逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話 作:LR44(ゆっくり)
「カメノテさん美味しかったんですよね。ちょっといただいていきましょうか」
先陣を切ったのはリンさん。連合を潰しに行くついでとばかりにカメノテさん──【トラッパー】マルクスさんの腕を食いちぎって去っていった。何かマルクスさんワンパンされてるし、【円環の蛇】とか『ドーピングシード』*1でステータスを底上げしてたんだろうな。準極ならドーピングシードはデメリット一切ないアイテムになるしな。
「っ! 成程、今のが噂の【食人鬼】か。正直半信半疑だったが、完全に噂通りだったという訳か」
「リンちゃんってそんな噂になっちゃってたんだ……」
まあ……イベント中に散々プレイヤーを食べまくったらしいし当然って言えば当然だよな。にしても【食人鬼】とか物騒な二つ名貰ったもんだなぁ。
「怯むな! 【食人鬼】はいなくなったのだ、いくら強いとは言え所詮相手は2人だ!!」
「「「「「おおぉぉぉ!!!」」」」」
いきなり主力の一人が食い殺されたショックで止まっていた【炎帝ノ国】のメンバーだったが、ミイの言葉に正気を取り戻しこちらに向かってきた。
「こちらも負けるな、数の利を活かせ!!」
「「「「「おおぉぉぉ!!!」」」」」
同様に【集う聖剣】もこちらへと向かってくる。
折角の今回イベント初の大規模な戦闘なんだし、ここらで何かカッコいいことでも言えたらいいんだが……あ、そうだ。
「皆さん、毛利元就の三本の矢ってご存じですか?」
向かってくるプレイヤー達は軒並み何言ってんだこいつとでも言いたげな顔をする。まあ、当然だよな。
「1本の矢では容易く折れてしまいます。ですが、100……じゃ無かったですね、99本あれば……
しまった、マルクスさんがリスポーンしたことを失念していたせいで微妙に締まらないセリフになっちゃたぞ。……まあいっか。
「そうだね。そのくらい出来なきゃ
「了解っと。《アローレイン》《スナイプ》!」
ミイさん・ミザリーさん・シンさんはナギが受け持ってくれるようなので、俺はペインさん・ドレットさん・ドラグさん・フレデリカさんを受け持つ。
え? その他のプレイヤーはどうしたって? いやぁ……さっきの三本の矢じゃないけど、この程度の数だったらまぁ……うん。
「先ずは後衛から落としましょうかねぇ! 《エンチャント・ストレングス》《エンチャント・デクステリティ》、からの《影縫い》《パワーショット》《スナイプ》!!」
最初に落とすのはフレデリカさんに決めた。割と《多重障壁》は面倒だし、援護射撃がチマチマと鬱陶しいし。
「《エンチャント・ストレングス》《エンチャント・バイタリティ》《エンチャント・アジリティ》《エンチャント・デクステリティ》《エンチャント・インテリジェンス》後は……《ヒール》《ヒール》《ヒール》」
邪魔な一般【集う聖剣】メンバーを無双ゲーかってぐらいの勢いで殲滅しつつ魔法を無駄撃ちしてMPを枯らす。
そして、『ドーピングシード』と一緒に『MPポーション』の原料となる素材を直接使用する。ポーションにしないと十分な回復効果が発揮されない仕様上、素材のランクと相まってそのMP回復量はたったの“1”という微小な数値だが……むしろそれが好都合だ。
「【ターンオーバー】、んでもって《アローレイン》!!」
HPとMPを入れ替えるスキルでHPを1まで減らす。これによって諸々のスキル効果で全ステータス3.96396倍、攻撃力5.2416とかいう馬鹿げた数字になる。
しかもこのコンボのミソは使用しているスキルの全てが一般入手可能という点。唯一【龍の瘴気】だけは入手が面倒だけど、このイベントが終わり次第『ゲーミングポーション』を売り出して【楓の木】の資金調達に使う予定だからこっちもじきに一般普及する。
要するにこのコンボに使用しているスキルは①一般に普及しているorするスキルで②入手難易度も低く③理論上誰にでも使える という運営がナーフしづらい要素が3つも揃っているのだ。その上、これだけふざけた倍率になっていたところで所詮HPは1。たった1撃貰っただけでリスポーンしてしまう非常にピーキーなコンボなのだ。
つまり、メイプルさんの【悪食】のようにナーフされる心配なく心置きなく使い倒せるし、なんならナーフされたとしても条件が厳しくなるか倍率落ちるかだろうからそれほど変わらず運用できる!
「あいつシャレにならねぇことやってんぞ!?」
「未知の状態異常まで……これは少し不味いかな?」
【集う聖剣】も慌ててるな。《アローレイン》でフレデリカさんも落とせたし大分いいペース……って、ちょっと待て!
ドレットさん目視確認無し! 【空間認識能力】反応あり! そこ!!
「《影縫い》《スナイプ》《パワーショット》《イーグルショット》」
【神速】って名前の割に完全ステルススキルだし、ステルススキルって上手くやらないと空気の動きやら地面踏む時やらで【空間認識能力】に引っかかっちゃうからなぁ。*2
正直【舞姫】くらいの技術が無きゃ隠密特化はやらない方がいいだろうな。*3
「なっ! ドレットが!?」
「【神速】は使ってたはずだろ!?」
「ステルススキルに頼りすぎてるようじゃ、いい的でしかないですよ」
“恐怖センサー”とやらも所詮殺気やら何やらに敏感なだけなので、搔い潜る方法なら山ほどある。というか殺気を感知するくらいなら空間認識能力展開率が7~8割もあれば出来るから、*4新大陸組の前衛だったら全員できそうだなぁ。
まあ、取り合えずこれでドレットさんは落とせたし、次は……ドラグさんを落とすか。
「《パワーショット》!」
先ずは適当に避けられるように矢を放つ。ついでに半歩程ずれておく。
「その程度!」
「《スナイプ》!」
今度は
「《イーグルショット》!」
1度では軌道がずれ切らないのでもう半歩ずれてから更に矢を放つ。
この時、最初の矢の速度は控えめにしておくのが成功のコツだ。あまりにも早すぎると2発目が間に合わないからな。
「
2度の攻撃により軌道がずれた矢は、『ドーピングシード』込みの高いDex補正も相まってドラグさんの斜め後ろから直撃する。UPOで紋章使ってやってる矢の軌道曲げる技を
「これで、とどめッ!!」
予想外の方向からの攻撃に一瞬動きが固まった瞬間を狙い追撃の矢を放ち、確実に落とす。最後にリーダーを落とせば後は有象無象だし如何様にでもなる。というか落とさなくても如何様にでもなるけど、先にリーダー落とした方が面白そう。
そんなことを考え……ペインさんに向かって走り出す。
「どこからかやれという電波を受信したぁ!!」
自然とそんな言葉が口から出ながら、ペインさんに全力のドロップキックを食らわせる。
弓兵が急にそんなことをすれば驚くのは当然で、ペインさんはドロップキックを辛うじて防ぐも体制が崩れる。
「必殺の、曲芸射ちだぁっ!!」
対してこちらは着地後すぐに体制を整え、狙撃を行う。放たれた矢は吸い込まれるかのようにペインさんの
「もう一丁!」
そして、寸分違わず同じ場所へともう一度矢を打ち込む。HPは減っていないので空蝉の発動を確認。これでペインさんに攻撃を耐える手段はない……とは言い切れないので一応用心して、
「起爆!!」
ペインさんの方へ駆けながら、最初の矢に貼っておいた札を爆発させる。
食いしばり系のスキルが【不屈の守護者】【空蝉】のみであればこれで終わりなのだが……
「まだだよ。【断罪ノ聖剣】!!」
「当然、読んでいましたとも!!」
やはりと言うべきか、最上位ギルドのリーダーは格が違う。もう1つ未知の食いしばり系スキルを所持していたようだ。聞きなれないスキルを使用しながら斬りかかってくるので、とっさに左手に持った弓で受け止めながら、インベントリから取り出した矢を右手に持ち
「弓矢は近接武器ィィ!!」
その矢をペインさんに直接突き刺す。何かテンションがおかしい気がするけど気にしない。ってか流石に4倍以上ステータスが上がってれば防具分のVitだけでも余波程度のダメージならノーダメなんだな。
「まだだッ!! 【壊滅ノ聖剣】!!!」
「光に振り切れてる訳じゃないんですから、無茶しすぎるのは良くないですよ。って、流石に通じませんかね」
更なる防御手段を持っていたようで、またしてもHPが1のまま動かないペインさんであったが、流石にそれはいただけない。こんな密着した状態で大振りの攻撃なんて、いかにも攻撃してくださいと言っているようなものではないか。いくらダメージを通したいとは言えそれは流石に悪手だろう。まあ一応、モーション中にダメージを受けるのが何かしらの条件になってる可能性もあるので用心しつつ、左手の弓本体を突き刺す。
「なっ!?」
「流石にこれ以上はありませんでしたか。次の挑戦、お待ちしてますよ」
弓本体で攻撃してくるのは予想外だったようで、ペインさんは驚きの声を上げながら光の粒となって消滅した。
丁度ナギの方も終わったっぽいし、残りはちゃっちゃと片付けちゃって他ギルド壊滅させるか。
<おまけ>
『眼がくらむほどに眩しかった』
それは、まるで光に目を焼かれたような経験であった*5
『始まりは突然嵐になる』
上位10ギルドに下剋上してやろうと集まったギルド連合の元に急に襲い掛かって来たプレイヤーは、はっきり言って異常だった。
四方八方を敵に囲まれた中、1発も被弾せずに弓を撃ち
『吸い寄せられてく君の瞳』
そんな光景に腰を抜かした自分は、こちらを肉食動物が獲物を見るような目で見つめる、そのプレイヤーの瞳から目が離せなくなった。
『初めて感じた衝動』
その後、腕を食いちぎられてリスポーンした自分は、直後にリスポーンしてきたプレイヤーに食いついていた。
なぁんだ。意外とおいしいモノなんだな、プレイヤーって。
これは防振りの物語ではない。
準極振りの物語である。
<今回のオリジナル要素&ネタ解説>
・まとめて折れるッ!
『甘党ふうせん』さんの動画『海と邪神とシリアス出来ないゴミ共のクトゥルフ神話TRPG最終話』よりのネタ。非常に気に入っているセリフ。
・これは防振りの物語ではない。準極振りの物語である。
東京ネクロSUICIDE MISSION、装甲悪鬼村正コラボ第3段『装甲悪鬼村正 天象編』よりのネタ。非常にいいシナリオだったので、皆見て欲しい。ネクロSMはサ終しちゃったけど、デジタルアーカイブが2000円ちょいで売ってるし。DMMでプレイしてた人ならタダで貰えるし。