えると白黒姉妹はハンマーより刀を使った方がDPSは出る気がする。
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