逸般UPOプレイヤーがNWOをプレイする話 作:LR44(ゆっくり)
初見殺しに引っかかって全滅したけど、2回目の挑戦でHPバー3段中2段までは削れた
『GRAAAAAAAAAAAAAA!!!』
神獄の黒龍が咆哮すると同時にエリアの上部が黒い霧のようなもので覆われた。
そして、神獄の黒龍がその霧の中に飛び込んでいったかと思うと、リーフさん目掛け突進を行ってきた。
「《シールドクラフト》!!」
「《障壁》《障壁》《減退》《減退》ッ!!!」
俺の障壁も、リーフさんのシールドも意味をなさずにリーフさんへと直撃した突進は、リーフさんの残機を3つも持って行った。
「ちょっ!? 思った以上に痛い!!?」
「リーフの《シールドクラフト》で止めきれないとなると、相当な高火力か、あるいは防御手段を無効化すると思った方がよさそうですね」
突進後を狙い攻撃を仕掛けようと思ったが、黒龍は攻撃を仕掛ける暇もなく霧の中へ戻っていった。
「……これ、霧の中は【空間認識能力】が効かないみたいです」
「確か飛燕くんは1個だけとは言え10割でしたよね?」
「10割で無理なら私たちには捉えられそうもないですね。大人しく突進を警戒しておきましょう」
物は試しと霧の中に矢を放ってみても霧に入った瞬間【空間認識能力】で矢を認識できなくなった。運営め……露骨に【空間認識能力】をメタってきたな。
「どうします? どうやったら攻撃できると思いますか?」
「カウンター決めたら、とかじゃない? っていうかそのくらいしか無いんじゃない?」
「一応フィールドギミックとかの線もありますが、それらしきものは見当たりませんしね」
「そうじゃないとしたらここまで攻撃チャンスが無いと、耐久イベントの可能性もありますが」
「今更耐久イベントなんてするかな? 流石に無いとは思うけど?」
あーでも無いこーでも無いと色々と話し合っていると、急にフィールド全域が霧に覆われた。
「パターン変化!?」
「この霧もご丁寧に【空間認識能力】を無効化してますね」
「どこから仕掛けてくるか分かりません。全員十分注意してください」
周囲に気を配っていると、視界の端にチラッと黒龍の赤く光る眼が見えた。
「この向きは……ナギ!!」
「っ、分かった!!」
ギリギリでガードが間に合ったナギだが、その体力を2割ほど落としていた。更に、
「ちょ!? 連撃系!!?」
「ナギちゃん!? ごめんなさい、私の回復は場所が分からないと使えないので──」
「私の方はMPカツカツです。ごめんなさい」
連続突進でナギのHPがゴリゴリ削れて行ってるのに、シルクさんは回復方法、オーロラさんはMP切れで回復に回れない。なら、
「俺が回復に回ります。【儀式魔法】使うので30秒……いえ、15秒で完成させます」
「私も回復に回る?」
「リーフのMPは攻撃に回して下さい。そもそも【無属性魔法】の回復は消費も大きいでしょう」
「よし! 間に合った!!」
ナギが食い縛りを1回発動させたタイミングでギリギリHP即時回復の儀式魔法が完成する。速度重視で作ったから回復量は微妙だけど、もう一つの儀式魔法を完成させる時間くらいは稼げるからこれで十分だ。
「もう一丁、MPリジェネ15秒計750です!」
15秒かけて750のMPを回復する儀式魔法。通常であれば到底使わない程度の回復量でしかないが、今はこの程度でも回復しておきたい。
「助かります。《ハイヒール》《ハイヒール》」
「飛燕、オーロラさん、ありがとう」
その後も、頑張って粘ってみたのだが……
「駄目です。早すぎて攻撃が当たりません。ロウさんにナギは?」
「無理無理。そもそも近寄ってこないもん」
「近寄って来たとしてもあの連続突進くらいですしね。攻撃なんてできっこないですよ」
碌に攻撃も出来ず、こちらのリソースだけが削れて行き──
「あ、ごめんなさい。落ちます」
「こっちももう限界です。すいません」
まず、サポートを担当していたオーロラさんとシルクさんが死に戻り、
「流石に回復無しは……無理!」
「右に同じくです。先失礼します」
回復が無くなったナギとロウさんが死に戻り、
「折角ですし、盛大に自爆してやりましょうか」
「賛成! じゃあ残りMP全部突っ込んじゃって……」
最後に残った俺とリーフさんが、諦めて盛大な自爆を決め、見事に全員が死に戻る結果となった。
◇
神獄の黒龍相手に全滅した翌日、俺たちは──
「《フィジカルエンハンス》《フルエンハンス》、はいロウさんどうぞ」
「《明鏡止水》*1《不動居》*2《外鎧一触》*3《
《殉教》……というか防御貫通攻撃とギミックの致命的な相性の悪さを利用して、【機装堕天・アスト】通称黒アストの周回を行っていた。何故こんなことになっているかと言うと……
昨日のボス戦の録画を見直した俺は、ボスギミックについてある程度の当たりを付けていた。それを今日のログイン直後に皆に説明したのだが、
「そういう事なら新しいペットを育成しましょうか」
というオーロラさんの提案によって黒アスト周回をすることになったのだ。
自己バフだけでワンパン出来る極振りに比べたら速度は劣るものの、一般プレイヤーに出せる最高に限りなく近い超高速周回なのは確かだ。
「え~っと……あと三回くらいで十分育ちそうですね」
「こっちはもう十分なレベルだと思うよ」
「じゃあそれが終わったら再挑戦ですね」
あと三回。登場当初は極振りくらいしか倒せない強敵だったのに、今となっては抜刀術使っての高速周回でのレベリング役……なんかMMOのインフレの世知辛さを感じられるなぁ。
因みに、今回の周回で一番の被害者は残機を減らさないために毎回町からボスフィールドまでシャトルランじみた移動を要求されているロウさんだったりする。
◇
「ゲージ残り1本、手筈通りにお願いします!」
あの後新しいペットを育て終わって、神獄の黒龍に再挑戦した俺たちは、誰一人残機を減らすことなく余裕をもって前回全滅したゲージ3本目に到達していた。
「頼むぞ、
火力重視で融合ペット*7の香にしていたのを探索特化ペット響に変更する。
判明したボスの特性その1、最終段階の霧の中では【空間認識能力】は無効化されるが、それ以外の索敵スキルなら機能する。
まあ、これに関しては録画を見直した時じゃなくて、昨日の挑戦のラストにペット枠の残機が減りすぎて、残りのペットが戦闘は不向きな響だけになった時に気付いたんだがな。
で、さっき他のペットを持てないナギともう既に索敵ペットがいる俺以外の全員が新しく索敵ペットを育てた訳だが、その甲斐あってちゃんとボスを捕捉出来ている。
「シルクちゃん、被害は?」
「MPはそこそこ消費しましたが残機は一つも減っていません」
「分かりました。カウント20!」
判明したボスの特性その2、突進はきっかり30秒周期。
前回突進で毎回被害を出していたのは突進の威力もあるが、突進がいつ来るか分からなかったというのも大きい。つまり、突進が来るタイミングさえ判明すれば被害を減らすことも出来る訳だ。
「カウント5、ナギちゃん、ロウ、ガードを!」
「了解!」
「分かりました!」
判明したボスの特性その3、霧の中からの直接突進は後衛にのみ、フィールド全体を霧で覆ってからの連続突進は前衛にのみ使用してくる。
誰に攻撃が来るかある程度でも絞り込めれば、どっちにリソースを回せばいいか攻撃前に分かるので、被害を減らすことができる。
とまあ、そこまで分かったのはいいんだが、肝心の攻撃タイミング自体は分からない訳で。
「ダメです、霧の中にいるタイミングではダメージ無効みたいです!」
「【メイジズコンセント】【コンセントレイト】使った《マナバレット》がノーダメだったので多分確定だと思うよ」
可能性その1、霧の中にいるタイミングで攻撃を当てる。
霧の中にいるタイミングではダメージ無効なようで失敗。
「《スナイプ》《チェインアロー》《ウィークネス──駄目だ、当たらないです!」
「範囲攻撃じゃ狙われてるプレイヤー巻き込んじゃうし厳しいよ?」
可能性その2、突進するために霧から出てきたタイミングで他のプレイヤーが攻撃。
突進のスピードが速すぎて上手くねらえず失敗。よしんば当たったとしてもダメージが低すぎる。多分突進中はダメージ軽減があると予想。
「コレ、どうします?」
色々と試した結果、突進中に当てれる攻撃で削っていく場合はこっちのリソースが枯渇して全滅するのが先。かといって自滅前提で攻撃するにもダメージ軽減があるなら上手くいく保証は無い。手詰まりに近い状態になっていた。
「ねえお姉ちゃん、黒龍の突進中のダメージ軽減ってバフかな?」
「いえ、どちらかと言えばスキルやアーツのような印象ですね」
「じゃあ、試したいことがあるから……リーフ、ちょっと協力してくれる?」
ロウさんの“試したいこと”は、賭けに近い部分もあったがそれ以外に良い手が思いつかないのも事実であったため、試すことにした。
先ず、黒龍がリーフさん対象の突進を繰り出すタイミングを待つ。
「これは……軌道的に多分リーフさんです!」
「じゃあ、行くよ……《エンドオブワールド》!」
「分かりました。じゃあ、後任せました。【不惜身命】《奥義抜刀・王道楽土》!!」
《明鏡止水》《不動居》《外鎧一触》《死々奮刃》《殉教》を積んだロウさんが、リーフさん対象の突進が繰り出されたのを確認し、抜刀術の構えを取る。
【不惜身命】。アキさんの《
【不惜身命】によって爆発的に高まった攻撃力によって放たれた《奥義抜刀・王道楽土》は『神獄の黒龍』の防御を貫きその体力を3割ほど削ってのけた。
更に──
「『神獄の黒龍』のダウンを確認! 被ダメージ上昇効果もあるようです!!」
「《チェインアロー》《パワーショット》《チェインアロー》《ウィークネススナイプ》DPSが足りない、もっと回転を!!」
「私からしたらサポート兼任とは思えない火力出してるんだけどなぁ。《ワイバーンストレート》《ライトニングフィスト》!!」
「口動かす前にアーツ使ってよ《マナバレット》《エネルギーボルト》《フルバースト》、あぁ!! MPが足りない!!!」
カウンターで一定以上ダメージを与えるのが条件だったのか、『神獄の黒龍』がダウン。更にダメージが上昇しているようだったので、この機を逃す手は無いと消費度外視での全力攻撃を仕掛ける。
ロウさんが削った3割を含め、残り5割、4割、3割……
次にダウンを取れる保証は無いのでとにかく殴って、殴って、殴り続けて……ついに『神獄の黒龍』のHPが0となる。
「や……やったの?」「やったか!?」
「ナギちゃん!? 飛燕くん!?」
「わざわざフラグ立てないでください。流石にこの後もあるとかきつすぎますよ」
そんなことを言ったのがまずかったのか、倒れ伏した『神獄の黒龍』を黒いオーラが包みこむ。
そして、『神獄の黒龍』を中心として大きな黒い爆発が発生する。
その中から、HPバーが1ゲージ回復した『神獄の黒龍』が、その姿を見せた。
今回で終わらせるつもりだったのに書いてるうちにキャラとボスが勝手に動いていつの間にかペットのレベリング作業始めたり、作者も知らないリザレクトとか習得してたりした。
因みに『神獄の黒龍』の復活はMH-Fの極征ミラボレアスをいい感じにアレンジしてイメージしてください。流石に室内で隕石落とすのは描写的に厳しかったです……
<今回のオリジナル要素&ネタ解説>
・【不惜身命】
発動条件:
フレンドリーファイアによる死亡
効果時間:
2秒
メリット:
HP全損無効
死亡時に受けたダメージ100ごとに1%の攻撃力上昇
デメリット:
HPスリップダメージ発生(1s/4000)
スキル効果時間延長不可
Vit・Min・Int・Agl・Luk値をマイナス計算
被クリティカル確定
遠距離攻撃不可
(任意の武器スキル)を除いたスキルの効果消去・発動不可
効果時間終了後死亡(残機含む)
デスペナルティ効果100倍
デスペナルティ時間100倍
効果時間終了後5日間《服》カテゴリ装備のみ防具装備可能
効果時間終了後5日間《天候》効果5倍
痛覚減少深度低下 Lv5(最大10)
(Lv4= ダメージ発生時カットされる痛みの感覚が、タンスの角に全力で足の小指をぶつけたくらいの痛さに変更)プレイヤーが操作可能な範囲は5まで
アキの《特化付与:列光星》と同じ類のHP全損無効効果持ちスキル。同じ類のスキルや魔法は最近少しづつ増えてきている設定。リーフが準備万端でフルバフ最高火力ぶちまけたのでバフ倍率は10000%くらい。アルカディア以上のバフ倍率を誇る代わりにデメリットがえげつない上に効果時間の延長が不可能になっている。
これ使ったせいでイベント中に神獄の黒龍を、このメンバーで討伐するためには今回の挑戦で撃破するしかなくなった。